●壮行会はみんなで派手に (FC東京×清水エスパルス)
FC東京 3−2 清水エスパルス (J1第17節 味の素スタジアム)
優勝争いの期待と失望があり、連勝の喜びと連敗の苦しさがあり、武藤の大活躍と移籍決定がありと、色々あった1stステージも最終戦。武藤の(とりあえずの)東京ラストゲームは不動のホームスタジアムで。
梅雨らしい蒸し暑さの中でキックオフ。武藤・前田が2トップを務める4-4-2の東京は積極的に押し上げてサイドから攻め込み、序盤に幾つかクロスを上げるも決定機には至らない。対する清水は3-5-2の布陣で、FWウタカにDFライン裏を狙わせながら、自在に動く大前を中心にパスを回して機会をうかがう。22分、左サイドで勝負した太田がDFを振り切ってクロスを入れ、フリーの東が頭で合わせるもポスト左を抜けた。
前半半ば頃は、東京の攻めが手詰まりとなって清水のチャンスが目立つ時間帯に。26分、ウタカが森重と入れ替わってボックス内へ突進し、シュートを権田が押さえる。33分、DFの間を突いた金子がドリブルでゴールに迫るが、カバーリングの吉本が懸命のクリア。34分にはワンタッチパスの連続に東京DFがついていけず、水谷がDFライン裏に思いっきり抜けるも、シュートをふかしてくれて命拾いした。
しかし、そんなたて続けのピンチをしのいで迎えた38分。東京は敵陣深く攻め込み、一旦はボールを奪われたものの梶山が突然の猛プレス。ボールを奪ってDFの背後に飛び出した東へラストパスを通し、東は冷静にGK櫛引をかわしてから無人のゴールへ流し込んだ。見事なショートカウンター!1-0。さらに43分にもゴール前で東の浮き球に高橋が飛び込むチャンスがあったが、これはあと一歩届かず。1点差でハーフタイムへ。
仕切り直しの後半、守備がややピリッとしない東京は再び清水の攻勢を招いてしまう。前がかりの相手に対してマークの受け渡しが曖昧で、なかなかDFラインも上げられず耐える時間帯に。50分、ウタカが左サイドに飛び出してクロスを入れ、金子のシュートは右ポストを直撃して外れたものの、折り返しを大前が蹴り込んで同点。東京は足の止まっている選手も多く、なすすべなくやられた感じだった。1-1。
ここで、チームの停滞を見て取ったフィッカデンティ監督は三田に替えて羽生を投入。効果てきめん、活の入った東京は反撃に転じる。すると60分、中央でボールを奪取した梶山からパスを受けた前田がドリブルで前進。左に流れながらパスを受けた武藤はDFに食い下がられたものの、右でフリーになった前田にラストパスを通し、前田の強烈なシュートが櫛引の手を弾いて決まった。よくぞつないだナイスな速攻。2-1。
東京ペースは続く。62分、太田のアーリークロスにタイミングよく武藤がDFライン裏へ飛び出すが、間一髪ボールには触れず。その直後、前田のスルーパスでまたも武藤が抜けるも、際どくヤコヴィッチがクリアした。そして66分、東が粘って左サイドでFKを獲得。太田の素晴らしい弾道のクロスにジャンプ一番前田が合わせ、矢のようなヘッダーをゴールネットに突き刺した。まさに前田らしい「強頭」ゴール!!3-1。
十分なリードを得た(かに思えた)東京は77分に前田OUT石川IN。得点こそ奪えないものの、カウンター攻撃で幾度かいい形を作る。さらに81分には東→橋本の交代。ところが83分、清水のバイタルエリアでのパス回しから石毛のもの凄いミドルシュートがゴール右上に決まってしまう。3-2。そこからは勢いに乗る清水の攻撃を東京がしのぐ構図となり、危ない場面もあったが、最後は東京DFも踏ん張って何とか逃げ切った。
とにかく勝って良かった。ステージの最終戦を良い形で締め括るという意味でも、派手な勝利で武藤を気持ち良く送り出すという意味でも、そして武藤のいなくなった後の見通しをつけるという意味でも。
盤石の試合運びではなかった。チーム全体の勝ちたい気持ちが裏目に出かかったのか、DFラインを高く上げた割にはボールに圧力をかけられず、特に前半半ばと後半立ち上がりはサイドやライン裏をすいすいと突かれてピンチになる場面が多かった。まあ今シーズンは昨年ほど堅守を指向していないのだろうし、この日の蒸し暑さを考えればある程度のムラは仕方ないのだろうけど、不用意なプレーも多かったのは確かだ。
攻撃の方も、前半途中まではサイドからのクロス一辺倒で崩す場面はほとんど見られず、東のヘッダーなどチャンスがなかったわけではないが決定機を作る効率は清水の方が上だったと思う。もっとも、今シーズンは見ているこちらも「まあ、後半勝負だよな」なんて思ってすっかり慌てなくなってしまったけれども。で、案の定というか、後半を待つまでもなく突如相手の隙を突く形で先制点を奪うことができた、と。
後半も、あっさり追いつかれて「あ〜あ」となりそうなところ、肩を落とす間もなく反撃に転じたあたり、今のチームの前向きな様子がうかがえた。もちろん武藤の壮行試合でありステージ最終戦だから「負けられない」という気持ちがいつも以上に強かったのかもしれないけど、「何とかしてやる。できる!」という自負というか自信のようなものも感じられたんだよね。そして速攻を2度決めてきっちり勝ち越し。
いや、なんつーか、大入り満員に恥じない試合というか。こういう試合を見せることができれば、あの大観衆のかなりの部分がまた観に来てくれるのではないかと、そんな期待もしたくなるよね。うむ。
個々の選手では、まず東。よく走り、よくチャンスを作り、積極的にフィニッシュにも絡んだ。もちろん2得点の前田も素晴らしかった。シュートの局面さえ作ってあげればやはり決定力はあるな、と。東にしろ前田にしろ武藤なき後の攻撃を引っ張ってもらわないと困る選手なので、その2人が持ち味を出して活躍したのは喜ばしい。武藤は意気込みすぎててやや空回りなれど、それでもアシストを決めたのはさすがだった。
あと、梶山もこの日は良い出来だった。やはりアンカーに据えるよりも高橋や米本と組ませた方が機能するようだ。というか、できるだけ前に置いた(もしくは前に出られるようにした)方が良い選手だと思うんだけどな。三田は頑張ってたけど、その後に出た羽生と比べると効果的なプレーが少なかったような。高橋や石川、権田は安定した仕事ぶり。DF陣は太田がグッジョブで、あとの3人はイマイチだったかも。
試合後には、マインツに移籍する武藤の壮行セレモニーが行われた。マイクの前で言葉に詰まり、タオルマフラーで何度も顔を拭うよっちくん。「大の大人が泣いてんじゃねーよ!」などと言いながら、思わずこちらももらい泣きしたりして。Jリーグでもまだ1年半しかやってないし、ブンデスリーガで通用するのかどうかは正直わからない。でも、彼ならばやってくれると信じたいし、とにかく応援あるのみである。頑張れ!
……というか、またも味スタは4万超の大観衆でチケットは売り切れ。スタンドの熱気はなかなかのものだったし、試合前のコレオグラフィもばっちり決まった。「よっち効果」は本当に凄いけれど、逆に武藤がいなくなったらどうなっちゃうんだろうと心配にもなるよな(笑)。まあ、今回に限らず熱い試合を何度も見せて、特別なスターや特別なイベントがなくても来てくれるお客さんを増やしていかないといけないのだが。
そして、いつかはこの日のようなスタジアムが「特別」ではなくて「普通」になってくれるように。そうなった頃、ベテランになった武藤が戻ってきてくれたりしたら最高だけどね!!
[追記]
本文に書き忘れたけど(笑)、1stステージの東京は11勝2分4敗の勝点35、2位でフィニッシュ。もちろん過去最高の成績だし、無敗優勝の浦和との勝点差も「6」。まだまだ年間勝点1位も狙える位置である。「さよならよっち」の陰に隠れがちだがこれって凄いことだな、と。つか、すげえなマッシモ。もちろん武藤がいなくなる戦力的なダメージはあるにせよ、まだまだどんどん上を狙ってほしいものである。頼むぞ。
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