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2005年11月22日

●『宇宙戦争』

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DVDでスティーブン・スピルバーグ監督『宇宙戦争』観る。ご存じH・G・ウェルズ大先生の原作の映画化であり、50年代の名作SF映画のリメイクでもある作品。しがない車オタクのトム・クルーズがある日突然始まった異星人の攻撃に遭遇、別れた妻との子供2人を連れて命からがら逃げまくり、奇跡的幸運の連続の果てについに生き残る、というお話(だよね?)。

(以下、ネタバレあり)

これは傑作だ。大規模な破壊と無慈悲な殺戮。逃げまどい、難民化する人々。生と死を分ける些細な要素。人間の、英雄的な行為と醜い諍い。異星人との接触のサスペンス。思いもかけない反撃の糸口。絶望の中で問われる、家族の絆。この映画には大規模侵略SFのエッセンスのほぼ全てが詰まっており、それでいてわずか2時間足らずの尺に収まっているとは…さすがはスピルバーグとしか言いようがないな。散見される脚本上の欠陥など、この堂々たる大作においてはほんのささいな問題でしかない。

中でも良かったのは、異星人を徹底的に残虐な「悪者」として描いている事。トライポッドはご丁寧にも人間1人1人にビームを当てて焼き殺すし、時には鳥かごのようなものに一旦生け捕りにして、1人ずつ生き血を吸って殺したりもする。映画史上最もヒドい異星人の1つと言っていいかもしれない。そんな設定に、「実は残酷好き」なスピルバーグの演出も冴えまくり。平原が見渡す限り人間の血に覆われているシーンとか、悲鳴を上げながら「虫けらのように」焼き殺される人々の演出なんて、よくここまでやれるよなあ、と感心するくらいイヤ~な感じ。

で、そんなこんなで人類は滅亡の危機を迎え、トム親子も何度も大ピンチに陥るのだが、しかしこれまた突然、細菌感染によって異星人は全滅し、侵略の時は終わりを告げる。ここで、トムも含め人間たちが徹頭徹尾無力で「何もできなかった」という話ならある意味完璧だったのだが、さすがにこれは娯楽大作。トムは機転を利かせてトライポッドをやっつけちゃうし、最後は軍隊の反撃が功を奏する場面も。まあ、これは仕方がないというか、それで良かったというか。やっぱりさすがに一矢くらいは報いないとね。トムがトライポッドに群がる鳥を見て「シールドが消えてるぞ!」と叫ぶ場面にはちょっと燃えた。

主人公のトム・クルーズについては、「かっこ良すぎる」とか言う人もいるみたいだが、でもオタッキーな部分と父親失格で駄目な部分がよく出ていて、好演と言っていいのではないだろうか。トムの娘も、気が強そうに見えて実は子供らしい、という描き方がナイス。問題はトムの息子か。あんな我が儘で馬鹿な事やって、ラストでのうのうと出てくるんじゃないよ、と思っちゃったよ。説明もなく強引なハッピーエンドにしたのは、やっぱりスピルバーグが父親だからなのかな。あの息子はトムの大活躍を知らないはずなのに、何でいきなり「父さん」と呼ぶのよ。

まあとにかく、1年足らずの短期間で作ったという割には特撮も迫力満点だし、久々にスピルバーグの天才ぶりを堪能させてもらいましたわ。残念なのは、映画館(それもできればドルビー完備の最新音響のあるところ)で観られなかったということか。ロードショーの時に観とけばよかったな…。さぞかしスゴイ迫力だったろうに…。

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