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2010年09月21日

●『特攻大作戦』

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これもHDDレコーダーの底からさらったもの。ロバート・アルドリッチ監督の戦争アクション『特攻大作戦』。ノルマンディ上陸作戦直前のヨーロッパ戦線、アメリカ陸軍のはぐれ者ライズマン少佐(リー・マーヴィン)は司令部から特殊任務を命ぜられる。それは軍刑務所で重刑に処せられている囚人12人を率いてドイツ占領下のフランスで特殊工作を行え、というものだった。ライズマンと囚人たちは衝突を繰り返しながらも猛訓練をやり遂げ、遂に敵地へ潜入するが……。
 
 
大半は大いに盛り上がる展開ながら、終盤の畳み方がどうにも微妙な感じを残す映画。

重厚なマーチ曲の流れる中マーヴィンが険しい表情で囚人1人1人の罪刑を聞かされるオープニングに始まり、ジョン・カサヴェデスやチャールズ・ブロンソンら一癖も二癖もいや百癖もある囚人たちとの対立、マーヴィンによる硬軟使い分けた説得や猛特訓の様子、そして窮地に立たされた「汚い12人」がアウトサイダーらしい知恵と勇気で嫌な上官野郎の鼻をあかす場面。映画の90分くらいまでは本当に熱くて痛快で、男たちの闘いに素直にシビれることができた。

でも、肝心のミッションを遂行する終盤のくだりが……まずその秘密指令の内容というのが「フランス領内の城でパーティーにふける独軍高官を皆殺しにすること」だもんなあ。それ、不意打ちというか卑怯でしょ、卑怯。しかも城の中には軍人だけでなくその同伴する家族も大量にいて、結果的には地下の防空壕に逃げ込んだ彼らをガソリンと手榴弾で焼き殺すことになるんだから、後味の悪いことこの上ない。非戦闘員まで虐殺しちゃいかんでしょうよ、やっぱり。

それと、順調に行っていた作戦が途中で躓いて乱戦になるんだけど、そのきっかけが12人の中のレイプ魔(テリー・サヴァラス!)がドイツ将校の奥さん(美人)を見て衝動をこらえきれなくなって、というのだから他の11人の男っぷりと比べて気まずいというか。結局乱戦の中で仲間の大半は命を落とすのだが、不運とかやむを得ない事情とかがあってこその「悲劇」だろうにね。仲間の中に変態がいたから、というのはあまりと言えばあまりな理由である。

もちろん、戦争ってのはそもそも残虐だし現実というのは酷薄なものだから、戦争映画にカタルシスばかり求めてはいけないことくらいはわかっている。でも、この映画について言えばやっぱりマーヴィンと12人(いやレイプ魔は除くべきか)が一丸となるまでの過程が男泣きものであるだけに、終盤のグシャグシャな展開にはちょっと納得いかないものが残ったような。最後のブロンソンのハードボイルドな台詞は格好良かったけど。惜しいかな、という感じですかね。
 
 
[付記]
この映画、マーヴィン+12人の他にもアーネスト・ボーグナインやジョージ・ケネディらがやはり男っぷりを発揮して好演しているんだけど、マーヴィンを補佐するボーレン軍曹役のリチャード・ジャッケルも実直そのものの演技ですごく良かった。フィルモグラフィーを見てみたら、この人『硫黄島の砂』みたいな戦争映画の他に、東映・東映の日米合作特撮映画『ガンマー3号/宇宙大作戦』『緯度0大作戦』にも出てるんだね。あと『ザ・ダーク』にも(笑)。
 

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