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2005年04月30日

●『日本のいちばん長い日』

ビデオで、岡本喜八監督『日本のいちばん長い日』観る。1945年8月14日から15日、終戦という到達点へ向かう大日本帝国の政府・軍部における暗闘をドキュメンタリー調で描いた大作。タダゴトではない緊迫感の中、「日本史上最も重要な1日」の様子がものすごいスピードと密度で描かれていく。

天皇による終戦の決断から始まり、終戦の詔勅を巡る陸軍大臣と海軍大臣の対決、詔勅公布のために駆け回る官僚たち、陸軍省若手参謀たちの反乱決起、玉音放送レコードの争奪戦、終戦を知らず飛び立つ特攻機。そして血なまぐさい夜が明けて、ある者は静かに終戦を迎え、ある者は血だまりの中で息絶える…。なんというボリューム。これが本当に1日の出来事なのか、にわかには信じがたい気さえしてしまう。あくまで政府・軍部の内部に的を絞っているにも関わらず、全太平洋を巻き込む大戦争の終点というのはやはりエライコトだったのだと納得させられる映画だ。

後半、陸軍若手将校たちの暴走がエスカレートしていって、近衛師団長は殺しちゃうわ嘘の師団長命令で宮城を占拠しちゃうわ宮内省は家捜しするわNHKに乗り込んでアナウンサーに銃を突き付けちゃうわ…。もちろん誇張している部分もあるのだろうけれども、彼らがヒステリックに徹底抗戦を叫べば叫ぶほどその言葉は空虚になり、最後は滑稽にさえ見えてしまうあたりが岡本監督の最も描きたかった部分なのだろう。ラスト、決起の夢破れた若手将校たちが抗戦を呼びかけるビラを撒くがもちろん誰も応じず、最後は「勝手に」皇居前で自刃してしまう場面はひどく虚しい。

「東宝35周年記念」と銘打っただけのことはあり、キャストは豪華。どれだけ凄いかはここを見ればわかるが、上っ面だけの派手さではなくがっちり「戦争演技」できる役者が揃い、ど迫力の演技を披露している。阿南陸相役の三船敏郎、反乱将校役の黒沢年男と高橋悦史、それからちょい役だけどNHKアナを演じている加山雄三あたりが特に印象的。

まあ、結局、「負けを受け容れる強さ」が実は一番大事なんだね、ということだろうか。ありがちな感想だが。

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コメント

数年前、縁あって岡本喜八監督とお会いする機会があり、その準備として集中して喜八作品を観た時期がありました。「日本の一番~」は喜八監督の代表作のひとつとされていますが、やはり東宝の“記念作”だけに会社の要望が色濃く織り込まれ、戦時の上層部をしか描けなかったことを監督自身悔しく思われたそうです。

その反動で、東宝を退社した喜八監督がATGで制作したのが「肉弾」という作品です。学徒兵の目線から、戦争の苦悩を描いた「日本の一番~」と対をなす一本ですので、お時間があれば是非!

喜八監督は、民衆の目線から、権力への抵抗を描くことを得意とした監督なので…。

>やはり東宝の“記念作”だけに
オールスターキャストですしね。後の『沖縄決戦』に比べても、確かに描写の弾け方や視点の多様さは少ない気がします。でも、原作モノですし、軍部のみに対象をしぼったことで出てくるシャープでソリッドな感じも魅力だと思うので、岡本監督は不満だったかもしれませんが(笑)、これはこれで傑作でしょう。

>ATGで制作したのが「肉弾」
えーっと、確かメガネかけた若者がドラム缶に魚雷くくりつけて特攻しようとする話ですよね?まだ未見ですが、とりあえず岡本監督の代表どころはひととおり観てみようと思うので、近々。

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