2015年09月27日

●ラグビーはおそろしい (イングランド代表×ウェールズ代表)


イングランド代表 25−28 ウェールズ代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールA第2戦)

W杯のプール戦も二巡目に入り、早くも決勝ラウンド進出に向けて重要な試合が出てきたところ。「しの組」とも言われるプールAでは優勝を狙うイングランドと怪我人続出に苦しむウェールズが激突し、ウェールズが接戦を制して下馬評を覆す勝利。開催国が予選敗退の危機に見舞われる波乱となった。


2試合目とはいえ大会の帰趨を決しかねない一戦だけに、序盤から激しいボール争奪戦が繰り広げられ、PG・DGの撃ち合いが続く。イングランドのファレル、ウェールズのビガーという両SOが確実に決めて前半半ばで9-6。大観衆の後押しを受けるイングランドはスクラムの優位を生かして攻め込み、バックスリーにSHヤングが加わる攻撃でトライ。しかしウェールズも終了間際にビガーがPGを返して7点差で前半終了となった。

後半もともに攻め込んではトライを取りきれず、しかしDFも耐えきれず反則、の繰り返し。完璧な出来のファレルがPG2本を決めるが、ビガーも負けじと3本蹴り込んでウェールズが食い下がる。60分の時点で22-18。だが、ここで試合前から満身創痍のウェールズはさらにWTBアモスやFBウィリアムズが負傷退場。いつもとは違う選手配置を強いられた上に、ファレルがPGをたたみかけて25-18。勝負あったか、に思えた。

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2015年09月24日

●本当の勝負はここからだ (日本代表×スコットランド代表)


日本代表 10−45 スコットランド代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールB第2戦)

初戦で南アフリカ代表を破り、「ラグビー史上最大の番狂わせ」とも言われる金星を挙げた日本代表。続く第2戦は多くのファンや関係者が「ここがターゲット」と睨んでいたスコットランドとの一戦だったが、途中まで互角に渡り合いながら、後半一気にたたみかけられて35点差の完敗となってしまった。


悔しい敗戦だった。

序盤から、日本は4日前に比べてイマイチの出来。攻守ともに陣形を整えるのが遅れがちで、ミスや反則が頻発(最初の10分で南ア戦を上回るハンドリングエラーを記録した)。対するスコットランドは予想通り次々にハイパントを上げて日本のさらなるミスを誘いつつ、SHレイドローが淡々とPGを重ねていく。さらには焦りからか松島が反則でシンビンをくらい、日本は南ア戦に引き続いて耐える展開となった。

それでも、地力の上がったジャパンは苦しい前半を持ちこたえた。15分には五郎丸の好タッチキックから一気呵成のモール攻撃でトライし、一旦は逆転。数的不利の時間帯も得点こそできなかったものの相手陣で粘ってスコアを許さず、終了間際には自陣ゴール前ギリギリの攻防をFWの粘りと五郎丸の素晴らしいカバーディフェンスで防ぎきった。南ア戦の後半の出来からすれば勝機はあるように思えたのだが……。

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2015年09月20日

●日本ラグビー史上最高の白星 (日本代表×南アフリカ代表)


日本代表 34−32 南アフリカ代表 (ラグビーワールドカップ2015 プールB第1戦)

世界をあっと驚かせる、そして日本のラグビーファンにとってもあっと驚く結果だった。第8回ラグビーワールドカップの緒戦、日本代表は世界ランク3位の超強豪・南アフリカとの接戦を制して24年ぶりの白星。「ワールドカップ史上最高のアップセット」であり「日本ラグビー界最大の金星」である。


まさかこんな日が来ようとは。それも、これほど早くとは。あまりの快挙にどう喜んだら良いのか、僕は正直戸惑っている(笑)。

ラグビーにおいて番狂わせを起こすためのお手本のような試合だった。大会初戦、優勝候補の相手が手堅く、力にものを言わせて突進してくるところ、低くしつこいタックルで粘り続け、ここぞという場面ではDFが思い切り飛び出してミスを誘発する。南アの4トライのうち2つはタックルミスでそのまま独走を許したものだけど、逆に言えばそれ以外の場面でいかに精度の高い守備ができていたか、ということだ。

勝因の一つは、ミスが少なかったこと。結局ハンドリングエラーは3つしかなかったのかな?相手がハードヒットの権化みたいなチームであることを考えたら、これはとんでもない数字だろう。懸念していたハイパントなどのキック処理についても、松島が一度弾いたくらいで、後は五郎丸を筆頭に確実に処理するか互角に競ることができていた。ミスの少なさは持ち味を出すことにつながるし、地力が上がった証拠でもある。

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2015年09月17日

●28年目のラグビーワールドカップ (後編)

中編からつづく)


第6回(2007年)はフランス大会。南アフリカが豪州に続く2度目の優勝を飾り、日本は豪州、フィジー、ウェールズ、カナダを相手に1分け3敗の成績だった。

日本代表は2004年以降の迷走からチームを立て直し、ヘッドコーチにNZの英雄ジョン・カーワンを迎えて臨んだ。4試合の過密日程を乗り切るためにターンオーバー制を採用してフィジー戦・カナダ戦に注力したジャパンだったが、フィジーには4点差の惜敗。カナダには後半ロスタイムのCTB平のトライとSO大西の劇的なコンバージョン成功で引き分けに持ち込んだものの、「あと一歩」の印象が残る大会だった。

この時はチーム全体としてはかなり地力が上がっていて、「2勝は行けるのでは」という雰囲気はあったように思う。特にフィジー戦は惜しかった。後半、小野澤が投入されてDFを切り裂くランを見せた時、テレビ解説の清宮克幸さんが「ああ、これで小野澤が勝負を決めるんですね」みたいなことをつぶやいたのを覚えている。結果的には届かなかったのだが……有賀やニコラスもいていいチームだったんだがなあ。

優勝した南アは、何というか、非常にバランスの良いチームだった。FWのフィジカルに頼りすぎず、NO8モンゴメリーのプレースキックとWTBハバナの快足で仕留めるスタイルは完成度が高かった。あと、HCジェイク・ホワイトの襟の高いヘンテコな洋服ね(笑)。準優勝のイングランドもピークは過ぎたチームだったけれど、ウィルキンソンのPGで僅差を制するしぶとさに唸らされた。ウィルコはやっぱり凄いよ。

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2015年09月16日

●28年目のラグビーワールドカップ (中編)

前編からつづく)


第4回大会(1999年)はウェールズで開催された。優勝はオーストラリアで、日本はサモア、ウェールズ、アルゼンチンと戦ってまたも3戦全敗だった。

日本代表は平尾監督とマコーミック主将の下、前年はアルゼンチンに勝利しアジア予選も全勝で突破、その年のパシフィック・リム選手権でもトンガ、サモア、アメリカなどに勝って優勝と、絶好調で大会に臨むことができた。また、元オールブラックスのNO8ジョセフとSHバショップもメンバーに加えるなど、史上最強の布陣とも言われたものである。第2回大会以来の勝利が期待されたのだが……あいにく結果は全て完敗。

今でも覚えているのは、初戦のサモア戦で風下の前半を10点差以内で耐えて「さあ後半逆転だ」とワクワクしながら観ていたら、先に日本が力尽きて逆に叩き伏せられてしまったこと。サモアにはその年の春に花園で勝っていたのに。本番の厳しさと、チームとして調子の波を合わせることの難しさ。期待と結果のギャップを考えれば、僕にとってはこの時のジャパンが一番の「苦い思い出」だったかもしれない。

大会全体としては、SHグレーガンとSOラーカムを擁し、戦術と個人技を極めて高いレベルで両立させた豪州が見事2度目のエリス・カップを獲得。南アとの壮絶な防御戦をしのぎきった準決勝は特に印象的であった。また、もう一つの準決勝で突如鮮やかなフレア・ラグビーを炸裂させて最強NZを撃破したフランス代表(WTBはドミニシ!!)も素晴らしかった。日本の結果を除けば、この大会が一番楽しかったかも(笑)。

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2015年09月15日

●28年目のラグビーワールドカップ (前編)

ということで、今週の金曜日はいよいよ、全世界ラグビーファン待望の第8回ワールドカップの開幕だ。開幕戦は開催国イングランドとフィジーの一戦である。

4年おきにワクワクドキドキハラハラさせられるこの大会だが、今回はこれまでになく楽しみなのだ。それは、優勝候補の拮抗ぶり(まあ普通に考えりゃNZなんだろうが、おそらくそうは問屋がおろさない)もあるのだけれど、何といっても我らが日本代表が「史上最強」と称される状態にあるから。世界のスターたちのスーパープレーももちろん見たいんだけど、やっぱり見慣れた「俺たちの」チームが健闘しないと、ね。

思えば、サッカーと違ってラグビーのW杯はたったの8回目、始まってからまだ28年の年月しか経っていないのだが、たかが28年、されど28年。僕の人生の過半はこの大会と付き合ってきたことになるわけだ。今週は、これまでの僕のラグビーW杯に関する体験と記憶を振り返ってみよう。


ニュージーランドを会場に第1回ワールドカップが行われたのは、1987年のこと。開催国NZが優勝し、招待参加の日本代表はイングランド、オーストラリア、アメリカ相手に3戦全敗だった。

正直、この頃は大学ラグビーに夢中(お気に入りは魂のタックルの慶應)だったので、W杯をやっていたことは途中で知った。確か「Number」誌の見開き記事かなんかで見たんじゃなかったかな。まだW杯がほとんど知られていなかった頃、観客のまばらなスタンドを背景に、アメリカ相手に思わぬ敗戦を喫したジャパンの面々ががっくり肩を落としている写真が記憶に残っている。苦難の道はあの時から始まったのか(笑)。

優勝したNZはとにかくフィジカルがたくましく、「これは全然かなわない、別次元だな」と思わされるチームだった。実際、その後来日して日本代表と対戦した時は全く歯が立たなかったし。とりわけトライを量産して優勝に大きく貢献したWTBのジョン・カーワンは凄まじく……まさかその後日本で二度に渡って再会(NECでプレー、その後日本代表ヘッドコーチに就任)するなんて夢にも思わなかったけども。

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2015年09月14日

●『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

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ここ最近、たまっている本や映画を片付けようとしてなかなか片付かないんだけど、買ったまま本棚に積んであった『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のDVDをようやく観た。


『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるガイナックスが最初に制作したアニメとして知られる山賀博之監督の作品だけど、作られたのはもう30年近く前になるんだね。僕が初めて(おそらくレンタルビデオで)観てからも20年以上は経つんだろうな。

舞台は地球によく似た異世界。隣国と果てしない戦争を続ける「オネアミス王国」の宇宙軍に属する落ちこぼれの若者たちが、初の有人宇宙飛行を目指して悪戦苦闘する姿を描く物語だ。はじめは自堕落だった主人公が敬虔な少女との出会いをきっかけに精神的に目覚め、成長し、政治の横槍や敵の刺客など様々な困難と悩みを乗り越えていく青春ドラマでもあった。

アニメ作品としての質の高さは言うまでもなく、今観てもほとんど古びた感じはない。ガイナックスらしいメカ描写やドタバタは非常に楽しい。しかも、当時20代だったクリエーターたちの感性を反映してか、映画全体に80年代らしい勢いと瑞々しさがあって、今見るとなんだか懐かしさも覚えてしまう。

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2015年09月13日

●前田!前田!前田! (FC東京×ヴィッセル神戸)



FC東京 3−0 ヴィッセル神戸 (J1第27節 味の素スタジアム)

代表戦がしばしば挟まるイレギュラーな日程の中、ナビスコ杯は決勝トーナメントに進出しながらも準々決勝で鹿島に完敗してしまった東京。今節はほぼ1ヶ月ぶりのリーグ戦ホームゲームであり、年間上位争いに残るためには是非とも勝ちたい一戦。僕個人としても約2ヶ月ぶりの生観戦であった。


序盤は神戸ペースだった。いつも通りの4-3-3(守備の時は河野が下がって4-4-2)の東京に対し、神戸は守備時5バックだが攻撃時には高橋・相馬の両WBがワイドに張りながらFWの位置近くまで上がる思い切ったサッカー。東京はDFがサイドに蓋をできず突破されてはボックス内できわどくクリアする場面が幾度かあり、攻めても羽生が後方に引っ張られたせいもあって前田・バーンズになかなかボールが入らない。

だが、幸いなことに神戸のアタッカーも決定力を欠いた。19分、CBの間を森岡が割ってゴール前へ突入するが、徳永が懸命のカバーリング。21分、渡邉千真のミドルシュートもポスト右を抜ける。東京はひたすら我慢しながら逆襲速攻を狙い、30分にはボックス手前で得たFKを太田が狙うもGK山本が横っ跳びでセーブ。気がつけば試合はすっかり膠着状態となっていた。

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