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2005年08月22日

●『ヴィレッジ』

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DVDで、M・ナイト・シャマラン監督『ヴィレッジ』観る。19世紀(?)アメリカの、森に囲まれたとある村。長老たちの治めるその村では森へ入ることが禁じられ、人々は森の中に潜む「何か」に怯えながらも平和な暮らしを続けていた。しかし、ある日、勇気ある青年(ホアキン・フェニックス)が森へ踏み込んだ時から次々と恐ろしいことが…。

前作『サイン』があまりにお馬鹿な作品になってしまっていたので、今度は「毒を食らわば皿まで」の心境で観てみたのだが、おー意外にいけるじゃん、みたいな。割と誰でも普通に楽しめるのではないかと。ただ、傑作と言えるかどうかは…正直微妙である。一見トンデモないが、しかし考えてみればありがちなオチはいつものシャマランとも言えるし、一方で今回は「一発勝負」にとどまらない映画であったのも事実。うーむ。


(以下、映画のネタバレが内容になっとります。)

この映画はこれまでの3作より複雑で、「森に住む怪物は、実は長老たちが扮したニセモノだった」「しかし今回の惨劇は彼らではなく、ヒロインに横恋慕した精神障害者の青年が起こしたものだった」「そしてこの舞台は19世紀の村などではなく、荒んだ都会から逃げ出した現代人が作った人工的なコミュニティだった」というオチが重なり合ったもの。『サイン』でかなり批判を受けたことも影響しているのだろうか、今回は豪華3本立て(笑)。シャマラン気合いが入っとるなあ、という感じである。

ただ、それゆえに、限られた時間で3つものオチをバラさなければならないため、1つめのオチを比較的早い時間に出してしまい、それがクライマックス(重傷を負ったホアキンのためにヒロインが森を抜けようとして、怪物に襲われるシーン)のサスペンスを半減させてしまっている。まあ、「作り物とバレたはずなのになぜまだ追ってくる?」という演出になっているので緊張感はそれなりにあるのだが…。3つのうち2つに絞った方が映画としては締まったんじゃないかな。全体的には森の演出とか前半部の怪物の見せ方とか、なかなかいい雰囲気になっているだけにちょっともったいない。

似たような展開のホラーとしてはロシア映画の傑作『スタフ王の野蛮な狩り』があるけれど、あれは最後の最後までとにかく引っ張りまくって、いざ秘密を暴く瞬間には思わず目を覆いたくなるような緊迫感が画面に溢れていた。シャマランも変に脚本に懲りすぎて「実は…」なんてタネ明かしばかりに期待を持たせちゃうよりは、一度ああいうきちんとした映画で勝負してみればいいのに。いささか過剰なところはあるとはいえ、彼は絶対脚本より演出の方が才能あると思うぞ。

あと、この映画ラストがちょっと気に入らない(これは好みの問題かもしれない)。最後の台詞が「戻ってきたわ」か…。「これからも村の平和な生活を続けようね」ってな雰囲気でめでたしめでたしになって、あれで本当にいいのだろうか。パンドラの箱は開かれたはずじゃなかったのか?引きこもり肯定というか、どうも解放感がなかった。土壇場でヒロインを助けた若いパトロール員はちょっといい感じだったけど。

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