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2015年05月31日

●燃えて、揺れて、ガッツポーズした夜 (FC東京×柏レイソル)

FC東京 2−1 柏レイソル (J1第14節 味の素スタジアム)

鹿島、浦和、名古屋とここに来てリーグ戦3連敗を喫し、ステージ優勝争いからは脱落模様の我らが東京。だが(当たり前の事だが)リーグ戦は続いていく。今節はACL明けのレイソルとのホームゲームであった。


レアンドロを1トップに置く4-5-1の柏に対し、この日の東京は武藤・林・東の3トップでアンカーに梶山ではなく高橋を入れる布陣でスタート。序盤は両チームのゾーン守備が機能して中盤での潰し合いが延々と続いたが、東京が三田や松田らの積極的な動きからサイドを突く攻撃で徐々にリズムを掴む。11分、右サイドの速いパス交換で揺さぶり、切れ込んだ東のラストパスを林がシュートしてサイドネット直撃。

ところが、その矢先の17分、米本が工藤との接触で足を痛めて退場してしまう。タフな柏相手にフィジカルの柱を失い、東京としてはピンチの局面。しかしここで今の東京の強みが発揮される。代わって入った野澤は高橋とダブルボランチを組み、武藤が一段下がって4-4-2の陣形にシフト。直後こそややバタついたもののすぐに守備の組織力を取り戻し、野澤の柔らかいパスさばきも加えながら再び攻め込んでいく。

そして35分、東のスルーパスで武藤がボックス内に飛び出してDFと競りながら折り返し。林のシュートは菅野にブロックされたものの、こぼれ球に素速く反応した三田がスライディングでゲットした。東の技巧、武藤の強さ、そして三田の積極性。1-0。一方の柏はSBの攻撃参加が増えるなど攻勢を強めるが、東京DFは落ち着いて対処する。逆に東や林のシュートなど惜しい場面を作りながら、いい流れで前半が終了した。


後半は立ち上がりから柏がさらに前がかりとなり、左右から攻め立てる。これに対し、先制後は武藤・林の2トップにチェンジしていた東京もカウンター攻撃で対抗。51分、林のスルーパスで武藤がDF裏に抜けて菅野と一対一となるが、オフサイド。しかし徐々に柏が一方的に押し込む形となり、東京は自陣から出られなくなる。54分、左サイドを突破した輪湖のクロッシュートがきわどくポスト右を抜けた。

59分、柏の波状攻撃で大谷の撃ったシュートが東京DFに当たり、こぼれ球がフリーのクリスティアーノの足下に。そのシュートは権田がビッグセーブしたものの、直後のCKで森重が鈴木を倒してしまいPKの判定。いくら判定基準がホールディングには厳しくなっているといっても、「ちょっとお前それで倒れるか」という感じに見えたが……。これをレアンドロが確実に決めて柏が同点に追いついた。1-1。

だが、これで火のついた東京は一気に攻勢に転じる。68分、今度はボックス内で武藤が輪湖に倒されPK。ここで「おお、帳尻合わせだ(笑)」と喜んでいたところ、ふと気がつくと足下から突き上げる揺れ、続いてグラグラと長い横揺れ……小笠原沖M8.1の地震だった。しかし選手にとって嫌な中断にも関わらず、PKキッカーの武藤は迷わず真っ直ぐ撃ち抜き、菅野の手をはじき飛ばしてゴールイン。さすがはエース!2-1。

双方にPKで点が入ったことで、それまでも激しいコンタクトの目立っていた試合はさらにヒートアップしていく。柏は大津とキムを投入、東京も林OUT前田IN。攻め合いの中で藤田のミドルシュートが東京ゴールのわずか左に外れ、東京も太田のFKに武藤や森重が飛び込んであわやの場面を作る。しかし、ともに得点はかなわず、柏の激しい当たりに負けず厳しいタックルを最後まで続けた東京が守りきって試合終了となった。

熱い試合だった。こういう試合を観るために僕はスタジアムに通っているのだな、とつくづく思う。

3連敗中という状況、徳永やカニーニの不在、柏の武闘派サッカー、米本の負傷退場というアクシデント、そしてコンタクトに寛容すぎる(ように見えた)主審とその微妙なペナルティ判定。この試合で東京を襲った困難はいくつもあったように見えたのだが、そのいずれをも克服しての勝点3の獲得。決して「大一番」ではなかったかもしれない。でも間違いなく格別な試合だったし、素晴らしい勝利だったと思う。

柏の選手たちの当たりは(ACL仕様ということなのか)激しくアフターチャージギリギリのものも多かったけれど、東京の選手たちは全く怯まず対抗できていた。武藤のスライディングなんて鬼気迫るものがあった。また、水曜日にナビスコ杯の広島遠征があって疲れていたろうに、最後まで皆がよく走って戦い続けてくれた。米本の退場にも、フォーメーション変更と代役の野澤の健闘で見事に対応することができた。

なんか、シチュエーションは全然違うんだけど、2001年の日立台での柏戦をちょっと思い出した。柏の選手やサポーターが特に激しいせいもあるのだろうか。今回も非常にエモーショナルな試合であった。観ていて胸が熱くなるプレーの数々。ファン・サポーターが東京というチームを誇らしく思える試合後。

個々の選手を見ても、武藤や三田の活躍は言うまでもないけれど、東は視野の広さを活かしたパス&ムーヴでチャンスを演出し、林や野澤や松田も自分の持ち味をきちんと出せていた(ちょっと経験不足なところも見えたけど)。高橋は梶山とはひと味違った堅実・着実なプレーでチームを支え、太田や森重も要所でさすがのプレーぶり(PKは不運だった)。吉本も権田も上出来。前田もきちんと自分の仕事はできていた。

浦和が驚きの強さを見せて独走してしまっているので、残念ながらステージ優勝はほぼ不可能になってしまったけれど、でもこういう試合を見せてくれるのであればまだまだ多くのお客さんが味スタに通ってくれることだろう。このチームにとってはそれが大事なのだ。大きな勝利だと僕は思った。

ただ、唯一残念だったのは米本の怪我だろうか。膝はこれまで二度大怪我をして大きな手術もしている箇所で、そこに大柄な工藤が勢いよくのしかかる形になったんだから非常に心配だ。今シーズンはほとんど全ての試合でスタメンを張ってたし、概ね順調なプレーぶりで日本代表候補にも選ばれていたのだが……好事魔多し、ということにならなければ良いのだけれど。とにかく大事でないことを祈りたい。


試合後、大型ビジョンで武藤嘉紀のマインツ(正式には「1.FSVマインツ05」なのか)への移籍合意が発表された。「あーやっぱり」ではあるけれど、シーズン途中だけに残念でもあるし、でも欧州への移籍ということで嬉しくもあるし、またプレーを気軽に生で観られるのがあとわずかというのが寂しくもあるし……複雑な気分。でも彼ならきっと成功してくれるんだろうな。ホント、頑張ってこいよ!と言いたい。


[付記]

後半半ばに起こった地震はとにかく大きくて、長くて、気味が悪かった。昔ならP波が長ければ「震源が遠いんだな」と落ち着けたもんだが、東日本大震災以降はかえって怖さが沸いてくるようになってしまった。まあ、この日はちょうどPKの勝負所だったから、頭に血が上ってすぐには気づかない人もいたみたいだけど(笑)。あの状況で変な間を空けられて、迷わずズドンとシュートを決めた武藤は本当に凄い。

つか、スタジアムで地震に遭ったことは何度かあるけど、2階席だと揺れが増幅される感じがして実に気持ちが悪い。3年前の天皇杯決勝の時は今はなき霞ヶ丘の国立競技場の2階バックスタンドで震度5に遭遇したんだけど、あの時の恐怖感に比べればマシ(さすがに味スタが崩壊することはなかろうし)とはいえ、かなりビックリしたのは確かであった。帰り道、京王線が遅れただけで止まらなかったのはありがたかったね。


[追記]

トーチュウによれば、米本の怪我は今まで二度やっている左膝でなく、右膝だったらしい。でも靱帯損傷で全治3〜4週間というのは決して軽傷とは言えないだろう。リハビリも含めてきちんと治さないと再発や悪化、左膝への悪影響も考えられるので、無理せずしっかりと治療してほしいもんだと思う。そりゃチームにとっても痛いけどさ。

[追記2]

米本の負傷、やっぱり左膝だったとのこと。確かに、担架の上で持ち上げていたのは左膝だったからねえ……。だとすれば既に二度も深刻な怪我をしている箇所なわけで、いっそう心配である。じっくり治してほしい。


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