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2010年02月17日

●『男たちの大和/YAMATO』

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レンタルDVDで佐藤純彌監督『男たちの大和/YAMATO』を観た。太平洋戦争末期、沖縄への特攻「菊水作戦」における戦艦大和の最期を、主に下士官や少年兵の視点から描いた戦争大作。角川春樹の手による制作や25億円の制作費、広島に6億円かけて作った巨大セットが話題になった作品だが、2005年邦画興行収入第1位を獲得するヒットであったのだとか。
 
 
見終わっての感想としては「評価の難しい映画だな」と。

一本の映画として良くできているとは言い難い。物語としては「現代」と「(回想の)過去」を行き来する構成をとっているのだが、現代パートでは少数の人物たちが間延びしたやり取りを繰り返す一方で、過去パートでは(回想のはずなのに)様々な登場人物のエピソードが目まぐるしく詰め込まれていて、どうも脈絡がはっきりしない。これは主観劇なのか群像劇なのか……。

他にもツッコミどころは色々ある。例えば過去パートに現代ニュース口調のナレーションが入って雰囲気台無しとか、少年兵達の描き分けが全然できていないとか、さんざん格好良い台詞で煽った長嶋一茂の死に方が情けなさすぎとか、渡哲也はどう見ても渡哲也でしかないとか、鈴木京香の行動が意味不明すぎるとか、中村獅童はあれでどうやったら助かるんだ、とか。

ただ、それでもかつて「職人」として名をはせた佐藤監督だけに(まあ、『北京原人』なんてのもあったが……)、とりあえず劇映画としてのクオリティーは何とか保っているのかな、と。この手の映画は怪獣映画なんかと同じで「特撮シーン以外はつなぎ」と考えれば(笑)、まあ許容できる範囲内ではないかと。反町・中村・松山の熱演は素直に感心できるものだったし。


で、肝心の最後の戦闘シーンである。いやあ、当たり前なんだけど、とにかく大勢死ぬこと。半泣きになりながら高射砲にとりついたり弾を運んだりしている若い子が次々に米軍機の機銃掃射で吹き飛ばされて、甲板はあっという間に血の海に……。背負った酸素タンクに火がついているのに気がついて、悲鳴を上げるもどうにもできず爆死、なんて悲惨な場面もあったな。

ひたすら阿鼻叫喚、無惨というか。大和の特攻がいかに無謀な人命の無駄遣いであり、戦争末期の戦闘が「勇敢」とか「立派」とかいう言葉だけでは語れないものであったかがよくわかる描写であった。子供の頃に松林宗恵監督の『連合艦隊』を観て、死体が浮かぶ血の池と化した大和の艦内描写にショックを受けたのを思い出した。この映画はもう一歩踏み込んでたけど。

まあ、その一方で『プライベート・ライアン』後の映画としては「もっとひどい描写があっても良いのではないか」と思ったりもしたのだけど(戦死シーンの数の割には人体損壊描写は少なかったかも)、今の日本映画としてはここら辺が限界なんだろうな、とも思う。なにしろ公開できなきゃ意味がないわけだから、とりあえず。

ともあれ、正直なところ観る前はタイトルやキャストや主題歌の人選からもっとタカ派的な、日本軍的価値を賛美する映画だと思っていたのだが、実際には戦闘場面の残酷さに加えて日本軍の体罰・精神主義の馬鹿馬鹿しさや菊水作戦の理不尽さもしっかり描いていて、むしろ反戦的な色合いさえ感じ取れる作品であった。なので、個人的にはさほど不愉快ではなかった。


あと、僕としては、丸坊主にした松山ケンイチ君の風貌が平山相太にちょっと似ている気がして、ついつい彼には感情移入してしまったというのもある。「平山ガンバレ!」みたいな(笑)。少なくとも400円なら損した気はしなかったかな。
 

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