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2009年03月11日

●『クローバーフィールド』『パンズ・ラビリンス』『最も危険な遊戯』

もうかなり前になるが、2月に観た映画のいくつかについてレビューなぞ。
 
 
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DVDでマット・リーヴス監督『クローバーフィールド/HAKAISHA』。「登場人物の1人がたまたま持っていたDVカメラで記録した」という設定の主観映像のみで構成されて昨年話題になった特撮大作。突如ニューヨークのマンハッタンを謎の大怪獣が襲い、高層ビルの一室でパーティーをしていた主人公たちは懸命に逃げようとするが……。

大爆発から自由の女神の首がとんでくる衝撃の映像に始まって、ニューヨークの街がどどど~んと破壊されていくスペクタクル。軍と怪獣との大規模な市街戦(やっぱり軍隊が出てくると燃えるな)。地下鉄の坑道に群がる超不気味な小生物たち。それらを次々と「間近で体験」させられる1時間余り。場面場面の見せ方にしてもなかなかよくできているし、実に面白かった。小型怪獣に噛まれた人間が破裂しちゃうあたり、イヤ~な気分にもなるし(笑)。

売り物の主観映像については……覚悟はしていたのだが、ちと酔った。家で観ていてこれだから、映画館だったら確実に気分が悪くなっただろう。つーか、これって手持ちカメラの設定にこだわる必要があったのかな?物語としても演出も決して悪くないのだから、それこそ『トゥモローワールド』みたいな「全体の状況が見えない」視点にさえしておけば、普通の撮り方でも堂々たる怪獣映画にできたのではなかろうか。なんか、映画というよりライドだよなこれは。

主人公たちが苦労して苦労してやっと逃げ切れるか、というすんでのところで結局ダメになっちゃって、思わず「『タイタニック』のディカプリオかお前は!」と叫んでしまった(笑)。でも、最後の「I LOVE YOU」にはちょっとだけホロリとしたりして。
 
 
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DVDでギレルモ・デル・トロ監督『パンズ・ラビリンス』。舞台は1944年、スペインの山中。内戦で父を亡くした少女オフェリアは母と2人、再婚相手のスペイン軍人の屋敷に引っ越すが、彼は山に潜むゲリラを刈りだしては拷問して殺す最低男だった。辛い現実を忘れたいオフェリアは妖精のカマキリたちに導かれ、近くの森の中に秘密の入口を見つける。そこでは「パン」と呼ばれる得体の知れない妖怪が待っていた……。

現実逃避しがちな少女がふとしたきっかけから「おとぎ話の国」に迷い込む、というのは『不思議の国のアリス』や『千と千尋の神隠し』を想起させるファンタジーの王道パターン。ただ、この映画の場合は「おとぎの国」のキャラクターたちが相当にグロテスクな上に、逃避の対象となる現実も半端なく残酷なのだ。陰惨なゲリラ戦の中で母親や善良な人々が次々に無惨な死を遂げ、見知らぬ村で独りぼっち。そりゃ子供じゃなくても空想に逃げ込みたくもなるわな。

後で調べてみたら、この作品はR-15指定なんだね。掌に目玉の付いた怪物が妖精をバリバリ食いちぎったり、超残酷な軍人の継父がゲリラに口を切り裂かれたりするようなシーンが続くんだから、まあ無理もない。ラストシーンも救いがあるかのように見せてはいるけど、でもやっぱり何も救われていないような気もするし(リンチの『マルホランド・ドライブ』と一緒でしょ、あれは)。決して子供には見せてはならないトラウマファンタジー、ってか。
 
 
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DVDで、村川透監督『最も危険な遊戯』。言わずと知れた松田優作アニキのアクションシリーズ第1弾。殺し屋・鳴海は誘拐された大企業社長の救出を依頼され、犯人のアジトへの侵入に成功するも、あと一歩のところで人質もろとも狙撃されてしまう。一命をとりとめた鳴海だったが、政財界を揺るがす陰謀に巻き込まれ、国家権力にもその命を狙われていく……。

久しぶりに見直してみたのだが、まあ良くも悪くも荒唐無稽というか、過剰さに満ちた作品である。主眼はもちろん松田優作を格好良く(それを際立たせるための格好悪さとともに)描く事にあるわけだが、やりすぎた描写が随所に飛び出してほとんどマンガの域に達した感じ。なんで優作は自動車より速く走れるんだ、とか、街中であんな大銃撃戦やって騒ぎにならないわけないだろ、とか、最後の対決で優作は○○をいつ服の下に隠したんだ、とか。

コミカルさとハードボイルドの並立、という意味では、音楽が大野雄二なせいもあって、『ルパン三世』の1stシーズン(ルパンが青い背広のやつ)を思い出す。いや、それよりモンキーパンチの原作版に近いかもしれないな。女性の扱いの非道さとか(笑)。いずれにせよ、独特のぶっ飛びようがなかなか楽しい佳作である。上映時間が短い(89分)のも良し。
 

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コメント

「クローバーフィールド」は映画館で観るべきですよ!
私の中では2008年ベスト2です。DVDも購入しました。
ちなみにベスト1は「君のためなら千回でも」。

>「クローバーフィールド」は映画館で観るべきですよ!

おお!いや、確かにその方がはるかに臨場感があってエキサイティングだろうし、怪獣好きの心に溢れていていい映画だとは思うんですが……ディズニーランドの「スターツアーズ」とかでも酔ってしまう私にはゲ○袋が必要かも。

つーか、「お、このおねえさんは可愛いな。最後まで生き残るといいな」と思って観てた女の人が目から血をダーと流して破裂して死んでしまったのは、けっこうショックだったっす(笑)。

お久しぶりです。
パンズ・ラビリンスのラストはとても好きです。
幸せなのか、そうでないのか。
現実に残された状態から見れば不幸せだろうけど
空想の世界に生き続けたのなら幸せかもしれない。
どちらから見るか、そして選ぶとしたのならどちらのか。

そういえばちょっと前にぴあで連載していた
クソむかつく2人組の映画評論みたいので
「ファンタジーは実は現実を表しているんだよ」
みたいなことをしたり顔で言ってたけど
自分にとってファンタジーはやっぱり逃げ場。
現実なんかじゃねーよ。と思っておりました。
あの連載ほんと読んでて腹たったなぁ。。。

>幸せなのか、そうでないのか。
>現実に残された状態から見れば不幸せだろうけど
>空想の世界に生き続けたのなら幸せかもしれない。

なるほどね。私は、やはり哀しいラストだと思いました。女の子自体はまあ救われているんでしょうけど、生き残った善良な人たちの涙がね。「助けてあげられなかった……」という感じで。

>自分にとってファンタジーはやっぱり逃げ場。
>現実なんかじゃねーよ。

確かに。けっこう多くの場合ファンタジーはファンタジーなわけで、必ずしも現実の写し絵として観るのが正しいとは限らないですよね。むしろ現実から遠く離れているからいいという見方もあるわけで。

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