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2011年08月18日

●ブルーレイの威力、『ブレードランナー』の魅力

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少し前の話だけど、Amazonでパイオニアのブルーレイプレーヤーが定価の7割引き(笑)くらいになっているのを見つけて衝動買いしてしまった。初めてのブルーレイプレーヤー。せっかくだからまずは高画質を堪能しようと『2001年宇宙の旅』『ブレードランナー ファイナルカット』のブルーレイ版も購入した。
 
 
で、さっそく観てみたのだが……ちょっとビックリしたっつーか、想像以上の凄さだった。我が家の26インチテレビ(コンポーネント接続)でもDVDより段違いに画質が良いのがよくわかる。

例えば『2001年〜』なら、「人類の夜明け」のアフリカの大平原や吸い込まれるような星空の中を進んでいくディスカバリー号。『ブレード〜』なら、タイレル社ビルの巨大壁面をはじめとして、未来のロサンゼルスをなめるように描いた空撮シーン。いずれも肉眼じゃ追い切れないんじゃないかと思うくらいに精細で、息を飲むほど美しい。

もちろん音質も素晴らしくて、もう全ての場面が官能的ですらあるというか。こりゃあDVDには後戻りできないな、と。まあ今はまだブルーレイ版のないソフトが大半だけど、この2作品みたいに両方出ていたら(そして廉価版があるのであれば)間違いなくブルーレイを買い直したくなると思う。つか、ブルーレイの次の規格も開発が進んでいると聞いたけど、個人的にはもうこれ以上は要らないんじゃ?と思わないでもない。旧作のソフト化に関しては。

別の見方をすれば、『ブレードランナー』(の最初のバージョン)は1982年(29年前)、『2001年宇宙の旅』は1968年(43年前!)に公開されているわけで、何十年もの時を経ても映像美と遠大なコンセプトが全く古びていない両作品は本当に凄い映画なんだな、と改めて思わされた。いずれの作品でもSFXを担当しているダグラス・トランブルはマジですげえ。
 
 
ついでに、これらの傑作を今回観直してみた感想なぞ。『2001年宇宙の旅』については1年前に劇場で観た際に詳しく書いたので、『ブレードランナー ファイナル・カット』について。

『ブレードランナー』には周知のとおりいくつかのバージョンがあるけれど、僕はとってつけた不自然なエンディングの劇場公開版よりも、リドリー・スコット監督が本来の意図の下に編集したこの『ファイナル・カット』の方が断然好きだ。それは、後者の方がディックの原作(『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』)に近く、よりもの悲しいお話となっているから。

『ブレードランナー』(とその原作)の物語的な魅力は、滅び行く世界の中で生を限られた存在たちが互いを受け入れたり拒絶したりしながらあがく、そのもの悲しさにあると思うのだ。だから無理にハッピーエンドに落とし込まない編集でこそロイ・バッティの最期の台詞も生きてくるし、デッカードの出自に関する仕掛けもレプリカントと人間の尊厳を描く上で効果的に思えてくる。

つまり「やがて全ては消えていく。雨の中の涙のように……」なんだけど、だからこそ、その限られた生を精一杯生きることで人は人たりうるのだ、と。

もっとも、原作と映画を並べてみると、人間とレプリカントの区別がわからなくなって、という「悩みの構造」は同じでも、原作は「しかし両者は根本のところで違う」という展開になり、逆に映画は「その区別に意味はない」という結論に至るのだが。まあ、もの悲しい無常観に違いはなく、両者に物語としての優劣はないように僕には思える。映画の方が前向きな意志が見えるかな。

いずれにせよこの映画、SFXはもの凄いけど、主人公は弱っちいしアクションは大したことないし物語は暗くて結末はすっきりしないしで、万人向けかというと疑問ではある(実際、公開時には興行的に成功しなかった)。でも、しっかり意味を受け止めることさえできれば、見終わった後に深く静かな感動が残る作品でもあると思う。あとはレイチェルがもう少し可愛い女優さんだったら……。
 
 
[付記]

僕は若い頃、ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読んでも「なんてジメジメして見栄えのしない話だろう」と思ってあまり好きになれなかった。でも10年ほど前に再び読み直してからだんだん好きになってきて、ここ数年は最も好きな小説の1つにまでなっている。多分、結婚したせいもあるんだろうな、と思う。外で仕事して冒険して浮気して、疲れ果てて帰ると朝は怖かったカミさんが優しく迎えてくれる、という物語が身につまされるというか(笑)。

いや、わしゃ浮気はせんけどな。
  

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コメント

いや〜

あなたは私なの?私のレプリカント?って聞きたくなるくらいまるで同じ事やってますな〜

違いは、私のBDプレーヤーがパナソニックな件くらいなものかしらね…
ブレードランナーと2001年の共通点はキューブリックが特別に作らせた高性能レンズですね、あのレンズで撮ったオープニングを活かせるのはブルーレイだけ…

あ、それと…
5.1サラウンドアンプを導入したのでさらに官能的になりました。これも絶対お勧め!!

恐縮です(笑)。

なるほど、『ブレードランナー』と『2001年〜』は使っているレンズが同じなんですか。どっちも、何十年も前の映画とはとても思えないですもんね。

『2001年〜』におけるキューブリックの画質へのこだわりはシネラマを念頭に置いたものだったのでしょうが、まさかこういう形で各家庭にまで高画質映像が普及するとは彼も思ってなかったでしょうね。

あと、音ですか。これは、今の家だと部屋のスペック的に(笑)限界があるので、5.1ch環境は引っ越した時にやってみようかと。ブルーレイ、「音は画質以上にいい」という人もいるみたいですから。

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