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2009年02月18日

●城福東京、08年から09年へ (2008年回顧 後編)

前編から続く)
 
 
4 「内容はともかく」それなりに結果を残した冬

上位争い生き残りをかけ、チームもファンも気合十分で臨んだ第30節鹿島戦。東京は長友・大竹コンビのマジカルな活躍(笑)などで会心の勝利を収める。鹿島が東京の勢いをいなさずに向かってきてくれたおかげで白熱した撃ち合いとなり、これはこれで東京らしい試合だったとも言えるだろう。春の多摩川クラシコとは違う意義を持った「秋のベストゲーム」というか。ともあれ、リーグ上位が空前の混戦となっていたため、これで希望がつながった。

その後はアウェイでガンバに勝ち、神戸と引き分けて優勝争いこそ脱落したものの、ホーム最後の新潟戦を辛勝して最終節までACL出場権を争い続けた。この時期は春のような快いパスサッカーが陰を潜めた感はあったものの、途中加入した鈴木達のフィットや守備の安定もあり、個々の能力をきちんと生かしつつ手堅く勝つ形が多く見られた。「Moving」はどうした、というツッコミはともかく、結果重視のスタイルで成果を出したということになるだろうか。

リーグ最終戦のフクアリではどえらいものを見てしまったような気もするが、まああれは犬に噛まれたとでも思って(笑)忘れよう。ある意味、大変に貴重な経験だった。

で、初制覇とACL出場をかけた天皇杯。相変わらず内容は地味めながら、効果的な起用で選手の特長を生かして4回戦・準々決勝を突破した。ついに97年以来のベスト4までたどり着き、国立まであと一歩。しかし、準決勝柏戦@エコパでは鈴木のゴラッソで先制したものの、勝負所をとらえたノブリン采配(フランサ投入)にはまって逆転負け。最後に「同格」感の強い相手にしてやられるという、ファンにとっては悔しいシーズンの幕切れとなった。
 
 
5 この年の成績・内容をどう評価すべきか

16勝7分11敗の勝点55、6位。監督が交代して1年目であることを考えれば上々の結果だったのは間違いないと思う。まして、開幕前の「期待半分、不安半分」、いやむしろ不安の方が大きかった(城福体制を好意的に見ていたファンの間でも「今年は降格さえしなければ」みたいな発言が多かった)ことを考えれば。勝点にしろ、順位にしろ、最後まで優勝争いをしていたという展開にしろ、2003年に次ぐ成績と言ってもよいのではないだろうか。

好成績の要因としては、まず補強の成功が挙げられる。「Kリーグ得点王」カボレは11得点で、アシスト等の貢献も大きかった。「Moving Football」のキーマンとして獲得した羽生も抜群の運動量と機転で活躍。佐原は守備の柱としてレギュラーに定着し、エメルソンはトリッキーなプレーで、鈴木達は献身的な動きで、春と終盤のチームをそれぞれ支えた。長友・大竹ら新人たちも期待以上の活躍。計算外だったのはブルーノ・クアドロスの怪我くらいか。

加えて、城福監督の情熱的な指導と、勝負に徹する現実的な采配。正直、開幕前には「Moving Football」のスローガンとそこにうかがえる理想には共感を覚えながらも、一方で「理想主義的、あるいは観念的になりすぎるのではないか」という心配があった。しかし、いざ蓋を開けてみると、きちんと相手や自分の特徴をわきまえて対策がとれる監督であり、安心したものである。4月の東京ダービーでの逆転勝利はそのことを示す良い例だろう。

結局は上位混戦でチャンスがあったにも関わらず優勝は逃してしまったし、一つの目標だったACL出場権にも届かなかった。でも、とにかくファンとして一応納得できるだけの結果が残り、チャレンジを何の支障もなく次の年も継続できる状況になったのは何よりだった。

もっとも、不満がないわけではない。特に内容面について。前編で「ベストゲームは春の多摩川クラシコ」と書いたが、逆に言えばそれ以降はあの時ほど爽快で、圧倒的なものを感じさせるサッカーは見られなかったということでもある。特に夏場以降は、結果を出さなければいけない状況の中で自分たちの長所を出し切るだけの余裕がないように見えた。一言で言えば夏以降は「Moving」していなかった、ということ。30節の鹿島戦でさえも、だ。

まあ、いずれにしろ2008年は「リスタートの年」。昨年の成績と内容については、今のサイクルの中で来るであろう「ピークの年」にどれだけのことができたか、というところから振り返って改めて評価すべきなのだろう、とは思う。そういう意味でも、最後に、08シーズンの戦いによって今年以降の東京に残されることになったポジティブな要素をいくつか挙げておくことにしよう。
 
 
6 今後に残る「財産」

上に書いたことと重なるが、まずは新しい「力」がチームに加わったこと。羽生・佐原をはじめとして移籍加入選手の大半がフィットし、シーズン後も残留してくれた(エメルソンは残念だったけど……)のはもちろん、大竹・長友ら将来の東京を担うべき新人選手が大活躍を見せてくれたのは本当に嬉しいことだった。当然のことながら、「外からの選手」でチームに足りない物を補ったり刺激を与えたりするのも、自前で選手を育てるのも、両方が大事なのだから。

また、以前からチームに在籍していた選手の幾人かが成長を見せてくれたのも見逃せない。その筆頭は梶山だろう。以前はスーパープレーと同じくらいに凡プレーの目立つ選手だったのが、春の横浜戦後に城福監督に叱責されたのが効いたのか、それとも娘さんの誕生がきっかけになったのか、GW以降は見違えるようにプレーの安定感が増し、ピッチ上でその豊かな才能を表現できるようになった。やっと「本物」になってきたとでも言おうか。

他では、12得点をあげて「エースストライカー」の地位に近づきつつある赤嶺、トップフォームとともにレギュラーの座を取り戻した茂庭、空回りの頻度が減って再び貢献度が上がってきた石川、正GKとして1年間ゴールマウスを守る経験を積んだ塩田、パスサッカーの中で新境地を開拓した浅利と平山、etc。チームが変わっていき新しい経験を積んでいく中で、多くの選手たちも伸びていく、そんな姿を見ることができた1年でもあった。

そう、「変わっていき」「伸びていく」こと。城福監督が東京において着手し、成果をあげつつある一番大きな仕事は、そうした変化や成長、それらの先に高い目標を置くことの大切さを選手やスタッフ、ひいてはファンにも滲透させることだと僕は思っている。

FC東京は世界有数の大都市の名前を冠しており、Jの中でも大きな規模のクラブである。しかし、その割には内向きというか、頂点を目指すことにためらいがあるように感じられるところがあった。だが、城福監督はその発言や振る舞いからは本気で優勝を狙っているように思えるし、実際08年にはそれを口にしても恥ずかしくないくらいの位置には達することができた。そして、いつしか選手もファンも「本気」になってきているように見える。

なんというか、これは個人的な思いかもしれないけど、やっぱりひいきのチームには何らかの高み(別にそれは順位とかには限られないが)を目指す意志を持っていてほしい。その挑み続ける姿をこそ応援したいと僕は思う。だから、城福監督が今まさに東京というチームを導きつつある方向性には大いに賛同するし、それが「東京という街にあるクラブ」にとって正しい道だとも考えている。2009年にも、数年後にも、そのずっと先にもつながっていく道。
  
 
てな感じで、長くなったけれど、2008年についての回顧と感想はこんなところで。次回は、2009年シーズンに向けての展望と要望(笑)かな。
 

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