2015年12月19日

●どうするどうなる、銀河系とスカイウォーカー一家 (『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)

   

昨日から公開の『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、さっそく新宿のバルト9で観てきた。僕が新作映画に公開早々駆けつけるなんて、いったい何年ぶりの事であろうか。以下、まだ観ていない人が大半と思われるので、ネタバレ抑え気味に感想なぞ。


おそらく他のシリーズ作と同様、この作品も今後劇場やブルーレイ等で何度か観直すことになるとは思うのだけれど、初見の印象としてはなかなかに良好だった。

初っ端のこのシリーズ特有の「え、そんなことになってたの?!」とかっ飛ばすナレーションから始まり、冒頭にいきなり激しい銃撃戦、さらに数分後には宇宙空間でスター・デストロイヤーとTIEファイターの戦いが繰り広げられるという展開の速さ。その後もアクションと戦闘シーンとシリアスなやりとりが間を空けずに数珠繋ぎになって、2時間半の間全く飽きることのない濃密なストーリーになっていた。

世界観や画面の作りはプリクエル(EP1〜3)よりもオリジナル(EP4〜6)寄りで(ってEP6の続きだから当たり前かもしれんけど)、これまで繰り返されてきたモチーフやオリジナルへのオマージュ、ハン・ソロやレイア、チューバッカ、C-3POをはじめとする懐かしいキャラクターの登場シーンもてんこ盛りとなっており、旧作ファンとしては「これこれ、これが見たかったんだよ!」という感じ。

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2015年12月16日

●『スター・ウォーズ』は「成長の物語」

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今週末からの『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』公開に備えて、『スター・ウォーズ』のオリジナル3部作(エピソード4~6)をブルーレイBOXで観直し中。

いやーやっぱ面白いわ、これ。身も蓋もない言い方だけど(笑)。確かに今の目で見ると(公開当時に比べればかなりCGで修正されてるとはいえ)チャチかったりテンポが妙にのどかだったりする部分もあるんだが、それも味のうちというか、惚れた目で見りゃアバタもエクボというか(違うか)。


で、今回数年ぶりに3部作を通しで観て改めて気づいたことがあって、それは、僕が『スター・ウォーズ』という映画を好きな理由は、それが若者たちの成長の物語だからなんだな、ということ。

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2015年09月14日

●『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

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ここ最近、たまっている本や映画を片付けようとしてなかなか片付かないんだけど、買ったまま本棚に積んであった『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のDVDをようやく観た。


『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるガイナックスが最初に制作したアニメとして知られる山賀博之監督の作品だけど、作られたのはもう30年近く前になるんだね。僕が初めて(おそらくレンタルビデオで)観てからも20年以上は経つんだろうな。

舞台は地球によく似た異世界。隣国と果てしない戦争を続ける「オネアミス王国」の宇宙軍に属する落ちこぼれの若者たちが、初の有人宇宙飛行を目指して悪戦苦闘する姿を描く物語だ。はじめは自堕落だった主人公が敬虔な少女との出会いをきっかけに精神的に目覚め、成長し、政治の横槍や敵の刺客など様々な困難と悩みを乗り越えていく青春ドラマでもあった。

アニメ作品としての質の高さは言うまでもなく、今観てもほとんど古びた感じはない。ガイナックスらしいメカ描写やドタバタは非常に楽しい。しかも、当時20代だったクリエーターたちの感性を反映してか、映画全体に80年代らしい勢いと瑞々しさがあって、今見るとなんだか懐かしさも覚えてしまう。

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2015年07月15日

●『戦場でワルツを』

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先日、DVDでアリ・フォルマン監督『戦場でワルツを』を観た。2008年に製作され、各国の映画祭で絶賛を浴びたイスラエル制作のドキュメンタリー映画である。


主人公は監督自身。レバノン内戦から約四半世紀、かつての従軍仲間から戦時中の体験に由来する悪夢について打ち明けられた監督は、自らも内戦中の「ある時期」の記憶を失っている事に思い当たる。監督は次々と従軍仲間を訪ねてインタビューし、当時の出来事を丹念にたどっていくのだが、ついに自らも身近に体験した虐殺事件の事実に行き当たって……。

つまり、これはレバノン内戦に介入したイスラエル兵士たちのPTSDについて扱った作品なのだ。レバノン内戦というのは宗教対立も絡んで市街戦で多くの一般市民が巻き添えになった地獄のような戦いで、従軍した兵士はいずれも心に傷を負ったり記憶そのものを拒否したりと、さながら70年代アメリカ合衆国にとっての「ベトナム」のような有様なのであった。

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2015年07月03日

●観るまで死ねない!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

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新宿のバルト9でジョージ・ミラー監督『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2D字幕版)を観た。舞台は核戦争後の荒廃した世界。家族を失って放浪する元警官のマックスはある日独裁者ジョーに捕らわれてしまい、そこでジョーに反抗して逃亡を図る女戦士フュリオサと、ジョーの子供を宿した奴隷女たちに出会う。マックスはフュリオサたちを助けてジョーの軍団と戦いながら「緑の地」を目指すことになるが……。


事前にタマフルや映画秘宝関係の人たちがやたらハイテンションで盛り上がっていたので逆に警戒してしまったのだけれど(笑)、いやあ、期待以上の大傑作だった。

無駄な前置きや余計な説明を極力省いたソリッドなストーリー、全編の半分以上で繰り広げられる激烈なカーチェイスと息をつかせぬ車上のアクション、コミカルなまでに異常性を強調されたジョーをはじめとする悪役たち、そして意外なほどに繊細な主人公たちの人間模様……いや、ホント、「よくできているなあ」と感心(感動)しきり。ビジュアル的にも物語的にも素晴らしすぎる。

何より良かったのは、ハード極まる舞台設定や物語の中で描かれているのが「人間性の回復」だったことだ。虚無に陥っていたマックスも、女戦士フュリオサも、奴隷扱いされていた女たちも、支配者に洗脳されていた白塗り戦士ニュークスも、みな逃亡と反抗の極限状態の中で心を通わせ、失っていた人としての心を回復していく。決してアクション(ももちろん凄いんだけど)だけの映画ではないのである。

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2015年04月27日

●『みんなのアムステルダム国立美術館へ』



日曜日、角川シネマ新宿で『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を観た。先日レヴューしたウケ・ホーンダイク監督『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』の続編である。入札不調→工事中断で終わった前作からさ数年、様々なトラブルの末に改修を終えた国立美術館が、ついにリニューアルオープンするまでを描くドキュメンタリー。


続編といっても、おそらく前作の「美術館の工事が完成するまでのドタバタを収めようとドキュメンタリーを作り始めたら、工事が全く終わらず映画の方が先に終了」という展開は製作陣にとっても想定外だったのだろう。今回は半分くらいが前作のダイジェストで残りが「あとの顛末」という構成で、まあ真のエンディングを付けた再構成版という感じ。『伝説巨神イデオン 発動篇』みたいな(笑)。

で、その本作の後半は一応リニューアル開館が2013年度と決まった後の話であり、前作の「いつになったら終わるんだ?」という雰囲気はひと段落。とはいえトラブルに次ぐトラブルなのは相変わらずで、目玉作品はオークションで落札できず、エントランスを巡る市民団体との紛争は継続したまま、施工図には間違いがあり、新館長(ザ・強面)と内装デザイナーや主任学芸員(イケメンのタコさん)は意見対立を繰り返し……。

今回は「外からのトラブル」以上にこの「内部の対立」がすごいんだよね。エントランスや壁の色を巡って喧嘩腰のやり取りをする場面とか、なんか剥き出しな感じで。当たり前だけど、みんなプロだから何事にも自分の誇りをかけて主張わけで、全員の納得を得ながら調整するのは不可能と言っていい。

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2015年04月24日

●『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』

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先日、DVDで『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』を観た。レンブラント『夜警』やフェルメール『牛乳を注ぐ女』など世界的名作の数々で知られるアムステルダム国立美術館の大規模改修(の挫折)の模様を描いたウケ・ホーンダイク監督のドキュメンタリー映画。2013年に同美術館が実に10年ぶりに開館し、昨年本作の続編が公開されたことも話題になった。


2004年に始まったアムステルダム国立美術館の改修。野心的な館長と優秀な学芸員たち、意欲的な建築家の下で工事は順調に進むと思いきや、トラブルに次ぐトラブルにみまわれる。コンペによるデザインは市民団体に噛みつかれ、設計が終わった後で許認可を持つ行政にケチをつけられ、展示計画はなかなか決まらず、館長や主要メンバーはしびれを切らして辞めていき、そして入札の不調……。

なんというか、美術館に関わる仕事をしている者にとっては身につまされるというか、「あるある!」の連続(笑)であった。そうなんだよ、改修って本当に難しいし、文化施設ってのは色んな人が口を出したがるんだよなあ、みたいな。

僕自身、「そもそもミュージアムという存在は進歩的な市民社会や高度化した行政機構にはなじまない部分もあるのではないか」と思うことがある。ミュージアムには様々な人が強い思いを持っている一方で「なくても人が死ぬ訳じゃない」なんて言われることもあるし、そもそもミュージアムが扱う「美」というのは主観によるところが大きいから、その質や価値についての合意が難しいし。

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2015年04月20日

●『Star Wars: The Force Awakens』特報第2弾

出ましたな、エピソードⅦの特報第2弾が。

相変わらずいい感じに気を持たせるなー、と(笑)。

これを見ると、次のシリーズの主人公はルークの子供ということになるんだろうか。何度か映る女の子がそうなのかな?まさかストーム・トルーパーの格好してた黒人のアンちゃんじゃないよな。それとも全然別の俳優さんがそうなのかな……。

とか思ってググってみたら、やっぱりもうまとめができてるのね。そうか、あの女の子はハン・ソロとレイア姫の子供なのかもしれないのか。まあ、ルークのモノローグも「一族」って言ってるから、別にルークの子供である必要はないもんな。ふむ。

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2015年02月08日

●『ディズニープリンセスと幸せの法則』

今までも書いてきたとおり、この冬は子供のプリンセスブームにつきあってディズニー映画を見続けていたんだけど、そんな僕にぴったりの本が出ていたので読んでみた。

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荻上チキ著『ディズニープリンセスと幸せの法則』(星海社新書)。気鋭の若手評論家である荻上さんが、ディズニープリンセス映画の歴史を3つの時期に分けてそれぞれの時期の作品に共通する法則(ディズニーコード)の変遷を解説した本。


ここで言う3つの時期とは、まず美男美女の王子様お姫様が悪を倒して結ばれる『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』の古典期。続いて抑圧や身分違いからの解放を特徴とする『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』のルネサンス期。そして『塔の上のラプンツェル』を経て『アナと雪の女王』で一つの到達点に至った、寛容と共存を尊ぶ現在。

やや図式的なところはあるけれど、なるほど、ディズニーの物語というのは時代に合わせて進化しているのね、と。また、各時代の中でも随時バージョンアップは行われていて、たとえば『白雪姫』では抽象的な機能に過ぎなかった「王子様」が『シンデレラ』で名前を得て、さらに『眠れる森の美女』では生き生きとしたキャラクターとなった、とか(これは僕も気づいた)。

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2015年01月29日

●B29とレコード、ツィゴイネルワイゼン

先日、都内の某博物館で新規の収蔵資料に関する仕事をしていた時の話。

今年、その博物館に太平洋戦争時に都内で拾った「高射砲の弾の破片」を寄贈してくれた方がいて、それはそれでもちろん貴重な(何しろ70年前の戦争を生で伝える)資料なんだけど、添えられていた手紙に書かれていた体験談が興味深かったのだ。

その方はいわゆる東京大空襲の翌日(つまり1945年3月11日)、ご自身はなんとか難を逃れて焼け野原となった都内を歩き回っていたとのこと。で、とある橋のたもとにたどり着いた時、おそらく偵察か写真撮影をしていたのだろう、米軍のB29爆撃機が低空で飛んで来たのだそうな。

とっさに身を隠したところ、特に銃撃を加えたり威嚇したりするでもなくB29は飛び去っていったのだが、頭の上を通過する際にB29の機体からサラサーテ作曲のヴァイオリン曲『ツィゴイネルワイゼン』が聞こえてきたのだ、と……。

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2015年01月28日

●『リトル・マーメイド』は『人魚姫』にあらず

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子供と一緒に観るディズニー映画、記念すべき第10弾は『リトル・マーメイド』

人魚姫のアリエルはある日遭難現場で助けた王子エリックに一目惚れし、エリックもまた声だけを耳にしたアリエルに惹かれてしまう。周囲の反対を受けながらもエリックへの恋心を募らせるアリエルに海の魔女アースラが近づき、アリエルの美しい声と交換に3日間人間の姿にする取引を持ちかける。アリエルは思わず契約を交わしてしまうが、それはアースラの狡猾な罠だった……。


うーむ。面白いことは確かに面白かったのだが……やっぱり『人魚姫』といえばアンデルセン童話の中でもとびきりの悲恋物(頼みの声を奪われた人魚姫の恋は叶えられず、愛する王子の命を救うも誰にも知られないまま泡になってしまう。あらすじを書いてるだけで泣けてくるな)なのに、ディズニーの手にかかるとハッピーエンドのアクション物になっちゃうんだなあ、と。

もっとも、僕は『人魚姫』みたいな「誤解と不運によるすれ違いと悲劇」みたいな話が苦手(可哀想でいたたまれなくなっちゃうのね)なので、ディズニー版はそこら辺がマイルドに抑えられてるからこそ最後まで観ることができた、ということは言えるのかもしれない。いや、ホント、こう見えて悲しい話には耐性がないので。童話と映画じゃ求められるものも違うしね。

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2015年01月24日

●ピンクの象さん大行進(『ダンボ』)

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子供のお供でのディズニーDVD鑑賞もさすがに半ばを越えた、というところか。第9弾として『ダンボ』を観た。


いやあ可愛いっすねダンボ。人懐っこい笑顔と表情豊かな耳の動きはまことに愛くるしいし、コウノトリから引き取った高齢のお母さん象(「ジャンボの子供」をからかった言い方が「ダンボ」なんだね)の愛情たっぷりのかわいがり方も実に微笑ましい。これは70年後の今なお人気なのもうなずけるよな、という感じであった。可愛い可愛い、本当に可愛いよダンボ。

ストーリーは、一言でまとめれば、子供のイタズラによる誤解でお母さんのジャンボと引き離されてしまった子象のダンボが、他の象のいじめなどの困難を乗り越えて空を飛べる能力を身につけてサーカスのスターとなり、ジャンボとも再会できてよかったよかった、というお話。

なので基本的には感動物語なんだけど、けっこう変な場面も多くて、ダンボとネズミのティモシーが酒を飲んで幻覚を見てしまう場面はその最たるものだろう。ピンクの象の大群が飛んだり跳ねたり踊ったり……って、酔っ払いというよりラリってるというか、『Lucy in the Sky with Diamonds』みたいな60年代サイケそのもの。「ルーシーは お空の上で ラリパッパ」(笑)。

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2015年01月22日

●『ピノキオ』

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年が明けてからも子供と一緒にポツポツとディズニー映画は観ていて……第8弾として『ピノキオ』を観てみた。


貧乏コオロギのジミニー・クリケット(声はサイボーグ007)が名曲『星に願いを』を歌うオープニングがあまりに有名な映画だけど、僕はてっきりピノキオが「人間になりたい」と願う話だからこの主題歌だと思い込んでたのである。でも、実際は、子供のいない善良な人形職人のゼペット爺さんが「この人形が自分の子供であってほしい」と願いをかける話だったんだね。

で、そんな爺さんの願いを受けてブルー・フェアリーの起こす奇跡でピノキオは生命を得るわけだが、ピノキオが出会うのは狐の詐欺師(声はルパン三世(笑))に粗暴な人形遣いに奴隷商人に凶暴なクジラ、etc。外の世界は厳しくなかなか辛い場面が続く。巨悪はおらず小悪党ばかり、しかもそいつらが懲らしめられることがない、というのはけっこうビターな物語ではあった。

つーか、そもそもピノキオ自体、可愛い造形と声にはなっているけど、すぐ煽てられて調子に乗って騙されるし嘘をつく(そして鼻が伸びちゃう)し、ぜ〜んぜんいい子じゃないんだこれが。ピノキオが悪い仲間(超クソガキ)と一緒にビール飲んで葉巻吸いながらロバにされかけちゃうシーンなんて「はたしてこれを子供に見せて良いのだろうか」と本気で悩んでしまった(笑)。

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2015年01月10日

●『アラジン』

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引き続き子供のお供でディズニーDVDを観とるわけですが。第7弾は『アラジン』


貧しくも心の美しい青年アラジンは相棒の猿アブーとともに、小さな盗みで糊口をしのぐ毎日。ところがある日、王国乗っ取りを図る大臣ジャファーにだまされて魔法の洞窟に送り込まれ、「三つの願いを叶えられる」魔法のランプを手に入れる。アラジンはランプの怪人ジーニーの力で王子に変身し王女ジャスミンにプロポーズするも、結婚の直前にジャファーにランプを奪われてしまい……。


この映画の最大の魅力はなんといっても、アラジンが魔法の絨毯にジャスミンを誘い、夜空の下のランデブーでそのハートを見事に射止める場面だろう。主題歌『A Whole New World』の流れる中、2人が絨毯に乗って、街の美しい夜景を、雄大な遺跡を、神秘的な白馬の群れを、眺めながら飛んでいくロマンティックなシーン。2人の感動が観ているこちらにもよく伝わってきた。

男女に限らんかもしれんけど、二人の仲を特別なものにするためにはやっぱり「特別な体験」の共有が一番。だから、たとえばデートともなれば上等なご飯を食べに行ったり美味しいお酒を飲みに行ったり綺麗な夜景を見に行ったり映画や芝居やスポーツを観に行ったりディズニーランドに行ったりするんだよね。そりゃ魔法の絨毯にはかなわないけど、大なり小なり感動はあるわけだ。

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2014年12月28日

●『ピーター・パン』

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年末はクリスマス前から子供と一緒にインフルエンザにかかってしまい、家に引きこもってEテレの子供向け番組やDVDを見続ける日々になってしまっている。その中で、ディズニー映画もこれで6本目となるのだが、DVDで『ピーター・パン』を観た。
 
 
物語はうろ覚えに記憶していたとおり。ロンドンに住むウェンディとその兄弟たちが夜更けに訪れたピーター・パンに誘われ、「子供が子供のままでいられる」ネバーランドに旅をする。しかし、そこにはかつてピーターに左腕を切り落とされ復讐を誓うフック船長が待ち受けていた。ピーターとウェンディたちはフック船長と戦うが、彼の策略にはまってしまい……というもの。

まず驚いたのは、描写のワイルドさというか前時代ぶりというか。ウェンディや彼女の母親ら女性たちが完全に母性的な役割ばかり期待されて描かれているのも今の時代ならば女性差別と言われそうだし、なぜかネバーランドにインディアンが住んでいて、酋長はじめ真っ赤な肌で半裸のまま出てきてうっほうっほ踊ったりするのは、さすがに僕も「おいおい」とツッコミたくなった(笑)。

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2014年12月21日

●ディズニー版『AKIRA』というか(『アナと雪の女王』)

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先日、今さらではあるが(こればっか)、ブルーレイで『アナと雪の女王』を観た。
 
 
宣伝文句に「ディズニー映画初のダブルヒロイン」なんて謳われていたからどんな話だろうと思ってたんだけど、実際に観ると確かに「王女(エルサは途中から女王だけど)2人が主人公」ではありながら、物語の構造が昔ながらのプリンセスもの(『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』あたり)とは全然違ってる映画だった。

つまり、古典的なディズニーのプリンセスものってのはヒロイン自体はあくまで清く正しく美しい存在。そこに他に邪悪なもの(継母とか魔法使いだとか)が現れて危害を及ぼそうとするも、しかし正義の第三者(王子様や小人、妖精)の活躍で打倒されてめでたしめでたし、てなお話だったわけだ。単純化して言えば。

一方、『アナ雪』はそうじゃなくて、事件に乗じて国を乗っ取ろうとする悪い奴(アナをこまそうとする女たらしのボンクラ王子や隣国の悪徳ヅラ公爵)は出てくるにしても、問題の本質、あるいは原因はあくまでエルサの雪と氷を操る能力の暴走と、エルサとアナの姉妹関係にあるんだよね。

主人公それ自身が問題ってのは、今どきだなあというか、子供向きのお話じゃないよなこりゃ(笑)。うちの3歳の子供も、最後なぜあれでうまく収まっちゃうのか理解するのがちょっと難しかったみたい。まあ別に子供だけに観せるために作ってるんじゃないんだろうし、一緒に観る我々としてはこれくらいの方がいいんだけど。

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2014年12月03日

●『ゼロ・グラビティ』

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今さらではあるが、アルフォンソ・キュアロン監督『ゼロ・グラビティ』を観た。昨年度、アカデミー賞で監督賞など7部門を制覇したSF超大作。


いや、これ、凄い傑作だったんだね。観てビックリした。

物語はいたってシンプル。地球軌道上のスペースシャトルがロシア衛星の残骸群の直撃を受けてクルーの大半が死亡、船外活動をしていたライアン(サンドラ・ブロック)とマット(ジョージ・クルーニー)は近くにいた国際宇宙ステーション(ISS)にたどり着くが、頼みのマットはライアンを助けるために自ら命綱を切って宇宙空間へ。1人残されたライアンは果たして生還できるのか……。

公開時にも話題になったリアルなCG特撮は確かに凄まじく、宇宙空間の過酷さと美しさ、低重力化でのおぼつかなさ、迫り来る無数の破片の恐怖などがいかんなく描かれている。ブルーレイ&家庭用テレビで観てもこの迫力なんだから、劇場の大画面で、しかも3Dなんかで観たら腰を抜かすか酔って吐いていたかもしれない。特に、一人で宇宙空間に投げ出される場面の恐ろしさよ。

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2014年12月02日

●『Star Wars: The Force Awakens』特報

この週末、スターウォーズ・エピソードⅦの特報にワクワクさせられた。
(土曜のFC東京の試合があまりにしょぼかったので現実逃避してた、とも言う。)
 
Star Wars: The Force Awakens - See the trailer

惑星タトゥイーンの果てしなく広がる砂漠。軽妙な動きのドロイドとストーム・トルーパーの大軍。スピーダーにまたがる美少女。湖面ギリギリを高速で編隊飛行するXウイングファイター。フードで顔を隠した謎の人物と、森の中で妖しく光る赤いライトセーバー。そしてお馴染みのテーマ曲をバックに、宙返りでタイファイターの砲火を避けるミレニアム・ファルコン……これはすげえな、と。

前の制作シリーズであるエピソードⅠ〜Ⅲは「最新のCG技術でスターウォーズを描く」という部分で変に力みすぎていたのと、先にⅣ〜Ⅵが作られていたために物語的なつじつま合わせに終始したきらいがあって、僕としてはどうにも楽しみきれなかった。でも、今回は一回りして「普通に」良い娯楽作が作られるのではないかと期待しているのだけれど、どうだろう。

まあ、とにもかくにも早く観てみたいもんだが、公開は2015年12月って……1年も先かよ!先は長いな〜。予習でエピソードⅣ〜Ⅵを観返しておくか。10回くらい(笑)。
 

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2014年11月28日

●『シンデレラ』

ディズニーお姫様映画第3弾は、真打ち登場の『シンデレラ』

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この映画、もちろん粗筋は童話『灰かぶり姫』(ずっとグリムだと思ってたんだけど、シャルル・ペロー作、というかおそらくはもっと古くからの伝承なのね)をなぞっているのだが、他の童話原作の映画と比べてもディズニー独特の脚色の仕方が非常に興味深いんだよね。

序盤の30分くらいは家の中で鼠(シンデレラ派)と猫(継母&姉派)の『トムとジェリー』みたいな攻防戦が続いて少々退屈。でも、本筋に入ってから継母・姉の描写のエクストリームさ(笑)に目が離せなくなる。継母は風貌にせよ振る舞いにせよほとんど『白雪姫』や『眠れる〜』の悪の魔法使いと変わらない恐ろしさ・悪辣さだし、姉たちはいくらなんでもこれは不細工かつ馬鹿に描きすぎだろう、という。

特に凄まじかったのは、お城での舞踏会の直前、せっかくシンデレラの友達の動物たちが苦労して作り上げたドレスを寄ってたかって破き捨てる場面。愚かな姉たちはともかく、継母がほくそ笑みながら「おやめなさい」なんて口先だけで止める(そしてボロボロのシンデレラを放置)あたり鳥肌ものの悪辣さである。まるで往年の大映ドラマのようだ……そういや小泉今日子の『少女に何が起こったか』はシンデレラものだったな。

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2014年11月26日

●『白雪姫』と『眠れる森の美女』

最近子供がディズニーのプリンセスものにハマってて、ならばと映画のDVDを借りて観始めている。一週おきに『白雪姫』『眠れる森の美女』『シンデレラ』と観てるんだけど、どれも思っていたよりずっと面白かったので、2回に分けてレポートを掲載したい(久々に書くFC東京関係以外の記事がまさかディズニー映画とは思わなかった)。


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まずはディズニー映画の原点『白雪姫』。「ハイ・ホー!ハイ・ホー!」と歌う7人のこびとたちでもおなじみ、記念すべき長編第1作である。

まず「おお!」と思わされたのは、やはり画面全体の描き込みとキャラクターの動きの流麗さ。白雪姫の手先の美しさや、動物たちとこびとのコミカルで愛らしい動き。ディズニーは一貫してフルアニメーションで、それに対して僕たちの観慣れた日本の作品は「コマ落ち」のリミテッドアニメ、というくらいの知識はあったけど、でもこうして大画面で真面目に観てみるとやはり見事だな、と。

主人公の白雪姫は、何というか、女子力抜群のキャラなのね。見た目は美人というよりかわいい感じなんだけど、物腰が柔らかく歌声が綺麗で、料理も洗濯も楽しげにこなして、誰に対しても優しくて。「女なんて!」が口癖の「おこりんぼう」というこびとがいるんだけど、白雪姫が寝る前のお祈りで微笑みながら「おこりんぼうさんと仲良くなれますように」と指を組むシーンには萌えた(笑)。

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2011年08月18日

●ブルーレイの威力、『ブレードランナー』の魅力

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少し前の話だけど、Amazonでパイオニアのブルーレイプレーヤーが定価の7割引き(笑)くらいになっているのを見つけて衝動買いしてしまった。初めてのブルーレイプレーヤー。せっかくだからまずは高画質を堪能しようと『2001年宇宙の旅』『ブレードランナー ファイナルカット』のブルーレイ版も購入した。
 
 
で、さっそく観てみたのだが……ちょっとビックリしたっつーか、想像以上の凄さだった。我が家の26インチテレビ(コンポーネント接続)でもDVDより段違いに画質が良いのがよくわかる。

例えば『2001年〜』なら、「人類の夜明け」のアフリカの大平原や吸い込まれるような星空の中を進んでいくディスカバリー号。『ブレード〜』なら、タイレル社ビルの巨大壁面をはじめとして、未来のロサンゼルスをなめるように描いた空撮シーン。いずれも肉眼じゃ追い切れないんじゃないかと思うくらいに精細で、息を飲むほど美しい。

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2011年08月12日

●絶望に次ぐ絶望、だが / 『戦場のピアニスト』

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これもHDDレコーダーの底に眠っていたもの。ロマン・ポランスキー監督『戦場のピアニスト』

ポーランドに住むピアニスト、シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)とその家族の生活はナチス・ドイツの侵攻によって一変した。彼らを含むユダヤ人はゲットー(ユダヤ人隔離居住区)で様々な迫害に晒されながら強制労働に従事させられ、さらに絶滅収容所へ移送されていく。1人難を逃れたシュピルマンはレジスタンスにかくまわれながらワルシャワ市内で逃亡生活を続けるが……。
 
 
観る前からわかっちゃいたけど、とても重たい、「腹の底に来る」作品だった。

映画の前半は、シュピルマンと家族の視点からナチスのユダヤ人迫害が描かれる。これが、いきなり最悪の状況に陥るわけでなく、徐々に段階を踏んで追い込まれる感じで、ジワーッと恐ろしいんだな。まず街を支配され、次に財産を没収され、腕章の着用を強制され、ゲットーに移動させられ、時には街で侮辱されたり暴力をふるわれながら強制労働させられ、反抗するものは射殺され……。

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2011年08月11日

●民主主義の神髄 / 『十二人の怒れる男』

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先日、HDDレコーダーを整理したついでに、何年も前にWOWOWで録ったままになっていたシドニー・ルメット監督『十二人の怒れる男』を久しぶりに(大学生の頃以来か?)観てみた。

17歳少年が父親を殺した(とされる)事件の審理が終わった直後のニューヨークの法廷。証拠の状況から全陪審員一致での死刑評決は間違いないと思われた。だが、その決定に疑問を呈する陪審員がただ1人いた。「8番」と呼ばれる彼(ヘンリー・フォンダ)は他の陪審員の反発を受けながらも、固定観念を排して証拠を再検討することを熱心に提案するのだが……。
 
 
改めて観直してみると、本当によくできた映画だな、と。

まず第一に、登場人物の造形の豊かさが凄い。集まった陪審員は体育教師やセールスマンに建築士、会社経営者、工場労働者など職業や境遇がバラバラの12人(時代的に女性や黒人は入っていないが)。性格も頑迷だったり弱気だったり理知的だったり様々で、個性豊かな12人が時には罵り合い、時には意気に感じ、時には流されたりする様は実に見応えがある。12人という数も良かった。それより多いと個性の判別が難しくなり、少なすぎれば単調になったかもしれない。

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2010年09月29日

●『キッスで殺せ』

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これはずっと前にWOWOWで放送された、ロバート・アルドリッチ監督『キッスで殺せ(完全版)』。私立探偵マイク・ハマーは深夜の路上で裸にコートをまとった女クリスティーナを車に乗せるが、何者かに襲われて女は殺され、ハマーも重傷を負ってしまう。回復後FBIの尋問を受け、事件の背後に陰謀を感じ取ったハマーは女秘書ヴェルダとともに真相を究明していく。彼は関係者を次々尋問し、クリスティーナと同居していたリリーという女を保護するが……。
 
 
不気味さというかダークさというか、独特の引っかかりを持つ映画だった。

筋立て的には、陰謀に巻き込まれた探偵が仲間・美女の協力と自らのタフさを武器に真相を追い、ついに追い求めるモノにたどり着く、といういかにもハードボイルドなもの。しかし主人公のハマーはこの手のヒーローにありがちな正義感や賢さを感じさせることもなく、終始何を考えているのかわからない風。肝心の調査・推理も暴力頼みで、正直魅力に欠けるのは否めない。しかも彼だけでなく、ほとんどの人物が共感を拒むかのように描かれているのであった。

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2010年09月23日

●『北国の帝王』

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続いてロバート・アルドリッチ監督『北国の帝王』。確か先月にNHK−BSで放映されたものだっけか。大不況時代のアメリカ合衆国。無賃乗車で全米各地を移動する浮浪者「ホーボー」の中に”Aナンバーワン”と呼ばれる伝説の男(リー・マーヴィン)がいた。彼は、行きがかりから若いホーボー”シガレット”(キース・キャラダイン)と行動を共にするようになり、2人で鬼車掌シャック(アーネスト・ボーグナイン)の取り仕切る19号列車への無賃乗車に挑戦するのだが……。
 
 
全編に妙な「あつさ」が充満した映画だった。男たちの熱さと、そして暑苦しさ。

筋立て的にはベテラン&若者のホーボー2人組が「ただ乗り不可能」と言われる列車に無賃乗車して残酷な車掌と戦う、というもの。現代日本の僕たちにしてみれば不思議な設定ではある。普通に犯罪だろ、と(笑)。おまけに、当時のホーボーにしてみればそれも生活のためのテクだったのだろうが、しかしこの映画での無賃乗車はどこかへ移動する手段ですらないのだ。チャレンジとして目的化した無賃乗車。そこに感じるこの熱さと共感はいったい何なのだろう。

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2010年09月21日

●『特攻大作戦』

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これもHDDレコーダーの底からさらったもの。ロバート・アルドリッチ監督の戦争アクション『特攻大作戦』。ノルマンディ上陸作戦直前のヨーロッパ戦線、アメリカ陸軍のはぐれ者ライズマン少佐(リー・マーヴィン)は司令部から特殊任務を命ぜられる。それは軍刑務所で重刑に処せられている囚人12人を率いてドイツ占領下のフランスで特殊工作を行え、というものだった。ライズマンと囚人たちは衝突を繰り返しながらも猛訓練をやり遂げ、遂に敵地へ潜入するが……。
 
 
大半は大いに盛り上がる展開ながら、終盤の畳み方がどうにも微妙な感じを残す映画。

重厚なマーチ曲の流れる中マーヴィンが険しい表情で囚人1人1人の罪刑を聞かされるオープニングに始まり、ジョン・カサヴェデスやチャールズ・ブロンソンら一癖も二癖もいや百癖もある囚人たちとの対立、マーヴィンによる硬軟使い分けた説得や猛特訓の様子、そして窮地に立たされた「汚い12人」がアウトサイダーらしい知恵と勇気で嫌な上官野郎の鼻をあかす場面。映画の90分くらいまでは本当に熱くて痛快で、男たちの闘いに素直にシビれることができた。

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2010年09月16日

●『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』

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HDDレコーダー底さらいの2つ目は、ギレルモ・デル・トロ監督『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』。人気アメリカン・コミック『ヘルボーイ』の映画化第2弾である。
 
超常現象調査防衛局(BPRD)のエージェントとして、恋人の発火女リズや親友の水棲人エイブとともに活躍を続けるヘルボーイ。ある日ヘルボーイはNYに現れた怪物たちを退治するが、それをきっかけに魔界の王子ヌアダとの争いが始まってしまう。太古の昔に人類と争った種族の生き残りであるヌアダは、封印された超兵器「ゴールデン・アーミー」を復活させようと企むも、争いを避けようとするその妹ヌアラが復活の鍵となる王冠の部品を盗み出してしまい……。

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2010年09月14日

●『ヘルボーイ』

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最近仕事がちょっとヤマを越えたので、時間を見つけてはHDDレコーダーに溜まりっぱなしの未見映画を片付けているところ。まずはギレルモ・デル・トロ監督のアメコミ映画『ヘルボーイ』

第2次世界大戦中、怪僧ラスプーチンの仕組むナチスの秘密実験により魔界から生まれ落ちたヘルボーイ。ブルーム教授によって拾われた彼は60年後の現在、FBI「超常現象調査防衛局」のエージェントとして密かに活躍していた。ある日、ヘルボーイのお付き役としてFBIの新米職員マイヤーズが配属される。そりの合わぬヘルボーイとマイヤーズはヘルボーイの恋人リズを巡って恋のさや当てなどしながら、復活したラスプーチンに対して挑んでいくのだが……。

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2010年08月17日

●永遠不朽の名作『2001年宇宙の旅』


先週の金曜日、TOHOシネマズ六本木ヒルズでスタンリー・キューブリック監督『2001年宇宙の旅』を観賞。「午前十時の映画祭」と題した企画の1本として上映された、SF映画史上に堂々そびえ立つ金字塔。今までビデオやDVDでは繰り返し観てきた作品だが、映画館のスクリーンで体験するのは初めて(『蜘蛛巣城』もそうだけど、最近こういうのが多い)。数ヶ月前から楽しみにしてきた機会でもあり、3軒はしご飲みの翌日にも関わらず根性で早起きした。
 
 
で、実際に観てみた感想は……素晴らしかった。感動した。以下、感想をいくつか。

まず、やっぱり映画館の大画面と音響設備はいいな、と(笑)。当たり前っちゃ当たり前なんだが、でもこの作品独特のスケール感(文明以前のアフリカの荒野とか無限に広がる宇宙空間とか)や、それらとのコントラストで強調される細部(静寂の中に響く息遣い・重低音とか)は他の映画と比べてもよりいっそう「でかいハコ」向きなのかな、という気はした。さすがにシネラマでの上映とはいかなかったけど、壮大な映画を壮大な環境で観る、というのは大事である。

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2010年07月23日

●『ぼくのエリ 200歳の少女』

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先日、銀座テアトルシネマでトーマス・アルフレッドソン監督『ぼくのエリ 200歳の少女』を観た。主人公はストックホルム郊外に母親と住む、12歳のいじめられっ子オスカー。彼は隣の家に父親と共に引っ越してきた少女エリに初恋を抱くが、時を同じくして彼らの住む町で惨たらしい殺人事件が頻発するように。ある時、オスカーは重大な秘密を知ってしまう。エリは町から町へ移り住みながら人の血を吸って200年間生きながらえてきたヴァンパイアだったのだ……。
 
 
とても残酷で、とても哀しい映画だった。

現在一般化している(ブラム=ストーカーが『ドラキュラ』で作った)ヴァンパイアのイメージは、恐ろしい化け物であると同時にもの哀しさを帯びた存在でもある。宙を舞い人を惑わせる超越的な能力と、冷酷に人を殺す残忍さ。しかしその一方で血以外のものを口にできず、日の光を浴びることもかなわず、容易に死ぬことのできない「生ける屍」でもある。この映画はそうした伝統的なフォーマットを忠実になぞっており、堂々たる正統派吸血鬼映画と言ってよいだろう。

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2010年07月22日

●『蜘蛛巣城』

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今年は黒澤明監督生誕100周年ということで、あちこちの映画館で特集プログラムが組まれている。春には日比谷のTOHOシネマズで、現在は池袋の新文芸座で、そして秋には北千住のシネマブルースタジオでも連続上映が行われるようだ。まあ、何だかんだで日本映画史上最大の巨匠であることは間違いないし、4月に『用心棒』を観た時に思ったけど、やっぱりスクリーンで観ると黒澤映画独特のスケール感やアクションの迫力がダイレクトに伝わってきていい。
 
 
ということで、先日、今度は新文芸座で『蜘蛛巣城』を観てきた。

あらすじはgoo映画の紹介を見てもらえればわかるが、要するにシェイクスピアの『マクベス』である。舞台が日本の戦国時代になってエピソードに微妙な違いはあるけれど、森の妖婆の予言→夫人にそそのかされた主人公の王殺害→不安にかられた主人公の止まらない殺戮→狂気に陥る主人公たち(落ちない血)とその破滅(動く森)、というプロットはそのまんま。よってストーリーはしっかりしているのだが、意外性には欠けるし、少々退屈な部分がないではない。

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2010年06月20日

●『アウトレイジ』

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先日、新宿ミラノ座で北野武監督の最新作『アウトレイジ』を観た。関東一円を仕切る巨大暴力団「山王会」の直参である池元(國村隼)は、親分の関内(北村総一朗)に弱小ヤクザ村瀬(石橋蓮司)との蜜月を怪しまれ、村瀬組を締め上げるよう命令される。焦った池元は配下である大友(ビートたけし)にその役目を押しつける。大友は子分の水野(椎名桔平)らを使って暴力で村瀬を追い詰めていくが、それはより血なまぐさい大抗争の引き金となっていく……。
 
 
期待が大きすぎたせいもあるのか、個人的にはイマイチ乗り切れない映画だった。

あらすじ自体は、『ソナチネ』や『BROTHER』と同じような感じ。たけしさん演じる不器用なヤクザが筋を通しているうちにでっかい抗争に巻き込まれ、凄惨な殺しが止めどもなく連鎖していく……という感じ。お得意の筋立てだけあって演出には切れ味があり、序盤〜中盤はヤクザたちの大迫力の怒鳴りあいや私利欲得による殺し合いがテンポよくつながって全く飽きることがなかった。歯医者での襲撃場面など、行き過ぎた暴力が笑いに転じるシーンも大変に楽しい。

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2010年06月10日

●『ソナチネ』

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先週の土曜日、早稲田松竹の特集上映で北野武監督『ソナチネ』。羽振りはいいがヤクザ稼業に嫌気がさした主人公・村川(ビートたけし)。組織の中で疎まれた彼は親分の命令で沖縄へ抗争の助っ人に赴くが、それは彼をはめるための罠だった。次々殺される手下たち。子分の片桐(大杉漣)やケン(寺島進)と僻地の海岸へ逃げ込んだ村川は、そこで不思議な女(国舞亜矢)と出会い、刹那的な遊びに没頭していく。恐るべき追っ手が迫りつつあるとも知らず……。
 
 
確か、映画館で観るのはこれで3度目になるのかな。何度観ても素晴らしい。

これまで観てきて暴力シーンとヤクザたちの遊びの場面ばかりが印象に残っていたのだが、改めて今見直してみると、村川の空虚な生き様が描かれる序盤もまた物語的によく効いているのに気付く。退屈しのぎにシマ破りの麻雀屋を海に沈めたり、対立する幹部をトイレで不意打ちして殴ったり……このあたりはたけしもいかにも「生きるってのはつまらないな」という顔をしていて、その都会における重苦しさが、物語後半、自然の中での解放感をより際立たせるという。

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2010年05月30日

●お薦め映画『ラ・ジュテ』

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明日(5月31日)月曜日の午後2時35分〜午後3時04分、NHK−BS2で『ラ・ジュテ(La Jetée)』かかるとのこと。クリス・マルケル監督が1960年代ヌーベルバーグ時代のフランスで撮った超傑作SF映画。

舞台は第3次世界大戦後、廃墟と化したパリ。放射能に汚染された世界におけるわずかな生き残りのうち「勝者」の科学者たちは、人類滅亡を回避すべく時間旅行の実験を繰り返す。が、実験台となった「敗者」の捕虜は次々と廃人となってしまう。そんな中、ある日被験体として選ばれた男は、幼い日に空港の送迎台で観た「叫ぶ女」のイメージにとりつかれていた……。

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2010年05月12日

●『吸血鬼ノスフェラトゥ』『アンダルシアの犬』『M』

今年のゴールデンウィークはまさに「五月晴れ」という感じで非常に天気が良かったのだが、そんな時に限って古い、モノトーンの、暗〜い映画が観たくなったりするのである。以下、いずれもDVDで観た3本の名画のレビュー。
 
 
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F・W・ムルナウ監督『吸血鬼ノスフェラトゥ』。ドイツ表現派の巨匠がブラム・ストーカーの小説を映画化した吸血鬼映画の原点。ブレーメンで不動産業に従事する主人公ハーカーは上司の命令により契約を結ぶため、トランシルヴァニアのオルロック伯爵の下へ送られる。実は伯爵は吸血鬼であり、ハーカーの妻ニーナを見そめた伯爵は海路ブレーメンの街へ向かった。無数のペスト鼠とともに……。

怪奇映画の古典中の古典だけあって、不気味さと荘厳さに満ち満ちた映像美が凄い。

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2010年04月16日

●『男性・女性』

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昨日の夜は、早稲田松竹でジャン=リュック・ゴダール監督『男性・女性』を観た。1960年代半ば、ゴダールがその全盛期に撮った傑作青春映画。雑誌社に勤めるポール(ジャン=ピエール・レオー)は、パリのカフェで出会った売り出し中の歌手マドレーヌ(シャンタル・ゴヤ)に恋をする。ポールのアタックの甲斐あって2人はつき合い始めるが、周りの友人たちが次々邪魔をして……多難な若者たちの日々が描かれる。
 
 
『用心棒』と同様、若い頃に劇場で観てえらく感動したものの大画面で観るのは十何年ぶり、という作品。改めて観た感想としては……もちろん良い映画には違いないんだけど、退屈な部分もあることはあるし、政治的な台詞とかが結構多かったんだな、と。昔は登場人物たちのみずみずしい行動への共感が先に立って気づかなかったんだが。ゴダールはもうこの頃から『中国女』以降の難解な方向へ舵を切ってたということなのかな。五月革命の前でもあるし。

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2010年04月14日

●『用心棒』

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昨晩は、日比谷のTOHOシネマズ シャンテで黒澤明監督『用心棒』を観た。黒澤監督生誕100周年記念ということで、一挙17作品が特集上映される中の一本。
 
 
僕が初めて『用心棒』を観たのは大学生の時、当時銀座の表通りから一本裏道にあった「並木座」という名画座で。狭い劇場だったせいもあってやたら混んでいて、確か立ち見だったんじゃないかな。その後『天国と地獄』も『椿三十郎』(もちろん織田裕二主演ではない)も同じ劇場で観たはずだが、並木座は1998年に閉館。以後、黒澤作品を劇場で観る機会はなかった(DVDではよく観る)んだけど、今回「銀座で黒澤」と聞いて、何だか懐かしくなったのである。

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2010年03月23日

●『インビクタス ー負けざる者たちー』

土曜日(珍しく)カミさんと一緒に、銀座シネパトスでクリント・イーストウッド監督『インビクタス −負けざる者たち−』を(やっとこさ)観た。1995年ラグビーワールドカップにおける実話を元に、南アフリカ共和国のネルソン・マンデラ大統領(モーガン・フリーマン)と同国代表「スプリングボクス」のフランソワ・ピナール主将(マット・デイモン)がアパルトヘイト廃止直後の人種対立を乗り越えながら、世界一に向かって邁進していく姿を描いた作品。
 
 
全体的な印象としては、いかにも「職人」イーストウッド監督らしく、過剰さを廃して訥々と描いているな、と。でも、だからといって映画の感動が削がれているかと言えばむしろ逆で、もともと奇跡的な実話だけに映像化すれば変にエモーショナルになったりわざとらしくなったりしがちなところ、丁寧に細かいエピソードを積み上げていくことで過不足ないところに落とし込んでいるように思えた。興ざめを上手に回避しつつ、でも淡泊になっていはいない、という。

例えば、マンデラの依頼によって黒人居住地でラグビー教室が開かれる場面。初めは嫌々だったスプリングボクスの面々が子供たちの笑顔に引き込まれて夢中で教えるようになるんだけど、群がる子供たちに向かって選手の1人がポン!とボールを蹴った瞬間、高い位置のカメラに切り替わってパッと広く視界が開ける演出などは見事だった。「あ、この瞬間に何かが変わったんだ」という感覚。正攻法極まるカメラワークではあるんだけど、それだけに隙はない。

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2010年03月11日

●『イースタン・プロミス』

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WOWOWの録画で、デヴィット・クローネンバーグ監督『イースタン・プロミス』。ロンドンのとある病院で働く助産師のアンナ(ナオミ・ワッツ)のもとに、身元不明のロシア人少女が運び込まれ、赤ん坊を残して死亡する。アンナは少女の日記を手掛かりに身元をたどろうとするが、日記にはロシアン・マフィアの秘密が記されていた。知らず知らずのうちに恐ろしいマフィアの縄張りへ足を踏み入れてしまったアンナの前に謎めいた男(ヴィゴ・モーテンセン)が現れ……。
 
 
とてもよくできた映画。達者な役者陣、謎めいた筋立てをうまくさばきながら適度に情緒を織り交ぜた脚本、巧みなサスペンスの演出、美麗な映像……etc。いや、何しろクローネンバーグ監督なので、いつズルズルグチョグチョになったり(『ヴィデオドローム』『イグジステンズ』)狂気と妄想に踏み込んだり(『クラッシュ』『スパイダー』)するかと気が気でなかったのだけれど(笑)、そんな心配は不要だった。ため息が出るくらいにバランスの良い作品だと思った。

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2010年02月25日

●『幕末太陽傳』

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NHK-BSで録画した川島雄三監督『幕末太陽傳』を観た。時は文久2年(1862年)、ところは品川の遊郭街。無一文で豪遊したカドにより遊郭旅籠で働くことになった「居残り」佐平次(フランキー堺)は、知恵と図々しさを武器に大活躍を見せて旅籠内でのし上がっていく。その頃、同じ宿では高杉晋作(石原裕次郎)ら長州志士たちが御殿山の異人館焼き討ちを企てて……。
 
 
まずはピチピチとした、イキの良さが印象的な映画だ。

現代(1957年)の品川赤線風景を映した、意表を突く冒頭シーン。溢れる頓知で軽快に痛快にトラブルを解決し続ける主人公。ひたすら若く熱く無謀な幕末の志士たち。美しさとしたたかさでナンバー1を競う遊女たち。エネルギッシュな欲望むき出しの遊郭。そしてドタバタと古典落語のエピソードが連鎖していく物語。そのどれもがバイタリティーに溢れており、役者たち(二谷英明とか小沢昭一!とか)の若さとも相まって頬が自然と弛んでくるような感覚を覚えた。

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2010年02月19日

●『メトロポリス』

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DVDでフリッツ・ラング監督『メトロポリス』を観た。戦前ドイツ映画の黄金時代(1920年代)に撮られた、SF映画の金字塔でもあるあまりに有名な超大作。

<あらすじ>
舞台は2026年(制作年の百年後!)の未来都市「メトロポリス」。超高層ビルに住む特権階級と地下で過酷な労働に従事する労働者階級の対立が深まる中、その状況に疑問を抱く若者フレーターは労働者の娘マリアと恋に落ちる。彼の父で「メトロポリス」の支配者たるフレーダーセンは、マリアそっくりのロボットを使って労働者たちの混乱と分断を図るのだが……。
 
 
名作中の名作と言われるだけあって、映像についてはとにかく素晴らしいの一言。摩天楼が立ち並び、高速道路や飛行物体が行き交う大都会。エレベーターで降りていく先に突然現れる地下世界。シャープでミステリアスなロボットの造形と、それが人に姿を変える際の美しいオーバーラップ効果。全く古びていない、というと言い過ぎかもしれないけど、少なくとも各シーンの「ワンダーな感じ」は今でも十分通用していて、とても85年前のセンスとは思えない。

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2010年02月17日

●『男たちの大和/YAMATO』

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レンタルDVDで佐藤純彌監督『男たちの大和/YAMATO』を観た。太平洋戦争末期、沖縄への特攻「菊水作戦」における戦艦大和の最期を、主に下士官や少年兵の視点から描いた戦争大作。角川春樹の手による制作や25億円の制作費、広島に6億円かけて作った巨大セットが話題になった作品だが、2005年邦画興行収入第1位を獲得するヒットであったのだとか。
 
 
見終わっての感想としては「評価の難しい映画だな」と。

一本の映画として良くできているとは言い難い。物語としては「現代」と「(回想の)過去」を行き来する構成をとっているのだが、現代パートでは少数の人物たちが間延びしたやり取りを繰り返す一方で、過去パートでは(回想のはずなのに)様々な登場人物のエピソードが目まぐるしく詰め込まれていて、どうも脈絡がはっきりしない。これは主観劇なのか群像劇なのか……。

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2010年02月13日

●『硫黄島からの手紙』再見

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一昨日の夜、NHK−BSでやっていたクリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』を観た。最初は映画館で観て、いつだったかDVDを借りて観て、これで3回目の鑑賞になるだろうか。公開時のエントリーでも書いたけど、これは傑作である。何度観ても良い映画だと思う。
 
 
初見の4年間に比べると冷静に観ているせいか、日本兵の言葉遣いや憲兵の描き方など、正直不自然さは以前より目に付いた。多くの時間帯を占める戦闘シーンにしても、過不足ない感じではあるけれどそれほど迫力があるわけでもない(まあ『プライベート・ライアン』とか『ランボー』とかと比べちゃいかんのかもしれんけど(笑))。

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2010年02月12日

●『ランボー 最後の戦場』

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今年の初め頃にWOWOWで録画しておいたシルヴェスター・スタローン監督『ランボー 最後の戦場』を観た。ご存じアクションヒーロー・シリーズの実に20年ぶりとなる新作。東南アジアの一角に身を潜める元グリーンベレーのランボー。ある日、彼は内戦と政府軍による弾圧が続くビルマへキリスト教系NGOの一団を送り届けるが、NGOはミャンマー政府軍により捕らえられてしまう。ランボーは5人の傭兵たちとともに彼らの救出に向かうのだが……。
 
 
ストーリーにせよ登場人物にせよ、とても「わかりやすい」映画だった。卑劣で残虐な悪の軍隊。善良だが無力な(そしてヒーローに救われる)平和主義者。訳ありの過去を背負い込んだ個性的な傭兵たち。ランボーが事態に巻き込まれるいきさつ、NGOや傭兵たちと最初対立しながら次第に心を通わせる過程、そしてラストの大戦闘。ありがちなパターンだらけの筋立てだけを見れば、80年代的な(右翼的な)アクション映画と何の違いもないようにさえ思える。

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2009年08月18日

●『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』


やっとこさ観たぞ、新宿ミラノ座で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を。言わずと知れた庵野秀明総監督の大人気シリーズ「再映画化」第2弾。事前の情報管制や公開後の好調な動員が話題になっていた作品だが、実際に観てみると「おおおおお!これは……うーむ……」と唸らされる映画に仕上がっていた。大げさでなく、見終わった後はしばし絶句。
 
 
美麗な映像と迫力の音響、計算し尽くされたエヴァと使徒の動き。巧みに構成されたアクション・シーンについては「序」以上に鬼気迫るものがあり、「アニメーション」という概念の枠内でこれを超えるのは不可能ではないかと思うくらい。架空の、しかしリアルに作り込まれた都市の中をエヴァが縦横無尽に走り、跳び、叫び、引きちぎる。特に空中投下された弐号機が空気抵抗を受けて浮かび上がるシーンと、使徒の落下点に向けて疾走する初号機には驚いたヨ。

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2009年08月14日

●『意志の勝利』、そして75年後


先日、渋谷のシアターNでレネ・リーフェンシュタール監督『意志の勝利』を観た。ヒトラーの命令で作られた、1934年ニュルンベルクでのナチス党第6回全国大会の模様を記録した作品。あまりの出来の良さが仇となって忌まわしきプロパガンダ映画として歴史に名を残し、監督は映画界から追放、作品もほぼ封印状態にあるという「呪われた映画」である。おそらく本格的な公開は本邦初ということで、「この上映を逃してはならない」と足を運んでみた。
 
 
まず度肝を抜かれたのは、冒頭の美麗な空撮画面である。75年前にはさぞ神々しい景色に見えたに違いない。飛行機は雄大に広がる雲をなめて飛び、古都ニュルンベルクの美しい街並みを存分に映してから飛行場に着陸。片手を伸ばして「ハイル!」と叫ぶ群衆の最中、タラップから降り立ったのはもちろんアドルフ・ヒトラー!この劇的なオープニングからして凡庸な映画ではあり得なかろう。ヒトラーは大歓声の中、自信満々の表情で会場へ進んでいく。

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2009年07月03日

●『ラストキング・オブ・スコットランド』『運命じゃない人』『タクシードライバー』

最近ハードディスク・レコーダーから掘り出して観た映画その2。


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ケヴィン・マクドナルド監督『ラストキング・オブ・スコットランド』。医大を卒業したばかりのスコットランド人ニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)は若者らしい気まぐれと冒険心からクーデター直後のウガンダに渡航し、医療支援に従事するように。彼はふとしたきっかけから新大統領のアミン(フォレスト・ウィテカー)に気に入られ、主治医として政権の中枢に関わるようになるが、次第にアミンの独裁者としての恐るべき正体が明らかになっていく……。

この映画、主人公は気が強いばかりで視野が狭く、エゴが先に立つイヤな奴。でも、そんな男が他人の女に手を出したり、独裁者の理想論に魅せられたり、特別扱いされていい気になったり、といった「若気の至り」から徐々に泥沼にはまり、気がつけば進退きわまっていた、というお話はけっこう身につまされる。それまで反発してた英国人外交官に助けを求めるも拒絶されるくだりなんて痛々しくて……世の中、取り返しのつかないことがあるのよのう、という感じ。

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2009年07月01日

●『13/ザメッティ』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ジャガーノート』

最近、ハードディスク・レコーダーの容量がかなり心もとなくなってきたので、ずっと前に録画して観ずじまいだった映画をいくつか片づけた。その中で印象的だったものをレヴュー。
 
 
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ゲラ・バブルアニ監督『13/ザメッティ』。フランス在住のグルジア移民セバスチャンは、屋根修理の職人仕事で一家数人をやっとこさ養う貧乏青年。ある日ひょんなきっかけから、儲け話につながりそうな「チケット」を手に入れるが、たどり着いた先は森の奥の怪しげな屋敷。そこで行われていたのは、謎の金持ちたちが大金を賭ける死のゲームだった……。

要するに『ホステル』と同じような構造で、ちょっとした出来心から若いヤツが地獄に踏み込んでしまう、というストーリー。まあ、あっちは動機がスケベ心で行き先が拷問屋敷、こちらは金ほしさで強制されるのが集団ロシアンルーレット、という違いはあるし、『ホステル』ほどのデモーニッシュな雰囲気は望めないけれども。共通しているのは、人の命のまるで小銭のような軽い扱いと、行われる行為が妙にきっちりとルール化されていること、だろうか。

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2009年04月28日

●『ウォッチメン』

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先週、新宿ミラノ座でザック・スナイダー監督『ウォッチメン』を観た。アメリカがベトナム戦争で勝ってニクソンが4選を果たし、マスク・ヒーローの活動が法律によって禁止された「もうひとつの1985年」が舞台。ある日、ヒーロー集団「ウォッチメン」の元メンバー・コメディアンが何者かによって惨殺された。同じく元メンバーで1人非合法な自警活動を続けているロールシャッハはその死に疑問を感じ、他のメンバーたちを訪れながら真相を探っていくが……。
 
 
見終わった後、1人で酒でも飲みながら考え事に浸りたくなる。そういう映画だった。

まず素晴らしかったのは、完璧に構築された独自の世界(観)である。オープニングでは「三次元紙芝居」みたいな感じで第二次大戦後のアメリカの歴史と、その裏側におけるウォッチメン(とその前身ミニッツメン)の活躍や挫折が延々と描かれる。これが実に良くできていて、いつの間にやら僕たち観客はヒーローたちが実際に活躍していた「もうひとつの世界」を当然のものとして受け止めているのだ。冷静に考えれば、あのタイツ姿はそーとーにオカシイのに。

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2009年03月11日

●『クローバーフィールド』『パンズ・ラビリンス』『最も危険な遊戯』

もうかなり前になるが、2月に観た映画のいくつかについてレビューなぞ。
 
 
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DVDでマット・リーヴス監督『クローバーフィールド/HAKAISHA』。「登場人物の1人がたまたま持っていたDVカメラで記録した」という設定の主観映像のみで構成されて昨年話題になった特撮大作。突如ニューヨークのマンハッタンを謎の大怪獣が襲い、高層ビルの一室でパーティーをしていた主人公たちは懸命に逃げようとするが……。

大爆発から自由の女神の首がとんでくる衝撃の映像に始まって、ニューヨークの街がどどど~んと破壊されていくスペクタクル。軍と怪獣との大規模な市街戦(やっぱり軍隊が出てくると燃えるな)。地下鉄の坑道に群がる超不気味な小生物たち。それらを次々と「間近で体験」させられる1時間余り。場面場面の見せ方にしてもなかなかよくできているし、実に面白かった。小型怪獣に噛まれた人間が破裂しちゃうあたり、イヤ~な気分にもなるし(笑)。

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2009年02月03日

●『顔のない眼』『デッドマン』『ブレードランナー 最終版』

最近、映画館でもDVDでも全然映画を観てなかった。最後に観たのが昨年8月の『ホット・ファズ』だもんなあ(あれは良くできていたけど、ラストがイマイチだった)。つーことで、1月下旬、半額セール中のTSUTAYAに駆け込んで借りた何本かについて。
 
 
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まずはジョルジュ・フランジュ監督『顔のない眼』。1950年代末のフランス・イタリアで作られた残酷劇(いわゆる「グラン・ギニョール的映画」ですか)の古典的名作。不慮の事故で顔の皮膚を失ってしまった娘を持つ1人の高名な外科医。彼は幾人もの若い女をさらっては、その顔の皮を剥いで顔面再生の実験を繰り返していた。そしてある時、ついに移植手術は成功し、娘は美しさを取り戻したように思えたのだが……。

隅々まで「残酷」の2文字が行き渡った映画である。何の落ち度もない哀れな犠牲者、善良な刑事たちの役立たずぶり、一旦は目的を果たしたかに見えた主人公たちがあっという間にどん底に突き落とされる展開、そして一寸も救いのない結末。描写的にも、女性の顔の皮をはぐ様子をモロに映した手術場面(「まさか映すまい」と油断してたので驚いた)や娘の顔が醜く崩れていく連続写真など、思わず眼を背けたくなるシーンがいくつも挿入されている。

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2008年07月13日

●『狂気の海』『インフェルノ 蹂躙』


金曜日の夜は、渋谷ユーロスペースのレイトショーで高橋洋特集上映。高橋さんといえば『女優霊』『リング』『蛇の道』『発狂する唇』『呪怨』と怪作を連発する狂気脚本家。映画館の入口に帽子を深くかぶった怪しげな人がいるなあ、と気になっていたのだが、やっぱりご本人だった。なんつーか、妙な「気」を漂わせているんだよね(笑)。


1本目は高橋洋脚本・監督『狂気の海』。モノクロ版アニメ「サイボーグ009」の『太平洋の亡霊』というエピソードにインスパイアされたという、ビデオ撮り34分の短編。

舞台は現代の日本。憲法改正により「普通の国」を目指す日本国首相(田口トモロヲ)と、憲法9条を守るべく密かに核武装を進める首相夫人(中原翔子)。折しも合衆国大統領が謎の死を遂げ、FBI霊的国防捜査官リサ・ライス(長宗我部陽子)が「呪殺容疑」で2人を追い詰める。一方、富士山の地下では知られざる古代文明の超兵器が発動して……って、書いてるだけで何かが狂っていることがよくわかる、高橋イズムに充ち満ちた映画だった。

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2008年06月29日

●『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』


昨日の午後は、六本木ヒルズのTOHOシネマズで『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』。『最後の聖戦』からなんと19年ぶり、ファン待望、というよりまさかまさかのインディシリーズ新作である。物語の舞台は前作からちょうど19年後の1957年、東西冷戦の真っ只中で「赤狩り」が吹き荒れた時代。宇宙人の死体と古代文明を巡る謎を追って、インディ一味とソ連特殊部隊がネバダで、そしてアンデス山脈で激しい追跡劇を繰り広げる。


いやー、楽しかった!面白かった!!感動した!!!

『レイダース』以来の「インディ・ジョーンズ」ファンである僕だが、実は実際目にするまでは続編制作に懐疑的だったのだ。昨今の(ハリウッドに限らないが)「続編粗製乱造」ぶりに加え、第3作『最後の聖戦』の出来が非常に良かったこと、そして何よりスピルバーグもルーカスもハリソン・フォードも60歳を越して今さらキレのよいアクション映画が撮れるのだろうかと。3部作は3部作で「良い思い出」にしておいた方が良いのではないかと。

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2008年06月18日

●『竜馬暗殺』

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黒木和雄監督『竜馬暗殺』(映画同人社=ATG制作)を観た。実は先日NHK-BSでも放送されたものだが、「テレビブロス」で番組欄に見つけた時にはぜひ見ようと思っていたのにコロッと忘れてしまったのである。悔しいので、近所のTSUTAYAでDVDを借りてきてしまった。こういう要領の悪いことをしているからいつまでたっても財布の中身が豊かにならないのだ……という愚痴はともかくとして(笑)。

つい半月前まで存在さえ知らなかった映画だが、なかなか面白かった。

ストーリー的には「大政奉還」の1ヶ月後、薩長その他入り乱れた権力闘争が激化する中で、坂本竜馬の最後の数日間を描いたもの。土蔵にかくまわれた坂本竜馬(原田芳雄)が鬱憤をためながら、意見を異にする中岡慎太郎(石橋蓮司)に斬りかかられたり薩摩の刺客を返り討ちにしたり隣家の怪しげな女(中川梨絵)へ夜ばいをかけたり女装姿で抜け出して「ええじゃないか」の行列に紛れ込んだり……といった、せわしない日々が描かれる。

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2008年01月14日

●『戦ふ兵隊』

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シネセゾン渋谷で亀井文夫監督『戦ふ兵隊』を観た。日中戦争中の1939年、武漢攻略作戦に従軍して撮影された伝説のドキュメンタリー映画で、今回は雑誌「Esquire」のイベント「進化する、映画×リアリティ。」の中で特別上映されたもの。1970年代まではフィルムが見つからず「失われた映画」となっていたと耳にし、そんな貴重なものを見逃すわけにはいかんと、休日の午前中から足を運んだ(と思ったら、DVD出てるのか)。


この映画、陸軍の後援で撮影されたにも関わらず上映禁止処分をくらったそうである。そりゃそうだろう、と思う。だって、いきなり冒頭で映るのが、家を焼かれて難民となった中国の人々なんだもの。その後も、疲れ果てた兵隊たちの姿に、貧弱な兵器、乏しい食料と水、果てしなく続く行軍、戦死者の墓標と家族からの手紙、荒廃しきった武漢の街。もしこれをそのまま上映させたとしたら、そりゃ当時の公安当局は怠慢を問われたに違いない。

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2007年10月15日

●『ホステル』発『奇跡』行き

9月頭からの一月余り、ラグビーはW杯があるわ、サッカーは代表も女子代表もJもACLもあるわ、自転車はブエルタと世界選手権があるわ、プロ野球も大詰めだわ……とスポーツ関係がとにかく盛りだくさんだったのだが、その合間をぬって映画も何本か観た。変な言い方だけど、たまにはスポーツ以外で「息抜き」しないと頭が過熱するのである。とりあえず、『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』以外についての感想なぞ。


51Gp6d78PqL._AA240_.jpgまずはDVDで『ホステル』。タランティーノ&ロドリゲスの『グラインドハウス』でフェイク予告編をやっていたイーライ・ロス監督のホラーである。東欧で遊び回る米国人ヒッチハイカーの兄ちゃんたちが、美女を餌とする秘密組織(金持ちに殺人を娯楽として提供)の罠にかかって拷問の末殺されていく、というおっとろしいお話。

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2007年09月05日

●『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

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昨晩は、新宿ミラノ座で『エヴァンゲリヲン新劇場版:序』を観る。説明不要、かつて大ブームを巻き起こしたあの『エヴァ』のリメイク(ということなんだろうな)である。最初は「空いた頃にのんびり行くか!」なんて思っていたのだが、「公開初日には大行列ができたそうだ」「何だかすごい出来らしい」という噂話を聞くにつけ、いてもたってもいられずに劇場に駆けつけてしまった。


壮大にぶち上げた物語をまとめきれず、メタなオチに走ったTV版。広げた風呂敷をやはりまとめきれず、結局物語も登場人物も(笑)崩壊してしまった映画版。それらのコワレっぷっりはそれはそれで良かったのだが、観る側にとってスッキリしない部分があったのも事実。だから、この「三度目の正直」は歓迎したいのだけれど、だからといってクオリティが保証されるわけでもない。観る前は期待半分、怖さ半分といったところだった。

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2007年08月28日

●『グラインドハウス』観たぞ~


月曜の午後は、六本木ヒルズのTOHOシネマズで『グラインドハウス』USAバージョン。ご存知クエンティン・タランティーノ&ロバート・ロドリゲスの新作(豪華オマケ付き)だが、ちゃんと本来の2本立てで観られるのは8月いっぱいだけ。これは見逃してはならんと、遅い夏休みをとって駆けつけてみた。平日の昼間ながら、いかにもオタッキーな人々で劇場は半分以上の入り。みんな、学校や仕事はどうしたんだ(って、俺もか)!


まず最初に流れるのは、ロドリゲス監督のフェイク予告編『マチェーテ』。組織に裏切られて瀕死の重傷を負った殺し屋がマチェーテ片手に復讐の殺人鬼と化す、というお話(多分)。全編に漂うハッタリ感が非常に楽しい一作。神父(元殺し屋)がライフル2丁で悪い奴らを殺しまくるわ、超グラマーなお姉さんたちがいちゃつくわ、クライマックスは大爆発をバックにガトリング・ガン撃ちまくり!だわで……つーか、そもそもダニー・トレホが主役って(笑)。

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2007年08月24日

●『ショーン・オブ・ザ・デッド』

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DVDで『ショーン・オブ・ザ・デッド』観る。イギリスの新鋭監督エドガー・ライトと主演・脚本サイモン・ペグのコンビによる、ジョージ・A・ロメロ作品へオマージュを捧げたゾンビホラー・コメディー映画。人工衛星の爆発(?)により、ある日突然ロンドン市内にゾンビが蔓延。主人公の「ダメ男」ショーンは親友と母親、振られたばかりの元彼女らを連れて馴染みのパブにたてこもり、事態をやり過ごそうとするが……。


実によくできた映画だ。感心させられた。

上には「ゾンビホラー・コメディー」なんて書いたけど、要するに「ゾンビ映画」という現代ホラーの王道たるフォーマットを使いながら、あくまでコメディー調の映画に仕上げてあるということ。これは、言うまでもなくかなりの無茶である。普通ならば「ゾンビ」という存在から怖さを取り上げて(グロくないメイクにするとか人が死なないようにするとか)記号化し、おちょくって笑わそうとするところだろう。

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2007年07月11日

●平日昼、歌舞伎町でFBB


今日の昼間は歌舞伎町のLoft+1へ。タランティーノ&ロドリゲスの新作『グラインドハウス』の日本公開へ向けた、ウェイン町山&ガース柳下の映画漫才コンビ「ファビュラス・バーカー・ボーイズ」対談生収録である。


さすがに平日の昼間だけに「そう混んではいないだろう」とたかをくくっていたのだが、開場10分後に入場した時には既にステージ前の座席がほとんど埋まっており、驚愕。その後も会場にはオタクっぽい方々が次々押しかけ、気がつけば大勢の立ち見が出ていた。うーむ。同好の士が多いのは心強いというべきか、「おいおい」というべきか……もちろん僕もその一人なんだが(笑)。何とか隅っこに席を確保し、ミックスナッツでビールをチビチビと。

まず『グラインドハウス』の予告篇が上映され、続いてFBBの2人と「映画秘宝」田野辺編集長のトーク。いや、面白そうだね『グラインドハウス』!わざとらしい画面の汚し(70年代フィルム風)と大仰なナレーション、爆発、マシンガンとナイフ、ゾンビ、カーアクション、そしてホットパンツ姿の美女!!ほんとタランティーノって、いくつになっても自分の好きなものだけ並べて映画作ってんのな(笑)。フェイク予告篇『マチェーテ』にも大笑い。

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2007年05月08日

●『トゥモロー・ワールド』

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GW中に観た映画。DVDで、アルフォンソ・キュアロン監督『トゥモロー・ワールド』。原因不明の異変により人類の生殖能力が失われ、秩序の崩壊が進む2027年の世界。封鎖されたロンドンで官僚として暮らす元反体制闘士のセオ(クライヴ・オーウェン)は、ある日、昔の恋人ジュリアン(ジュリアン・ムーア)から不法移民の少女の逃亡を助けるよう依頼される。しぶしぶ手助けするセオだが、実はその少女には重大な秘密があった……。


結論から言うと、この映画、大傑作である。

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2007年03月30日

●『太平洋奇跡の作戦 キスカ』

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これもレンタルビデオ屋の「おもひで映画館」で借りてきた作品。丸山誠治監督『太平洋奇跡の作戦 キスカ』。太平洋戦争で日本が敗勢へ追い込まれつつあった昭和18年7月。アリューシャン列島キスカ島における、日本軍撤収作戦の顛末を描く。隣のアッツ島は玉砕、キスカも圧倒的戦力の米太平洋艦隊に包囲された状況で、日本海軍第5艦隊は果たして守備隊5200名の命を救いうるのか……。

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2007年03月27日

●『ガス人間第1号』

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先日のエントリーでは『美女と液体人間』をとり上げたのだが、そうなるとこちらもとり上げない訳にはいくまい。本多猪四郎監督『ガス人間第1号』。東宝の「変身人間シリーズ三部作」最終作である。個人的には、別格番外の『ゴジラ』を除けば、この作品こそが東宝特撮映画史上の最高傑作だと思っている。

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2007年03月14日

●『美女と液体人間』

先頃、家の近所のレンタルビデオ屋に「おもひで映画館」なるコーナーができ、古い時代の邦画が「B級作品」も含めて色々と置かれるようになった。しかもDVDで。邦画の旧作というと、これまでは黒澤明作品とかいわゆる「名画」とか角川おバカ大作とかがラインナップの中心だったので、これは僕にとってはありがたい。さっそく何本か借りてみた。


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まず第一弾は、本多猪四郎監督『美女と液体人間』。東宝特撮「変身人間シリーズ三部作」の記念すべき第1作である。


昭和30年代の東京。ある雨の日、1人の麻薬密売人が衣服と荷物の全てを路上に残したまま忽然と姿を消した。富永(平田昭彦)ら警視庁の刑事たちは懸命に手がかりを捜し求めるが、その目の前で第2の人間消失事件が発生。富永の旧知の物理学者・政田(佐原健二)は「原爆実験の影響で液体化した人間の仕業」との仮説を主張するが……。

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2007年02月20日

●『LOFT』

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DVDで、黒沢清監督『LOFT』を観た。黒沢監督3年ぶり(ホラーとしては『回路』以来か)の新作。昨年の秋から冬にかけてテアトル新宿で上映していたのだが、ちょうど仕事が忙しい時期だったのと、知り合いからどうも良い評判を聞かなかったのでつい見逃してしまっていたのだ。早くもDVDレンタルが始まったと聞いたので、リハビリ代わりにTSUTAYAで借りてみた。


前半部分は、黒沢監督持ち前のテクニックと怪奇趣味が炸裂し、まったくもって申し分ない出来。暗い色調の画面に漂う不吉感、思わせぶりな数々の伏線、そして物語の鍵を握る幽霊(安達祐実)の人知を越えた不気味さ。廃墟、半透明のビニール、黒い服、無機質なオフィス、止まらない歯車といった黒沢的モチーフも盛りだくさん。観ていて緊張が全く途切れず、大傑作の予感さえした1時間であった。

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2006年12月21日

●『硫黄島からの手紙』


先日、クリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』を観てきた。「硫黄島2部作」の第2作で、アメリカの「作られた英雄」をクローズアップした前作『父親たちの星条旗』に対し、今度は日本側からの視点で作られた作品。「硫黄島の戦い」という歴史に残るべき悲劇と、その中で死んでいった日本軍人たちの人間性や狂気を余すところなく描ききった傑作である。


正直、観る前は「アメリカ人の手による日本人像」にやや懐疑的な部分もあった。だが、実際観た後には「本当に外国人が作ったのか……」と唸りたくなるほどよくできた映画だった。確かに一部の台詞回しなどにおかしい部分がないではない。でも、それはおそらく「今の日本人の手による」ものよりははるかにマシなものであろうし、特撮や演出から小道具に至るまでに漲る迫真感は、違和感をはるかに凌駕していると思う。

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2006年09月28日

●丹波哲郎さんを悼む

丹波哲郎さん 84歳大霊界へ里帰り (goo映画)


えー、早くも話題として旬を過ぎつつあるような気がしますが、亡くなっちゃいましたね、丹波哲郎さん。80年代以降は一般的に『大霊界』の人というイメージで語られがちだった丹波先生ですが、やはり役者としてのキャリアももの凄いモノがある(出演作だけで300本以上!)わけで、それなりに映画好きな人間としてはショッキングな訃報ではありました。まあ、ここ2年くらいの激ヤセぶりを見れば「しゃーないか」という気もしますが。

で、朝のワイドショーとかでそんな偉大な丹波先生の追悼特集を眺めていると、やはり代表作としては『大霊界』や『砂の器』、それから『007は二度死ぬ』あたりが挙げられているようです。まあ、妥当っちゃ妥当でさーね。怪作・名作・大作と三拍子揃っているのが素晴らしい。

ただ、個人的なことを言いますと、そういった有名作ではなしに、丹波先生が(多くは脇役ながら)強烈な印象を残している映画がいくつかありまして、それがまた脳裏に焼きついちゃっていて離れないんですね。以下、村田オススメの丹波作品をいくつか挙げてみましょう。

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2006年09月21日

●『潜水艦イ-57降伏せず』

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DVDで、松林宗恵監督『潜水艦イ-57降伏せず』観る。沖縄陥落で絶望的に戦局が悪化した太平洋戦争末期。和平工作のために某国の外交官父娘をカナリー諸島へ送り届ける秘密任務を帯びた、帝国海軍潜水艦「イ-57」の苦闘の日々を描く。


戦争末期の秘密任務を帯びた潜水艦と、そこに乗り込むことになった外国人2人(うち1人は若い女性)という設定からして、この映画が『ローレライ』に与えた影響は明白だ(あっちの潜水艦は「伊507」)。ただし、映画としての完成度はこちらの方が明らかに上であり、特に「戦争映画」としてのリアリティは比べものにならない。製作は1959年代で、出演者・スタッフは全て戦争体験者……。

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2006年09月15日

●『時をかける少女』

先日、シネセゾン渋谷で細田守監督『時をかける少女』を観た。ご存じ筒井康隆師匠の傑作ジュヴナイル(って言い方は最近しないのかな?)を大幅にデフォルメの上、初めて劇場アニメーション化した作品。

この作品、ネット上で多くの人に絶賛されているのは周知の通り。のみならず、知り合いの34歳のおっさん39歳のおっさん、はては30代初めのおねえさんまでが涙腺決壊状態と聞けば、これは観ないわけにはいかない、と思ったのである。 


で、いきなり結論を書くと……やっぱりうるうるっと来てしまいますたよ、32歳のおっさんも。

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2006年09月05日

●『グラン・ブルー』

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DVDで、リュック・ベッソン監督『グラン・ブルー』。美しい海を舞台として、スキューバの道具を一切使わないフリーダイビングに人生を賭ける繊細な青年と、彼に惹かれる都会育ちの女性、そして青年の生涯のライバルが繰り広げる恋と友情を描く実話ドラマ(Amazonの紹介文より)。ご存じベッソンの出世作だが、見終わって「微妙だ……」というのが正直な感想であった。

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2006年08月17日

●『最後の戦い』

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DVDで、リュック・ベッソン監督『最後の戦い』を観る。ベッソンの長編デビュー作は、いわゆる「核戦争後の世界」もの。文明が崩壊した後の過酷な環境の中、食料や女を巡って男たちがひたすら殺し合い続ける様を描く。

この映画のいいところは、徹底的に「余計な部分」を排しているところだと思う。画面はモノトーンで複雑なアングルや特撮は少なく、筋立てもシンプルに組み立てられたもの。ナレーションやテロップは皆無で、説明的な場面もほとんどなし。さらには「人類は声を失った」という設定らしく、台詞さえも一切ない。荒漠とした廃墟や砂漠で物語は静かに進んでいく。

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2006年06月09日

●『殺人の追憶』

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明日からはどうせサッカー三昧になるのだからと、久しぶりにHDレコーダーに溜め込んである映画を消化。ポン・ジュノ監督『殺人の追憶』。1980年代半ば、韓国のとある農村で起こった連続強姦殺人事件。地元の刑事パクとソウルから派遣された刑事ソは、互いに反目しながら捜査に乗り出すのだが…。

いや、正直、韓国映画ということで多少ナメていたことは否めないのだが、観てみると非常に出来のいい作品だった。凄惨な殺人現場とコミカルな捜査の失敗がテンポ良く交互する軽快な序盤。手がかりと共に事件の異常さが露わになって緊迫感が高まる中盤。そしてサスペンスと悲劇から重い結末に至る終盤。色々なテイストが複合的に積み重なって、2時間20分全く飽きなかった。

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2006年04月20日

●『勝手にしやがれ』


先日、NHK-BSでジャン=リュック・ゴダール監督『勝手にしやがれ』が放送されたので、HDレコーダーに録画して見直してみた。通しで観るのはこれで2回目だったかな?

前回観たときは「意外と普通の映画だなあ」と思った気がするんだけど、俺、一体どこを見てたんだろ。全然普通じゃないじゃん(笑)。スピーディーに意表を突く、場面転換とカット割り。意味があるようでなさそうでやっぱりありそうな台詞回し。主人公の死に方に代表される、素っ気なくも印象的な演出。どこをどう切ってもゴダールじゃないか、これ。

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2006年03月15日

●『スーパーサイズ・ミー』

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WOWOWで、モーガン・スパーロック監督『スーパーサイズ・ミー』。肥満の少女たちがマクドナルドを訴えた裁判をきっかけに、ファーストフードの有害性を証明しようと立ち上がった(?)スパーロック監督。全米各地で「食と肥満」の問題を追いかけながら、自らの体を実験台として「1日3食30日間マクドナルド」に挑戦する。お気楽なノリで始まった実験だったが、スパーロックの体は次第に変調をきたしてしまい……。

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2006年03月02日

●『ヒトラー ~最後の12日間~』

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DVDで、オリヴァー・ヒルシュビーゲル監督『ヒトラー ~最後の12日間~』。ベルリン中心部を舞台に、アドルフ・ヒトラーの秘書を主人公として描くナチス・ドイツ(あるいはヒトラーとその側近たち)最期の日々。

映画の公式サイトには「世界震撼。全てを目撃した秘書が今明かす、衝撃の真実。」なんて書いてあったけれども、たまたま僕が昔から第2次大戦ものの本をよく読んでいたせいか、エピソード的に意外なものはほとんどなかった。末期のベルリンの悲惨さやヒトラーが錯乱していく様子、側近たちの裏切りやヒトラー及びゲッペルスの自殺に至るまで、「ああ、そうだったよね」という感じ。

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2006年02月21日

●『妖怪大戦争』

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DVDで、三池崇史監督『妖怪大戦争』。世界に平和をもたらす“麒麟送子”に偶然選ばれてしまった少年タダシ(神木隆之介)が日本に住む妖怪たちと力を合わせ、人類滅亡を目指す魔人・加藤保憲(豊川悦司)に挑む冒険ファンタジー。
 
いかにもお子様も対象にしたような筋立ての「一般映画」だけに、皆無ではないだろうけど三池色はちと薄目なのかな、と思いながら観たのだが……蓋を開けてみるとモロ三池だった。ガチャガチャとやりすぎのCG、ミもフタもない残酷描写(特にすねこすりの虐殺シーン)、時折飛び出す脱力ギャグ(飛行機のシーンには笑った)、エロ(川姫の太もも!栗山千明のお尻!)、そして少年という存在への甘いノスタルジー。最後の大爆発は『DEAD OR ALIVE』かと思ったよ(笑)。

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2006年02月10日

●『極私的エロス・恋歌1974』

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ビデオで、『極私的エロス・恋歌1974』観る。『ゆきゆきて、神軍』の前作にあたる、原一男監督の劇場用映画第2作。原監督が、自らの下を去った元同棲相手(武田美由紀さん。原監督との間に一子あり)を「彼女とのつながりを保つために」はるか沖縄まで追いかけた、まさに「極私的」ドキュメンタリー。

原監督の言うところの「アクションドキュメンタリー」の定義について詳しく知っているわけではないが、カメラの存在、あるいはカメラの「侵入」によって「あえて状況を起こす」という手法において、本作が『ゆきゆきて~』以上に先鋭的なのは間違いない。『ゆきゆきて~』も確かに強烈だけれど、あくまで主役は奥崎謙三という超強烈なパーソナリティであり、カメラはそれを煽り立てる副次的存在であった。

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2006年02月02日

●『ゆきゆきて、神軍』

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ビデオで、原一男監督『ゆきゆきて、神軍』観る。戦争責任を過激に追求する「神軍平等兵」奥崎謙三(神戸でバッテリー業を営むアナーキスト)が、終戦後に2人の兵士を敵前逃亡の罪で処刑した元上官らを訪問し、真相を究明する。……と書くといかにも真面目なドキュメンタリーのようだが、実際には「社会派」などという枠をはるかに超越し、観る者にガツン!と強烈なインパクトをもたらす怪作であった。

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2006年01月26日

●『ランド・オブ・ザ・デッド』

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DVDで、ジョージ・A・ロメロ監督『ランド・オブ・ザ・デッド』観る。ご存じロメロ御大の『ゾンビ』シリーズ第4弾。今回は、ゾンビが大発生した世界においてなお生き残る、周りと隔絶した要塞都市が舞台。都市内における人間たちの生活と対立、そして進化を始めたゾンビ軍団による大襲撃の顛末が描かれる。
 
この物語に込められている政治的メタファーは至極わかりやすいものだ。富裕層の中心として大都市を支配する独裁者(デニス・ホッパー)はブッシュ政権、兵士となってゾンビ地域で物資調達に命をかける人々は米地方都市の貧困層、そして「戦闘ではなく、ただの殺戮」たるゾンビ狩りの様子はイラク等における米軍の軍事行動。まんま現代アメリカの一部を映し出したものだ。これについては、まあ、「そうだよな」としか言いようがない。

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2005年12月31日

●『A2』

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「地下鉄サリン事件」10周年となる2005年、最後のレビューはこれしかない。DVDで森達也監督『A2』。初見。孤高の映像作家・森達也が再びオウム真理教を追った、その名の通り『A』の続編となるドキュメンタリー。時は1999年。「荒木浩とその周辺」に的を絞った前作とは異なり、「我々の社会とオウム」という視点をより前面に出しながら、各地に住む信者とマスコミや地域住民との間に生じる軋轢を描いている。変に扇情的にならず淡々としたトーンが貫かれており、だからこそ胸に深く響いてくるのは相変わらず。

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2005年12月26日

●『A』

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DVDで『A』を見直してみた。孤高の映像作家・森達也監督の手による、オウム真理教密着ドキュメンタリー。一般マスコミのヒステリックなバッシング報道とは一線を画し、教団に限りなく近い位置から、しかし淡々と彼らの姿を追っている。僕自身の心境と世情の変化のせいだろうか、数年前に観た時よりも一層傑作に思えた。

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2005年12月08日

●『スターウォーズ エピソード3』

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DVDで、ジョージ・ルーカス監督『スターウォーズ エピソード3/シスの復讐』を観た。旧3部作を合計50回以上観ておりスターウォーズ・ファンの端くれくらいには位置する僕だが、しかしこれについてはなかなか劇場に足を運ぶ気が起こらず、ついに見逃してしまっていたのである。暗い話になるのはわかっていたし、しかもなまじっか『エピソード2』が盛り上がっただけに「ホントにルーカスにうまく収拾できるのかよ」という不安が勝っていたのだ。でも、実際に観てみると、何とか収まるところには収まった様子。ホッとした。

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2005年11月22日

●『宇宙戦争』

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DVDでスティーブン・スピルバーグ監督『宇宙戦争』観る。ご存じH・G・ウェルズ大先生の原作の映画化であり、50年代の名作SF映画のリメイクでもある作品。しがない車オタクのトム・クルーズがある日突然始まった異星人の攻撃に遭遇、別れた妻との子供2人を連れて命からがら逃げまくり、奇跡的幸運の連続の果てについに生き残る、というお話(だよね?)。

(以下、ネタバレあり)

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2005年11月18日

●『アワーミュージック』

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日比谷シャンテシネでジャン=リュック・ゴダール監督『アワーミュージック』観る。

小難しい引用満載の台詞、説明性に乏しいカットとシーンのつながり、音やBGMのズラした使い方。いかにもゴダールである。上映後照明がついてもなお、会場内は静寂のまま。どの観客も「わかったような、わからないような…」と微妙な表情で引き上げていく。僕も1回観ただけではとても「理解した」などとは言えないのだけれど、ともかく外に出て深呼吸した瞬間に「ああ、久しぶりにゴダール観たなあ」と、わけのわからない充実感が(笑)。

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2005年11月08日

●『マルホランド・ドライブ』

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DVDで、デイヴィット・リンチ監督『マルホランド・ドライブ』観る。謎めいた状況と不可思議な人物たち。明るい風景の裏側や、日常の隙間に潜む異世界の恐怖。舞台がハリウッドになっただけで、『ブルーベルベット』の頃から基本は全く変わっていない。ああ、リンチだなあ、という感じ。

(以下、ネタバレ)

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2005年11月07日

●『ゴジラ FINAL WARS』

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DVDで、北村龍平監督『ゴジラ FINAL WARS』。言わずと知れた、ゴジラ生誕50周年にしてファイナルを謳うシリーズ第28作。東宝としてはお金もかけ、過去の怪獣たちを再登場させ、新鋭監督で「今風のノリ」も加え、まさしく「集大成」らしい作品にしたかったのだろうが……どうも失敗に終わったらしい(笑)。

あらすじは、オフィシャルサイトででも確認してもらうとして、以下では、この映画の良いところと良くないところを並べてみよう。

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2005年09月09日

●『バイオハザード2 アポカリプス』

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DVDでアレクサンダー・ウィット監督『バイオハザード2 アポカリプス』観る。前作で発生したウイルス汚染がラグーンシティの街中に拡大。ゾンビ大発生のパニックの中、前作の主人公アリス(ミラ・ジョヴォビッチ)や警察官ジル(シエンナ・ギロリー)は脱出の方法を探るが…。

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2005年09月02日

●『仁義なき戦い』

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WOWOWの録画で、深作欣二監督『仁義なき戦い』観る。戦後混乱・復興期の広島を舞台にした、実録ヤクザ映画の記念すべき第1弾。主人公・広能(菅原文太)が仲間たちと弱小ヤクザ山守組の一員となってから、対立勢力との抗争を経て組が拡大し、さらには分裂して苛烈な抗争を繰り広げていく様をバイオレンスたっぷりに描く。

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2005年08月22日

●『ヴィレッジ』

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DVDで、M・ナイト・シャマラン監督『ヴィレッジ』観る。19世紀(?)アメリカの、森に囲まれたとある村。長老たちの治めるその村では森へ入ることが禁じられ、人々は森の中に潜む「何か」に怯えながらも平和な暮らしを続けていた。しかし、ある日、勇気ある青年(ホアキン・フェニックス)が森へ踏み込んだ時から次々と恐ろしいことが…。

前作『サイン』があまりにお馬鹿な作品になってしまっていたので、今度は「毒を食らわば皿まで」の心境で観てみたのだが、おー意外にいけるじゃん、みたいな。割と誰でも普通に楽しめるのではないかと。ただ、傑作と言えるかどうかは…正直微妙である。一見トンデモないが、しかし考えてみればありがちなオチはいつものシャマランとも言えるし、一方で今回は「一発勝負」にとどまらない映画であったのも事実。うーむ。


(以下、映画のネタバレが内容になっとります。)

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2005年08月18日

●『サイン』

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WOWOWの録画でM・ナイト・シャマラン監督『サイン』。シリアス極まる演出と先の読めない「驚愕の」結末を持ち味とするシャマランが、とうとう突き抜けてしまった感のある怪作。見終わった瞬間に涙がこぼれそうになったよ、あまりのクダらなさに(笑)。

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2005年08月11日

●『キューティーハニー』

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WOWOWの録画で、庵野秀明監督『キューティーハニー』。…さむい、サムイ、寒い!『ローレライ』の10倍寒い、ある意味真夏にピッタリ(笑)の冷えっぷりである。

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2005年08月08日

●『戦国野郎』

WOWOWの録画で、岡本喜八監督『戦国野郎』。魅力的な設定、楽しいキャラクター、娯楽性を重視した演出、芸達者な役者たち。必要なものは全部揃っているはずなのに、観た後どうにも物足さが残ってしまう作品。う~ん、なぜだろう。

映画を構成する人物や場面はとてもいい感じ。加山雄三・中谷一郎演ずるはみ出し者の忍者と武士、冷徹だが誇り高い追っ手忍者(中丸忠雄)、勝ち気だけど可愛いヒロイン(星由里子)、人を食った羽柴秀吉(佐藤允)、荒々しいが真っ直ぐな馬借たち。いかにも岡本作品らしいキャラクター造形。アクションシーンも派手すぎないし、主人公(加山)に対して素直になれないヒロインの女心、なんてのも微笑ましく楽しい。

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2005年08月04日

●『独立愚連隊西へ』

WOWOWの録画で、岡本喜八監督『独立愚連隊西へ』。カラッとした明るさの中で描かれる人間模様、そして肝心な場面で表れる男たちの心意気。ストーリー的に前作と無関係でありながら、『独立愚連隊』のタイトルがしっくりくるシリーズ第2弾。

公式には全員戦死したことになっている「やっかいもの」部隊、という独立愚連隊の設定は前作と同じ。でも前作は一匹狼の主人公・荒木(佐藤允)が独立愚連隊(隊長・中谷一郎)と関わりながら活躍する様を描いたのに対し、本作では独立愚連隊(隊長・加山雄三、軍曹・佐藤允)が主人公で、彼らと一匹狼・中谷の交流と活躍が主軸。そして、独立愚連隊の辿る運命といい、「裏切り者」の立場の中丸忠雄が果たす役回りといい、シリーズ2作は全く逆になっている。要するにネガとポジの関係にあるのだ。

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2005年07月27日

●『独立愚連隊』

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WOWOWの録画で、岡本喜八監督『独立愚連隊』観る。うーむ、こういうジャンルの明白でない、喜劇的な要素も悲劇的な要素も含んでいてそれでいて見応えのある作品というのは、よほど力量のある監督でないと撮れないのだろうな。

大戦末期の北支戦線。日本軍の駐屯地に従軍記者・荒木(佐藤允)がひょっこり現れる。荒木は飄々と、しかし大胆な行動で、部隊を牛耳る副官・藤岡(中丸忠雄)らを翻弄。さらに偶然出会った馬賊(鶴田浩二!)などとも交流しながら、最前線中の最前線、変人揃いの通称「独立愚連隊」に潜入する。実は荒木は脱走兵で、独立愚連隊において変死を遂げた弟の死因を探っていたのだった。八路軍の侵攻が迫る中、荒木は綱渡りのような捜査により真実に迫っていくのだが…。

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2005年07月01日

●『たまもの』

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WOWOWの録画で、いまおかしんじ監督『たまもの』(R-15版)を観る。何とも感想の難しい作品だ…。林由美香という傑出した存在を浮きだたせまくって、さらに突き抜けちゃった、みたいな。笑えるようでなかなか笑えない、哀しいようで哀しいまま終わらない、複雑な味わいの忘れがたい映画。

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2005年05月17日

●『ウルトラQ』(続き)

『ウルトラQ』、DVDで残りの14話も見終わった。後半で出来のいいものをいくつか。

第16話『ガラモンの逆襲』。地球人に変装して暗躍する宇宙人。やがて世界各地へ隕石が落下し、中から怪獣ガラモンが現れる…。ガラモンの動きがチャチいのは残念だが、「地球侵略」という無謀なまでにスケールのでかいテーマが素晴らしい。機能停止したガラモンが変な泡吹くのも奇妙な味でよし(笑)。

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2005年05月16日

●『アトミック・カフェ』

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WOWOWの録画で、ケヴィン・ラファティ監督『アトミック・カフェ』。1940~50年代のニュースフィルム・米政府広報素材を巧みに組み合わせ、ブラックユーモア・ドキュメンタリーに仕上げた作品。原爆の開発に始まって、明るい戦勝気分とヒロシマ・ナガサキの惨状との対照、ビキニ環礁の悲劇、朝鮮戦争から東西の核開発競争へ。そしておぞましい核実験と極めて楽観的な「核戦争対策」。素材のカッティングと配置だけで見せきる編集の切れ味は、まさにマイケル・ムーア(ラファティを師と仰いでいるらしい)以上だ。

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2005年05月06日

●『ウルトラQ』

ふと思い立ち、10日ほど前から『ウルトラQ』をDVDで見直している。とりあえず半分の14話まではクリア。日本初の特撮テレビ番組として名高い同番組だが、テレビ等での再放送の機会ももはやなく、まるで古文書に触れる時みたいに厳粛な気持ちになったりして。

で、実際に観てみた感想。全体的には当然古びているしいかにも子供向けなんだが、中には唸らされる回もある。第1話『ゴメスを倒せ!』のあまりのお粗末さを見た時にはどうしようかと思ったけれど、2話以降は割と素直に楽しめた。デジタル・リマスタリングされた画像は今どきの地上波番組よりも全然綺麗だし。

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2005年04月30日

●『日本のいちばん長い日』

ビデオで、岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』観る。1945年8月14日から15日、終戦という到達点へ向かう大日本帝国の政府・軍部における暗闘をドキュメンタリー調で描いた大作。タダゴトではない緊迫感の中、「日本史上最も重要な1日」の様子がものすごいスピードと密度で描かれていく。

天皇による終戦の決断から始まり、終戦の詔勅を巡る陸軍大臣と海軍大臣の対決、詔勅公布のために駆け回る官僚たち、陸軍省若手参謀たちの反乱決起、玉音放送レコードの争奪戦、終戦を知らず飛び立つ特攻機。そして血なまぐさい夜が明けて、ある者は静かに終戦を迎え、ある者は血だまりの中で息絶える…。なんというボリューム。これが本当に1日の出来事なのか、にわかには信じがたい気さえしてしまう。あくまで政府・軍部の内部に的を絞っているにも関わらず、全太平洋を巻き込む大戦争の終点というのはやはりエライコトだったのだと納得させられる映画だ。

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2005年04月19日

●『地獄の黙示録 特別完全版』

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フランシス・コッポラ監督『地獄の黙示録 特別完全版』観る。

…うーむ。子供の頃に(オリジナル版を)観た時には、ある種の無秩序というか、とにかくバラバラ、支離滅裂な印象しか残らなかったのだが、今観ると全然違う。あらゆるシーン(特に前半部)が相当に作り込まれており、分裂的に見えて実はきちんと筋は通っているように思える。

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2005年04月14日

●『激動の昭和史 沖縄決戦』

ビデオで岡本喜八監督『激動の昭和史 沖縄決戦』観る。一度見たらもう金輪際絶対戦争なんてやるもんかと思える、太平洋戦争ものの傑作。

固いナレーションの下、ドキュメンタリー調で映画は進んでいく…のだが、行き当たりばったりの展開、無数の登場人物が繰り広げるドタバタ劇はコミカルとさえ言えるもので、その大半が史実に基づいたもの(一応「一部創作」という断り書きは出るが)だとはにわかに信じがたい。でも、本当なんだな。それがまた沖縄戦の悲惨さを際立たせるのである。岡本監督の皮肉たっぷりの演出もあり、全編に漂うのは「滑稽な哀しさ」といったテイストだ。

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2005年04月06日

●『スリーピー・ホロウ』

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WOWOWの録画でティム・バートン監督『スリーピー・ホロウ』観る。バートン監督が真正面から取り組んだゴシック調ホラー。18世紀末、とある村で起こった「首なし騎士」による連続首切り殺人事件に、NY市警の捜査官イカポッド・クレーン(ジョニー・デップ)が挑む。

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2005年03月23日

●『ローレライ』

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TOHOシネマズ六本木ヒルズで、樋口真嗣監督『ローレライ』観る。太平洋戦争末期、東京への原爆投下阻止を目指す潜水艦「伊-507」の孤独な戦い。日本の誇るクリエイターたちが送り出した久々の非怪獣SF大作は、実写版『宇宙戦艦ヤマト』とでも呼びたい物語であった。

客観的に観れば、ツッコミどころの多い映画である。いかにもCG然とした特撮、「序」「破」「急」のうち「序」をおろそかにした構成、都合の良すぎる展開(なぜB29は発進を早めなかったのだろう)、大げさな台詞と陳腐な人物造型、戦争に関する「リアリティ」の欠如…etc。この映画に拒絶反応を示す人の気持ちもよくわかるし、実際僕も開始から登場人物への感情移入に苦労している間に役所広司の大仰な芝居を見た時には、思わず映画館を出ようかとさえ思った。

ところが。

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2005年03月15日

●『Uボート』

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録画でウォルフガング・ペーターゼン監督『Uボート』(劇場版)観る。ものすごく久しぶりに観たのだが、胸高鳴る勇壮なテーマソング、深海での息詰まる闘い、そしてあっけなくも残酷なラスト。何度観ても名作だ。
 
 
昔観た時には気にも留めなかったのだけれど、今見直して気になって仕方がないのは、ジブラルタル海峡深くで絶体絶命に陥った際、主人公ヴェルナーが涙ながらにつぶやく台詞。「志願したんです…現実に直面したくて…これが現実なんですね…」。その前の爆雷攻撃では恐怖の中ベットにしがみついて目を閉じ、気がつくと攻撃は終わっていた(まるで夢のように)。今度は10数時間、何度眠り何度目を覚ましても潜水艦はストップしたままだ。夢とは違う、現実の世界の冷たさ。逃げ場はない。

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2005年03月07日

●『死亡遊戯』

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BSの録画で、ロバート・クローズ監督ブルース・リー主演『死亡遊戯』観る。これはヒドイ(笑)。笑っちゃうくらいにヒドイ。「あまりのデタラメぶりに、かえって愛してしまった」なんて人がいそうなくらいの出来である。

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2005年02月24日

●『ドラゴン危機一発』

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BSの録画でロー・ウェイ監督『ドラゴン危機一発』観る。「危機一髪」じゃなくて「一発」なのは何か意味があるのだろうか。言葉のノリか?

ストーリー的には、中国からタイの氷工場(実は麻薬取引も行っている悪い所)に出稼ぎにやってきたクンフーの達人(リー)が、暴れまくって悪人を全員殺して、しかし途中で敵に懐柔されたりもして、結局仲間はヒロイン1人を残して全員殺されてしまうという……全然「危機一発(髪)」じゃないじゃん(笑)!!

劇中、リーが胸のペンダントに手をやるたびに(シリアスな場面であっても)オルゴールの甘いメロディが流れたり、悪人を壁に殴り飛ばしたら人型の穴が空いたり、「これはコメディなのか?」と疑いたくなる場面もあり。『ドラゴンへの道』のような間抜けな場面とシリアスな場面との明確なコントラストがなく、ちょっと緊張感に欠ける。まあ、リー先生もこれが初主演作だから、まだ発展途上だったということで。

2005年02月18日

●『CAPA in Love & War』

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WOWOWで録画しておいたアン・メークピース監督『CAPA in Love & War』を観る。不世出の戦争写真家ロバート・キャパの生涯を、関係者へのインタビューを中心に追いかけたドキュメンタリー。

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2005年02月16日

●『戦場のフォトグラファー』

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WOWOWの録画で、クリスチャン・フレイ監督『戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界』観る。戦争と貧困を追いかけ続ける写真家ジェームズ・ナクトウェイのドキュメンタリー。

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2005年02月07日

●『カンフーハッスル』

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TOHO CINEMAS 六本木ヒルズで、チャウ・シンチー監督『カンフーハッスル』観る。「いくらなんでも『少林サッカー』には及ばないだろう」と期待を抑えながら見始めたのだが……いや、参りました。確かに『少林サッカー』ほどの底抜けた楽しさはない(残酷シーンもあり)のだけれど、作り込まれたアクションの凄さと馬鹿馬鹿しさで互角、観た後の感動度はもしかして『少林~』を上回ったのではなかろうか。

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2005年01月29日

●『燃えよドラゴン』

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DVDで、ロバート・クローズ監督『燃えよドラゴン』観る。ブルース・リーの遺作にして最高傑作、そして「初めてアジアとハリウッドが手を組んだ」記念碑と位置づけられる作品だが、なるほどこれは確かにスゴイ。

まず、なんといってもリーのクンフーの凄まじさ。そのスピード、キレ、動きの多様さは『ドラゴンへの道』をもしのぐ。リーの体がビシッと振れるたびに敵が次々と倒れ、あるいは吹っ飛んでいく。闘争と勝利、その快感の連鎖。何者をも寄せつけぬ完璧な強さ。アクション・シーンの出来だけとっても、間違いなくブルース・リー映画の最高傑作と言えるだろう。

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2005年01月28日

●『ヴィタール』

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夜、新宿のK's cinemaで塚本晋也監督『ヴィタール』観る。交通事故で恋人と記憶を失った医大生(浅野忠信)を主人公として、解剖実習現場を舞台に描かれる幻想純愛ストーリー(って、文字にするとわけわからんな)。

塚本監督のこれまでの作品同様、この映画もまた肉体的(死体含む)・精神的な「痛み」に満ち満ちている。そして、主人公の得体の知れなさ、行動の不安定さは観客の不安を煽り続け、それは物語後半、主人公が喜々として献体を切り刻む不気味なシーンにおいてピークに達する。彼は死ぬか、人を殺すか、いずれにしろ「あちら側」に行ってしまうのだろうか、と。背筋に冷たいものが走った。

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2005年01月26日

●『ドラゴンへの道』

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DVDで、ブルース・リー監督『ドラゴンへの道』観る。中華レストランの用心棒としてローマへやってきた武道家リーとマフィアとの死闘。

前作『怒りの鉄拳』はメッセージ性や叙情性が強烈であったものの、感情移入を阻む狂犬のような主人公やふざけた日本人描写など欠陥も多い作品であった。しかし、今回は娯楽性と完成度が大幅にパワーアップ。リーの超絶クンフーのみならず、リー演じる主人公のキャラクター(無敵だが愛想はとてもいい(笑))も楽しみ愛せる作品となっている。

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2005年01月16日

●『ドラゴン怒りの鉄拳』

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WOWOWの録画で、ロー・ウェイ監督『ドラゴン怒りの鉄拳』観る。20世紀初頭の上海を舞台に、日本武術道場の陰謀で師匠を殺された武道家ブルース・リーの怒りの拳が炸裂しまくるアクション作品。主人公があまりに直情的過ぎる、日本人の描写がヘンテコである、等々のツッコミどころはあるものの、この映画には完成度云々とは別の凄さがある。

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2005年01月07日

●『トレインスポッティング』

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WOWOWの録画で、ダニー・ボイル監督『トレインスポッティング』観る。

これは強烈だ。バイオレンス(パブで血みどろ乱闘!)・セックス(美人女子高生と!)・ドラッグ(ヘロインどぶ漬かり!)の3拍子が揃っているのはもちろん、それらがテンポのいいブリティッシュ・ミュージックに乗って連鎖していく。脳をガンガン刺激する物語と映像と音。オープニングシーンそのままに、ひたすら駆け抜けていく感覚。ドラッグに走る原因の一つが刺激への欲求にあるとすれば、これは取り上げた題材が麻薬というだけではなく、それ自体がドラッグの役割を果たしている映画なのである。

…と書くとすごくカッコイイ映画のように思えるし、実際観てそういう感想を抱いている人も多いみたいだけど、この映画が格好だけのオシャレ映画に堕していないのは、きちんと「その先」を描いているから。赤ん坊の死体の無惨さ、禁断症状の恐ろしい幻覚、若いヤツのあがきが結局マヌケなところにしかたどり着かないという苦い真実、何をやっても満たされない空虚さ。バッド・トリップまできちんと味わえるという意味で、徹頭徹尾正しい「ドラッグ映画」と言えよう。

2005年01月04日

●『回転』

WOWOWの録画で、ジャック・クレイトン監督『回転』観る。導入部は悲しげな歌声と女の泣き声。一転、前半部分では裕福で楽しげな富豪の生活が描かれるが、しかし案の定次第次第に日常の狭間にかすかな軋みが生じ、怪しげな人影がちらつき始める。そして、ついに現れる幽霊。

この幽霊の登場場面が素晴らしい。女の幽霊の方は決して顔を見せることなく、さりげなく、後ろ姿で、または彼方の方にポツリとたたずむ。これはこれで十分に(ジャパニーズ・ホラー的に)恐ろしく、「いや~雰囲気出てるな~」なんて余裕かまして観ていたら、窓際に男の幽霊がどアップでゆらりと…。これは怖かった。声を出す暇もない突然の恐怖。

難点があるとすれば、終盤に男の幽霊がちょっと姿を見せすぎてるのと、あと主人公がなぜあんなに悪霊払いに確信を持っていた(それでいて失敗した)のかがよく分からなかったあたりだろうか。ま、ホラーに「なぜ」なんて野暮なこと聞いちゃいかんのだが。