« レッズ戦は毎回疲れるねえ (FC東京×浦和レッズ) | メイン | 『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』 »

2010年09月14日

●『ヘルボーイ』

613Iex+4THL._SL500_AA300_.jpg
最近仕事がちょっとヤマを越えたので、時間を見つけてはHDDレコーダーに溜まりっぱなしの未見映画を片付けているところ。まずはギレルモ・デル・トロ監督のアメコミ映画『ヘルボーイ』

第2次世界大戦中、怪僧ラスプーチンの仕組むナチスの秘密実験により魔界から生まれ落ちたヘルボーイ。ブルーム教授によって拾われた彼は60年後の現在、FBI「超常現象調査防衛局」のエージェントとして密かに活躍していた。ある日、ヘルボーイのお付き役としてFBIの新米職員マイヤーズが配属される。そりの合わぬヘルボーイとマイヤーズはヘルボーイの恋人リズを巡って恋のさや当てなどしながら、復活したラスプーチンに対して挑んでいくのだが……。

 
『パンズ・ラビリンズ』もそうだったけど、デル・トロ監督はファンタジー的な世界観や架空のキャラクターをリアルな世界と融合して見せるのが本当に上手い。ヘルボーイたちの「コミカル」でありながら浮きすぎない造形、魔界の怪物たちの圧倒的なおぞましさ、そして息をつかせぬ活劇と怪物同士のど迫力の大格闘シーン。一歩間違えば幼稚になるアメコミ世界をしっかりと現実化し、大人の観賞にも十分耐えられる大作に仕立てたのはさすがのセンスと言おうか。

美術やVFXの素晴らしさもさることながら、個々のキャラクターの立ち具合も非常にナイスだ。ハードボイルドを気取るが猫好きでナイーブな怪力男のヘルボーイ。彼の親友で、理性的で心優しい水棲人エイブ。心に傷を負い、ヘルボーイに惹かれながらそれを口に出せぬ発火女のリズ。「若き騎士」役として事件に全力でぶつかるマイヤーズ。1人1人がホント愛すべき連中なんである。恋に悩むヘルボーイが近所のガキに相談するシーンなど、実に微笑ましい。

ストーリー的にも娯楽作としては申し分がない。太古と現在、魔界と地上をまたにかけた壮大な物語は心躍るものだし、正義が意志の力で邪悪な企みを打ち砕く結末もまさに王道を行くもの。リズを巡ってヘルボーイとマイヤーズが三角関係になったり、弱っちくて役立たずに思えたマイヤーズが肝心の場面で決定的な役割を果たすなど、細かい部分も巧みだ。ヘルボーイの存在が都市伝説になってコミック化されるとか、「ロンギヌスの槍」が出てくるあたりにもニヤリ。

あえて物足りなかった部分を挙げるとするならば、「主人公は誰か?」という点だろうか。最初の方はどちらかと言えば、突然怪物たちの抗争の中へ投げ込まれて悪戦苦闘するマイヤーズの視点で物語が進んでいくように思えるのだけど、途中からいつの間にか完全にヘルボーイ視点になっちゃってるんだよね。なのに、結末のナレーションはマイヤーズの言葉になってたり。こういうのはちょっと感情移入を阻むのでもう少し整理されてた方が良かったかな、とは思う。
 
 
いずれにしろ、「良くできてるなあ」と感心した映画であることには変わりない。そう簡単に映像化できなさそうな原作なのにね。前にm@stervisionで書かれていたように、これほとんどまんま『デビルマン』なんだよなあ。とりあえずハッピーエンドになってるバージョンの。そういう意味では、日米の、監督の力量や技術、体制も含めての映画制作力の差を痛感させられる一作でもあるな。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2648

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)