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2015年06月24日

●『サッカーは監督で決まる』

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清水英斗著『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』(中公新書ラクレ)を読了した。タイトルにまんま書かれているとおり、現代の著名なサッカー監督たちの、特にチームを統率する術を取り上げることでサッカー監督という仕事の全体像を描き出そうとした一冊。


この本で取り上げられているのはジョゼ・モウリーニョ、アレックス・ファーガソン、ビセンテ・デル・ボスケ、ペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、ヨアヒム・レーヴ、イビチャ・オシム、そしてヴァヒド・ハリルホジッチ。いずれも現代フットボールを代表する監督たちであり、それぞれに一章を割く形でその手法と人となり、彼らが実現したサッカーについて述べられている。

こうして並べてみると本当に多彩というか千差万別というか……少なくともモウリーニョ〜オシムの7人は世界の十指に入るビッグネームと言ってもいいと思うのだが、見事にバラバラ、全く似ていないのは凄いことだな、と。サッカー監督という仕事が一筋縄ではなく、だからこそ奥深いのだと改めて思い知らされる。これにたとえばデシャンやシメオネを加えても、カラフルさは全く薄れないもんね。


監督本といえば西部謙司さんとかも出してるけれども、あちらは戦術や采配などを詳しく描いているのに対し、本書は内面的な哲学やコミュニケーション能力に重点を置いているのが特徴だろうか。特に選手のモチベーションを喚起する手法の違いについては興味深い。モウリーニョの刺激力、ファーガソンの厳格力、デル・ボスケの共和力、グアルディオラの内発力、か。なるほどなるほど。

あと、個々の監督のエピソードを単に羅列するだけではなく、いきなり他の監督の話を出してクロスオーバーさせたりする部分もなかなか面白い。そして、そこで持ち出されるのがモウリーニョとグアルディオラの例が圧倒的に多いことには気がついた。この2人が、いかに勝敗の実績だけでなくコンセプトや手法の面でも今のサッカー界をリードしているのか、ということなんだろうか。

それにしても、モウリーニョとデル・ボスケの対照ぶりなんかも、こうして見直すと感慨深いね。両方とも大好きな監督なんだけど、正反対の手法で世界最高峰の2人が同じ国の代表監督(スペイン)とトップクラブの監督(レアル・マドリー)であったがゆえに結果的に共倒れしてしまった、という話はなかなかに味わい深い。逆に、相性が良すぎたがゆえに別れざるを得なかったというグアルディオラとメッシのエピソードも。

最終章、ハリルホジッチとアギーレとザッケローニを比べて分析している部分についてはちょっと微妙な感じがした。比較が図式的に過ぎるというか、まだ現在進行形なのにそこまでして似ているところと相違点をきっちり書かなくてよいのではないか、と思ったりして。まあ、それはそれで、その構図が果たして妥当なのかどうか、という視点で見てみる楽しみを増やしてくれるのかもしれないけれども。


と、そんな感じでこの本、あっという間に読み通すことができた。内容的にはやや突っ込み不足かな、というところもなくはないんだが、それは新書だし仕方がない。それより、やっぱりこの手の形式の本は「ピッチの中にも外にも色んな奴がいて、色んなドラマを作っている」というチームスポーツの醍醐味をてっとり早く伝えてくれるから好意が持てるんだよね。ともあれ色々知っておくのはいいことだよな、みたいな。

できれば、こういう形式でJリーグの監督について扱った本も読みたいな、とも思うのだけれど。岡田武史、アルディレス、ブッフバルト、西野朗、ネルシーニョ、トニーニョ・セレーゾ、オリベイラ、桑原隆、鈴木政一、シャムスカ、ストイコビッチ、ペトロヴィッチ、森保一、原博実、ベルデニック、城福浩、反町康治、etc……読者層は限られるかもしれないが(笑)、けっこう面白い本ができるような気がするんだけどな。


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