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2009年11月02日

●決戦前日に、つらつらと

日付も変わって、いよいよ明日がナビスコカップ決勝である。会場は聖地・国立競技場。相手は宿敵・川崎フロンターレ。そしてチケットは発売即日で完売。FC東京にとって、これ以上はないシチュエーションに恵まれた「決戦」と言えるだろう。
 
 
僕は、今までナビスコカップの決勝を現地で4度観ている。

初観戦は1998年、ジュビロ磐田 4-0 ジェフユナイテッド市原。フランスW杯における負傷で中山を欠く磐田が、川口・高原という若い2トップの大活躍でジェフを粉砕。敗れた市原は中盤に野々村・江尻(現監督)・マスロバルらを揃えていた。2度目は翌99年、柏レイソル 2-2(PK5-4) 鹿島アントラーズ。西野監督の下でステディな好チームを作り上げた柏がJ初タイトルを獲得。終了間際の渡辺毅の同点ゴール、PK戦でのGK吉田の活躍が印象深い。

飛んで3度目は2007年。川崎フロンターレ 0-1 ガンバ大阪。「ベストメンバー問題」や我那覇への処分など理不尽な苦境の中で初栄冠を目指す川崎が、安田理大の果敢な攻撃参加にしてやられた試合。川崎ファンはその悔しさを忘れていないはずだ。そして昨年は大分トリニータ 2-0 清水エスパルス。雲ひとつない青い空、ウェズレイのサイドチェンジ、金崎の技巧、エジミウソンの闘志、そしてニータンの笑顔と大分ファンの涙。最高のファイナルだった。

ここまで読むとおわかりだろうが、実は僕は2004年の東京の優勝を現場で観ていない。

忘れもしない5年前の11月1日(つまり決勝の2日前)の夜、小さい頃から世話になっていた叔父が亡くなったとの連絡が入った。葬儀が行われるのは山口県。もちろん叔父の死にショックと悲しみはあったけれども、チームの計らいでようやくチケットを入手できていたナビスコ杯の事が頭にちらつかなかったと言えば嘘になる。やや後ろ髪を引かれながら翌日に飛行機で現地に入り、通夜を済ませ、当日は午前中から告別式と火葬の段取りに忙殺された。

キックオフは火葬場で迎えた。控室のテレビに映った満員の国立のスタンドが今でも忘れられない。前半の初め頃に石川が長いドリブルをして、ジャーンが2度目の警告で退場になって……火葬が終わり、お骨を拾って、車で何十分か揺られて家へ帰る。一旦テレビを付け、戸田のスーパークリアと0-0のまま延長へ突入したのを確認するも、田舎の葬式は長い。すぐに何度目かのお経読みが始まって、またも後ろ髪を引かれながらテレビの前を離れた。

お経が一区切りついたところで慌ててテレビの前に戻ると、もうPK戦の2巡目だった。憂太と今野が決めて、レッズは長谷部が決めるも田中達が外す。「よし」と思ったのも束の間、梶山がバーに当ててしまう。しかし、すぐに山田が失敗して再びリード。そして5人目は加地。なぜ加地だったのかは未だによくわからないのだけど(笑)、見事に決めて東京優勝!というところで中継が終わり、喜んでいる暇もなくまた喪服の人たちの列に加わることになった……。

そういう訳で、なんというか、変な言い方だけど、未だに僕はファンとして「タイトルホルダー」の実感がわかなかったりもするのである。そして、だからこそ、今回の試合は本当に楽しみで仕方がないのだ。まあ、ひっじょーに個人的な事情ではあるのだけれど。
 
 
さて、その決勝戦。どうも世間的な下馬評では「やや川崎有利」となっているようである。

確かに今の川崎フロンターレは強い。昨年と比べてメンバー的には変わりばえがしないものの、体調不良で休養していた関塚監督が復帰。シーズン序盤こそもたついたものの、徐々に調子を上げて戦術を整え、リーグ戦ではついにトップに立った。鄭・ジュニーニョ・レナチーニョの3トップを中村憲剛が操る攻撃陣は間違いなくJ最強で、前節も広島相手に7-0の爆勝。DF陣もFWほどの威力はないものの安定しており、接戦に強い谷口という「飛び道具」もある。

一方のFC東京は満身創痍、というほどではないがベストにはほど遠い。得点王争いをしていたエース石川が怪我で戦線離脱し、助っ人のカボレもカタールに引き抜かれた。また長友は清水戦の脱臼で出場が危ぶまれており、茂庭も目の負傷で復帰の目処が立っていない。さらに報道によれば、覚醒した中盤の要・梶山も脚の状態に不安があるのだという。大竹・田邉ら期待の若手もやや壁に当たっており、城福監督は綱渡りの用兵を続けざるを得ない状況だ。

しかし、悲観する必要はひとつもないと僕は思っている。石川・カボレの離脱は確かに痛い。でも、先週の清水戦においてはそれがかえってポジティブに働いている面もあるように見えた。平山・赤嶺という新たな2トップの可能性。「石川の代わり」という大役を任された鈴木達也の躍動。そして何より、チーム全体にみなぎる使命感と、個々の集中力の高まり。城福監督の采配もすっかり吹っ切れ、チームとしてのパフォーマンスはむしろ上がっているかもしれない。

なにより、今回は一発勝負なのだ。何が起こるかわからないし、何でも起こしうるとも言える。肝心なのはいかに「この試合」でピークパワーを出すかであり、「この相手」に対抗するかである。今の東京ならば、川崎相手であろうが何であろうがやってくれる可能性は大いにあると思う。いや、むしろ「相手に不足はない」くらいに言い切ってやりたいね!!

あと、今回は藤山と浅利にとって最後のナビスコ杯という事も忘れてはならないだろう。思い起こせば5年前、ジャーンの退場で窮地に陥った東京を救ったのは急遽交代出場した藤山だった。怒濤の如く押し寄せる浦和アタッカーを鋭い読みと飛び出しで防ぎ、土肥らとともに120分間無失点で守り通したあの活躍。一方99年の準決勝でフル出場した浅利は、04年は出場機会がなかったのであった。とにかく、彼らがもう一度カップを掲げることができますように。
 
 
しかし、ホントまだ36時間以上も時間があるのにワクワクしてきたぞ。いつもはスタジアムにほとんど荷物を持っていかない僕だが(タオルマフラーとかも平気で忘れたりする)、さすがに今回は色々持って行こうかな、と。石川のサインの入ったTシャツに、今年バージョンの背番号7のレプリカユニフォームに、99年準決勝進出記念の3rdユニフォーム(もちろん背番号は26だ!)。カメラも忘れちゃいけない、観戦記用のメモ帳とボールペンもカバンに入れて……。

いかん、なんだか「決戦前日」というより「遠足前夜」みたいになってきた(笑)。

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コメント

いつもブログ拝見しております。

じつは04年のmurataさんとほぼ同じシチュエーションに今、おります。
明日が祖母の告別式なんです。
ただ、場所が関東のため、キックオフ後でも国立に駆けつける予定でいます。

弔事だけにおおっぴらに列席と参戦との間での苦悩を打ち明けることもできず、
悶々としていたところ、記事を読み、思わず初コメントいたしました。

キックオフ前の雰囲気味わいたかった~。
けれど遅れても、生観戦できる幸せをかみしめます。

さて明日。

ご無沙汰しております。

>いかん、なんだか「決戦前日」というより
>「遠足前夜」みたいになってきた(笑)。

まさに!!!

たとえアラフォーであっても
ワクワク、ドキドキする
この感覚は何でしょう???

実は私もマフラー、青赤ビブス等を
既に準備しています。(笑)

明日は、天気は良くても寒そうなので、
しっかり防寒対策もして、
この「オトナの国立遠足」を夫婦で
楽しみたいと思っています。

きっと美酒が呑めるはずですよね!

>ホントまだ36時間以上も時間があるのにワクワクしてきたぞ。
おいどんは仕事中でも・・・・・・ってことはないんですけど、試合の日が迫ってくるにつれて気分が盛り上がってきますねえ。

murata氏のおっしゃる通りで下馬評では川崎有利なんだけど、もう1週間前から勝てる気がしてならないんですが・・・。と言うか負ける気がしないんですよ。清水戦を現地観戦した影響かなあ・・・。

みなさま、コメントありがとうございます。

>exzaku
お悔やみ申し上げます。
なんといいますか、私の時も、偽りでもなんでもなく、心の中は「決勝戦を観たかった」「ちょっとでも見届けたい」という気持ちと「きちんと叔父を弔いたい」「最後のお別れと感謝を言いたい」という気持ちの両方だったんですよね。
だから、悶々としてしまうのは変でも何でもないと私は思います。私も、明日は(もう今日か)観戦できる幸せを噛み締めたいです。

>たとえアラフォーであっても
>ワクワク、ドキドキする
>この感覚は何でしょう???
それこそがサッカー、それこそが決勝戦、そしてそれこそが愛するチームの試合なのであります。なんちって(笑)。

>きっと美酒が呑めるはずですよね!
勝ちますよ、ええ、勝ちますとも。

>もう1週間前から勝てる気がしてならないんですが・・・。
>と言うか負ける気がしないんですよ。
相手もそう思ってたりしてね(笑)。
いや、でも、清水戦のあの勝ちっぷりをみたら、自信を持ちますよね。勝負は時の運でもあるかもしれないけど、でも分は決して悪くないぞ、と。

森と対峙するのが徳永ってのが良かったと思いたいですね、椋原はこれを機に更に伸びると思います。
サリは無理かも知れませんが困った時のウルトラ藤は有るかもしれませんね。

長友は何時投入か?久々の中盤での今野無双が見れるのか?ワクワクは止まらないですね。
奪って繋げるサッカーで勝ちましょう

>椋原はこれを機に更に伸びると思います。
ああいう逸材に早く大舞台を踏ませてあげられる事をポジティヴにとらえたいですね。

>サリは無理かも知れませんが困った時のウルトラ藤
個人的には、「困った時~」がいるのだから、長友は無理させないでベンチ外でも良いような気がします。大竹もベンチに入れたいし、リーグ戦を本気で狙うのならなおさら。

>奪って繋げるサッカーで勝ちましょう
勝ってほしいですね。少なくとも中盤は、こちらはニューヒーロー賞と「覚醒したジオング」のコンビなのだから負けはしない。

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