2015年06月15日

●『ニッポンの音楽』

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佐々木敦著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)を読んでみた。1960年代末から現在までの約45年間、日本のポピュラーミュージックにおいて脈々と続いているある重要な流れについて、日本音楽の「内」と「外」や1990年代に誕生した「Jポップ」、そして「リスナー系ミュージシャン」といったキーワードを用いて振り返る一冊。


この本が特徴的なのは、10年ごとに「物語の主人公」を設定してそのディケイドの音楽シーンをひとつの物語として語っていることだろう。70年代ならはっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)、80年代ならYMO(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)、90年代なら渋谷系(小山田圭吾と小沢健二、ピチカート・ファイヴ)と小室哲哉、ゼロ年代なら中田ヤスタカ、という具合である。

このような書き方は、描く対象がより明確になってわかりやすい反面、当然ながら多くのものを省略して削ぎ落とすことになるわけで、著者も書いている通り網羅的な歴史書や資料ではありえない方法論だ。ただ、読み物として考えればおそらく正解で、「主人公」の誰か1人にでも思い入れや興味があれば確実にツボに入る本となっている(逆に言えば、全くピンと来ない人も多いだろうが)。

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2015年04月27日

●『みんなのアムステルダム国立美術館へ』



日曜日、角川シネマ新宿で『みんなのアムステルダム国立美術館へ』を観た。先日レヴューしたウケ・ホーンダイク監督『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』の続編である。入札不調→工事中断で終わった前作からさ数年、様々なトラブルの末に改修を終えた国立美術館が、ついにリニューアルオープンするまでを描くドキュメンタリー。


続編といっても、おそらく前作の「美術館の工事が完成するまでのドタバタを収めようとドキュメンタリーを作り始めたら、工事が全く終わらず映画の方が先に終了」という展開は製作陣にとっても想定外だったのだろう。今回は半分くらいが前作のダイジェストで残りが「あとの顛末」という構成で、まあ真のエンディングを付けた再構成版という感じ。『伝説巨神イデオン 発動篇』みたいな(笑)。

で、その本作の後半は一応リニューアル開館が2013年度と決まった後の話であり、前作の「いつになったら終わるんだ?」という雰囲気はひと段落。とはいえトラブルに次ぐトラブルなのは相変わらずで、目玉作品はオークションで落札できず、エントランスを巡る市民団体との紛争は継続したまま、施工図には間違いがあり、新館長(ザ・強面)と内装デザイナーや主任学芸員(イケメンのタコさん)は意見対立を繰り返し……。

今回は「外からのトラブル」以上にこの「内部の対立」がすごいんだよね。エントランスや壁の色を巡って喧嘩腰のやり取りをする場面とか、なんか剥き出しな感じで。当たり前だけど、みんなプロだから何事にも自分の誇りをかけて主張わけで、全員の納得を得ながら調整するのは不可能と言っていい。

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2015年04月24日

●『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』

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先日、DVDで『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』を観た。レンブラント『夜警』やフェルメール『牛乳を注ぐ女』など世界的名作の数々で知られるアムステルダム国立美術館の大規模改修(の挫折)の模様を描いたウケ・ホーンダイク監督のドキュメンタリー映画。2013年に同美術館が実に10年ぶりに開館し、昨年本作の続編が公開されたことも話題になった。


2004年に始まったアムステルダム国立美術館の改修。野心的な館長と優秀な学芸員たち、意欲的な建築家の下で工事は順調に進むと思いきや、トラブルに次ぐトラブルにみまわれる。コンペによるデザインは市民団体に噛みつかれ、設計が終わった後で許認可を持つ行政にケチをつけられ、展示計画はなかなか決まらず、館長や主要メンバーはしびれを切らして辞めていき、そして入札の不調……。

なんというか、美術館に関わる仕事をしている者にとっては身につまされるというか、「あるある!」の連続(笑)であった。そうなんだよ、改修って本当に難しいし、文化施設ってのは色んな人が口を出したがるんだよなあ、みたいな。

僕自身、「そもそもミュージアムという存在は進歩的な市民社会や高度化した行政機構にはなじまない部分もあるのではないか」と思うことがある。ミュージアムには様々な人が強い思いを持っている一方で「なくても人が死ぬ訳じゃない」なんて言われることもあるし、そもそもミュージアムが扱う「美」というのは主観によるところが大きいから、その質や価値についての合意が難しいし。

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2015年03月18日

●未来館でアンドロイドを見てきたよ

先日、子供を連れて、お台場にある日本科学未来館に初めて行ってみた。企画展「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」はメチャクチャ混んでたので早々にあきらめて、常設展を一通り観覧。上野の科学博物館ほど体系だってはいないけれど、大型模型や体験型の展示が多くてなかなか楽しかった。

興味深かったのは、展示してあるロボットの数々だ。お馴染みの二足歩行ロボ「ASIMO」にはじまって、人の喋りに反応して頷いたり相槌を打つ「インタロボット」、撫でると喜んで尻尾を振るアザラシ型のセラピーロボ「パロ」、操作者が触感でつながりながら動かせる「テレイグジスタンスロボット テレサⅤ」……etc。

特に驚かされたのは人間と瓜二つの外見を持ったアンドロイドたち。なんか、今時のロボットってすごいのね。外側の造作や皮膚などの質感はもちろん、微妙な表情や仕草なんかはまあ、なんというか、「こりゃ見分けるにはフォークト・カンプフ検査が必要だよね」という感じ(知らない人はフィリップ・K・ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を読もう)。

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2015年01月29日

●B29とレコード、ツィゴイネルワイゼン

先日、都内の某博物館で新規の収蔵資料に関する仕事をしていた時の話。

今年、その博物館に太平洋戦争時に都内で拾った「高射砲の弾の破片」を寄贈してくれた方がいて、それはそれでもちろん貴重な(何しろ70年前の戦争を生で伝える)資料なんだけど、添えられていた手紙に書かれていた体験談が興味深かったのだ。

その方はいわゆる東京大空襲の翌日(つまり1945年3月11日)、ご自身はなんとか難を逃れて焼け野原となった都内を歩き回っていたとのこと。で、とある橋のたもとにたどり着いた時、おそらく偵察か写真撮影をしていたのだろう、米軍のB29爆撃機が低空で飛んで来たのだそうな。

とっさに身を隠したところ、特に銃撃を加えたり威嚇したりするでもなくB29は飛び去っていったのだが、頭の上を通過する際にB29の機体からサラサーテ作曲のヴァイオリン曲『ツィゴイネルワイゼン』が聞こえてきたのだ、と……。

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2010年08月25日

●虫嫌いのボクが「大昆虫博」に行ってみたよ!


もう何日か前になるが、「夏休みといえば博物館だ!」ということで、両国の江戸東京博物館で「大昆虫博」展を観てきた。自他ともに認める虫嫌いの僕(セミやトンボでさえも生きているのはおろか、死んでさえも触れない。本当は見るのもいや。ゴキブリなんてとんでもない!)だが、常設展の方でちょうど見たい展示があったのと「まあどうせ江戸博だから生きているのはいないし」ということで、ちょっと軽い気持ちで寄ってみた。



会場の最初の方は、巨大なバッタの像が置いてあったり、僕の大嫌いな(笑)やくみつるプロデュースの「目撃東京ムシマップ」なるコーナーがあったり、あと江戸博らしく虫の飾りをあしらった鎧甲が展示してあったりと、まあ比較的おとなしめの内容。これなら僕でも大丈夫、というか「さすがにこれじゃ刺激が少なくてつまらんな」という感想さえ覚えたのであった。ところが……。

(注意:以下、グロ画像多め。虫嫌いの方はご遠慮下さい。)

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2010年06月12日

●コマネチ!!

大物監督にコケる芸を習う (デイリーポータルZ)
 
 
傑作記事(企画)の多いデイリーポータルZだが、今回は『ソナチネ』を観てその余韻に浸っているところだっただけに、余計に心の琴線に触れた。とにかく、たけしさんらしい「若いヤツらへの暖かさ」と「くだらなさへのこだわり」をしっかり引き出しているのがとってもナイスである。

つか、ズッコケやマイク芸も凄いけど、極めつけの「コマネチ!」が……手の角度は36度、顔の角度は45度(笑)。くだらないってホントに素晴らしい。俺、殿には一生ついていきますわ。
 

2010年03月14日

●東京都青少年健全育成条例改正問題

都条例「非実在青少年」規制問題について (たけくまメモ)

野放しの漫画児童ポルノを規制へ 都条例改正案、反対論も (47NEWS)

都の青少年育成条例案に事業者・有識者ら反対 「ネット規制」 (日本経済新聞)

東京都条例で「非実在青少年・創作物規制」の動きが加速 (保坂展人のどこどこ日記)

東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例 (東京都公式)
 
 
忙しさにかまけて……というか、それを自分への言い訳にして情報を追うのが遅れてしまったけど、東京都の「青少年健全育成」とやらが凄いことになっているようです。

こうした動きへの賛否については、上記リンクや、それを手掛かりにした検索情報などを元に皆様ご自身で判断されると良いかと思います。ただ、問題なのは、こうした条例改正の内容はおろか、そもそも東京都がそうした動きをしている事について知らない人が多すぎることかと。

なので、とりあえず、いくつかリンクをはってみました。

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2010年02月06日

●『卒業写真』

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3日前のエントリーでは荒井由実(松任谷由実)さんの『ひこうき雲』について書いたんだけど、一緒にiTunesストアで買った『卒業写真』も、言うまでもなく歴史に残る名曲なんである。1975年発売の3rdアルバム「COBALT HOUR」に収録。

今になって「こんな良い曲だったんだ」と聴き直して感動した『ひこうき雲』とは違って『卒業写真』は僕の幼い頃からずっと世間的にも有名で、ラジオなどで幾度となく耳にしてきた曲だ。僕の生まれた翌年に発売され、以後数多くのアーティストにカバーされてきたことを考えればまあ当然だろう。ハイ・ファイ・セットをはじめとして、最近でも徳永英明さんとかいきものがかりとか。
 
 
歌の内容としては、「とある女性がヘコんだ時に卒業アルバムを開いては、青春時代に思いを寄せていた彼を思い出して自分を励ます」というもの。

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2010年02月03日

●『ひこうき雲』

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昨年の12月、友人(この人この人ね)の結婚パーティーのジャンケン大会でiTunesのプリペイドカードをもらった。最近特に欲しいアルバムがあったわけではなかったのだが、せっかくだからとiTunesストアでちょっと懐かしめの名曲を見つけてはポツポツと購入したりしている。

数日前にダウンロードしたのが、荒井由実(松任谷由実)さんの『卒業写真』と『ひこうき雲』。『卒業写真』はハイ・ファイ・セットや徳永英明さんのカバー版も含めてこれまで幾度も聴いてきた曲だけど、『ひこうき雲』の方はかなり久しぶり……というより、通しでじっくり聴いたのはこれが初めてかもしれない。
 
 
あらためて聴いてみると、なんというか、不思議に心に引っかかる歌であった。

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2009年09月25日

●連休のシメは、中村憲剛と田原豊


9月23日(水)

10時過ぎに起床。明日の朝、いつも通りに起きられない方に5千点(笑)。今日は、全く日が差してないわけではないが、しかし雲の量はかなり多いという微妙な天気。朝食はパンをクリームチーズ・ブルーベリージャムで食す。そういや昨日の「J’sベッカライ」、「店を移動してもらったから」ということで5%引きにしてくれただけでなく、ドイツパンの詰め合わせ(小ぶりなヤツが3種類×2袋!)もくれたんだった。そこまでしてもらうとかえって申し訳ないくらいだね。
 
 

昼前に出かけ、初台の東京オペラシティーのアートギャラリーで鴨池朋子「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」展。数年前から現美などのグループ展で見かける作家だが、本格的な個展は初とのこと。初めてゆえか力の入りようはハンパではなく、壮大な構成や展示全体を貫く「神話」的世界観、狼・ナイフ・少女・輪廻転生といった独特のモチーフと絵画・映像・造形等の多様なメディアを駆使して作り込まれた作品の迫力は、いずれも圧倒的であった。

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2009年09月24日

●現代美術だもの(と、石川ナオのかかし)


9月22日(火)

10時過ぎ起床。本当に、明後日から朝早く起きられるのだろうか(笑)。カミさんが高島屋で買っておいてくれたパンで朝食を済ませ、昼前に出かけて近所でしばし汗を流す。外は晴れてるのか曇ってるのかはっきりしない天気だ。昼食は、松屋で「豚と茄子の辛味噌炒め定食」を食べる。なんか米がやたら美味いな、と思ったら、「新米フェア」なんだそうな。なるほど。「ライスの大盛り無料ですよ!」と勧められたのだけど、さすがにそこまでは食えないっす。

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2009年09月23日

●タコスと、ピザと、アートの日


9月21日(月)

10時頃起床。だんだんこの辺に起きるリズムが身についてきてしまっている気がして、木曜日の朝にいつも通り起きられるかどうかが怖い。カーテンを開けてみたら、昨日とはうって変わって薄暗い曇り空。MLBマリナーズ×ヤンキースの中継を横目に観ながら、カゴメの「ラブレ」と食パン2枚、クリームチーズで朝食を済ませる。この日は珍しくイチローも松井も無安打で、現地に駆けつけた日本人ファンは貧乏くじ引いた気分だろう。掃除機をかけてから、外出。
 
 

既に12時を回っていたので、まずは腹ごしらえということで大崎駅前のフットニックで昼食。フットニックは恵比寿店の穴倉的な雰囲気も捨てがたいが、昼間であれば開放感のある大崎店の方がキモチイイ。欧州CLのベジクタシュ×マンUを観ながら、ハイネケンとチキンタコスをいただく。タコス、スパイシーで香草が効いてて鶏肉がゴロゴロで、美味い。ただ、具だくさんすぎて皮から具が溢れ、やや食べづらいのが難点かな。上手な食べ方、誰かおせーて。

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2009年09月22日

●青い空から、マイケル・オーウェン


9月20日(日)

朝10時くらいに起床。どうも目覚めがスッキリしない。近所のスーパーに水を買いに行ってから、食パン2枚とクリームチーズ、野菜ジュースの朝食。食べながら、JSPORTSでラグビートライネーションズNZ×豪州の再放送をチラッと観る。ちょうどNZが相手のパント処理ミスにつけ込んでリードを広げているところだった。NZと他の強豪国との一番大きな違いは「DNAレベルまで高められたボール扱いの技術」なんだとつくづく思う。風呂に入った後、外出。
 
 
家を出て見上げると、雲ひとつない青空。昨年の秋以降、こういう空を見るたびに大分が優勝したナビスコ杯決勝を思い出してしまう。国立を覆う透き通った青色、その空をバックにして、ウェズレイのサイドチェンジが駆け上がる高橋大輔めがけて飛んでいく……あれは感動的な試合だった。たった1年足らずで大分が今のようになってしまうなど、誰が想像できただろうか。

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2009年09月13日

●疲れている時は酒の回りも早いので気をつけよう

9月12日(土)

10時過ぎに起床。普段は休日でも9時頃には起きるようにしているのだが、最近は「朝から23時半頃まで仕事→帰りに中野坂上の加賀屋で、もしくはコンビニでつまみを買って家で2~3杯飲む→深夜就寝」、という生活が続いているので、どうも疲れがたまっているようだ。朝は食パンで軽く済ませ、「Foot!」の再放送を観たり風呂に入ったりしていたら、もう昼過ぎ。
 
13時から、スカパー!で京都×東京戦@鴨池の前半をテレビ観戦。開始早々、まるでTVゲームのようなきれいなワンツーリターンを決めたディエゴの得点で京都先制。何ともあっけない。その後はやはり30度を超える気温がたたったか全体的にダレ気味の展開となり、両チームともなかなかチャンスを作れない。カボレのいなくなってしまった前線では赤嶺が奮闘するも、久方ぶりの先発ゆえか持ち味を出せず、周りの選手も赤嶺に合わせきれていない印象。
 
 
0-1のままハーフタイムへ突入したところで、やや後ろ髪を引かれながら家を出て、中央線から神田で銀座線に乗り継いで浅草へ。

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2009年08月11日

●『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』


金曜日、貨幣博物館に寄る前、竹橋の国立近代美術館で「ゴーギャン展」を観た。後期印象派から出発しながら西洋文明に背を向けて新たな表現を目指し、南国タヒチを本拠地にプリミティヴィズム(原始主義)の先駆けとなった画家、ポール・ゴーギャンの個展。目玉は日本初公開となるボストン美術館所蔵の代表作『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』である。実は、僕もこの作品の謎めいたタイトルに引き寄せられたのだ。
 
 
今回の展覧会はさすが国立近美、幅広いゴーギャン作品が集められており、展示は年代順。最初の1枚は思いっきり印象派というか、造詣の浅い僕なんぞが見ると「モネと同じじゃん」という感じの作品であった。その後徐々に「いかにもゴーギャン」風の、どぎつい色彩で平坦に塗られた画に変容していく過程はなかなかに楽しい。『純血の喪失』なんて既にヨーロッパの絵とは思えないような雰囲気だし、タヒチに行く前からこんなだったんだねえ、みたいな。

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2009年06月24日

●「ネオテニー・ジャパン」


土曜日、柏まで出かける前に、上野の森美術館で「ネオテニー・ジャパン -高橋コレクション」展。日本屈指の現代美術コレクター高橋龍太郎さんの所蔵する名品80点による展覧会。
 
 
会場に入って最初の部屋でまず直面したのは、鴻池朋子の大型作品3つ。『惑星はしばらく雪に覆われる』は2mほどの狼(鴻池さんがよく使うモチーフだ)の像の表面にビッシリと細かい3角形の鏡が貼ってあるもので、本体そのもののインパクトもさることながら、鏡に照明が反射することで四方の壁と天上に無数の細かな光の模様が形作られる様が美しい。こういう「知的な仕掛けが感性に響く」作品は、個人的にとても好きである。

で、次の部屋からはこれでもか、というくらいに著名な日本人作家の作品が並んでいて……。

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2009年03月04日

●『パイパー』


先週某日の夜、渋谷のシアター・コクーンでNODA・MAP第14回公演『パイパー』を観た。はるか遠い未来の火星が舞台。人類が希望とともに移住を始めて900年、かつては栄えていた火星もすっかり荒廃し、わずかな人々がパイパーなる「死体と踊る機械」の襲来に怯えながら辛うじて生き延びていた。姉フォボス(宮沢りえ)・父ワタナベ(橋爪功)と暮らすダイモス(松たか子)は、少年キム(大倉孝二)とともに火星が衰退した理由を調べていくが……。
 
 
野田さんの芝居ははじめて観たけど、面白かった。想像していたよりもはるかに。

まず唸らされたのが、演出のダイナミックさだ。登場人物は先人が遺した「記憶のおはじき」を鎖骨に当てることによって時間を遡るのだが、その瞬間轟音が起こり、場内全体をデジタルライトが駆け巡る跳躍(ワープ)感。人類や金星人が火星に到着する宇宙船降臨シーンの圧倒感。無数の人々とパイパーがいきなり舞台に現れ、抗争を繰り広げる圧巻の場面。群衆を前に「骨」を掲げる野田秀樹の神々しさ。狭い舞台であそこまでの迫力が出るとは……驚いた。

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2009年01月14日

●3連休の最後は、マンU、味スタ、ICC

1月12日(祝)

夜中、JSPORTSでプレミアリーグの大一番。マンチェスターU 3-0 チェルシー。リーグと欧州CLに加えてCWCと2つのカップ戦、週2日ペースで超ハードスケジュールを戦い続けるユナイテッドが、2位チェルシーにホームで完勝。これで2試合消化が少ないユナイテッドと首位リバプールとの差が「5」、チェルシーとの差はわずか「1」。一気に詰まってきた印象である。

マンUは強かった。3得点ももちろん見事だったが、チェルシー攻撃陣につけいる隙を与えず完封した守備はさすがだった。CWC決勝でもそうだったように、今のこのチームの強さが豪華攻撃陣ではなく、11人のハードワークに支えられた堅いブロック守備にあることが証明された内容だと思う。対するチェルシーは、やっぱり何かが噛み合っていないのか、監督の采配は迷走気味だし、選手たちの表情がどこか冴えないのも気になる。大丈夫なのか?

試合前、観客席にはジョゼ・モウリーニョ氏の姿も。当然、CLで当たるユナイテッドの偵察なんだろうが、元監督としてチェルシーの動向もやはり気になるには違いない。そういや、「ハマれば凄いけど、やや個人能力頼みで不安定な攻撃」と「組織力に裏付けられた堅牢な守備」の組合せ、という点では、意外と今のユナイテッドとインテルのチームカラーってのは似ているのかもしれないな、と思う。完成度はユナイテッドの方が全然上だとは思うけど。

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2009年01月13日

●3連休の前半は、猿に電気に原美術館

1月10日(土)

暮れ正月は、もちつきだの天皇杯だの大掃除だの天皇杯だの新年会だのラグビーだのであまりゆっくりできなかったので、この3連休はけっこう楽しみにしていたのである。要領が悪いし根が怠け者だからなのか、どこかで時間に余裕がないと駄目になっちゃうのねん。

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ということで、土曜日はほとんど外にも出かけず、部屋の掃除と、あとはゴロゴロしながらDVDを観たりして過ごした。コーネリアスの『from Nakameguro to Everywhere tour '02-'04』と電気グルーヴの『Live at FUJI ROCK FESTIVAL ’06』

コーネリアスにしろ電気にしろ、デビューから約20年、ずっと聞いている僕としてもそれだけのお付き合いになる。もう40歳に差しかかろうというのに、3人ともマンネリに陥ることなくパワフルな活動を続けているのは凄い。というか、ファンとしてはとても嬉しい。冗談抜きで、暮れにリキッドルームで電気のライヴを観てから、毎日の生活が少し楽しいような。電気で元気(笑)。国際フォーラムのコーネリアスは、京都戦と重なってて行けなかったんだよな……。

どちらも、今年の春にはまたライヴDVDを出すそうだ。すげえ楽しみ。

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2009年01月04日

●明けまして写美、明けましてビール


新年最初の美術館は、2日に正月開館の写真美術館へ。1年に1回この日だけは全て無料で展覧会が観られるのである。確か今年で3回目か4回目のはずだが、恒例行事として定着してきたのか、昨年に比べてもずっとお客さんが多かった。良いこと……なんだろうな、普通に考えれば。ただ、あんまり混むと落ち着いて観られないから、それはそれで困ったことでもある。とりあえず個人的には、今のレベルで落ち着いてほしいな、と勝手に思ったり。
 
 
最初に入ったのは3階の『甦る中山岩太:モダニズムの光と影』。主に戦前に活躍した日本近代芸術写真のリーダー的存在、中山岩太氏の回顧展。作品の感想としては……まあいかにもモダニズム、という感じの凝った構図やら幻想的な表現やらが並んでいて、目の保養にはなったかな、と。マン・レイほどのとんがった表現でもないし、「これは」と目を見張るような一枚もなし。福助足袋の広告写真はちょっとユニークで面白かったけど。

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2008年10月21日

●8年ぶり、電気にシビれ中

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先週15日に発売された電気グルーヴのニューアルバム「YELLOW」。さっそく渋谷HMVで購入し、iPodでヘビーローテーション中である。前作「J-POP」がこの4月に出てからわずか半年でのリリースは、ファンにとっては嬉しい限り。なにしろ、その前の「VOXXX」になると何と8年前、2000年までさかのぼらなければならないのだから。
 
 
聞いてみた感想としては、やはり「J-POP」と似た感じだな、と。「J-POP」は先行シングル『少年ヤング』『モノノケダンス』のポップなスタイルとは裏腹に、非常にソリッドな、作り込みは凄いんだけどおフザけ少なめで硬質な作風がファンを驚かせた。よって、今度の「YELLOW」は反動でハジけた作品になるんじゃないかという予想もあったようだが、少なくとも僕の感覚ではさほどの違いは感じられなかった。もちろん「同じように、良い!」という意味で。

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2008年07月02日

●「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」


土曜の午後、『インディ・ジョーンズ』のついでに、森美術館「英国美術の現代史:ターナー賞の歩み展」を観た。ロンドンのテート・ブリテンで毎年開催されている、現代美術界で最も重要な賞の一つ「ターナー賞」。その歴代受賞者の作品を一堂に集めるという史上初の試み……っつーか、「いったいいくらかかったんだろうなこれ」「さすがに不動産で儲けてる大グループはやることが違う」と変な感心の仕方もしてしまう、これ以上はないくらい豪奢な展覧会。


入場してみると、お客さんの大半は「展望台と屋上のついでに、美術館もあるから寄ってくか」てな感じの観光客やカップルの模様。で、案の定というか、奇っ怪な模様の壺やらホルマリン漬けの牛やらぶら下げられた黒い布やら筋立てのないミニマルな映像やら、「いかにも現代美術」な作品を見て訝しげに首をひねる姿がそこかしこで見受けられたのだった。毎度の事ながら、この美術館の展示内容と客層のミスマッチは激しいものがある。

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2008年06月22日

●『世界報道写真展2008』『森山大道レトロスペクティヴ』


土曜の午後は、久しぶりに東京都写真美術館へ足を運んだ。


まずは地下1階展示室、毎年恒例の『世界報道写真展』。アフガンで、そしてイラクで苦戦する米軍と戦火に巻き込まれる人々、アフリカで虐殺されるマウンテンゴリラ、ブット元首相暗殺、ジンバブエ騒乱、ゲリラ化するクルドの子供たち、プーチンのポートレイト、雪崩から間一髪逃れるプロスキーヤー、首だけになったイッカク、地球温暖化で溶けていく北極、etc。毎度の事ながら、重い光景やど迫力の一枚、ユニークな画像がてんこ盛りである。

日本人として先日の秋葉原での事件や東北の地震には慄然とさせられたものだが、さすがにこの展覧会で取り上げられるようなニュースとなるとほとんどが「遠い世界の出来事」のように思え、正直なところ自分自身との距離の取り方に戸惑うようなところはある。見せ物として「楽しむ」ほど無神経じゃない(と思いたい)し、変にわかったような気になるのもいけないのだろうし、いったいどう受け止めたらいいのやら……毎年考え込んでしまう。

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2008年03月14日

●『チビルダ ミチルダ』

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夜、吾妻橋のアサヒ・アートスクエアで『チビルダ ミチルダ』。この時期恒例となっていたコンテンポラリーダンス中心のパフォーマー・イベント「吾妻橋ダンスクロッシング(ADX)」がモロモロの事情により今年はなし(別時期に「HARAJUKU PERFORMANCE +」が行われた)ということで、代わりに(?)康本雅子さんの単独公演である。経緯はどうであれ、「ADX」では数分だけだった康本さんの踊りが目の前でたっぷりと観られるのは、ファンとしては大変にウレシイ。



うっかり開場の1時間も前に着いてしまったため、しばし雷門近辺を散策。あいにくの雨模様だけに仲見世もガラガラの様子だった。東武浅草駅前の回転寿司屋で軽く夕食をとってから、アートスクエアの入っている「アサヒスーパードライホール」へ。下品な話だが、昔、ここのビルの上に乗っている黄色い物体を見て「ウ○コビル」とか呼んでる人がいたよなあ(川崎フロンターレは同様の理由で……いや、クラシコ敗者の身では何も書けません(笑))。

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2008年01月19日

●大逆転秩父宮とウルトラマン、飛行機雲に月


午後、秩父宮ラグビー場でトップリーグ第11節。NECグリーンロケッツ 33-21 東芝ブレイブルーパス。プレーオフ4枠へ向けたサバイバル継続中、2位と6位の直接対決。首都圏チーム同士の対戦カードだけに当然盛り上がりが予想されたのだが……観客動員もプレー内容もやや物足りないながら、「展開の綾」に救われた試合となった。


序盤は双方FWを前面に押し立てゴリゴリ押そうとするが、ほぼ互角と見るや今度はパス展開のやり合いに。NECはBKのタレントで劣る上に動きの連動性もイマイチで、数的不利な形でDFの壁に当たってばかり。東芝も攻撃にかかる時の切り替えの早さや連動性はさすがながら、SO廣瀬を筆頭にパスの精度が悪く、ハンドリングエラーも多い。じれったい攻防が続く。

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2007年09月23日

●『Summer Time Blues ~沈黙の夏~』


金曜日の夜は、新宿のシアターアプルで『コンドルズ日本縦断大轟音ツアー2007 Summer Time Blues ~沈黙の夏~』(長いな(笑))。僕にとっては、コンドルズも珍しいキノコ舞踊団と同じく、一昨年の写美の展覧会『恋よりドキドキ』ではじめてその存在を知ったダンスカンパニーである。公演を観るのは初めて。


前売完売の大盛況。入場して会場のおそらく8割くらいが女性客で占められているのを見たときはどうしようかと思ったのだが(笑)、そんなことは関係なしの面白さだった。踊りだけでなく、コントあり、演奏あり、映像ありの内容。そして笑えて、驚かされて、おまけに感動もできて……完成されたエンターテイメントという感じ。

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2007年07月18日

●「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語-夢の楽園」

【注意】今回はややグロい内容を含んでいるので、苦手な人は見ないように!


月曜日の午後は原美術館で「ヘンリー・ダーガー 少女たちの戦いの物語-夢の楽園」展。ダーガーについて詳しくははてなWikipediaを見てもらうのが早いのだけれど、一言で言えば、数十年に渡ってフリーター&ヒッキー生活を続けながら残酷描写満載の戦争物語や膨大な量のロリコン絵を残した、アメリカのちょっと変わった(笑)お爺さんである。FBBの「地獄のアメリカ観光」という本で紹介されたのを目にしてから、ずっと作品を見たかったのだ。


毎度のごとく最終日に飛び込んだのだが、美術館に着いてみたら入口に行列ができていてビックリ。中に入っても大混雑。うーむ。今ダーガーって流行ってるのか?それとも雑誌か何かで紹介でもされたのか?女性とカップルが多く、みんな、そんなにデロンデロンの内臓やオチンチン生やした幼女が好きなんだろうか(って、男1人の俺はもっと怪しいのか)。ダーガーの作風を知らない人もけっこういそうで、周りがどういう反応をするのか、ちょっとドキドキ(笑)。

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2007年07月16日

●吉祥寺で、キノコとビールとお魚と


水曜日、Loft+1のイベント後は総武線で吉祥寺へ。吉祥寺シアターで珍しいキノコ舞踊団『あなたの寝顔をなでてみる』。人気のコンテンポラリーダンス・カンパニーの公演。この人たち、前に写真美術館でコンドルズ・ニブロールと一緒に展覧会(よく考えたらえらいユニークな企画だったな)をやったことがあって、一度見たかったのである。200人程度収容の会場が満員の盛況。連日売切の状態らしい。前売りを買っておいて良かった……。


で、生まれて二度目のコンテンポラリーダンス生観覧は……面白かった。楽しかった!コンドルズみたいにコントで爆笑させるわけでもないし、かといって難しいコンセプトがあるわけでもなさそうだし……どう表現したらよいのだろう、女性5人がひたすら跳び、はね、笑い、叫び、絡み、そして手足をいっぱいに伸ばして踊る。かわいらしく、微妙に可笑しく、そして不思議な多幸感が空間に溢れる。終わったあと、非常にポジティブな気持ちになっている自分に気づいた。

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2007年05月01日

●現代美術館に『明日の神話』キタ


昨日、東京都現代美術館に先週末から展示されている『明日の神話』を観に行ってきた。60年代後半に岡本太郎がメキシコで作成し、03年まで行方不明になっていた巨大絵画。偶然発見された残骸から「太郎の船団」なる文化人グループが中心となって復元し、昨年は汐留の日テレ前で公開されていたのだが、この4月から現代美術館で展示されることになったのだ。

ひと目見ての感想は……「なんじゃこのデカさは!!」(笑)。何しろ縦5.5m横30mである。それが室内展示ってどういうことやねん。絵もでかいが、展示室のデカさも相当だな、こりゃ。まるでこの絵のために部屋を作ったかのようにピッタリとはまっているのも面白い。現美ができたのは10年ちょい前だから、これも単なる偶然なんだけど。

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2007年03月13日

●吾妻橋ダンスクロッシング


先週の金曜日、アサヒ・アートスクエアで「吾妻橋ダンスクロッシング The Very Best of AZUMABASHI」。コンテンポラリーダンスを中心として、パフォーミング・アートの最先端を走るパフォーマーのオムニバス公演……とか偉そうに書いても、実はよくわかっていないのだが(笑)。近頃仕事関係から派生して目にする事の多い「イマドキの舞台芸術」を見てみようと、ふと気が向いて浅草まで足を運んだ。


会場は隅田川のほとり、誰もが見覚えのある例のビル(「○○○ビル」とか呼ぶなよ(笑))の中にあった。客席数は200席ほど。こぢんまりとした劇場内には飲み物のカウンターもあり(1ドリンク付きだった)、舞台の背後では大型ビジョンに絶えず楽しげなアニメーションが流れてなかなかいい感じ。場内に喫煙スペースがあって煙もうもうだったのがちと難だが。

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2007年03月08日

●OpenSky2.0


昼、初台まで歩いて、リニューアル後はじめてのICC。現在の企画展は「OpenSky2.0」

「OpenSky」とは、メディア・アーティスト八谷和彦さんによる「個人的に飛行装置を作ってみるプロジェクト」である。2003年に始まって、設計から模型機による実験、人が乗れる実機の試作と試験飛行を経て、間もなくジェットエンジンを搭載した実機による有人飛行(!)へ到達する予定だとか。まあ、平たく言っちゃうとあれだ、『風の谷のナウシカ』でナウシカが乗っていた「メーヴェ」を本当に作っちゃえ、ということだ。

展示会場には、制作や実験の模様を記録した写真とビデオ、実機、そしてフライト・シミュレータなどがあった。上の写真は、左がラジオ・コントロールのジェット機「メーヴェ1/2」、右がゴム索で引いて飛ばす有人飛行機「M-02J」。「メーヴェ1/2」の方はアニメに近い形とサイズだが、「M-02J」の方はかなりデカくてゴツい印象。まあ、やっぱり人乗せて飛ばすものだからねえ。「メーヴェ」で有人飛行するにはミノフスキー粒子が必要だな(笑)。

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2007年01月27日

●祝!?国立新美術館開館


先日、六本木の旧防衛庁跡地に開館したての国立新美術館に行ってみた。工事の途中で一度内部は見学させてもらったし、開館前のお披露目でも一通り中は拝見したのだが、実際に展覧会の行われている様子を見るのは初めてである。


まあ何百億円もかけたのだから当たり前と言えば当たり前かもしれないが、黒川紀章設計の建物に内部の施設設備、そしてロビーに置かれているソファー等の什器に至るまで、どれも豪華でスタイリッシュであった。微妙にクッションの効いたフローリング風タイル床も足が疲れなくて良し。3階まで吹き抜けのロビーは全面ガラス張りで確かに明るいけど、夏の冷房代は異常にかかりそう(余計なお世話……じゃないよな、税金だから)。

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2007年01月02日

●あけまして写美


今日は、正月開館している東京都写真美術館に行ってきた。美術館でゆっくり展示を観られるのも久しぶりである。昼前頃に着いて3階の展示室から順に回ったのだが、正月ということでお客さんはやや少なめ、各展示室に10~20人といったところか。ゆっくり観られるので、個人的にはいいっちゃいいのだが。


3階の展示は「光と影-はじめに、ひかりが、あった」なるコレクション展。タイトルどおり、写真の原点とも言える「光」と「影」にこだわって、十数人のアーティスト(グループ)をチョイスした展覧会。全体的に見応えがある中、マン・レイ、山崎博、森山大道、片桐飛鳥、杉浦邦恵あたりの作品は特によかった。なにしろテーマがテーマだけに、シンプルだけど、写真好きの根源的な美的感覚に響くものがあるんだよね。

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2006年10月16日

●「大竹伸朗 全景」とか


一昨日は、久しぶりに木場の東京都現代美術館(通称:MOT)に行ってきた。


現在の企画展は「大竹伸朗 全景 1955-2006」。いや、さすが80~90年代の日本現代美術界を代表する作家の回顧展とあって、地下2階から3階まで難解……というより「こりゃナンダ」という奇天烈な作品がびっしり。最後まで見終わって会場を出る時には「いやあ、現代美術観ちゃったな」と妙な充実感が(笑)。

まあ、要するに、世間的にイメージされるところの「いかにも現代美術」なモノが並んでいる展覧会である。子供時代の落書きから最新作まで、それこそ多種多様な作品が並んでいるのだけれど、やっぱり単なるペインティングよりもインスタレーションとか立体絡みのものの方が「いかにも現代美術」的な「違和感」を味わえて良かった。

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2006年09月11日

●週末、食べたものとか見たものとか

9月9日(土)

午前中は千駄ヶ谷の東京体育館でエアロバイク&マシントレーニング。ここは2時間450円と、週に何回もジム通いできない僕にとっては割安なので重宝しているのだが、早い時間から混むのが難点か(会員制のジムだと夜料金の平日20時以降が混んだりするけど)。まあ、贅沢言っちゃいかんかな。たっぷり2時間汗を流して、風呂につかって「ハー、極楽」。


代々木経由で新宿まで歩き、「鹿児島 本家 かのや」で昼飯。日替わり定食は大ぶりの鰹の叩きに野菜たっぷりの味噌汁、大根の煮物、五穀米とボリューム的にも栄養的にもなかなかのものだった。880円は高いか安いか……また来よう。

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2006年07月13日

●「イザベル・ユペール展」


先日、写美で「キュレーターズ・チョイス」展のついでに見た「イザベル・ユペール展」。「フランスを代表する女優、イザベル・ユペールだけを被写体に、世界的に活躍する72人の写真家が撮影したポートレート」(チラシより)を集めた展覧会。これが、意外に(と言っては失礼だが)面白かった。

ユペール自身は既に50歳を過ぎており、正直なところ20年前は確かに美しいけれど最近の写真はちょっと…という感じ。なのだけれど、しかし「イザベル・ユペール」という1つの題材を扱う様々な写真家の作品を同列に並べることで、その写真家たちの作家性・特徴の違いをはっきりと見て取ることができる。そこが、僕のようなニワカ写真好きにとっては楽しいのである。

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2006年07月07日

●「キュレーターズ・チョイス」


先日、写真美術館で見た「キュレーターズ・チョイス」展。写美の館長・学芸員ら専門スタッフが、数万点に上る美術館コレクションの中から思い思いの観点で「セレクトした」作品群を展示。おそらく日本では他に類を見ないユニークな展覧会だが、これが非常に面白かった。

よく映画雑誌とかである「○○年私のベスト10」という類の企画。あれの楽しさは、「皆はどんな映画を好むか」という統計的な情報にあるのではなく、複数の選者が異なるチョイスをすることによって、多様なものの見方、さらには「こんなものもあるのか」というマイナーな知を得られるところにある(逆に、アンケートの多数決で順位づけられたベスト10の何とつまらないことよ)。今回の展覧会の魅力も、まさに同じである。

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2006年05月21日

●戦争画@藤田嗣治展

昨日、国立近代美術館の「藤田嗣治展」で観た戦争画。暗いライティング、ダークグレーの壁紙、息を呑んで見入る鑑賞者。それ以前に並んでいる貴婦人や裸婦を描いた優美な「乳白色」の絵とのコントラストもあり、そのコーナーだけは異様な雰囲気になっていた。展示されていたのは『シンガポール最後の日』『アッツ島玉砕』『神兵の救出到る』『血戦ガダルカナル』『サイパン島同胞臣節を全うす』の5作品。

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2006年05月19日

●「デスティニー・ディーコン」&「ギィ・ブルダン」

写真美術館で「デスティニー・ディーコン展」と「ギィ・ブルダン展」。ちょっとエグいと評判の両展覧会、とりあえず「ものは試しだ」と足を運んでみたのだが……これが意外と面白かった。


2階展示室「デスティニー・ディーコン展」は、オーストラリアの新進気鋭アーティストの個展。切り取られた黒い人形の首、血まみれのブーメラン、奇怪な扮装の人々。刺激的な描写の写真が並ぶ。「先住民出身」を前面に打ち出している作家らしく、全体を覆うのは強者(白人、富裕層)による弱者(先住民、貧困層)への支配・抑圧を告発する視線である。

ディーコンという作家がただのキワモノではない所以は、多くの作品が人形や美しい自然風景や不自然な扮装といった「人ならぬもの」をモチーフとしているにも関わらず、そこに写っていない「抑圧された人々の怒り」がひしひしと伝わってくるところにある。あえて直接写さない事で感じさせる、という迂回的なテクニックとでも言おうか。うーむなるほど、という感じ。

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2006年02月25日

●第9回文化庁メディア芸術祭


早起きして、午前中から写真美術館の「文化庁メディア芸術祭」。1年間のメディアアートの優秀作百数十点がアート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門に分かれて展示されるお祭りである。とにかく若い人を中心に混み合う展覧会なので、今年は比較的マシな午前中を狙ってみた。ちなみに入場は無料。さすが文化庁というかなんというか…。


アート部門は、「創作」的なものよりも、現実の時間や空間を操作・再構成することで、観る(ないし体験する)者の感覚に訴えようとするものが多かった。大賞作『Khronos Projector』(Alvaro CASSINELLI)もそう。映っているのは一見ただの夜景だが、人がスクリーンに接触すると触れ方(強さ・速さ等)に応じて接触部分周辺の時間が変化。手を離すと接触部分を渦の中心としてゆっくりと夜へ戻っていく。ちょっとした神様気分を味わえるような作品。

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2006年01月17日

●「発掘された不滅の記録 1954-1975」

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「発掘された不滅の記録1954-1975 [VIET NAM ベトナム] そこは、戦場だった」。やたら長くて思わせぶりなタイトルだが、抗仏戦争・南北分断からサイゴン陥落までの、要するにベトナム戦争の写真展である。

この展覧会、概ね時代順に、「北」側と「南」側の双方から撮影された写真を並べる形になっている。朝日新聞社主催のせいかどうかはわからないが(笑)ボリューム的には「北」側のものが多数を占めており、ホームページで使われている写真もなぜか「北」側のものばかりである(まあ、これは著作権やら何やらの関係があるのかもしれないな…)。

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2006年01月06日

●『杉本博司 時間の終わり』

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夜、六本木ヒルズの森美術館で『杉本博司 時間の終わり』。ニューヨークを中心に活動する写真家・杉本博司の代表シリーズが一同に会する回顧展。単体作品の質の高さはもちろんのこと、展示空間にも様々な工夫が施され、会場全体がいい意味での「贅沢さ」に満ちあふれたものとなっていた。

この展覧会は作品シリーズごとにスペースが分かれているのだが、それぞれ趣向が凝らしてあってとても面白い。光と影の巧みな配置、展示室に築かれた能舞台、白の部屋と暗い部屋とのコントラスト、20mはあろうかという長大な写真、林立するモノリスの陰に隠された作品…etc。他の展覧会でも見られる演出もあれど、これほどの規模・多彩さとなるとちょっと記憶にない。作家の知性・こだわりと美術館のポテンシャルとがうまくマッチしたというところか。「次はどんな展示かな」とワクワクさせられた。

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2005年12月22日

●なるほどこれは確かに…

号泣ものである。ドラえもん最終話。


公式のマンガで一旦描かれた最終話(ドラえもんが帰っちゃうやつ)も素晴らしいし、「しずかちゃんと結婚できたかどうか不確かで、うだつの上がらない会社員になっている未来ののび太」が僕は好きなんだけど、これはこれで大いにありだな…。

特に、何も知らないママがいつものように夕飯に2人を呼ぶシーンと、あとラストの「のび太くん宿題は終わったのかい!?」が泣ける。

2005年12月19日

●『植田正治:写真の作法』

恵比寿の写真美術館で開催中の『植田正治:写真の作法 ~僕たちはいつも植田正治が必要なんだ!~』。故郷・山陰の人や風景を題材として「植田調(UEDA-CHO)」と称される独特の感覚の作品を発表し続け、国内のみならず海外でも高い評価を得た写真家・植田正治。その没後5年目に開催された初めての本格的な回顧展。

植田さんの作風は観れば一目瞭然、「作り込み」が第一の特徴である。キャプションにも書いてあるように、土門拳みたいなリアリズム路線とはまことに対照的。砂丘の中で趣向を凝らして並べられた人やオブジェたち。加えて、単に作為的というだけではなく、カラッとした明るさがあるのがこの人のいいところだ。向き合った時に思わず微笑んでしまうような感覚……そう、「ユーモア」という言葉がしっくりくる感じ。「ホラ、こういう配置でこう撮ってみたら面白いでしょ?」と悪戯っぽく話しかけられているような。

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2005年12月17日

●ついでにもう1つお別れ…なのか?


帰り道、笹塚から京王新線に乗り換えて初台のICCで「アート&テクノロジーの過去と未来」展2回目。mixiのコメントでも書いたのだが、テクノロジーを駆使しているといっても、やっぱり「美が(理よりも)勝った」作品がいい。特に素晴らしいのは、実験工房、佐藤慶次郎、松本俊夫、岩井俊雄あたりかな。アートなんだから、考える前に感じないとね(もちろん理解の助け、ないし事後の説明としての理屈はあっていいけども)。

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2005年12月01日

●『ガンダム展』、行ってきますた

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上野の森美術館で『GUNDAM 来るべき未来のために』。「ガンダム世代」(ってどの辺の人たちを言うのだろう?)のアーティスト・クリエイターたちによる、ズバリ『機動戦士ガンダム』をモチーフとした展覧会。正直なところあまり期待していなかったのだが、行ってみるとこれがなかなか面白い。

おそらく、テーマパークやロボットアニメ的なものを求める人にとっては全く魅力のないイベントだろう。1/1コアファイター(そんなに大きくないのね)と、「ニュータイプテクノロジーラボ」と、あとオリジナルプラモくらいかな?「そっち向き」なのは。基本的に絵や映像やインスタレーションによる構成。つまり扱うテーマが『ガンダム』というだけで、そこを除けば割と普通の「展覧会」なのである。ライドも体感3Dもアニメ上映もなし。

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2005年11月17日

●「アート&テクノロジーの過去と未来」

昨日、初台のICC(NTTインターコミュニティケーション・センター)で開催されている「アート&テクノロジーの過去と未来」に行ってきた。戦後日本における様々なテクノロジーを用いたアートの数々を振り返る展覧会。……と書くと非常に地味に思えるし、宣伝の少なさから知名度は低いようだが、その豊かな内容には驚かされた。写美の「超[メタ]ヴィジュアル展」を飛躍的に充実させた感じか。ちょっとビックリ。

コンピューターが普及するよりずっと前から、電気(あるいは電子)機器というのは我々の社会に浸透しており、今や僕たちの生活は膨大な数の機器やメディアに彩られている。だから、それらを用いた表現というのは現代アートの世界において「不動の主流」となっていても少しもおかしくないと思うのだけれど、実際はまだまだ技術依存的なイメージが一般的。メディア・アートの進歩はハードの進歩と同じ速度で進む、という思い込み(「この機械があるからこの絵が描ける」)は強い。

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2005年11月03日

●「ガンダム展」上野の森美術館にて開催、だ!

”GUNDAM 来たるべき未来のために” (11/6~12/25)


展示の目玉は、1/1スケールのコア・ファイター。出展者は全員男(笑)。

シャレなのか、それとも本気なのか。どっちにしろよくやるよね。

アニメ作品のファンが求めるようなものとはもちろん違うのだろうけれども、ちょっと見てみたいと思った。特に、会田誠の書いたザクの絵というやつを。

で、全部見てみて、結局「やっぱガンブラのシャアザクにはかなわんわ」という結論になったりしてね(笑)。

2005年10月10日

●「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」

午後、品川の原美術館でやなぎみわ「無垢な老女と無慈悲な少女の信じられない物語」展。老女の顔をした少女たち、少女のままの少女たち、そして尖った屋根のテントを被った一人の女。彼女らがモノクロ写真で、あるいは動画で、さまざまな寓話を演じている。闇と純真との転換、あるいは交差。不可思議でなぜかドキドキさせられるイメージたち。

この展覧会、ほぼ一貫したコンセプトの下、館内5つの展示室で様々な物語が展開されている。老女の仮面を着けた少女たちが砂丘で戯れる動画、「老女と少女たち」によるグリム・アンデルセンといった童話や小説「エレンディラ」の再現写真、写真と映像により紡がれる「砂女」の物語…etc。いずれの作品にも共通しているのは、異世界の肌触りである。今この世界の中で僕たちが知っているのとは違う、どこか別の時間と空間。

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2005年09月18日

●「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部」

写真美術館で「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第4部「混沌」」。10周年記念展の最後は現代写真がテーマ。アメリカ、欧州、日本、その他の4地域(?)の1970年以降の所蔵作品を多数展示。

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2005年08月05日

●「ブラッサイ-ポンピドゥーセンター・コレクション展」

夕方、写真美術館で「ブラッサイ - ポンピドゥーセンター・コレクション展」。夜更けの街や裏通りを主な題材とした20世紀の巨匠・ブラッサイの全貌に迫る展覧会。フランス国立近代美術館の貴重なコレクションを持ち込んだ「日本唯一の巡回展」だけあって、作品の質はかなりいい。1枚1枚の写真に魅せられるという意味では、今まで写美で観た展覧会の中でも(って、そんなに数観てないけど)ハイレベル。

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2005年08月01日

●「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第3部」

午後、写真美術館の1階ホールで開館10周年記念イベント「写真の歴史が教えるもの」。写真史家で写真美術館専門調査員の金子隆一さんと、デザイン評論家の柏木博さんとのトークライブ。最初やり取りにあまりまとまりがなくて聴いているこちらがハラハラしたけれど、後半持ち直して、最終的には歴史や表現に関する深いサゼッションに富んだ内容となった。

多岐にわたる話題の中で特に重要と思ったのは、「歴史というのは常に後の出来事によって書き換えられるもの」ということと、あと「歴史はクリエイティビティに資する、歴史を意識する事により深い表現が生まれる」ということ。前者については、例えば70年代の荒木・森山的な表現というのは今振り返ればプリクラ・ケータイカメラのような「撮るという行為への端的な欲望の復活」の系譜上にあったのではないか、とか、要は見方・位置づけというのはフィックスしちゃだめよ、ということ。後者の方は、例えばオマージュみたいな、「ベースの上にオリジナリティを築くことによる表現の深化」ということ(これは著作権と表現の問題にも通ずるな)。いずれの問題も、言われてみれば表現者として意識して当然の事、とは思うのだけれど、つい忘れがち(あるいは軽視しがち)なんだよね。

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2005年06月26日

●「世界報道写真展2005」

夕方、写真美術館で「世界報道写真展2005」。年に1度の報道写真の集大成たるこの展覧会、多くのボリュームを占めて強い印象を残すのはやはり死者や負傷者の続出する惨事であるが、中には美を楽しむ写真や微笑ましい写真、どう反応していいか困る写真もあったりして、意外と間口は広い感じである。

展覧会の前半部分はとにかく悲惨だ。スマトラ沖大津波の惨状。ハイチ政府崩壊後、私刑で殺される男。イラクで「取り締まり」という名の抑圧を受ける地元民と、3日後に殺される運命の米兵。330人以上が死亡した北オセチア共和国の人質事件、現場で涙を流す老婆。ブッシュ再選の熱狂。スーダンでの、アラブ系による黒人系の「民族浄化」。ポスト冷戦とか対テロ戦争とか、そんなお題目はともかくとして、世界中で相も変わらぬ悲惨な事件が起こり続けているのだということを突きつけられる。いや、重かったわ。

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2005年05月28日

●「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第2部」


夕方、恵比寿の写真美術館で「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第2部「創造」」。第1部は主に19世紀における写真技術の誕生・変遷を追ったものであったが、第2部は19世紀末から1930年代、「芸術」写真の発生から写真固有の表現の発達までを紹介している。「金属片に焼き付けられている美しい画像(現実)」というモノから、「その美しい画像のあり方」へと感動の焦点が移行したということか。

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2005年04月22日

●「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第1部」

恵比寿の写美で、10周年特別記念展「写真はものの見方をどのように変えてきたか 第1部「誕生」」。1世紀半以上に及ぶ写真の歴史を、美術館の収蔵作品だけを使って8ヶ月にわたって(4部構成)再現する、という野心的な展覧会。

仕事で関わっている関係上客観的な批評は難しいのだが…入ってすぐ、世界最初の写真方式「ダゲレオタイプ」で撮影された銀盤写真が展示してあるのだけれど、その鮮明さ(サイズは小さいけど)には驚かされた。そして、この「ダゲレオタイプ」はいわゆるネガを介さないダイレクトプロセスというやつで、その点では現代のデジタルカメラと共通しているとか。最古のものと最新のものが通じている、っつーのがなんだか不思議ですな。

他には、昔の写真はしばらくジッとしていなければならなかったので死体が被写体に選ばれることがけっこうあった(現物あり)とか、ルイス・キャロルのロリ写真とか、あとちょんまげ結っていた頃の日本人の写真とか、色々見るところがあるのは間違いないです、はい。

2005年04月01日

●「TEN VIEWS」

なんだか落ち着かんなあ、しかし。

夕方、仕事から逃避して(笑)写真美術館「TEN VIEWS スペイン現代写真家10人展」。意欲的な作品が並び、なかなかに面白かった。全体的には良く言えば斬新な、悪く言えば奇をてらった作品が多い中で、逆に際立っていたのがRamon Masatsの諸作品。題材は普通っちゃ普通だが、写真から感じられる奥行きと力強さが素晴らしい。「純粋芸術写真の路線」(解説パンフより)ですか。なるほどね。あと、Jose Ignacio Lobo Aitunaの作品には『ウィッカーマン』的な「一歩だけ歪んだ日常のグロテスクさ」が出ていて、これもいい感じ。

もう一つ、「小林伸一郎写真展 BUILDING THE CHANEL LUMIERE TOWER」という展覧会もやっていて、こちらは銀座シャネルビルの建設現場をひたすら写したものだが…「作品」というより「記録」だな、こりゃ。残念ながら写真そのもの魅力はあまり感じられず、題材自体も僕みたいな人間にとっては「シャネルだから何だというのだ」という感じである。

2005年03月19日

●「ミュシャ展」

上野の東京都美術館『ミュシャ展』。アール・ヌーヴォーを代表する芸術家アルフォンス・ミュシャの回顧展。なんや知らんがやたら混んでいて、入口からすでに行列。全部の作品をじっくり観ようとしたら何時間かかるかわからんようやったけど、とりあえずかいつまんで観た。

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2005年03月03日

●「おたく」展&「文化庁メディア芸術祭」

夜、恵比寿の写真美術館。今日は展示内容がいわゆるサブカル寄り、観覧料もタダみたいな値段ということで、若者のカップルや女性の2人連れが非常に多かった。そんな中、一人黒スーツに黒のロングコート姿の俺。


まずは地下1階展示室で「おたく:人格=都市=空間」展。濃い…これは濃いなあ…。オタク要素が過剰に濃縮された感じ。いわゆるオタの人たちですら違和感を抱くのでは?浅草とかの土産物屋で売ってそうな、「東京タワーと富士山と雷門が一緒にプリントされているタオル」みたいな感じか(笑)。

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2005年02月23日

●「愛と孤独、そして笑い」

木場公園の東京都現代美術館で、「mot annual 2005 愛と孤独、そして笑い」。これは面白かった。女性作家の作品ばかりを集めた展覧会だが、刺激的で意欲的で、まさしく「現代美術」という感じであった。

嶋田美子の『箪笥の中の骨』は、参加者があらかじめ紙やフィルムに書いた「家族の秘密」を一つずつ箪笥の引き出しの中に入れてある、という参加型のインスタレーション。暗いの重いの明るいの軽いの唸らされるのと色々あったのだけれど、「弟のベッドの下からエロ本。しかもロリ。」というのはウケた。

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2005年02月12日

●「HEIAN」展

昼間、恵比寿の東京都写真美術館。ここはさほど広くないので、1~2時間くらいをのんびり潰すにはちょうどいい場所だ。

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2005年01月22日

●「光の彫刻」

昼過ぎ、庭園美術館「田原桂一 光の彫刻」展。一風変わった写真展で、なかなか興味深かった。

「写真展」と言っても、普通に原画紙に焼き付けたものを並べただけではなく、布・ガラス・アルミ・石灰岩といった様々な物質を用いていたり、インスタレーションの形式をとったりしているのがこの展覧会の特徴。用いる物体が違うだけでこれほどまでに質感に違いが出るのか、と思わず唸る。この非日常的な感覚はいったいなんだ。

特に凄かったのは、「窓」というシリーズ作品のうちの1枚(ここで見られる「窓」シリーズ11枚の真ん中のヤツ)。写真が、単なる記録の枠を超えてアートの域に達する。その典型を見ることができたように思う。

2005年01月10日

●クレア・ランガン&「新花論」

写真美術館ではあともう2つ展覧会を回った。

地下の映像展示室では「クレア・ランガン フィルム・トリロジー」。入口から上映室までの通路が暗くて人気も少なくて、ちょっと(いやかなり)ビビった(笑)。が、作品自体はなかなかの面白さ。青を基調に水・氷を中心に映像を組み立てた『Forty Below』、黄色い砂丘に埋もれる世界を歩く『Too Dark for Night』、そして燃えさかる炎と焼け跡の静けさ(?)を描いた『Glass Hour』。台詞も明確な物語もない幻想の世界。「あ、デレク・ジャーマンみたい」というのが第一印象だが、しかし映像そのものはこちらの方がずっとスゴイかも。700円が高いか安いかは微妙かもしれないが、まあ体験してみる価値はあると思う。

続いて3階展示室では「日本の新進作家 vol.3 新花論」。これは正直なところ全然わからんかった。というか、各作品の前に色々能書きが書いてあるんだけど、それと作品とのつながりがあまりにも感じられなさすぎる。「花は咲いても実はならない」感じ(笑)。

●「明日を夢見て」

恵比寿の東京都写真美術館「明日を夢見て アメリカ社会を動かしたソーシャル・ドキュメンタリー」展を観る。19世紀末から20世紀前半の草創期に撮られた、アメリカのソーシャル・ドキュメンタリー写真の展覧会である。

印象的だったのは作品そのものよりも、当時の社会問題を追及して世に問いかけた写真家たちの多くが、存命中には評価も名声も、ましてや富も得られなかったという事実だ。重要性の如何に関わらず、問題が先鋭的、あるいは本質的であればあるほど、それは人々の理解や共感を得られづらい。少なくともリアルタイムでわかってもらうのは至難の業である。しかし、彼らのような「明日を夢見る」人々の存在こそが、(彼ら自身は報われなくとも)社会を変える原動力の一つとなったのだ。その事を忘れてはいかんよな。

2005年01月08日

●「大(Oh!)水木しげる展」


夕方、江戸東京博物館で企画展「大(Oh!)水木しげる展 なまけものになりなさい」。あまり客が入っていないと聞いていたので余裕かまして閉館時間近くに行ったら、入場待ちの行列ができていて驚いた。なんだ大盛況じゃないか。主にアニメ(カラー)版『ゲゲゲの鬼太郎』を観ていたであろう、20代くらいの若者が多かった。

内容的には、作品にスポットを当てるというよりも、水木先生の「波瀾万丈人生絵巻」(その名もズバリ『人生絵巻』という作品も展示されていた)という趣。のんのんばあと過ごした少年時代、激戦地で片腕を失いながら九死に一生を得た戦争時代、極貧の貸本時代、そして講談社児童漫画賞受賞後今に至るまでの幸運&幸福な時代。展示されている自伝漫画や作品群の数々を見るとなんともスゴイ人生だと思わずにいられないが、しかしそこをくぐり抜けてきた先生自身が飄々とマイペースにされているのを見ると実にホッとするね。

会場の片隅には鬼太郎の家の実物大レプリカがあって、中に黄黒のちゃんちゃんこと目玉おやじの風呂用茶碗があった。