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2014年12月21日

●ディズニー版『AKIRA』というか(『アナと雪の女王』)

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先日、今さらではあるが(こればっか)、ブルーレイで『アナと雪の女王』を観た。
 
 
宣伝文句に「ディズニー映画初のダブルヒロイン」なんて謳われていたからどんな話だろうと思ってたんだけど、実際に観ると確かに「王女(エルサは途中から女王だけど)2人が主人公」ではありながら、物語の構造が昔ながらのプリンセスもの(『白雪姫』『シンデレラ』『眠れる森の美女』あたり)とは全然違ってる映画だった。

つまり、古典的なディズニーのプリンセスものってのはヒロイン自体はあくまで清く正しく美しい存在。そこに他に邪悪なもの(継母とか魔法使いだとか)が現れて危害を及ぼそうとするも、しかし正義の第三者(王子様や小人、妖精)の活躍で打倒されてめでたしめでたし、てなお話だったわけだ。単純化して言えば。

一方、『アナ雪』はそうじゃなくて、事件に乗じて国を乗っ取ろうとする悪い奴(アナをこまそうとする女たらしのボンクラ王子や隣国の悪徳ヅラ公爵)は出てくるにしても、問題の本質、あるいは原因はあくまでエルサの雪と氷を操る能力の暴走と、エルサとアナの姉妹関係にあるんだよね。

主人公それ自身が問題ってのは、今どきだなあというか、子供向きのお話じゃないよなこりゃ(笑)。うちの3歳の子供も、最後なぜあれでうまく収まっちゃうのか理解するのがちょっと難しかったみたい。まあ別に子供だけに観せるために作ってるんじゃないんだろうし、一緒に観る我々としてはこれくらいの方がいいんだけど。

つーか、「奥深くに隠された超能力者」を巡る話で、「本人の意志とは無関係に暴走する大いなる力」によって事件が起こったり、主人公たちがみなしごだったり、あと「失われた幼い頃の記憶」がキーになっていたりと、モチーフとしてはこれは大友克洋の『AKIRA』だな、と。エルサとアナの関係性って、鉄雄と金田にちょっと通じるところがあると思うんだけど、どうだろう。
 
 
まあ、でも、「子供向きじゃない」なんて書いたけど、実際は子供たちに大ウケしてるんだよな、これ(笑)。デパートの子供売り場なんかアナ雪グッズが山のように置いてあるもんね。ま、物語云々はやや難しめかもしれないけど、映像や音楽、キャラクターのの魅力も相当なもんだからそりゃあ魅きつけられるよね、と。

映像と音楽で言えば、すっかり有名になった『レット・イット・ゴー』の場面なんか、もの凄い質の高さだと思った。エルサの振り付けといい雪や氷の壮大な動きといい、何回か見返しても全く飽きない。

ピクサー的な3Dアニメーションもかなりこなれてきて、だいぶ違和感がなくなってきたというか、必要にして十分な動きの表現ができるようになったもんだと思う。てか、松たか子ってこんなに歌上手かったのね。

キャラクターでは、個人的にはクリストフとスヴェンのコンビが良かった。肝心なところで動物が一番の活躍を見せるのはディズニーのお家芸だけど、今回はその相方のクリストフという「普通にいい奴」が(決定的な役割は果たせないんだけど)よく頑張って結果的にハッピーをつかむ、というあたりがシビアな物語の中で和みの要素になっていた。

あとはオラフか。賑やかしのキャラというのは(たとえば『スター・ウォーズ エピソード1』のジャー・ジャーみたいに)ひたすらウザくて「こいつ消して!」ということが多いんだけど、オラフは陽気さと間抜けさと真剣さのバランスがとれていて悪くなかった。「アナのためなら溶けてもいいよ」はちょと泣けたし……って、さっき気づいたんだけど声はピエール瀧さんなのね。多芸な人だ(笑)。

しかし、考えてみればこの物語、アナは一貫してリア充だしクリストフもスヴェンもオラフも王国の国民も最後幸せになるんだけど、エルサは結局重荷を背負わされたままなんだよね。姉妹の愛を確認できて吹っ切れはしたんだろうし、それで救われたと言えばそうなんだろうけど……ちょっとかわいそう。
 
 
てな感じで『アナと雪の女王』、面白いし色々と考えさせられたりして、観た甲斐はあったかなと。実はこの直後に『塔の上のラプンツェル』も観たんだが、あっちはアクション満載で悪い魔法使いもいてより正統派寄り、でも事の発端はプリンセス自身の特殊能力だったりして何というか古典作品と『アナ雪』との中間的な物語だった。見比べてみてもなかなかに楽しいかも。
 
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