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2008年12月30日

●今年は、とりあえず、ここまで ('08-'09天皇杯準決勝)


昨日の午後は、エコパスタジアムで天皇杯準決勝。FC東京 1-2 柏レイソル。東京にとって初のファイナル進出をかけた大一番は、退任する石崎監督の花道づくりに燃えるレイソルとの対戦となった。試合は、立ち上がりから激しい攻め合いとなり、鈴木の大活躍で東京が前半に1点リード。しかし、予想外に早く投入された「魔法使い」が後半の土壇場にステッキを二振り。城福東京のシーズン最後の試合は、悔しい逆転負けで終わることに。
 
 
キックオフ後、まず気づいたのはカボレが左に張っていないこと。柏の4バックがサイドに蓋をしてくるのを見越したか、この日は赤嶺と2トップであった。立ち上がりは東京ペース。意欲的に前からプレスをかけ、この日も最初から覚醒中の梶山を中心にテンポよいパス交換からアタッカーを走らせる。2分、赤嶺のポストプレーから羽生がボレーシュート(枠外)。ただし、バイタルエリアまでは攻め込むものの「あと一本」のパスがなかなか通らない。

そうしているうち、東京のプレスが次第に失速、今度は柏の攻守が機能するように。柏はポポがトップに、菅沼と太田が左右に張る4-2-3-1。ボールを奪うとピッチ一杯に広く展開し、東京DFを振り回す。14分には早いCKに菅沼が走り込んであわやの場面を作り、さらにポポのクロスに合わせたアレックスがどんぴしゃのヘッダーを撃つが、塩田が横っ跳びでセーブ。気がつけば相手のプレスに追われ、押し込まれるのは東京の側になっていた。

東京の窮地を救ったのは、柏からレンタル中の鈴木達也。19分、鈴木がドリブル突破でCKを獲得。佐原のダイビングヘッドはDFに防がれたものの、直後に鈴木が左から仕掛けてDFを抜き、強シュートをGK菅野がきわどく弾き出す。さらに流れたボールを赤嶺が狙うが、これは枠を捉えられず。鈴木はとにかく動きがキレキレであった。その後試合は、攻守の切り替えが早い攻め合いに。せわしい流れの中で羽生の動きがどこか噛み合わないのが気にかかる。

31分、鈴木が柏陣中央で梶山からパスを受け、引き気味のDFを見てミドルシュート!菅野の横っ跳びも届かず、低く鋭い弾道でゴール左隅に突き刺さった。閃光の先制弾。1-0。東京としてはここからポゼッションでいなしたい様子だったが、連携のミスでボールを失う場面が多く、一進一退が続く。39分、ボックス右に飛び出したポポの折り返しを菅沼が戻して山根のミドルシュート、わずか左に外れ。終了間際には梶山がたて続けにミドルを撃つが、いずれも枠外。


後半、フランサの登場にスタンドがどよめく。46分、自陣深くで藤山がミスパス、ボックス正面のフランサにパスが渡るが、佐原のカバーの甲斐あってシュートはバーの上。50分、相手陣でボールを失いかけた羽生がDFを後ろから引き倒してしまい、警告で次戦出場停止。「うまく行ってないのか…」と不安がよぎる。52分、梶山と赤嶺の細かいパス交換で中央突破を図るが、ラストパスが長く菅野がキャッチ。54分にはポポと赤嶺がミドルシュート、いずれも枠外。

引き続き攻め合いが続く。フランサは足の怪我の状態が良くないのだろう、運動量はいつも以上に少ない。よって、柏は前がかりになる一方で全体的にプレスの強度が低下、前半に比べて双方シュートシーンが増えた。60分、浮き球で羽生がDFライン裏に抜けたがスライディングで止められ、さらに今野がサイドをえぐるもクロスは惜しくも赤嶺に届かず。61分にポポOUT李IN。交替直後にロングキック一発で李が抜けかけるが、塩田が前に出てストップ。

両エンドのどつき合い、どちらが先に1点取るか、という展開である。東京にとってはフランサの魔法発動前に2点目がとれるかどうか。64分、スラロームのようなドリブルで鈴木が左サイドを突破、クロスをカボレがボレーで狙うがふかしてしまう。その直後、左からのクロスが李に当たって逆に抜け、フランサがボレーで狙うもこれも枠外。さらにその次のフェイズ、長友が左サイドから切れ込む得意の形でシュートするが、ボールはDFに当たってポスト右を抜けた。

そして68分、ついにスコアが動いた。柏は左サイドからアーリークロス、右に流れたアレックスが長友に競り勝って中へ落とし、2列目から猛然と走り込んだフランサが今野を置き去りにしてゴール前へ突入。フランサは塩田の動きを冷静に読み切ってゴールへ流し込んだ。1-1。エメルソン投入の準備をした矢先の失点であり、最も警戒すべきフランサをフリーにしたという点でも悔いの残る失点だった。東京は羽生OUTエメIN、鈴木OUT石川INでたて直しを図る。

75分過ぎになると、双方とも疲労から動きの鈍さが目立つように。東京としては交替選手に期待したいところだが、石川は単騎の突破に固執し、エメも相変わらず周囲との連動がイマイチ。それでも82分、ボックス手前で梶山が粘ってDFを引きつけ、左後方から追い越すエメにラストパスを通す大チャンス。が、エメのシュートはあえなくバーの上……ここで決めたかった。84分にも長友のオーバーラップからボックス内でカボレがシュートするも、体勢悪く枠を外した。

決勝点は88分。東京陣中央、フランサと李がワンツーを繰り返し、守備陣が一瞬フリーズしたところで李が左足を振り抜く。ボールは懸命に跳ぶ塩田の指先を無情にも抜け、右ポストに当たってゴール内へ。敵ながら、目を見張るゴラッソだった。1-2。後のない東京は藤山に替えて近藤祐介を投入。どんどん前線へボールを入れるが柏の守備は粘り強く、チャンスらしいチャンスを作れない。そのまま時間を使った柏が逃げ切り。東京、準決勝で敗退である。
 
 

正直、悔しい。国立までホントあと一歩だったんだがなあ。

柏にとってこの大会はノブリン体制の集大成。だから、というべきか、やり方に目新しいところはなかったんだけど、「賭けている」感じは伝わってきた。気持ちを込めて自分たちのスタイルをやり抜いたというか。フランサの投入はギャンブルだったのだろう。プレス守備の弱体化と、幾度かの「魔法」とのトレードオフ。あるいは、迷いなくあの手が打てたのも完成しているチームの強みなのかもしれない。李のシュートも素晴らしかった。おめでとう。決勝も頑張れ。

それにしても、フランサというのは凄い選手だと改めて思った。投入直後こそ柏の攻撃の怖さが格段に増したものの、あまりに運動量の少ない彼の存在は、どちらかと言えばチームの足を引っ張っていたように見えた。それが……あの1点目のプレーが出る直前だったか、一度フランサが猛烈な勢いで自陣に戻って守備に参加した場面があり、「あれ?足は?」と面食らったものだ。彼には、僕たち常人には見えない勝負の勘どころが見えるのだろうか。

一方の東京は、どこかチグハグ。選手の動きは悪くなかった。ただ、戦い方がちょっと。柏がガンガンプレスをかけてきた前半(の先制点まで)はもっと蹴ってもよかったのに、「後ろでつないでから前を狙う」ことにこだわりすぎたか。逆に後半は柏の中盤がスカスカになってくれたのに、城福監督の「もう少し、シンプルに」という指示が効きすぎたのか、攻め急いでチャンスを逃すことが多かった。だから、リードの状況であえてエメを投入しようとしたと思うのだが……。

要するに、チームとしての状況判断や意思統一がイマイチなんだろう、相変わらず。羽生が前半から変に苛ついているように見えた(そして警告に至った)のも、もしかしたらその辺りが関係しているのかも。後半バイタルエリアががら空きの局面で、今野が無用のロングパスを蹴ってあっさりカットされたり、猪突猛進の石川がコーナーに追い詰められるのを見てデジャヴュを感じてしまった。こういう時に頼りになる、戦術眼に優れた「キャプテン」がほしい。

個々の選手を見ると、鈴木達也はMVP級の大活躍だった。速さだけでなく相手の嫌がる所を突くクレバーさもあって、本当に良い選手である。是非来年以降もよろしく。中盤では、梶山の出来が良かった。よく周りが見えていてプレーの選択も的確。ただ、なぜかミドルシュートの精度だけは今年あまりよくないんだよな。そこがちょっと残念。DFについては、やっぱり茂庭がいなかったのが痛かった。本気で仕掛けた時のフランサは藤山の手には余った感じ。

つーか、大竹が見たかったな、やっぱり。

あと、エメルソンについて。この試合では退団が決まっているにも関わらず一生懸命やってくれたし、通らなかったけれど石川を狙うスルーパスなど良いプレーもあった。シュートが決まっていれば殊勲者になれなんだけどね。良い選手だけに、今年の夏以降、東京が彼を生かすサッカーをできなかったのはつくづく残念。まあ、噛み合っていない度合いとしては、背番号6の選手もどっこいどっこいだと思うのだが。契約打ち切りは、年俸との兼ね合いなのかな。

ともあれ、FC東京の2008年はこれで終了。シーズン全般についてはあらためて振り返るとして、とりあえず「最後の悔しさ」を除けばそれなりに満足感の強い1年だったかな、と。悔しさは今後の糧にしていけばよいのだし。選手・スタッフの皆さん、お疲れ様でした。また来年。
 
 
この日の2試合の結果、天皇杯の決勝カードはガンバ大阪×柏レイソルに決定。東京が負けてしまったの残念だけれど、ともに自分のスタイルをもった好チーム同士の対戦はなかなか楽しみだ。CWCであれほどの戦いをしてくれたガンバにACLの出場権を獲得してほしいような気もするし、一方で石崎さんに有終の美を飾ってほしいような気もするし……。ともかく、せっかく観に行くからには、純粋に楽しめるような試合内容になってほしいものだと思う。



うなぎは美味かったんだがな、うなぎは(笑)。
 

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コメント

富士宮焼きそばはおいしかったんだけどなあ、富士宮焼きそば(笑)。

おいどんもはるばる車を飛ばして見に行ったんですけど、あそこで元・東京に決められるとは思いもよらなかった。うちもうちで達也が古巣相手に強烈なミドルを決めてくれたことがうれしかった。

と言うか、そのシュートの時に「叩き込め!」と思った人が何人いただろう・・・。

こんばんわ。
代々木まで来ていたのに…ほんと残念極まりないです。
我が家は、毎年味スタ(5回戦ぐらい?)で勝つと同時に決勝戦のチケットを購入して楽しんでいます。今年は遂に念願成就と魔法使いが本当に魔法を使うまでは確信しておりました。
来年は東京にもOZと言う名の選手を獲得願いたいものです。
とりあえず魔法使いの魔法とと石崎何がしの集大成を見に行きます。でも寂しい…

>富士宮焼きそば
富士宮焼きそば美味しいですよね。カドがしっかり立ってて。勝った後に食べたらもっと美味しいんでしょうけどね~(笑)。

>代々木まで来ていたのに…
なるほど、確かに、そのくらいの距離に見えたかも(笑)。

>来年は東京にもOZと言う名の選手を獲得願いたいものです。
そうですねえ。魔法使いとまでは行かなくても、せめて奇術師くらいは(笑)。

私も「来年ここに来たいな」という気持ちで「元旦国立」、見届けます。

どうも。 向き合ってみていましたね!

青赤の皆さん、悔しかろう。
去年、本山に一撃食らって「元日国立」をお預けされた川崎サポの無念さが物凄く理解されたと思います(笑)。

柏も苦しかったけど、後半から臆せず球際が強くなってきた。
当然、フランサの魔法だけでは勝てません。

この試合を決定付けたのは、李忠成とゴールが相思相愛だったということです。

こういうこともあります(笑)。

石川直を弾き出してしまう面子…
城副さんの躾がどこまで浸透するか、楽しみであり脅威でもあり…

私も明日は国立競技場です!


いつもと同じような位置で応援してたんですが、なんか味スタにいるのと錯覚をおこして。設計会社いっしょかなあ?うちの客入りの雰囲気も敵側の客入りの雰囲気も、ピッチ周りの緑の敷物も、振り返ったところにあるビジョンも、なんか味スタで。魔法にかかっているようでした。実際、かけられてしまった。

元旦は青赤帽子かぶって指をくわえて国立です。興が乗ったら飲みましょう。ちくしょー。

あ、エコパはバスだったんで、3食おにぎり。ちくしょー鰻食べたかった

>青赤の皆さん、悔しかろう。
いいよね~、もう2回とってるところは(笑)!!

>柏も苦しかったけど、後半から臆せず球際が強くなってきた。
もちろん、そこはいつもの柏でしたよね。ただ、それはそれで想定内だったわけで……フランサの魔法は想定外、というより想定しても対処不可能だった、と。

>城副さんの躾がどこまで浸透するか、楽しみであり脅威でもあり…
1年間で「この程度」なのが順調なのか、それともちょっと時間がかかりすぎなのか……ビミョーではありますけどね。

>なんか味スタにいるのと錯覚をおこして。
あ、それはそうかも。ピッチへの距離といい、スタンドの傾斜とスタ全体の弧の描き方といい、味スタに似た感じでしたね。相手もレイソルだし、ちょっと不思議な感じではありました。

>元旦は青赤帽子かぶって指をくわえて国立です。
あ、一応かぶるんだ(笑)。ウチは、そっと鞄にしのばせて、寂しく柱の陰から(←ウソ)黄黒と青黒の戦いを見守りますよ。

かっしわ、オレオレ!

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