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2005年04月19日

●『地獄の黙示録 特別完全版』

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フランシス・コッポラ監督『地獄の黙示録 特別完全版』観る。

…うーむ。子供の頃に(オリジナル版を)観た時には、ある種の無秩序というか、とにかくバラバラ、支離滅裂な印象しか残らなかったのだが、今観ると全然違う。あらゆるシーン(特に前半部)が相当に作り込まれており、分裂的に見えて実はきちんと筋は通っているように思える。

多くの神話や伝説がそうであるように、この映画は主人公(ウィラード大尉)一行が狂った米軍人(カーツ大佐)目指してボートで河を上っていく、という単純なアウトラインに沿いながら、その途上でのエピソード(人との出会い)を順々に描く構造になっている。彼らが出会う人々はその誰もが狂って(あるいは病んで)おり、出会いを重ねる内に彼らをとりまくジャングルの状況も、また彼ら自身も原始状態へ退行していく。繰り返しの中で、徐々に、次第に、登場人物は、そして観客も、「闇の奥」へ連れて行かれるのである。

おそらく、コッポラが描こうとしたのは、文章として成り立つような「テーマ」ではなく、映画全体を通して感じられる「闇」に尽きるのではないだろうか。闇。ダークネス。その表現としての不気味さと空虚さ。

映画のラスト、オリジナル版ではカーツの神殿が爆撃されて終わったはずだが、特別完全版ではカーツを殺害し「君臨」したウィラードが静かにボートで去って終わる。後味がかなり違ってくる大きな変更だが、映画全体を思い返してみれば、やはり後者の方が相応しいように思える。何とも言えない、不可解で不気味な余韻が。

まあ、とにかく、凄い映画ではある。

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