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2006年08月17日

●『最後の戦い』

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DVDで、リュック・ベッソン監督『最後の戦い』を観る。ベッソンの長編デビュー作は、いわゆる「核戦争後の世界」もの。文明が崩壊した後の過酷な環境の中、食料や女を巡って男たちがひたすら殺し合い続ける様を描く。

この映画のいいところは、徹底的に「余計な部分」を排しているところだと思う。画面はモノトーンで複雑なアングルや特撮は少なく、筋立てもシンプルに組み立てられたもの。ナレーションやテロップは皆無で、説明的な場面もほとんどなし。さらには「人類は声を失った」という設定らしく、台詞さえも一切ない。荒漠とした廃墟や砂漠で物語は静かに進んでいく。

そうして無駄な部分が省かれているからこそ、丁寧で小気味良い演出が観る者を引きつける。主人公が手作り飛行機で脱出するシーンのスリルと爽快感。空から突如降り注ぐ、魚(!)や岩への驚きと恐怖。ピエール・ジョリヴェとジャン・レノの目まぐるしく激しい戦い。そしてレノを見事倒しながら、結局全てを失ってしまったジョリヴェの哀愁……。いや、実に見応えがあった。

「世界の崩壊」やその中の人間模様なんてテーマは、「包括的に」描こうとするとそれこそハリウッドのトンデモ超大作(あるいはCG大見本市)みたいになってしまうわけで、むしろ抑制的に「描かないこと」で観る側の想像力を刺激した方がずっと効果的なのだ。この作品はいい成功例だと思うし、『ラ・ジュテ』とかもそう。おそらく、この経験則は今後も変わらないだろう。

実は、これまでベッソン映画は『レオン』くらいしか観てこなかったのだけれど、妙にウェットな『レオン』よりは、ドライでソリッドなこちらの方がずっと好みである。途中、いかにもアニメ活劇の音楽で使われそうな音楽がBGMになってたりしたけれども、あれはやっぱり日本アニメの影響だったりするのかな?もう何作品か観てみようかな、とちょっと思った。

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コメント

えっと半年ぐらい前に時々mixiにコメントいただいたものです(新宿のICCについてだったでしょうか)。お久しぶりです。

ベッソンはなんだかんだで「グラン・ブルー」が一番好きですね。というか、これまで見た映画の中でも、ベスト3には必ず入れたい作品。

この映画のジャン・レノはほんとかっこいい。未見であればぜひ。おすすめです。

あ、どうもどうも。そうです、ICCの閉館騒動の時にコメントさせていただきました。

ICCは幸いとりあえず内容を変えて存続、という形にはなったのですが、まだ実際に現地を見てはいません(見たらまたレポートします)。

そうですか。ベッソンでは『グラン・ブルー』ですか。素潜りの話でしたよね……。なるほど、近日観てみようと思います。

ベッソンには、独特の美意識(視覚的なもの)を感じるような気がします。

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