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2005年02月18日

●『CAPA in Love & War』

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WOWOWで録画しておいたアン・メークピース監督『CAPA in Love & War』を観る。不世出の戦争写真家ロバート・キャパの生涯を、関係者へのインタビューを中心に追いかけたドキュメンタリー。

キャパほどドラマティックな人生を歩んだ人間もそうはいないだろう。ユダヤ人(本名はアンドレ・フリードマン)の彼は10代の頃にハンガリーを追放され、ナチ台頭により亡命先のベルリンからさらに逃亡、パリを本拠に「アメリカ人写真家 ロバート・キャパ」としてスペイン内戦を取材して一躍名を挙げるも、その戦闘で恋人を失う。その後日中戦争、ロンドン大空襲、北アフリカ戦線、連合軍イタリア上陸、ノルマンディー上陸作戦、そしてパリ解放等を最前線で取材。ヘミングウェイやピカソと親交を持ち、イングリット・バーグマンと恋に落ちた。晩年は日本取材を経てインドシナ戦線へ飛び、最後はやはり最前線で地雷を踏んで爆死。戦場では兵士や人々と苦楽を共にし、日常では恋と友情とギャンブルと社交に生きた40年。

キャパを単なる「写真家」以上のものに押し上げたのは、このように「劇的」としか言いようのない人生そのものである。キャパの写真は、実際に見れば素人目にも分かるが、構図や技術そのものが優秀という類のものではない。ただ、現場に、それもこの上なく対象に近い場所において撮影したことはイヤと言うほど伝わってくる。「そこにいて、体験する」ことの価値。その膨大な蓄積。おそらく、彼の最高傑作は「崩れ落ちる兵士」でも「オマハ・ビーチ」でもなく、「ロバート・キャパ」という人生そのものでなのだろう。そして、それが焼き付けられているからこそ、彼の作品もまた偉大なのだ。

この映画において再現されているのは、単なる一個人の生涯ではなく、いわば現代の伝説なのである。

「もし、いい写真が撮れないとしたら、近寄り方が足りないからだ」
「苦しんでいる人の傍らにただ立って、その姿を記録するしかできないというのは、いつも辛いものだ」
「戦争写真家の切なる願いは”失業”だ」

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