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2007年10月29日

●来年はみんなでやり直そう (FC東京×川崎フロンターレ)


昨日の午後、台風一過の味スタで「多摩川クラシコ」ことJ1第30節。FC東京 0-7 川崎フロンターレ。ここ7試合で6勝1敗と好調ながら依然中位に沈み、監督交代報道も出てきた東京と、やはり中位に沈むも次週にナビスコ決勝の大一番を控えている川崎。ともにモチベーションの保ち方が難しい一戦であったが、川崎の攻撃力が爆発して一方的な展開となった。東京にとって7失点はクラブ史上初の惨状。


立ち上がりは東京の積極的な守備が目立った。前回の雪辱を果たしたい気持ちもあったのだろう、気迫の出足でボールホルダーに突っかけていく。が、攻撃は相変わらず単調で、川崎最終ラインをなかなか崩せない。一方の川崎は初めこそ繋ぐ意図も見えたものの、東京のプレス守備と悪ピッチに苦戦し、次第に鄭目がけたロングボールが増えていく。双方のDFラインの間を浮き球が行き来し、時折ミドルシュートが飛んで時間が経過していく。

試合が動いたのは25分。ボックス右からの川崎のコンビプレーをDFが一度ははね返したものの、走り込んだ鄭が左足でミドルシュート、左隅に決まって川崎先制。鄭らしい力感あふれる一撃で、これは褒めるしかないだろう。この得点をきっかけに川崎は本来の速いつなぎを見せるようになり、試合は一方的な展開に。29分、右に流れたジュニーニョが金沢と競争して低いクロス、ニアに飛び込んだ鄭が徳永ともつれながらもこぼれ球を蹴りこんだ。0-2。

反撃したい東京だが、ワンツーパンチを食らったショックもあるのか、アタッカーの連携がバラバラで攻撃を組み立てられない。アンカー伊野波のパスの精度も悪く、ボールが直接タッチラインを割る場面が幾度か。34分には早くもリチェーリを下げて石川を投入するも、目立った効果はなし。27分、正面から規郎が強烈なミドルシュートを撃つが、右ポストをかすめるように外れ。36分、突破を図るジュニーニョを藤山がスライディングで止めて拍手。

40分、右サイド(ばっかりだな……)からのショートコーナーを持ち出したマギヌンがボックス角付近からインスイングの低いクロス。ニアに飛び込んだ箕輪がわずかに触り、その身体がブラインドになったのか塩田は止めきれず、ゴールイン。0-3。さらに42分、マギヌンから右サイドの鄭へ展開パス、鄭は立ちふさがる茂庭を半身ずらして右足シュート、これまた左隅に決まった。0-4。本当に「なすすべなし」という感じの20分間であった。


後半は頭から伊野波に代えて平山投入。監督からも檄が飛んだのだろう、東京は前がかりになって押し込んでいく。川崎は4点目以降やや集中が切れ気味であるようにも見え(多分、「心ははやナビスコ決勝」だったのだろう(笑))、9月のジェフ戦などが頭をよぎって「開き直ると強いチームだから、あるいは……」と思った瞬間に金沢のロングパスで赤嶺がDFライン裏に抜けたのだが、シュートはポストに当たって決まらず。うーむ。

その後数分間攻勢が続いたところで東京も息切れし、空いたスペースを狙う川崎のカウンターが決まり始める。54分、ジュニーニョの強烈なシュートを塩田が横っ跳びでセーブ。もう無理に点を取る必要のない川崎は62分に鄭OUT寺田INの交代。東京は無力化しかける中盤を今野が1人で支えて奮闘し、前線にボールを供給するもぶ厚いDFを突破できない。65分、徳永のアーリークロスを規郎が左足で叩くが、枠外。

70分、CKのこぼれ球から谷口が深くまでえぐってマイナスのクロス、ジュニーニョのシュートは東京DFが折り重なるように防ぐ。そして74分、ボックス左でためたジュニーニョが狙いすましたクロス、ファーでフリーになっていたマギヌンが頭で押し込む。0-5。これで勝負あり。東京は金沢OUTで規郎をSBに下げるスクランブル体勢も、気力・体力ともに既に枯渇。以後は形こそ押しながら、実質的には川崎のカウンター練習のような雰囲気に。

79分、谷口の強シュートを塩田が片手で防いでCK、憲剛の蹴った高いボールに寺田が合わせ、ふわりと浮いたボールが左隅に吸い込まれてゴールイン。0-6。「もう、何やっても決まりやがるのな」という感じ。その直後にマギヌンが今野を後ろから倒して2枚目のイエローで退場に。「何やってんのよ」と呆れるも、笑うに笑えない状況である。84分、今野のスルーパスで赤嶺がDFライン裏に抜けた場面もGK川島が飛び出してストップ。

85分、ハーフウェー付近で後方からのパスを受けたジュニーニョがターンとともに急加速、茂庭を一気にぶっちぎってボックスへ突入し、塩田の股間を抜いてゲット。ついに「新記録」の7失点。ジュニーニョの見事なゴールには思わず東京側スタンドからも拍手が……って、あてつけなんだろうな、あれは。結局、ロスタイムの好機も実らず、7点差のまま試合終了。タイムアップの笛が鳴ったとき、既にバックスタンドには空席が目立っていた。



フロンターレにしてみれば、やはり昨年の大逆転負けの復讐という意識はあったのかもしれない。あとはリーグ不振の鬱憤晴らしと、ナビスコ杯決勝の景気づけか。このチームは一見ソリッドで不器用そうにも見えるけど、実は「サッカー」(ジュニーニョ、憲剛)と「ラグビー」(鄭、谷口、山脈DF)の両方に対応できるんだよね。参りました(笑)。「先制点は昨日のサッカー番組で見たプレーをイメージ」という鄭クンのコメントが、ちょっとおバカで好き。

FC東京は……モチベーションに難があったというより、気合いが入りすぎていたために、ボカンボカンとやられたところで張りつめていたものがプチーンと切れてしまった印象。後は「11人総(悪い時の)石川直宏状態」というか、各自がバラバラに空回りして、逆襲で5点、6点と取られて、「もうどうしたらいいの俺たち」という。少なくともバックスタンドで観ている限りではそう見えた。「アノミー」状態とでも言えばいいのかな。

もちろん、個々の選手やプレーに全く良いところがなかったわけではない。赤嶺のボールの引き出し、規郎の強シュート、藤山のカバーリング、塩田のセービング。でも、この試合では、特に2失点後はそれらの「つらなり」としてのチームが機能していない状態だった。今の東京のサッカーが悪い方へ振り切れるとこうなるのかな、と。キャプテンマークを巻いた今野の奮闘が余計にもの哀しくて……あの姿はあと何試合見られるのだろうか。


最後に。先日複数の新聞に出た監督交代報道について。このブログの読者は既にご承知のとおり、僕は原監督退任に賛成である。しかし、後任が城福さんという点については正直「?」という気持ちもあった。東京が本当に頂点を目指していきたいのならば、クラブに不足しているものを(それこそ軋轢覚悟で)補ってくれるような「外部の」ベテラン監督が必要だと思っていたからだ。決して城福さんが「育成だけ」の人ではないにせよ。

でも、昨日の試合を観てちょっと考えが変わった。このチームは、やはり「やり直す」ことが必要ではないか。別に今までの経験や成果を無理に捨てる必要はないけれど、気持ちとして、姿勢として、ファンも含めたチーム全体として、「やり直す」ことが必要なのではないか。だから、「外部の」より良い人材を探す努力は続けてほしいけれど、城福さんのようなフレッシュな人と一緒に「やり直す」ことも悪い選択ではないのかもしれない。

ま、個人的希望としては、やっぱりジョゼさんがいいんだけどね(笑)!!

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コメント

カウンターが得意な川崎に先行され、無理に攻撃に行けば、昨日のような形で追加点を取られるのは、やむを得ないでしょう。

結果として無得点でしたが、選手一人一人は意地を見せようとしてくれたと思います。が、ご指摘のとうりチームとしての連動がなく孤軍奮闘状態。

また相手が東京対策でロングボールを多用して来るのも想定の範囲のはずなのに、上手く対応出来ませんでした。どうも川崎の戦術を読み誤って試合に入り、修正する前に4失点したように思われます。

高い授業料でしたが、反省したら切り替えて、前を向くしかありません。

>来年はみんなでやり直そう
その前に天皇杯じゃないでしょうか?
俺も原さんには懐疑的ですが、
それでもここまできたらなんとしても天皇杯勝ってもらいたいと思ってます。

契約云々なんて話は、
来月にはどんどんでてくるわけで、
今、ここで盛り下げても、、、
どうなんでしょう?

天皇杯勝ちたいですね。

ご無沙汰してます。日本を留守にしていることが多く、なかなか生で試合を見られないので、こちらのレポートが助かります。

これはこれは、ものすごいものを目撃してしまったわけですね。「11人総(悪い時の)石川直宏」状態というのが、非常に判りやすかったです。全員揃ってアップアップな状態になっちゃったんですね。。。

前向きに考えるなら、これだけ痛い目にあえば、来季に向けて「変わっていかなければ、変えなければ」とチームに関わる多くの人が感じてくれるかも・・・という点でしょうか?城福さんは経験の点でちょっと心配ではありますが、一緒に東京を創り直すのは悪くないと思います。

それにしても、今ちゃん、何とか引き止められないかなー?今ちゃん抜きの東京って恐ろしくて考えられない。。。

いつもブログ楽しく読ませていただいています。

この試合、うまねんさんが散々書いてきたこと(笑)。原東京の1年何が出来て出来なかったのか全部見えましたね。

フロントの原さん解任は正しい判断だと思います。

うまねんさんの言うとおり来年ですね。

コメント欄に「その前に天皇杯じゃないでしょうか?」という意見には懐疑的ですね。
このサッカーで勝ちあがっても、未来にはろくなことありませんし(苦笑)

できたら天皇杯から次の監督とかくらいがいいですがそういうのは難しいのでしょうかね?クラシコで首になった監督というのもなかなか味があると思いますし。

もう結論が出た原さんに残り試合任せても。。。という気持ちです。

 最後の段落(ジョゼさんの部分も含め(笑))はそっくりそのまま自分の発現にしたいくらい賛成です。
 内部からの昇格とはいえ、城福さんがU-17代表のときに目指したサッカー(=端的に言えば「人もボールも動くサッカー」)は今までの東京とは180度違う方向を向いたもの。これまでの東京が見せてきた「ファイトボール」「リアクションサッカー」に限界が見えたのならば、全員が一度リセットして、一から方向性を探ることも必要だなぁと昨日の帰り道に感じました。その結果、(今までの経験は活かしつつも)全くサッカーを変えてしまうのも手だし、やっぱり今と同じサッカーを突き詰めるとするのならば…それも一つの手ですし。一つ確実に言えるのは、そろそろフロントにも「一貫性」を持った策を講じてもらいたいということです。

 まあ、正直「堪え性」のない東京ファン(私も含めて)がそうした時に我慢できるかが、実は一番の難関かもしれませんがね。ガーロの時にその姿を世に晒してしまってますし(苦笑)

リッピさんもカペッロさんもあいてるよ(笑)ベテラン監督じゃなきゃだめだわ。

来期の強化方針(補強)をフロントと選手で話し合い希望。
サポーターへ~ってのが言い訳に成っていて互いの責任に向き合って無いのが問題かと。
アドリブのコントじゃ限界。
来期に残ってくれた人は全力でサポートしたいです。

皆さん、コメントありがとうございます。

いつもの記事よりはるかに反応(とページビュー)が多いなあ(笑)。つーか、多くのファンがあれこれと考えるきっかけにできるのであれば、この衝撃的な出来事もまあ決して無駄にはならないのかな、と。月並みな言い方ですが。

私も、別にもう天皇杯がどうでもいいとか、残りのリーグ戦に意味がないとか言いたいわけではありません(「何のために戦うか」は大きな問題ですが)。

ただ、やっぱり今年1年の戦いぶりや日曜日の試合のありさまを見てしまうと、短期的な成績云々ではなく、根本的なチームのあり方として「たて直さないと」と思ってしまう。だから、どうしても問題意識としては「来年は~」となってしまうんですよね。

もちろん、色々な考えがあると思います。今は、みんな人の言うことも聞きながら、それぞれがじっくり考えるべき時期なんじゃないかな、と思います。

そして、その間にできるだけいい監督見つけてきてくれよフロント、という(笑)。

いや、この期に及んで天皇杯があるって、言えないです。
それより、来年の川崎戦でどう屈辱を晴らすかですよ。
重要なのは、短期的な勝利より長期的なビジョンですね。

ほぼ同意です。
ファンやサポの考えはそれぞれだし
原さん絶対支持もありだと思う。
ただ、チームとしてここ数年確実に
伸びてないのは誰もがわかってるはず。

今のまんまじゃどう頑張っても
一桁順位に入れるかどうかですもんね。

僕個人のここ数年の東京の印象は
「寝起きの悪いハードパンチャー」です。
開き直ると(殴り合い)にはめっぽう強い
ものの、ある程度追い込まれないと
スイッチが入らない。んで、そこに
至るまでにダウンしてしまうことも
多々ありみたいなw

熊時代の90分ガチンコ勝負
(他にパターンをもってなかったってのも
ありますが)の頃より爆発力は
アップしてると思うんですよ。あの頃は
アマラオへの依存度高すぎでしたし。
去年のガンバ戦や川崎戦のように
チームが一丸となって開き直った
ときは、受け流せるチームはなかなかいない。

ただ、それと引き換えにパニくった
時の修正能力が壊滅的に低くなって
しまったかなと。サイドチェンジや
追い越す動きも本当に少なくなった。

ここ数年疑問で仕方がないのが
連携ミス、パスミスが一向に減らないこと。
今年試合に出ている選手で新戦力って
福西くらいしかいないのに。

監督うんぬんも当然あるけれど
チームとしての戦い方の「普段着」
が微妙にサイズとあってないのか、
第二ボタンあたりが外れているのか
ほつれているのか。そんな気がしてます。

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