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2010年04月14日

●『用心棒』

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昨晩は、日比谷のTOHOシネマズ シャンテで黒澤明監督『用心棒』を観た。黒澤監督生誕100周年記念ということで、一挙17作品が特集上映される中の一本。
 
 
僕が初めて『用心棒』を観たのは大学生の時、当時銀座の表通りから一本裏道にあった「並木座」という名画座で。狭い劇場だったせいもあってやたら混んでいて、確か立ち見だったんじゃないかな。その後『天国と地獄』も『椿三十郎』(もちろん織田裕二主演ではない)も同じ劇場で観たはずだが、並木座は1998年に閉館。以後、黒澤作品を劇場で観る機会はなかった(DVDではよく観る)んだけど、今回「銀座で黒澤」と聞いて、何だか懐かしくなったのである。

久しぶりに大画面で観た『用心棒』は……やはり良かった。この映画の魅力はなんといっても登場人物のキャラ立ち具合にあるんだが、三十郎(三船敏郎)の男くささも、卯之助(仲代達矢)のトンがったクレバーさも、亥之吉(加東大介)のマヌケさも、権爺(東野英治郎)の人の良さも、より濃密に迫ってくる感じで堪能できた。しかし三十郎は素敵だよなあ……昔からああいうオッサンになりたいと思っていたのだが、なんだあと3年くらいしかないじゃないか(笑)。

もちろん全編に散りばめられたユーモラスなやりとりも、人情話から悲劇まで様々な要素が詰まっている物語も、クライマックスの見事すぎる殺陣(つーかそこに持ち込む展開が秀逸)も、全てが素晴らしいのひと言。いや、ホント、僕にとっては「生涯ベスト10」に確実に入るくらいの偏愛映画と言ってよいだろう。ラストの果たし合いの寸前に三十郎が「ニカッ」と笑う瞬間とか、最後の「あばよ」とか、あーもう、たまらん!という感じ(笑)。刺身包丁は拳銃に勝つ!!

加えて、今回は劇場内の雰囲気も良かったのである。平日の夜1日のみの上映日を狙って来るんだからそりゃ黒澤好きの割合は当然高いんだろうけど、ギャグに対する反応も良く、緊迫する場面では皆集中しているのが伝わってきたし、画面に「終」の文字が出た瞬間なんて拍手喝采になったり。個人的には、映画館ではあくまで画面に集中して周りの気配は消してしまいたい方なんだが、昨日ばかりは「同好の士」というヤツで他の客の存在は嬉しかった。
 
 
ということで、久しぶりに浮世の憂さを忘れて心から楽しめた110分間だったかもしれない。そういや前にシャンテで映画を観たのは確かジャン=リュック・ゴダールの『アワーミュージック』だったと思うけど、あれと『用心棒』では100万光年くらい離れた、全く違う種類の映画であるな。一口に「巨匠」といっても色々だ。
 

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