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2009年01月04日

●明けまして写美、明けましてビール


新年最初の美術館は、2日に正月開館の写真美術館へ。1年に1回この日だけは全て無料で展覧会が観られるのである。確か今年で3回目か4回目のはずだが、恒例行事として定着してきたのか、昨年に比べてもずっとお客さんが多かった。良いこと……なんだろうな、普通に考えれば。ただ、あんまり混むと落ち着いて観られないから、それはそれで困ったことでもある。とりあえず個人的には、今のレベルで落ち着いてほしいな、と勝手に思ったり。
 
 
最初に入ったのは3階の『甦る中山岩太:モダニズムの光と影』。主に戦前に活躍した日本近代芸術写真のリーダー的存在、中山岩太氏の回顧展。作品の感想としては……まあいかにもモダニズム、という感じの凝った構図やら幻想的な表現やらが並んでいて、目の保養にはなったかな、と。マン・レイほどのとんがった表現でもないし、「これは」と目を見張るような一枚もなし。福助足袋の広告写真はちょっとユニークで面白かったけど。

まあ、おそらく、この作家については「戦前~戦中の「あの」時代にこういう表現を模索していた写真家がいた」という歴史的な位置づけこそが重要なのだろう。そういう意味では、阪神大震災の際に倒壊したアトリエから彼の作品の救出が有志の手によって懸命に行われた、というエピソードは、その後復元された彼の作品を収蔵している芦屋市立美術博物館が存続の危機にある、という現在の事情と合わせて、考え込まされるところである。
 
  
次は2階展示室で『ランドスケープ 柴田敏雄展』。ダムや道路、橋といった「自然の中の人工物」を撮り続けた中堅写真家の個展なのだが、これはなかなか観た甲斐があった。とにかく1枚1枚の迫力が凄い!大判写真の静謐さの中に延々と、あるいはびっしりと続く人工物。その周りで途方もない壮大な模様を描き出す大量の木や水、そして土。なんつーか、全体的には無機的な印象なんだけど、そこを突きつけて彼方に至っている写真というか。

ちょっと気になったのは、近年のカラー作品についての「モノクロには向いていないからという理由で落としてきた風景に気づき、3年ほど前から始めた」「カラーだと(モノクロでは極力排除している)現実感を排除できない」という解説。つまり、カラーとモノクロは単に色の有無の違いではなく、それぞれ映るもの表現できるものの領域が違う、と。なんとなく普段から感覚としてはわかっているつもりのことだけど、こうはっきり書かれるとなるほどなと思う。

これは、「モノクロとカラー」に限らず画像・映像の高画質・高解像度化なんかについても同じようなことが言えるのではないか。つまり、プリンタやモニター、メディアにおける高画質化の流れについては、無条件で「いいもの」と捉えられがちだけど、実際にはよく考えて使わないとコンテンツとの齟齬が生じるのではないかと。わかりやすいところで言うと、HD対応になった『水戸黄門』でカツラの線がはっきり映るようになっちゃったのはどうなのよ、とか(笑)。

そう考えると、『グラインドハウス』でCGを使ってまでわざと「70年代風」の傷だらけの画面を作ったタランティーノは、やっぱりものがわかっている男だな、と。いつの間にか写真とは全然別のことに考えが飛んでしまった……。
 
 
最後は、地下展示室で『イマジネーション 視覚と知覚を超える旅』。写美お得意のメディア芸術企画。幻燈からからくり、ビデオ、ICCにありそうな感覚操作系の装置まで。お薦めは、野菜や果物の塊を灯りで照らすとミッキーマウスの姿が浮かび上がる宇川直宏『Fresh Fruits, Vegetables & ANIMA MxKxM』、鋏やスプーン等の道具を触るとそれに関係した影が飛び出してくる近森 基++久納 鏡子『Tool's Life~道具の隠れた正体』あたりか。

面白かったのは、DVDで上映されていたリュミエール作品集。リュミエール兄弟といえば映画の発明者として名高いけれど、最初の作品『汽車の到着』以外は観たことがなかったんだよね。8分ほどの作品集だったんだが、なんつーか、まるっきり「コント」なのね。水をまいている人の背後に忍び寄ってこっそりホースを踏んで、「あれ?水が出ないぞ」とホースの先をのぞいたところで足を放すと、水がビャーッ「うわっ!」みたいな(笑)。まんまドリフの世界である。
 
 

てな感じで3つも(タダで)展覧会を堪能する合間に、2階のカフェで今年初ビール(1日は大晦日の暴飲暴食の反動で何も飲めなかったのよ……)。ベルギー産の「セゾン・デュポン」。輸入ビールとはいえ1本900円は正直メチャクチャ高いと思うが、まあ新年明けましておめでとうビールたち、ということで贅沢してみた。美味しかった!カフェの人がみかんもくれたし。

あと、美術館の帰り道には恵比寿ガーデンプレイスの地下「ジャイタイパレス」で新年初カレー。3種のカレーセット1500円は庶民の僕には財布壊滅モノなんだけど、これもまあたまには、ということで。シュリンプカレー(レッド)とタイ風のチキンカレー(グリーン)、あと牛肉とジャガイモのカレー(イエロー)。なんだかんだで日本っぽい黄色のカレーが一番美味かったかも。
 

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