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2015年07月03日

●観るまで死ねない!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』

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新宿のバルト9でジョージ・ミラー監督『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2D字幕版)を観た。舞台は核戦争後の荒廃した世界。家族を失って放浪する元警官のマックスはある日独裁者ジョーに捕らわれてしまい、そこでジョーに反抗して逃亡を図る女戦士フュリオサと、ジョーの子供を宿した奴隷女たちに出会う。マックスはフュリオサたちを助けてジョーの軍団と戦いながら「緑の地」を目指すことになるが……。


事前にタマフルや映画秘宝関係の人たちがやたらハイテンションで盛り上がっていたので逆に警戒してしまったのだけれど(笑)、いやあ、期待以上の大傑作だった。

無駄な前置きや余計な説明を極力省いたソリッドなストーリー、全編の半分以上で繰り広げられる激烈なカーチェイスと息をつかせぬ車上のアクション、コミカルなまでに異常性を強調されたジョーをはじめとする悪役たち、そして意外なほどに繊細な主人公たちの人間模様……いや、ホント、「よくできているなあ」と感心(感動)しきり。ビジュアル的にも物語的にも素晴らしすぎる。

何より良かったのは、ハード極まる舞台設定や物語の中で描かれているのが「人間性の回復」だったことだ。虚無に陥っていたマックスも、女戦士フュリオサも、奴隷扱いされていた女たちも、支配者に洗脳されていた白塗り戦士ニュークスも、みな逃亡と反抗の極限状態の中で心を通わせ、失っていた人としての心を回復していく。決してアクション(ももちろん凄いんだけど)だけの映画ではないのである。

主人公マックスにしても、別に彼は正義の味方でも何でもなくて、途中まではどちらかといえば自分の生存ばかりに執着している男として描かれている。でも、行きがかり上フュリオサや女たちの苦闘を目にすることでいつしか共感を覚えて共に戦う決意を固め、同時に本来の自分を取り戻していくのである。共感というのはまさに人間性の本質なわけで、この描き方には心を揺さぶられるものがあった。

そう、この映画のストーリーの核になっているのは「愛」や「友情」や「正義」ではなく「共感」なんだよね。嘘くさくないささやかな心の交流というか。それを、激しいアクションの合間のちょっとした仕草や目くばせで描けているのがこの映画のいいところ。意外と大人の映画なのである。

そして、マックスが超人ではなく、強いんだけど弱いところも限界もある人間で、でも結果的に大きな仕事を成し遂げて伝説の男となる、という展開も実にいい感じであった。マッチョなスーパーマンより「巻き込まれ型」のヒーローの方が納得が行くというか、好感が持てるんだよな。伝説ってのは本当は必然ではなく結果としてそうなるものであって。そして事件が終われば静かに去っていく、と。


しかし、この映画、本当に一つ一つのシーンが細かいところまでよく作ってあるんだよなあ。猛スピードで走る戦闘車の上でひもに吊り下げられた盲目の男がエレキギターをかき鳴らして士気を鼓舞してるとか、そういう狂ったところが特に(笑)。

ちなみに、僕が一番グッと来たのは、ようやく到達した「緑の地」(でも実はそこも……)での夜、女たちが空に光る人工衛星を見て「昔は、あれで世界中と通信できたんですって」「みんなテレビを観ていたのよ」「今でもあれは番組を流しているのかしら」みたいな会話をするシーン。かつてあったもの(文明)を失った時代の哀しさがよく描けているし、そこに思いを馳せること自体が「回復」のプロセスなんだろうな、と。

そういえば「同じように文明崩壊後の世界が舞台で、コミカルで狂ったこだわりのディテール描写があって、笑わない一匹狼の主人公、という映画は他にもあったよな」とか思いながら観ていたのだが……ジョン・カーペンターの『エスケープ・フロム・L.A.』がそうだったかも。違うかな(笑)。まあ、少なくとも通じるところはあるのではないかとは思う。あれも人間性回復が大きなテーマになっていたし。


まあ、何にせよ『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、超オススメである。これを観ずして今年の夏休みは終われないぞいやそもそも始まらないぞ、みたいな。マジで。


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