« 決戦前日に、つらつらと | メイン | 来年残しの宿題が、まず一つ (FC東京×浦和レッズ) »

2009年11月04日

●すでに「ニューヒーロー」どころじゃないっス ('09ナビスコ杯決勝)


昨日の午後は、国立競技場でナビスコカップ決勝。FC東京 2-0 川崎フロンターレ。いよいよやってきた5年ぶりのファイナル。会場は聖地霞ヶ丘、相手は宿敵フロンターレ、スタンドは大入り満員と、東京にとって目標とする「タイトル獲得」に向けて願ってもないシチュエーションとなった。試合は、川崎の攻勢を受けて東京がしのぎ続ける展開となるが、「ニューヒーロー」米本の値千金シュートと鮮やかなカウンター攻撃が決まり、東京が会心の勝利を収めた。
 
 
この日の国立上空は昨年と同様、雲ひとつない青空が広がっていた。「フロンターレのチームカラーだな」などと不吉な考えが頭をよぎったのは内緒である(笑)。試合前、大型ビジョンに両チーム作成の盛り上げビデオが流される。川崎は遊び心に溢れたホームゲームの時とは異なり、真面目一徹という感じの内容。対する東京はいきなり五輪招致失敗ネタが飛び出して大笑い。この間まで「応援してます」とか言ってたくせに早くもネタにするか、という。いいぞー。

 
キックオフ。立ち上がりから川崎が中村憲剛を中心にボールを支配して攻める展開。ただ、緊張からか川崎のパス回しはややぎこちなく、意外とピンチは少ない。6分、谷口の遠目からのシュートを権田が正面で止める。8分、羽生の持ち出しで川崎陣深くへ入り、右サイドへ飛び出した米本がクロス。DFに当たったボールが平山の前にこぼれるチャンスとなったが、シュートはバーを越えてしまった。さすがに決勝戦らしく、緊迫した雰囲気の中で試合は進んでいく。

11分、ボックス外からレナチーニョが反転シュート、ドライヴのかかった強烈なボールを権田が弾き出す。14分、東京のCKから川崎の反転速攻、中村のロングパスでレナチーニョが右サイドに抜けるが、シュートは左に外れた。17分には川崎がテンポの速いパス交換からDF裏を狙う浮き球を上げ、鄭がダイレクトボレーを狙うも空振り。東京は梶山が負傷のせいか攻守ともにやや精彩を欠いており、その分米本が常人の3倍くらい駆けずり回っている印象。

19分、前線で鄭が落としてジュニーニョがスルーパス、谷口がDFライン裏へ飛び出して一対一に。権田が一旦は止めたものの、こぼれ球を拾った谷口がゴール前へ折り返す。決定的な場面だったが、ジュニーニョがふかして命拾いした。そして「ピンチの後にはチャンスあり」との格言の通り、直後の22分、左サイド30mはあろうかという距離から米本が助走なしで右足一閃、無回転の弾丸シュートがGK川島の腕を弾いてゴールイン。スーパーゴール!!1-0。

これで流れが変わった。東京はパスワークのリズムが良くなり、川崎のフォアチェックを巧みにいなす場面も。中盤の底では米本が強力アタッカー相手に一歩も引かない闘い。36分、ジュニーニョが狭い正面をぬってドリブルシュート、権田が横っ跳びでキャッチ。38分、平山とのパス交換でDF裏に飛び出した赤嶺がループシュートを狙うが枠外。45分、中村の楔パスから急反転したジュニーニョのシュートはポストわずか左を抜けた。1点差のままハーフタイムへ。
 
 

後半になっても東京はバランスのよいブロック守備でジュニーニョらのドリブルを確実に網にかける。46分、自陣からうまくつないで赤嶺から右の鈴木へ。ドリブルシュートは川島がセーブし、さらに波状攻撃から梶山・羽生がシュートするも決まらず。川崎も次第に前がかりとなり、55分にはボックス手前のパス回しからジュニーニョがコースを狙うシュート、権田がキャッチ。57分にもブルーノの裏をとった鄭がゴール前へ飛び出すが、権田が一対一を止める。

59分、ボックス左に抜けたレナチーニョのクロスに鄭が飛び込むも、椋原が懸命に競って防ぐ。直後、平山が頭でクリアしたボールを羽生が拾って東京のカウンター。左サイドを抜群のスピードで疾走する鈴木が遠目を狙うクロス。外へ逃げる動きでマーカーを外した平山がジャンプ一番頭で叩きつけ、ボールは川島の脇下を抜けてゴールイン。ドリブルのコースといいクロスといいシュート前の動きといいヘッダーといい、完璧に決まった逆襲速攻だった。2-0。

ここで城福監督が動き、赤嶺OUT長友INで鈴木がFWへ回り、より堅守速攻寄りへシフト。64分、ジュニーニョが左サイドからゴール前へ進入するも、権田と椋原がストップ。その後も「攻める川崎、しのぐ東京」の構図は続くが、守備面で進歩を見せる今年の東京にとってはもってこいの展開である。しばしば上がる中村らの好クロスも権田が抜群の安定感ではね返す。71分、ゴール左隅へ飛んだ中村の鋭いミドルシュートも権田が横っ跳びでビッグセーブ。

74分、オフサイド崩れでDF裏に抜けた長友が川島もかわすが、シュートはカバーの谷口にブロックされ、さらにこぼれ球を拾った鈴木のシュートも右ポスト直撃。終盤、川崎は黒津・登里を投入して活路を見出そうとするも、東京もサイドに平松を、さらにDFラインに佐原を投入して対抗。79分、縦パスでDFの間を谷口が抜けるが、ラストパスはブルーノがカットした。85分にはクロスに合わせた鄭のヘッダーが権田の指先を抜くが、バーに当たって入らない。

終了間際になっても東京イレブンの集中力は切れず、川崎のパワープレーを一丸となってはね返す。前線では1人残った平山が無尽の運動量でプレッシャーをかける姿にスタンドから歓声が上がる。88分、ジュニーニョのクロスに鄭が合わせたがポスト右。ロスタイムには梶山のスルーパスで長友が川島と一対一になるも、川島が前に出て止めた。そして94分の時間が過ぎ、最後のクロスを権田がキャッチしたところで試合終了。東京、2度目の優勝である。
 
 
表彰式。階段をのぼる列の先頭に立つ羽生のユニフォームが何か変だと思ったら、カボレの背番号「9」を付けていた。藤山も背番号「7」、ベンチに入れなかった浅利のユニフォームを着ていた。チームが一丸となっていた証拠だろう。大型ビジョンには、記念撮影の前に号泣する浅利の姿が映し出された。胴上げされて宙に舞う城福監督。羽生や米本、椋原の満面の笑みがまぶしい。そしてカップを掲げる石川直宏。つくづく、勝つことができてよかった……。
 
 

強い相手に、いい内容のサッカーで勝ってつかんだ優勝カップ。こんなに嬉しいことはない。

FC東京にしてみれば、理想的な、というより今回に関しては「これしかない」勝ち方だったと言ってよい。切り札的存在の石川を欠く現状では、川崎に対して攻撃力で大きく見劣りしているのは否めない。望外の形で先制点を奪うことができ、今季半年がかりで鍛えてきたブロック守備と「焦らない」パス攻撃を生かせる展開になったのは幸いだった。見た目は守勢に立ちながらも大きく崩れる場面はなく、2点目を取ってからはほとんど危なげがなかったように思う。

逆に川崎フロンターレにしてみれば、最も恐れていたパターンにはまってしまったということだろう。8月の多摩川クラシコでの逆転劇のように最近徐々に克服しつつあるとはいえ、「ジュニーニョで決定機を作るも決められず」は川崎の典型的な負けフラグだから。とはいえ、中村憲剛指揮の下で強力アタッカー陣が躍動する攻撃はやはり迫力満点で、19分のチャンスが決まっていれば試合の行方は全くわからなかった。悲願のタイトルも近々獲れるよ、きっと。

ちらと頭をよぎったのは、彼我の優勝経験の差についてである。東京には今野、梶山、羽生、藤山とナビスコ杯優勝経験のある選手が揃っていた。広くカップ戦の優勝経験ということで言えば、徳永や平山だって大したものだ。一方の川崎では、結局出場しなかった山岸くらいだろうか。キックオフ直後の川崎のぎこちなさや終盤に着々と時間を使う東京の落ち着きぶりを見るにつけ、そこら辺が勝敗を分けた一つの要因だった可能性はあるのかな、とは思う。

それにしても、東京の選手たちは見ていてほれぼれするくらいに堂々とプレーしていた。立派だった。5年前の優勝は死にもの狂いで頑張ったご褒美のような感じだったけれど、今回は前回以上に確かな実力でつかみ取った印象である。浮き沈みや紆余曲折もあったものの、城福監督就任以来1年半の努力がタイトルという結果に結実したのは本当に喜ばしい。この試合は選手交代も抜群に良かったし、ゴール裏も「オレ!」のかけ声でパス回しを後押しした。

なんつーか、選手や監督、ファンがみんなで成長してきた証なんだろうね、あのカップは。

MVPに選ばれたのは米本(ニューヒーロー賞とのダブル受賞!)。もちろん僕も異論はなし。値千金の無回転キャノンシュートも凄かったけど、川崎の強力アタッカーを向こうに回しての八面六臂の守備ぶりは「素晴らしい」の一言。54分だったか、左サイドからボックスへ突入しようとするレナチーニョの前に低い姿勢で立ちはだかり、何もさせなかったのには唸らされた。おそらく、近い将来日本を代表するMFになるのだろう……いや、早ければ南アフリカにも。

平山も素晴らしかった。いつも通りよくボールを収めてくれたのはもちろん、追加点を生んだシュートもナイスだったし、終盤の献身的なチェイスは見ていて涙が出そうになった。完全に一皮むけたね。権田も何か賞を上げたいくらいの大活躍。飛び込んでくる鄭大世をものともせずに制空権を獲得したプレーぶりは見事だった。むっくんは長友の穴を全く感じさせない出来。エルゴラに載っていた「川崎の攻撃陣は速くて、強くて、怖かった」というコメントには笑った。

一番素敵だったのは、表彰式でナビスコカップを掲げたのが羽生だったことだろうか。この試合でも攻守に貢献していたけど、彼はパスサッカー版FC東京を強くするために請われてやってきた選手だから。この1年半重圧は大きかっただろうし、不調時には色々と責任も感じていたことだろう。報われて本当に良かったね、という感じである。あとは、藤山と浅利、佐原も……って、書いているときりがなくなるな(笑)。いや、この試合はホントにみんな良かったよ!!
 
 
さて、と。これで一応今季の目標の一つ「タイトルを獲る」は成し遂げたわけだ。が、問題はその先だよね。前回の優勝時は余力を失ってリーグ戦はメタメタになったし、翌年は厳しいシーズンを迎えることになった。城福監督もコメントしているように、今度こそこの優勝を次への「ステップ」にできるかどうか。今年の残り試合と来季以降、どういう戦いぶりを見せることができるのか。本当の戦いは、もしかしたらこれからなのかもしれない。頑張ってほしい。頑張ろう。
 
 
試合後は、大混雑のコンコースをなんとか抜け、千駄ヶ谷門から新宿三丁目まで歩いていつもの「呑者家」で旧「東すか」メンバーと飲み会。さすがにこの日ばかりはいつもは辛口の連中も皆上機嫌で浮かれポンチになっていたような。ビールが1杯380円だったこともあって、馬刺しやカニ味噌グラタンをつまみに、わいわいと騒ぎながらついつい飲み過ぎてしまう。途中からよく覚えてない……んだけど、まあいいや。だって、俺たちカップウィナーだもの(笑)!!

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2545

コメント

最後の1行で笑ってしまいましたw
でも、浮かれるのも今日までですよ~。
明日からはこちらは4年越しの悲願浦和討伐を果たさねばですからね!

>4年越しの悲願浦和討伐を果たさねばですからね!

いや、まったくその通りですね。浦和戦の1勝は気分的に他の試合の3勝分くらい(当社比。いや、もっとでかいかな?)にはなりますから!!

他サポですが、優勝おめでとうございます。
いや、強いですね。テレビ観戦していて、付け入る隙が無いようにも思えました。
残りのリーグ戦も、一つでも上を目指して、お互い応援がんばりましょう。

>りくさん

どうもありがとうございます。
リーグ戦でどこまで行けるかはわかりませんが、残りも少ないですし、1つ1つを大切に戦ってほしいものですよね。ぜひお互い頑張りましょう。

実は初ナビスコ決勝でした、5年前は仕事しながらラジオ聞いてました。
しかしフラグ通りに成るとはw

相手は可哀想だが自滅、黒津投入時期が遅すぎた感が。
それでも一点が入ればいつもの打ち合いに成って相当不味い状態に成ったんじゃないかと。

5年前とは明らかに違う物が有ってそれは城福サッカー歩みだったりクラブの経済状態だったり藤、サリ、ナオ、モニだったり…それでも結果を出しちゃった選手監督スタッフには感服しました。
流石に足をつってる選手が多かったですね。
長友のカボレ級のシュート外しでズッコケましたw(周りも)
達っちゃん完全移籍で獲得したいです。

http://www.zakzak.co.jp/sports/soccer/news/20091104/soc0911041220001-n2.htm
夕刊フジ久保だし話半分にしときたいが本当かな?
報告会の監督の泣ける話「あ!羽生も居たんだ」ってのは腹筋がw

週末戦争に向けて2日だけ浮かれた選手も積年の恨みを晴らして頂きたいですね。

04年?の国立での神戸戦でのノリオの弾丸FKも凄かったですが、米本の高速無回転シュートにはビックリ!!

空中で突如左にスライドしながら、急激に落ちていきました。あれはどんなGKにも捕れない弾道でしょう。

あの大一番にルーキーが先発すること自体がとんでもない事なのに、先制ゴールを決めるは、日本代表中村憲剛の動きを封じるは、の活躍で文句なしのMVP。米本恐るべし!!

>4年越しの悲願浦和討伐
 正確に言うと2004年のナビスコ杯決勝以来勝っていないんで5年越しなんですが。

それはそれとしてただ勝つんじゃなくて、「浦和サポに問う、今日のようなひどい内容でもフィンケ続投に賛成なのか?」(刑事が犯人にトラメガで問いかけている風)ってなくらい圧倒して勝ちたいなあ。

そんでもって、11日と15日の天皇杯はさくっと勝って、千葉戦では昨年の借りを返して、ホーム最終戦は感動の嵐を巻き起こして、最後の新潟戦では奇跡の優勝・・・・・・・って妄想しすぎた。

いやぁ2回目ともなると
なにかカップウイナーが
板についてきたような・・・
何でしょう、この余裕は???(笑)

それでは、
「次いってみよう!」

アジアが東京を待ってるぜ。

みんな浮かれてますねえ。いいぞ!

でも、気をつけないと(って我々が気をつけてもどうにもならないんだけど)、日曜日味スタで浦和にまた負けて、冷や水ザブー!って感じになっちゃったりして(笑)。浦和側の事情をとやかく言ってる余裕はないっすわな。

さくっと次(アジア)へ行きませぅ。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)