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2006年02月25日

●第9回文化庁メディア芸術祭


早起きして、午前中から写真美術館の「文化庁メディア芸術祭」。1年間のメディアアートの優秀作百数十点がアート、エンターテイメント、アニメーション、マンガの4部門に分かれて展示されるお祭りである。とにかく若い人を中心に混み合う展覧会なので、今年は比較的マシな午前中を狙ってみた。ちなみに入場は無料。さすが文化庁というかなんというか…。


アート部門は、「創作」的なものよりも、現実の時間や空間を操作・再構成することで、観る(ないし体験する)者の感覚に訴えようとするものが多かった。大賞作『Khronos Projector』(Alvaro CASSINELLI)もそう。映っているのは一見ただの夜景だが、人がスクリーンに接触すると触れ方(強さ・速さ等)に応じて接触部分周辺の時間が変化。手を離すと接触部分を渦の中心としてゆっくりと夜へ戻っていく。ちょっとした神様気分を味わえるような作品。

あとは、列車内における時間と空間の流れを変えた『Gate vision』(小林和彦)とか、賞は取れなかったみたいだけど馬鹿馬鹿しさ満点の『OH HISSE』(山川晃)あたりが良かったかな。やっぱりメディアアートなんっつっても、理屈より前に美しさや面白さが来ないとね。


エンターテイメント部門では、なんと言ってもアニメーション(つーかパラパラ漫画)作成WEBサイト『Flipbook!』(Juan Carlos Ospina GONZALEZ)が飛び抜けて素晴らしい。そのとっつきやすさにはビックリさせられた。誰でもすぐそれなりに見られるものができそうなのがスゴイ。インターフェイスの勝利、ということだろうか。ここの「Make」のところで体験できるので、ぜひ一度お試しあれ。

他に魅力的だったのは、巨大なトンカツがスポーツに目覚めて闘莉王や城島や稲本と一緒にトレーニングする(笑)ナイキのCMとか、ピエール瀧の心に染み渡るお馬鹿アニメとかかな。気がつけば『ニンテンドッグズ』(任天堂)のブースで子犬のコーギーちゃんをひたすらなでくり回している俺。


アニメ部門の大賞は『浮楼(Flow)』(榊原澄人)という作品。遠景で映された小さな村で小さな出来事が延々続く、というものだが……。うーん、アップやカットを使う一般的なアニメ表現から遠く離れたところに行きたい、というコンセプトなんだろうけども、「見せる」作品としてはどうなんだろう。ノスタルジックな子供時代の記憶と大人になる痛みを2分半にギュッと濃縮した『seasons』(藤田純平)の方が良かったかも。


マンガ部門は、『失踪日記』(吾妻ひでお)が大賞を受賞。まあ、あらゆる意味で完成度の高い傑作だから、こういう賞を取っても不思議じゃないんだけどね。吾妻さんがねえ……。そういや歴代の大賞受賞作には『夕凪の街 桜の国』とか『セクシーボイスアンドロボ』も入ってたりするんだよな。お役所の賞のくせに(と言っては失礼だけど)やるな文化庁、という感じか。あと、『PLUTO』(浦沢直樹)も入るべくして入った、というところかな。浦沢さんは吾妻さんよりずっと賞ものに強そうだが(笑)。


てな感じで、3つの展示室で、ゆっくり見たらだいたい3時間くらいはかかるだろうか?でも多彩なメディアアートを体験できる貴重な機会として、とにかくお薦めである。1週間ちょいしかやってないので、お早めにどうぞ。

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