« もちつきで秩父宮を連想したよ | メイン | 「フェアプレーは男の勲章」 »

2005年12月19日

●『植田正治:写真の作法』

恵比寿の写真美術館で開催中の『植田正治:写真の作法 ~僕たちはいつも植田正治が必要なんだ!~』。故郷・山陰の人や風景を題材として「植田調(UEDA-CHO)」と称される独特の感覚の作品を発表し続け、国内のみならず海外でも高い評価を得た写真家・植田正治。その没後5年目に開催された初めての本格的な回顧展。

植田さんの作風は観れば一目瞭然、「作り込み」が第一の特徴である。キャプションにも書いてあるように、土門拳みたいなリアリズム路線とはまことに対照的。砂丘の中で趣向を凝らして並べられた人やオブジェたち。加えて、単に作為的というだけではなく、カラッとした明るさがあるのがこの人のいいところだ。向き合った時に思わず微笑んでしまうような感覚……そう、「ユーモア」という言葉がしっくりくる感じ。「ホラ、こういう配置でこう撮ってみたら面白いでしょ?」と悪戯っぽく話しかけられているような。

ちょっと大げさっぽい展覧会のタイトルも、きっとそういうところから来ているのだろう。作り手の「撮る喜び」がこの上なく伝わってくるからこそ、写真に関わる人にとっては「いつも必要なんだ」という。観たら元気の出る写真。なるほどこれはいいな。

従って、というべきか、展示されている中でも「わざとらしい」感じの強い作品の方が印象に残る。「砂丘」シリーズを筆頭として、「風景の光景」とか「白い風」とか。あと、「音のない記憶」という1シリーズだけはポーランド(だっけ?)を舞台としているのだが、これを観るともっと欧州での作品を残してくれてればさらに面白くなったのではないか、と思わないでもない。偏見かもしれないけど、欧州の街並みって「わざとらしい」感じが映えそうな気がするじゃない(笑)。

ま、とにかく、難しいことを考えず、肩の力を抜いて楽しめる展覧会だと思う。写真からあふれ出てくる喜びを感じ取れることができれば、それでいいのだ。

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/467

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)