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2010年09月16日

●『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』

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HDDレコーダー底さらいの2つ目は、ギレルモ・デル・トロ監督『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』。人気アメリカン・コミック『ヘルボーイ』の映画化第2弾である。
 
超常現象調査防衛局(BPRD)のエージェントとして、恋人の発火女リズや親友の水棲人エイブとともに活躍を続けるヘルボーイ。ある日ヘルボーイはNYに現れた怪物たちを退治するが、それをきっかけに魔界の王子ヌアダとの争いが始まってしまう。太古の昔に人類と争った種族の生き残りであるヌアダは、封印された超兵器「ゴールデン・アーミー」を復活させようと企むも、争いを避けようとするその妹ヌアラが復活の鍵となる王冠の部品を盗み出してしまい……。

 
いやー、面白かった。この監督は本当にセンスがいい。

前作はヘルボーイ誕生の経緯と彼の背負った業、壮大な世界観を鮮やかに描き出した傑作だったが、第1作ゆえの詰め込みすぎ感はやや否めなかった。続編の今回は一エピソードとしてより軽やかに、脇役も含めた各キャラを活き活きと描いており、エンタメ性は前作以上に高い。BPRD本部の笑えるバケモノ満載描写、不思議なガス人間ヨハンの変な「ドイツ人ぽさ」、リズとヘルボーイのラブコメ調の大喧嘩、そして怪物達とヘルボーイのど迫力の立ち回り、etc。

特に今回ヒットだったのは、やはりエイブと王女ヌアラの悲恋だろうか。極めて理性的で感情を表に出すことなかったエイブが恋に落ちることで我を失ってしまい、はてはヘルボーイとともに酔っぱらっておセンチなラブソングを熱唱する情けない姿には、元10代男子(笑)として共感せずにはいられない。前作のヘルボーイやマイヤーズもそうだったけど、不器用というか駄目なんだよなあ。そんなエイブの一生懸命さに胸打たれるからこそ、最後の悲しい展開は泣ける。

一方で、彼らとともに物語の中心となるヘルボーイ&リズのカップルは今回リズの妊娠という幸福(しかも双子!それを聞かされた時のヘルボーイの表情に大笑い)を得るだけに、2組の恋人たちのコントラストは強烈である。ただし、重要なのは守るものを得るのと失うのとの違いはあれ、それを経ることでヘルボーイもエイブも成長したように見えることだ。ある意味、このシリーズは彼ら魅力的なバケモノたちの成長物語とみなすこともできるのかもしれない。

なんというか、デル・トロ監督って、善玉キャラはもちろん、脇役や敵役、普通なら倒すべき対象としか見えない怪物に至るまで思い入れたっぷりに撮ってる風なんだよね(「森の妖精」の哀しさ……)。愛があるというか。だから、アメコミ映画であってもファンタジーであっても安っぽくはならず、活き活きと「あるもの」として作り上げることができるのだろう。もちろん、その前提となる魅せる演出技術や美術のセンスに優れていることは言うまでもない。

まあ、今回はクライマックスを浮世離れした、あまりにも現代の我々の世界から隔絶した舞台に設定してしまったがために、ちょっとファンタジー寄りに行き過ぎちゃった感はあるかな、とは思う。「都会の闇の中に入れば一歩異世界」の感覚や、僕たちの知っている街の風景の中にいるヘルボーイたちの姿こそが(原作は読んでないが)このシリーズの大きな魅力ではないかと思うのだ。個人的な好みの話だし、そればっか見せても単調になっちゃうんだろうけどね。
 
 
とにかく、全体的にはナイスな出来の映画だった。次の『ヘルボーイ3』が早く観たくなった。というか、今までの2作を映画館で観ていないことをちょっと後悔したぞ(最近そんなのばっかり)。でもデル・トロ監督、次回作は『ホビットの冒険』なのか……そういや彼、センスといい風貌といい、確かにピーター・ジャクソンと通じるところがあるような。
 
 
[付記]
ネットで検索したりして色々と調べてみると、デル・トロ監督は日本の漫画やアニメの相当なファンらしい。確かに、ヘルボーイの「人類の守護者であると同時に破壊者にもなり得る存在」という設定は永井豪的(『デビルマン』『マジンガーZ』)だし、ヘルボーイとヌアダ王子が無数の巨大な歯車が回る中で戦うクライマックスは『ルパン三世 カリオストロの城』を想起させるものがある。『パンズ・ラビリンス』はダークな『千と千尋の神隠し』だもんね。いいぞ。
 

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