●『13/ザメッティ』『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』『ジャガーノート』
最近、ハードディスク・レコーダーの容量がかなり心もとなくなってきたので、ずっと前に録画して観ずじまいだった映画をいくつか片づけた。その中で印象的だったものをレヴュー。
ゲラ・バブルアニ監督『13/ザメッティ』。フランス在住のグルジア移民セバスチャンは、屋根修理の職人仕事で一家数人をやっとこさ養う貧乏青年。ある日ひょんなきっかけから、儲け話につながりそうな「チケット」を手に入れるが、たどり着いた先は森の奥の怪しげな屋敷。そこで行われていたのは、謎の金持ちたちが大金を賭ける死のゲームだった……。
要するに『ホステル』と同じような構造で、ちょっとした出来心から若いヤツが地獄に踏み込んでしまう、というストーリー。まあ、あっちは動機がスケベ心で行き先が拷問屋敷、こちらは金ほしさで強制されるのが集団ロシアンルーレット、という違いはあるし、『ホステル』ほどのデモーニッシュな雰囲気は望めないけれども。共通しているのは、人の命のまるで小銭のような軽い扱いと、行われる行為が妙にきっちりとルール化されていること、だろうか。
白黒フィルムを使用することや「ゲーム」やそこに集う人々についてあえてバックグラウンドを説明しないことで、チープさを回避しようとしたのは賢明な判断だろう。怪しい紳士たち、張り詰めた場の空気、戸惑いながらも運命に抗えず、手を染めていく主人公。難を言えば結末も含めてやや予定調和な印象を受けてしまうことだが、(インディーズ映画でもあるし)それ以上を望むのは難しいのかな。いずれにせよ、観て損はない良い小品だと思う。
ニール・ジョーダン監督『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』。FMラジオの記者(クリスチャン・スレイター)がサンフランスシスコで「偶然に」出会った男ルイ(ブラット・ピット)は、実は300年以上に渡って生き長らえている吸血鬼だった。ルイはその数奇な半生(?)を落ち着いた口調で語り始めるのだが……。
青年の姿のままほぼ永遠に生き続ける吸血鬼がブラピで、彼を仲間に引き込んだ先輩吸血鬼がトム・クルーズ。と聞くと耽美的でヤオイな婦女子失神映画(笑)を想像するところだが、実際観てみると描写がけっこうグロテスクで、普通にホラー映画の印象が強かった。「血を吸う」っていうより、「人を喰う」って感じなんだよね(鼠とかも喰うし)。おまけにトム君はブラピ以上に長生きのはずなのに、短気なただのサイコ野郎で、超然とした魅力に欠けるのが残念。
あと、せっかくブラピは18世紀から生き続けている設定なのに、トムと過ごした最初の数年(?)で映画の半分以上を使っちゃって、その後のエピソードが短くなってるのがもったいない。つれの少女(キルステン・ダンスト)を殺されて復讐心に燃えたブラピがパリの吸血鬼軍団を皆殺しにする話とか、近代になって映画が発明され、ブラピが100年ぶりに太陽を目にして涙ぐむシーンとか、それなりに良いところはあるんだけどねえ。全体のバランスが悪い感じ。
結末は、まあそうなるんだろうな、と思っていたまんまだったが、エンドロールで流れるガンズ・アンド・ローゼズの『悪魔を憐れむ歌』も含めてちょっと軽薄すぎるような……うーん(笑)。
最後はリチャード・レスター監督『ジャガーノート』。太平洋を西に向かって航行する豪華客船ブリタニック号に対して、50万ポンドを要求する脅迫が届く。「ジャガーノート」を名乗る犯人は船内に7つのドラム缶型時限爆弾を仕掛けたという。英国軍は爆弾処理の専門家ファロン中佐(リチャード・ハリス)を現場に派遣し、必死の犯人捜査と爆弾の解体を試みる。
映画の前半部はいかにもイギリス制作らしく、ノンビリとしたペースで物語が進む。どーでもいい船内の生活風景がしつこく描かれたり、笑うに笑えない微妙なギャグが頻発したり。ハリウッドのアクションなんかに比べるとかなりユルく、正直「これが最後まで続いたらたまらんな」という感じだったのだが、あるいは後半の盛り上げのための意図的な演出だったのかも。落下傘降下で船にたどり着いた爆弾処理チームが仕事にかかってからは、大変に面白かった。
爆弾処理自体はドラム缶を慎重に空けて部品を一つ一つ外して……と地味な作業なんだけど、「一つ間違えば死」なのがわかりきっている上に展開が読みづらく、偶然からファロンの部下が爆死するなど息をのむ緊張感が続く。で、色々苦労して最後にたどり着くのが、例の「青のコードか、赤のコードか」である。今の映画でやるといかにも陳腐な二者択一だが、さすがにオリジナルは凄い。「パチン!」というペンチの音があれほどのサスペンスになるとは。
まあ、青と赤だと、確かに青を切った方が安心な感じはするわなあ。別にアンチ浦和・鹿島じゃなくてもさ(笑)。