●『王立宇宙軍 オネアミスの翼』
ここ最近、たまっている本や映画を片付けようとしてなかなか片付かないんだけど、買ったまま本棚に積んであった『王立宇宙軍 オネアミスの翼』のDVDをようやく観た。
『新世紀エヴァンゲリオン』などで知られるガイナックスが最初に制作したアニメとして知られる山賀博之監督の作品だけど、作られたのはもう30年近く前になるんだね。僕が初めて(おそらくレンタルビデオで)観てからも20年以上は経つんだろうな。
舞台は地球によく似た異世界。隣国と果てしない戦争を続ける「オネアミス王国」の宇宙軍に属する落ちこぼれの若者たちが、初の有人宇宙飛行を目指して悪戦苦闘する姿を描く物語だ。はじめは自堕落だった主人公が敬虔な少女との出会いをきっかけに精神的に目覚め、成長し、政治の横槍や敵の刺客など様々な困難と悩みを乗り越えていく青春ドラマでもあった。
アニメ作品としての質の高さは言うまでもなく、今観てもほとんど古びた感じはない。ガイナックスらしいメカ描写やドタバタは非常に楽しい。しかも、当時20代だったクリエーターたちの感性を反映してか、映画全体に80年代らしい勢いと瑞々しさがあって、今見るとなんだか懐かしさも覚えてしまう。
僕が好きなのはラスト近く、2つの国の軍隊が宇宙船を巡って激しい戦闘を続ける中、ついに主人公を乗せたロケットが発射台から打ち上げられて大空の彼方へ飛んでいく場面。ロケットそのものの描写も素晴らしいんだけど、殺し合いを続けていたはずの兵士たちが思わず目を見開いてロケットの軌跡を追いかけてしまう、という演出がとても素晴らしいのだ。
それまで物語の中で主人公たちの努力は政治的に利用されたり馬鹿にされたりすれ、誰も本気で意義を認めたり成功を信じたりしなかっただけに、「やった!ざまあみろ!」という痛快さもあるのだが、それ以上に興味深いのは「信じがたい、想像を絶する事態(それを奇跡と呼ぶかどうかはともかく)を目にした時の人間の反応」なんだよね。
僕の好きなアルフォンソ・キュアロン監督『トゥモロー・ワールド』でも、子供が産まれなくなって滅びつつある世界における戦争の最中、急に(世界から消えたはずの)赤ん坊の泣き声が鳴り響いて思わず戦闘が止まってしまう、というシーンがあって、忘れられない「静かなクライマックス」となっている。『オネアミスの翼』のロケット発射シーンにもそれと同じような神々しさがあるのだ。
なんというか、つくづく、やっぱり僕は映画(に限らず物語)に「日常では絶対にありえない体験」を求めてるんだなあ、と改めて思う。SFという舞台仕立てもそのための要素の一つだけど、それよりもある種の「奇跡」を欲しているというか……。
ともあれ、おそらく10何年ぶりかに観たこの映画、こうして書いてきたとおり非常に楽しめたんだが、ただ一つ気になったのは最後のスタッフロール。庵野秀明さんや樋口真嗣さん、坂本龍一さんといった錚々たるメンツに混じって「オタキング」とか称する前の岡田斗司夫さんの名前が……最近のネット上での騒ぎを思い出すにつけ、別の意味で感慨深いというか(笑)。
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