2015年06月28日

●壮行会はみんなで派手に (FC東京×清水エスパルス)

FC東京 3−2 清水エスパルス (J1第17節 味の素スタジアム)

優勝争いの期待と失望があり、連勝の喜びと連敗の苦しさがあり、武藤の大活躍と移籍決定がありと、色々あった1stステージも最終戦。武藤の(とりあえずの)東京ラストゲームは不動のホームスタジアムで。


梅雨らしい蒸し暑さの中でキックオフ。武藤・前田が2トップを務める4-4-2の東京は積極的に押し上げてサイドから攻め込み、序盤に幾つかクロスを上げるも決定機には至らない。対する清水は3-5-2の布陣で、FWウタカにDFライン裏を狙わせながら、自在に動く大前を中心にパスを回して機会をうかがう。22分、左サイドで勝負した太田がDFを振り切ってクロスを入れ、フリーの東が頭で合わせるもポスト左を抜けた。

前半半ば頃は、東京の攻めが手詰まりとなって清水のチャンスが目立つ時間帯に。26分、ウタカが森重と入れ替わってボックス内へ突進し、シュートを権田が押さえる。33分、DFの間を突いた金子がドリブルでゴールに迫るが、カバーリングの吉本が懸命のクリア。34分にはワンタッチパスの連続に東京DFがついていけず、水谷がDFライン裏に思いっきり抜けるも、シュートをふかしてくれて命拾いした。

しかし、そんなたて続けのピンチをしのいで迎えた38分。東京は敵陣深く攻め込み、一旦はボールを奪われたものの梶山が突然の猛プレス。ボールを奪ってDFの背後に飛び出した東へラストパスを通し、東は冷静にGK櫛引をかわしてから無人のゴールへ流し込んだ。見事なショートカウンター!1-0。さらに43分にもゴール前で東の浮き球に高橋が飛び込むチャンスがあったが、これはあと一歩届かず。1点差でハーフタイムへ。

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2015年06月24日

●『サッカーは監督で決まる』

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清水英斗著『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中公新書ラクレ)を読了した。タイトルにまんま書かれているとおり、現代の著名なサッカー監督たちの、特にチームを統率する術を取り上げることでサッカー監督という仕事の全体像を描き出そうとした一冊。


この本で取り上げられているのはジョゼ・モウリーニョ、アレックス・ファーガソン、ビセンテ・デル・ボスケ、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ヨアヒム・レーヴ、イビチャ・オシム、そしてヴァヒド・ハリルホジッチ。いずれも現代フットボールを代表する監督たちであり、それぞれに一章を割く形でその手法と人となり、彼らが実現したサッカーについて述べられている。

こうして並べてみると本当に多彩というか千差万別というか……少なくともモウリーニョ〜オシムの7人は世界の十指に入るビッグネームと言ってもいいと思うのだが、見事にバラバラ、全く似ていないのは凄いことだな、と。サッカー監督という仕事が一筋縄ではなく、だからこそ奥深いのだと改めて思い知らされる。これにたとえばデシャンやシメオネを加えても、カラフルさは全く薄れないもんね。

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2015年06月21日

●微妙で、素晴らしい、逆転勝利! (サガン鳥栖×FC東京)

サガン鳥栖 1−2 FC東京 (J1第16節 ベストアメニティスタジアム)

代表戦日程を挟んでいよいよリーグ戦1stステージもあと2戦。ステージ優勝こそ逃した我らがFC東京だが、上位進出を目指し、そして2ndステージを見据えた戦いは続く。今節は強豪・鳥栖とのアウェイゲーム。スカパー!で録画観戦した。


試合は立ち上がりから鳥栖ペース。この日の東京は梶山・高橋がダブルボランチを務める4-4-2の布陣でスタートしたのだが、鳥栖の強度の高いプレス守備にパス攻撃が機能せず。対する鳥栖は素早い守→攻の切り替えからシンプルに前線を狙う攻撃でチャンスを作る。速攻から水沼・豊田がたて続けにボックス内で際どいシュートを撃った後の17分、CKにフリーで飛び込んだ金のヘッダーがゴールに突き刺さって鳥栖先制。0-1。

得点を奪った鳥栖は勢いに乗ってボールを奪っては攻め込み、東京DFがしのぐ場面が続く。東京は梶山がDFラインまで降りたり三田・東・武藤の配置を変えたりして打開を図るが、相変わらずパスは回らない。24分、三田のクロスに合わせた前田のシュートはバーを越え、39分の太田のFKもGK林がキャッチ。途中から鳥栖が息切れしたこともあって追加点こそ免れたものの、前半の東京はわずかシュート2本であった。


後半も、東京が左右に回して攻めようとするのに対して鳥栖が速攻を狙う構図は変わらない。東京は崩しの形をなかなか作れず、鳥栖はバイタルエリアでの精度があと一歩、という感じで決定機が生まれないまま試合が進んだ。51分、東京は三田OUTで中島IN。中島は積極的にドリブル・パスで仕掛け、左サイドの攻撃を活性化する。すると、60分を過ぎた頃から鳥栖の動きが落ちて東京のボール支配が目立っていった。

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2015年06月15日

●『ニッポンの音楽』

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佐々木敦著『ニッポンの音楽』(講談社現代新書)を読んでみた。1960年代末から現在までの約45年間、日本のポピュラーミュージックにおいて脈々と続いているある重要な流れについて、日本音楽の「内」と「外」や1990年代に誕生した「Jポップ」、そして「リスナー系ミュージシャン」といったキーワードを用いて振り返る一冊。


この本が特徴的なのは、10年ごとに「物語の主人公」を設定してそのディケイドの音楽シーンをひとつの物語として語っていることだろう。70年代ならはっぴいえんど(細野晴臣、大瀧詠一、松本隆、鈴木茂)、80年代ならYMO(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)、90年代なら渋谷系(小山田圭吾と小沢健二、ピチカート・ファイヴ)と小室哲哉、ゼロ年代なら中田ヤスタカ、という具合である。

このような書き方は、描く対象がより明確になってわかりやすい反面、当然ながら多くのものを省略して削ぎ落とすことになるわけで、著者も書いている通り網羅的な歴史書や資料ではありえない方法論だ。ただ、読み物として考えればおそらく正解で、「主人公」の誰か1人にでも思い入れや興味があれば確実にツボに入る本となっている(逆に言えば、全くピンと来ない人も多いだろうが)。

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2015年06月04日

●『5つ数えれば君の夢』

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今日マチ子著『5つ数えれば君の夢』(秋田書店)を読了した。現代少女マンガの巨匠(と僕が勝手に思っている)今日マチ子さんが、女性アイドルたちの夢と苦悩を描いた作品。僕もたまにはこういうのも読むのだよ、ということで。


主人公は、架空の5人組アイドルグループ「Five Stars」(モデルは「東京女子流」というグループらしい)。そのメンバーたちはアイドルとしての活動と高校における学生の日常という二重生活の中でそれぞれ自身のアイデンティティーを巡る悩みを抱えていて、本作は彼女らの暮らしの中での様々な「ゆらぎ」について1話ずつ描く連作形式となっている。

なるほどと思ったのは、彼女たちにとってアイドル活動自体は「夢」ではなく「現実」のものであり、逆に学園生活や恋や友情やペットとの暮らしなどのいわゆる普通の生活が「夢」となっていることだ。彼女たちはアイドルとしての矜持に支えられながら、ミドルティーンの女の子としての等身大の、しかし深刻な悩みと向き合っていく。

まあ、かつてのキャンディーズの「普通の女の子になりたい」なんかを持ち出すまでもなく、アイドル=夢というステレオタイプではない描き方がむしろ説得力を持つということなのだろう。特に、AKBなどの大成功でアイドルの日常化がいっそう進んだように見える現在においては。

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