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2005年07月01日

●『たまもの』

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WOWOWの録画で、いまおかしんじ監督『たまもの』(R-15版)を観る。何とも感想の難しい作品だ…。林由美香という傑出した存在を浮きだたせまくって、さらに突き抜けちゃった、みたいな。笑えるようでなかなか笑えない、哀しいようで哀しいまま終わらない、複雑な味わいの忘れがたい映画。

ありえない偶然の出会いから恋に落ち、ものも言わず男に一途に尽くすヒロイン(林由美香)。そのあまりに直球すぎる行動は、次第に健気さを超えて耐え難いレベルへ。毎日お弁当、断られてもお弁当、押し入れ一杯に詰まった使い捨ての弁当箱…。ヒロインの強烈さが全編を覆い尽くす。物語的には大した変遷があるわけでもなし、相手の男はただ状況に流されるだけなんだけど、だからこそかえって際立つ一直線キャラ。一言もモノを言わず頑張り続ける林由美香の凄絶な演技。かわいいんだけど、ウザい。哀しいんだけど、怖い。

で、結局ヒロインのストーカーぶりに耐えきれなくなった男が、ちょうど誘惑してきた別の女に走って結婚も決めて、でも何だかよくわからないうちにまたヒロインの部屋へ戻ってきて(この「何だかよくわからない」ぶりがリアルでいやだな)、元のサヤ(でもないのか。お別れ?)のセックス、となったところでついに破局がやってきた。悲惨な末路、というべきか。そこに至って、それまで言葉らしい言葉を発しなかった林由美香がついに叫ぶ。何かに突き動かされるように、大きく。慟哭混じりの絶叫が哀しい。

…が、しかし。ラストシーンのセリフは実に意外なものだった。「おなかすいた…」。最後の最後で目くらまし、か?全くもって状況にふさわしからぬ言葉。体の下のさらに砂の下の、愛したはずの男への感情よりも、自分の体の感覚に忠実な姿。悲劇のヒロインは、一瞬にして無垢の殺人者に転じた。なんというショッキングな結末なんだろう。

いや、すごいな、この映画(つーか林由美香)。文字にするとわけわからん(映像で観ても、半分わけわからん)けど。ぜひ一度、観てみることをお勧めしたいと思う。


…というレヴューを書いていて、でもなんとなくUPせずに数日が経過してしまったところ、林由美香さんが亡くなったというニュースを発見してしまった。驚いた。ショックだった。

心より、ご冥福をお祈りします。

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コメント

はじめまして。

随分前のエントリーなんですが
この映画が好きなんでコメント書かせていただきます。


たまものは、心と体の距離が近すぎて
とても痛くて苦しい作品で、
演じる側としてはとても難しかったと思います。

しかし見事に演じきった由美香さんは、まさに『女優 林由美香』でした。


正直あたしはそこまで由美香さんについては知らないのですが、
同姓からしてもとても魅力的な方だったと思います。

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