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2005年08月04日

●『独立愚連隊西へ』

WOWOWの録画で、岡本喜八監督『独立愚連隊西へ』。カラッとした明るさの中で描かれる人間模様、そして肝心な場面で表れる男たちの心意気。ストーリー的に前作と無関係でありながら、『独立愚連隊』のタイトルがしっくりくるシリーズ第2弾。

公式には全員戦死したことになっている「やっかいもの」部隊、という独立愚連隊の設定は前作と同じ。でも前作は一匹狼の主人公・荒木(佐藤允)が独立愚連隊(隊長・中谷一郎)と関わりながら活躍する様を描いたのに対し、本作では独立愚連隊(隊長・加山雄三、軍曹・佐藤允)が主人公で、彼らと一匹狼・中谷の交流と活躍が主軸。そして、独立愚連隊の辿る運命といい、「裏切り者」の立場の中丸忠雄が果たす役回りといい、シリーズ2作は全く逆になっている。要するにネガとポジの関係にあるのだ。

行方不明の軍旗の捜索のために死地へと赴く独立愚連隊。しかし彼らはどのような危地にあっても明るく振る舞い、大胆かつ知恵を絞った行動により切り抜けていく。加山隊長の爽やかさ、佐藤軍曹の絶えぬ笑顔、そして堺左千夫のふざけたそろばん占い。敵の大群に包囲され、機銃掃射を浴び、味方にも追われながら、欲に目がくらんだ悪人どもとは一線を画し続け、最後は敵の将軍(フランキー堺)やスパイ(中丸)の人間くささにも救われつつ、独立愚連隊はついに生き残る。

この映画における敵と味方は、中国軍と日本軍、では決してない。むしろそんな政治や時代による分け方に関係なく、人としての「善い振る舞い」と「悪しき行い」を浮かび上がらせる方に力点が置かれているように感じる(特にフランキーさんの立派さ!)。「たかが軍旗一枚」という思いっきり風刺的なマクガフィンの設定といい、面白さの中にもちゃんと岡本監督の思想というか姿勢がきっちり表れているのも嬉しいところだ。そして、この映画においては、悲しい犠牲もありながら、悪はその報いを受け、善い人々は(とりあえず)生き残る。最後に「なんて気持ちのいい連中だろう」という台詞があったなら、まるで『カリオストロの城』だな(笑)。

1作目のような情緒性たっぷりの余韻はなくなったが、よりコメディー色が前面に出てきて、ラストも解放的でハッピー寄り。どちらが好きかと問われれば個人的には1作目、になるのだけれど、万人向けにお勧めできるのは2作目かもしれない。どちらにせよ、戦争中の出来事について、人の腐敗や欲望の暴走もちゃんと含みつつ、これほどまでに娯楽性の高い傑作に仕上げた岡本監督の手腕はさすがとしか言いようがない。

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