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2015年06月04日

●『5つ数えれば君の夢』

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今日マチ子著『5つ数えれば君の夢』(秋田書店)を読了した。現代少女マンガの巨匠(と僕が勝手に思っている)今日マチ子さんが、女性アイドルたちの夢と苦悩を描いた作品。僕もたまにはこういうのも読むのだよ、ということで。


主人公は、架空の5人組アイドルグループ「Five Stars」(モデルは「東京女子流」というグループらしい)。そのメンバーたちはアイドルとしての活動と高校における学生の日常という二重生活の中でそれぞれ自身のアイデンティティーを巡る悩みを抱えていて、本作は彼女らの暮らしの中での様々な「ゆらぎ」について1話ずつ描く連作形式となっている。

なるほどと思ったのは、彼女たちにとってアイドル活動自体は「夢」ではなく「現実」のものであり、逆に学園生活や恋や友情やペットとの暮らしなどのいわゆる普通の生活が「夢」となっていることだ。彼女たちはアイドルとしての矜持に支えられながら、ミドルティーンの女の子としての等身大の、しかし深刻な悩みと向き合っていく。

まあ、かつてのキャンディーズの「普通の女の子になりたい」なんかを持ち出すまでもなく、アイドル=夢というステレオタイプではない描き方がむしろ説得力を持つということなのだろう。特に、AKBなどの大成功でアイドルの日常化がいっそう進んだように見える現在においては。

もちろん一方で、アイドルとしての現実も当然のごとくまた苛酷なものには違いなく、アイドルのことについてはよく知らない僕もこのマンガで描かれている姿を見ると「うーむ」と唸らざるを得ない。「私たちがだれかの夢なら 絶対に完璧なままでいたい」「夢が叶ってしまったら、私は永遠におどりつづけなくてはいけない」とか、凄まじいオブセッションだな、と。

という感じで、夢とも現実とも格闘する少女たちの姿に唸りながら読んでいるうちに、気がつけば主人公たちに感情移入しながらハラハラしてページをめくる手が止まらなくなっていた。俺、オッサンなのに(笑)。やっぱりこれは描き方がえらく上手いということなんだろうな。

少女の無垢と残酷さ、彼女たちを取り巻く厳しい現実をポエティックに描き切る今日マチ子さんの持ち味は、アイドルという題材を通じて如何なく発揮されているように思えた。一見繊細に見えて、しかしいつしか「向こう側」に突き抜けるマチ子節。読後は単なるアイドルの物語を超えて、人の実存について考えさせられたような気がした。


そういや、物語の中に、メンバーの1人が41歳の物書きのオッサンに恋するも裏切られ、傷ついてしまう話があるのだけれど、間もなく41歳になる僕としては何とも言えない気分になった(笑)。大人ってズルいね、みたいな。気をつけよう(何をだ)。


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