2010年02月28日

●三洋電機三連覇 ('10ラグビー日本選手権決勝)


雨上がりの午後、秩父宮ラグビー場でラグビー日本選手権決勝。三洋電機ワイルドナイツ 22−17 トヨタ自動車ヴェルブリッツ。いよいよ国内ラグビーシーズンも大詰め、泣いても笑ってもこれで最後のタイトルが決まる一戦は「決勝戦」ではちょっと記憶にない顔合わせとなった。泥沼のピッチで行われた試合は、やや自滅気味の三洋に対してトヨタがリードを奪う展開となるが、後半半ばから底力を発揮した三洋が怒濤の逆転劇でシーズンを見事締めくくった。
 
 
ただでさえ痛んでいた秩父宮のグラウンドは直前まで降っていた雨で泥が浮き、非常に滑りやすい状態。しかし両チームともそんなピッチにひるむ様子なく、序盤から激しいぶつかり合いが繰り広げられた。7分、SH田中の巧みな抜けだしから三洋がゴールまであと1mの地点へ至るも、トヨタDFが絡んでノットリリース。しのいだトヨタは直後に反撃。9分、DF裏を突くSOアイイのキックで攻め込み、ラインアウトからのモールで左隅になだれ込んだ。0−5。

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2010年02月25日

●『幕末太陽傳』

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NHK-BSで録画した川島雄三監督『幕末太陽傳』を観た。時は文久2年(1862年)、ところは品川の遊郭街。無一文で豪遊したカドにより遊郭旅籠で働くことになった「居残り」佐平次(フランキー堺)は、知恵と図々しさを武器に大活躍を見せて旅籠内でのし上がっていく。その頃、同じ宿では高杉晋作(石原裕次郎)ら長州志士たちが御殿山の異人館焼き討ちを企てて……。
 
 
まずはピチピチとした、イキの良さが印象的な映画だ。

現代(1957年)の品川赤線風景を映した、意表を突く冒頭シーン。溢れる頓知で軽快に痛快にトラブルを解決し続ける主人公。ひたすら若く熱く無謀な幕末の志士たち。美しさとしたたかさでナンバー1を競う遊女たち。エネルギッシュな欲望むき出しの遊郭。そしてドタバタと古典落語のエピソードが連鎖していく物語。そのどれもがバイタリティーに溢れており、役者たち(二谷英明とか小沢昭一!とか)の若さとも相まって頬が自然と弛んでくるような感覚を覚えた。

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2010年02月19日

●『メトロポリス』

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DVDでフリッツ・ラング監督『メトロポリス』を観た。戦前ドイツ映画の黄金時代(1920年代)に撮られた、SF映画の金字塔でもあるあまりに有名な超大作。

<あらすじ>
舞台は2026年(制作年の百年後!)の未来都市「メトロポリス」。超高層ビルに住む特権階級と地下で過酷な労働に従事する労働者階級の対立が深まる中、その状況に疑問を抱く若者フレーターは労働者の娘マリアと恋に落ちる。彼の父で「メトロポリス」の支配者たるフレーダーセンは、マリアそっくりのロボットを使って労働者たちの混乱と分断を図るのだが……。
 
 
名作中の名作と言われるだけあって、映像についてはとにかく素晴らしいの一言。摩天楼が立ち並び、高速道路や飛行物体が行き交う大都会。エレベーターで降りていく先に突然現れる地下世界。シャープでミステリアスなロボットの造形と、それが人に姿を変える際の美しいオーバーラップ効果。全く古びていない、というと言い過ぎかもしれないけど、少なくとも各シーンの「ワンダーな感じ」は今でも十分通用していて、とても85年前のセンスとは思えない。

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2010年02月17日

●『男たちの大和/YAMATO』

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レンタルDVDで佐藤純彌監督『男たちの大和/YAMATO』を観た。太平洋戦争末期、沖縄への特攻「菊水作戦」における戦艦大和の最期を、主に下士官や少年兵の視点から描いた戦争大作。角川春樹の手による制作や25億円の制作費、広島に6億円かけて作った巨大セットが話題になった作品だが、2005年邦画興行収入第1位を獲得するヒットであったのだとか。
 
 
見終わっての感想としては「評価の難しい映画だな」と。

一本の映画として良くできているとは言い難い。物語としては「現代」と「(回想の)過去」を行き来する構成をとっているのだが、現代パートでは少数の人物たちが間延びしたやり取りを繰り返す一方で、過去パートでは(回想のはずなのに)様々な登場人物のエピソードが目まぐるしく詰め込まれていて、どうも脈絡がはっきりしない。これは主観劇なのか群像劇なのか……。

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2010年02月14日

●赤い竜の底力 ('10シックスネイションズ ウェールズ×スコットランド)

土曜日の夜は、JSPORTSでラグビーシックスネイションズ。ウェールズ 31−24 スコットランド。2週目に入った今年の6カ国対抗、この日は初戦で完敗したチーム同士の「負けられない」対戦であった。アウェイのスコットランドが大半の時間ペースを握り、残り数十秒までリードを奪う展開となるが、土壇場にウェールズが怒濤の攻撃でドラマティックな大逆転勝利を収める。
 
 
序盤からスコットランドペースで試合は進む。9分、甘いタックルをくぐり抜けてFLバークレイがトライ。続いて20分、ゴール内へのグラバーキックをWTBエバンスが押さえて3−17。その後スコットランドはエバンスやFBパターソンを負傷で失うも、手堅いボールキープでリードを守る。56分、WTBウィリアムスの快走からウェールズがトライするが、67分にSOパークスがDGを決めて14−24。さらに時計は進み、勝負は決まったかに見えた。

流れが変わったのは74分、スコットランドHOローソンが妨害行為でシンビン(一時退場)になってから。数的優位に立ったウェールズはそれまでのミス連発が嘘のように高い精度と集中力でボールを動かし続け、78分、パス展開からWTBハーフペニーが右隅を抜け、中央まで回り込んでトライ。21−24。ウェールズは勢いに乗ってさらに攻め、ラインブレイクからミニパントを上げたFBバーンが倒されて22m内でPK獲得、倒したグッドマンは一発退場。

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2010年02月13日

●『硫黄島からの手紙』再見

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一昨日の夜、NHK−BSでやっていたクリント・イーストウッド監督『硫黄島からの手紙』を観た。最初は映画館で観て、いつだったかDVDを借りて観て、これで3回目の鑑賞になるだろうか。公開時のエントリーでも書いたけど、これは傑作である。何度観ても良い映画だと思う。
 
 
初見の4年間に比べると冷静に観ているせいか、日本兵の言葉遣いや憲兵の描き方など、正直不自然さは以前より目に付いた。多くの時間帯を占める戦闘シーンにしても、過不足ない感じではあるけれどそれほど迫力があるわけでもない(まあ『プライベート・ライアン』とか『ランボー』とかと比べちゃいかんのかもしれんけど(笑))。

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2010年02月12日

●『ランボー 最後の戦場』

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今年の初め頃にWOWOWで録画しておいたシルヴェスター・スタローン監督『ランボー 最後の戦場』を観た。ご存じアクションヒーロー・シリーズの実に20年ぶりとなる新作。東南アジアの一角に身を潜める元グリーンベレーのランボー。ある日、彼は内戦と政府軍による弾圧が続くビルマへキリスト教系NGOの一団を送り届けるが、NGOはミャンマー政府軍により捕らえられてしまう。ランボーは5人の傭兵たちとともに彼らの救出に向かうのだが……。
 
 
ストーリーにせよ登場人物にせよ、とても「わかりやすい」映画だった。卑劣で残虐な悪の軍隊。善良だが無力な(そしてヒーローに救われる)平和主義者。訳ありの過去を背負い込んだ個性的な傭兵たち。ランボーが事態に巻き込まれるいきさつ、NGOや傭兵たちと最初対立しながら次第に心を通わせる過程、そしてラストの大戦闘。ありがちなパターンだらけの筋立てだけを見れば、80年代的な(右翼的な)アクション映画と何の違いもないようにさえ思える。

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2010年02月10日

●清宮監督退任

ありがとうございました (清宮克幸オフィシャルブログ)
 
 
ということで、やっぱりというか、案の定というか、清宮監督が辞任の発表。

ファンとしては残念に思う一方で、負けた以上はこれで良かったんじゃないかな、と。清宮さんもサントリーを率いて4年目、年数的にも一区切りつけるにはちょうどよい頃合いのようにも思えるし、「いよいよ」結果が出なかったところで周りにあれこれ言われる前にスパッとやめたことで、キャリアに変に傷がつくのを防げるだろうし。

まあ、自他ともに認める「プロ」の監督だから。内部の事情はよくわからないけど、結果に対して潔く責任をとった態度は間違いなく立派であると思う。

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2010年02月07日

●「取りかえしのつかないこと」 ('10ラグビー日本選手権1回戦)


寒い風が吹きまくっていた今日の昼間は、秩父宮ラグビー場で日本選手権1回戦。東海大学 7−11 NTTコミュニケーションズ。「大学1・2位と社会人下部リーグ・クラブ王者」の組み合わせになり、学生の勝機が俄然大きくなった近年の1回戦。帝京×六甲ファイティングブルは前者の楽勝だろうと見込んで、より接戦になりそうな方を観戦した。試合は一進一退のせめぎ合いが続くロースコアゲームとなり、絶好機を大チョンボで逃した東海がわずか4点差の惜敗。
 
 
前半は風上に立った東海が押し気味に試合を進めた。いきなり2分、FB豊島のミニパントでゴール前まで攻め込んでスクラム・ラインアウトからトライを狙うが、ラックで微妙にボール出しを邪魔する社会人の巧さに阻まれる。東海は果敢なパス攻撃とキックを交えて攻め立てるが、セットプレーと密集のボール出しで苦戦する場面が多く、また奥目を狙ったキックはNTTコムのSO君島・FB栗原徹の着実な処理にあってなかなかチャンスにつながらない。

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2010年02月06日

●『卒業写真』

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3日前のエントリーでは荒井由実(松任谷由実)さんの『ひこうき雲』について書いたんだけど、一緒にiTunesストアで買った『卒業写真』も、言うまでもなく歴史に残る名曲なんである。1975年発売の3rdアルバム「COBALT HOUR」に収録。

今になって「こんな良い曲だったんだ」と聴き直して感動した『ひこうき雲』とは違って『卒業写真』は僕の幼い頃からずっと世間的にも有名で、ラジオなどで幾度となく耳にしてきた曲だ。僕の生まれた翌年に発売され、以後数多くのアーティストにカバーされてきたことを考えればまあ当然だろう。ハイ・ファイ・セットをはじめとして、最近でも徳永英明さんとかいきものがかりとか。
 
 
歌の内容としては、「とある女性がヘコんだ時に卒業アルバムを開いては、青春時代に思いを寄せていた彼を思い出して自分を励ます」というもの。

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2010年02月03日

●『ひこうき雲』

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昨年の12月、友人(この人この人ね)の結婚パーティーのジャンケン大会でiTunesのプリペイドカードをもらった。最近特に欲しいアルバムがあったわけではなかったのだが、せっかくだからとiTunesストアでちょっと懐かしめの名曲を見つけてはポツポツと購入したりしている。

数日前にダウンロードしたのが、荒井由実(松任谷由実)さんの『卒業写真』と『ひこうき雲』。『卒業写真』はハイ・ファイ・セットや徳永英明さんのカバー版も含めてこれまで幾度も聴いてきた曲だけど、『ひこうき雲』の方はかなり久しぶり……というより、通しでじっくり聴いたのはこれが初めてかもしれない。
 
 
あらためて聴いてみると、なんというか、不思議に心に引っかかる歌であった。

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