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2009年08月18日

●『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』


やっとこさ観たぞ、新宿ミラノ座で『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を。言わずと知れた庵野秀明総監督の大人気シリーズ「再映画化」第2弾。事前の情報管制や公開後の好調な動員が話題になっていた作品だが、実際に観てみると「おおおおお!これは……うーむ……」と唸らされる映画に仕上がっていた。大げさでなく、見終わった後はしばし絶句。
 
 
美麗な映像と迫力の音響、計算し尽くされたエヴァと使徒の動き。巧みに構成されたアクション・シーンについては「序」以上に鬼気迫るものがあり、「アニメーション」という概念の枠内でこれを超えるのは不可能ではないかと思うくらい。架空の、しかしリアルに作り込まれた都市の中をエヴァが縦横無尽に走り、跳び、叫び、引きちぎる。特に空中投下された弐号機が空気抵抗を受けて浮かび上がるシーンと、使徒の落下点に向けて疾走する初号機には驚いたヨ。

一方、エヴァと戦う使徒は従来以上に生物離れした記号化された存在となっていて、それでいてはるかにパワフルなのが面白い。『ヱヴァ』の世界は単純な味方×敵の図式では割り切れない(使徒は「最後の敵」ではない)ことはもうバレてるから、いっそ難しいこと抜きに強大にしてアクションを盛り上げようか!という感じなんだろうか。戦闘シーンは例の「使徒喰い」のシーンも含めてど迫力満点。ホント、繰り返しになるけどアクションの切れ味は見事だ。

で、肝心の物語の方は……いくつか改変があるにせよ、意味不明の戦闘や思わせぶりな台詞と登場人物たちの自意識や細かい人間関係が絡み合いながら進んでいく、という基本線は一緒。ただ、テレビ版ほど「行きつ戻りつ」の話になっておらず、もどかしさはさほどない代わりに、順調に進んでいくかに見えたところでドーンと落とされる感じがショッキングというか。大山小山の連続ではなくて、緩やかな上りからキュッと下ってグンッと上がる感じというか。

加えて、旧作に比べると今回は個人の「想い」を表出することがより肯定的に、重きを置いて描かれている。テレビ版第拾九話で「みんなのために」エヴァに乗ったシンジが、同様のエピソードで「綾波のために」乗り込むのはその典型。「世界がどうなろうと、綾波が助かれば」ってのも、考えてみりゃ凄い話だよな。まあ、そもそも『エヴァ』の物語自体、「人類補完計画」云々の大状況と、シンジをはじめとする人々の想いとのせめぎ合いと言えなくもないのだが。

そして問題のクライマックス。なんというか、『トップをねらえ!』の最終回を持ち出すまでもなく、エモーショナルな揺さぶりとアクションを組み合わせて最高に盛り上げる腕にかけては、庵野組(旧ガイナックス)の右に出るものはいないことを再確認させられた。BGMの『翼をください』は反則だよなあ(その前の『今日の日はさようなら』はちとあざといけど)。シンジがレイに向かって懸命に手を伸ばす場面には、「馬鹿な話だよなあ」と思いつつウルッと来てしまった。

おそらく、仮にあのラストシーンで「完」の文字が出て、続編が作られなかったとしても、それはそれで(もしくはその方が)いいのではないかと(笑)。

つーか、これでまだ4部作の2つめなのか……。いったいこの後、どうやってこのテンションをもたせるつもりなんだろう。予想がつかないというか、何とか全体を駄目にすることなく走りきってほしいというか。テレビ版のように個人の問題に全てを矮小化してしまうのではなく、旧映画版のように観念論で強引に個人と世界を結びつけてしまうのでもなく、きちんと物語のフォーマットを保ったままで結論へ持って行く。難事業には違いないが、とにかく期待して待とう。
 
あと、どーでもいいけど、今回から登場した眼鏡っ子キャラは「いかにも今時のアニメで出てきそうな」ステレオタイプの二次元キャラ(戦闘中にしゃべりすぎだろうお前は)だったけど、あれはどういう意図なんだろう。普通に要らないと思うのだが。また庵野さんが変に考え過ぎちゃって、「アニメファンに媚びるのはいやだ!むしろそういうヤツらを突き放してやりたい!」なんて思ってズッコケの結末にしちゃったりしないか、ちょっと心配。「きもちわるい!」(笑)。
 

[付記] 
庵野組作品らしく、今回も作品中には色々と特撮作品へのオマージュが散りばめられていた。冒頭「スタジオカラー」のロゴが出るところの効果音は『ウルトラマン』の変身音だったし、ミサトさんの携帯電話の着信音は『ウルトラマン』の科学特捜隊の無線機(星型のヤツ。前に『Foot!』で倉敷アナも胸に付けてた)の呼び出し音だよね。あとミサトさんが途中から乗っていた自動車も特撮関係の何かだと思ったのだが……スイマセン、わかりませんでした(笑)。

ついでに言うと、エヴァと使徒が戦っている時に白衣の学者(リツコさんね)がいちいち解説を加えるのはまさに怪獣映画のフォーマットだし、クライマックスの戦闘シーンでエヴァ初号機の失われた片腕が復活するところとか、使徒に取り込まれたレイをシンジが腕を突っ込んで助ける場面なんかも『ガメラ3』そっくり(というか、スタッフが共通しているので『ガメラ3』がかなりエヴァの影響を受けてるんだよね)。今さらながら、『エヴァ』は怪獣映画だったのね、と。

いやあ、庵野カントク、自分の好きなものでこれだけのクオリティのものを作って、メシを食ってるってのは本当に凄いっす。
 

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