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2015年01月29日

●B29とレコード、ツィゴイネルワイゼン

先日、都内の某博物館で新規の収蔵資料に関する仕事をしていた時の話。

今年、その博物館に太平洋戦争時に都内で拾った「高射砲の弾の破片」を寄贈してくれた方がいて、それはそれでもちろん貴重な(何しろ70年前の戦争を生で伝える)資料なんだけど、添えられていた手紙に書かれていた体験談が興味深かったのだ。

その方はいわゆる東京大空襲の翌日(つまり1945年3月11日)、ご自身はなんとか難を逃れて焼け野原となった都内を歩き回っていたとのこと。で、とある橋のたもとにたどり着いた時、おそらく偵察か写真撮影をしていたのだろう、米軍のB29爆撃機が低空で飛んで来たのだそうな。

とっさに身を隠したところ、特に銃撃を加えたり威嚇したりするでもなくB29は飛び去っていったのだが、頭の上を通過する際にB29の機体からサラサーテ作曲のヴァイオリン曲『ツィゴイネルワイゼン』が聞こえてきたのだ、と……。

その方も戦争当時はまだ子供だったのでサラサーテの曲など知らなかったとのことだが、その体験をした時のメロディが頭に焼き付いてしまい、後になって『ツィゴイネルワイゼン』を聞いて「あっ、あの曲だ!」と気づいたのだという(ということは、やはり忘れられないあの出だしの部分が流れたのか)。

手紙を読んで、博物館の人たちと一緒に思わず「えーっ!」と声をあげてしまった。まあ、墜落したB29の残骸の中に蓄音機とチャイコフスキーの『くるみ割り人形』のレコードがあった、という話は聞いたことがあるし、B29の基地だったマリアナ諸島(サイパン、テニアンなど)から東京までの所要時間(当時4〜5時間か?)を考えても搭乗員がレコードくらい聞いてもおかしくないとは思うが、でも爆音の中で飛行機の外へ、かつ地上まで音が届くのか。

その博物館の館長さん(戦前生まれ)も「聞こえないんじゃないかな〜。僕らの子供の頃はレコードでB29の爆音を聞き分ける訓練をしたものだけど、けっこう独特の高音でね」と、B29とレコードについて別の興味深いエピソードを披露してくれたんだけど(確かに戦時中はB29の爆音レコードってのも作られたんだよね)、まあ普通に考えれば聞こえないわなあ。

いずれにせよ、その方の「『ツィゴイネルワイゼン』を聞いた」という記憶が正しかったとしても、本当にB29から聞こえてきた音楽なのかどうか……。

僕にとってサラサーテの『ツィゴイネルワイゼン』といえば、鈴木清順監督の同名映画が思い出されるのだけど、あれは何が現実で何が幻想か、誰が生きてて誰が幽霊なのかわからないような不思議な物語だった。そのせいか、先日そのエピソードを知った後も、何だかちょっと不思議な感じが頭の中に残っているのであった。まさか幽明の境を越えたわけではあるまいが(笑)。


ヘンテコだけど、超傑作。


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