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2005年03月15日

●『Uボート』

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録画でウォルフガング・ペーターゼン監督『Uボート』(劇場版)観る。ものすごく久しぶりに観たのだが、胸高鳴る勇壮なテーマソング、深海での息詰まる闘い、そしてあっけなくも残酷なラスト。何度観ても名作だ。
 
 
昔観た時には気にも留めなかったのだけれど、今見直して気になって仕方がないのは、ジブラルタル海峡深くで絶体絶命に陥った際、主人公ヴェルナーが涙ながらにつぶやく台詞。「志願したんです…現実に直面したくて…これが現実なんですね…」。その前の爆雷攻撃では恐怖の中ベットにしがみついて目を閉じ、気がつくと攻撃は終わっていた(まるで夢のように)。今度は10数時間、何度眠り何度目を覚ましても潜水艦はストップしたままだ。夢とは違う、現実の世界の冷たさ。逃げ場はない。

しかし、これは闘う男たちの物語だ。そのまま終わることなどありえない。決して諦めないクルーたちは超人的な奮闘を見せ、艦の機能は次々と蘇り、U96は奇跡的な脱出に成功する。一旦文字通りどん底の現実に突き落とされただけに、この「海上への帰還」は感動的だ。現実も捨てたもんじゃない。夢のようなことだってあるんだ、か…。

ところが、ラスト数分。何とか味方の港までたどり着いて歓迎のマーチに迎えられた幸福の絶頂において、物語は急転直下する。イギリス軍の苛烈な爆撃。過ぎ去った後に遺されたのは、深海で勇敢な姿を見せていた仲間たちの骸と沈み行くU96の残骸。虚ろな艦長の瞳は、まるでその光景が現実であることを否定しているようだ。つまりは悪夢である。

夢のような現実、そして現実に潜む悪夢。「戦争の恐ろしさ」なんて紋切り型ではない。この映画はUボート乗組員たちの運命を描くことによって、この世界の美しさと恐ろしさの両方を、そしてその中で抗い続ける人間の哀しい姿を、この上なく鮮やかに描き出しているのである。

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