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2009年07月28日

●大団円じゃーん ('09ツール・ド・フランス第18~第21ステージ)


優勝候補のど本命がリードを保ったまま終盤戦に突入したツール・ド・フランス。果たしてコンタドールがそのまま盤石の強さで最後まで走りきるのか、ランスは表彰台に上れるのか、シュレク兄弟はアスタナの牙城を崩せるのか、別府や新城は最後の見せ場を作れるのか、そしてカヴェンディッシュはシャンゼリゼでモーモーに一矢を報いることができるのか……etc。個人的には、これほどまでに楽しく観られるツールは初めてであった。ドキドキワクワク。
 
 
第18ステージは40.5kmの個人タイムトライアル。放送開始前に新城も別府も、さらにはぶっちぎりのタイムを叩き出したカンチェラーラも走り終わってしまうJSPORTS的に苦しい展開(笑)。総合争いの中ではアンディ・シュレクが健闘して2位に踏ん張り、その座を脅かすと思われていたアームストロング・ウィギンス・クレーデンはいずれも伸び悩んで表彰台争いは団子レースの様相を呈してきた。やはりモンバントゥーはガチの勝負レースになるか。

コンタドールはここでも次元の違う走りで1人旅(まあ、TTだからある意味みんな1人旅なんだが)。ランスやクレーデンの失速は知っていたろうに、おそらくこの日は優勝しか頭になかったのだろう、踏んで踏んで踏み切ってカンチェラーラを3秒振り切った。ガッツポーズ!ジロやブエルタに比べるとツールは極端な難関山岳が少ないのでコンタ向きではないようにも思えたのだけど、ここまでオールラウンダーに進化しちゃうと鬼に金棒、何でも来い状態である。

これでもう、よほどのアクシデントがない限りマイヨ・ジョーヌはコンタで決まりだろう。問題はパリでの表彰台……兄弟揃い踏みにアスタナの独占、まだまだ可能性は一杯だ。実況のSachaさんは「コンタドールがアシストに回ってもいいんですよね」なんて言ってたけど、コンタが前で引くと味方もちぎれちゃうから駄目だそれは(笑)。
 
 
第19ステージ。ゴール手前に2級山岳がそびえる変則平坦ステージは、「最後の機会」を逃さんとアタックが連続する展開に。しかしスプリンター・チームのコントロールが功を奏して逃げは全て吸収され、最後は集団スプリントとなった。気迫の走りで山岳をクリアしたカヴェンディッシュがダントツの速さを見せて5勝目。応援に来た母親の目の前での勝利に思わず涙するカヴ。これがホントの母ちゃんアタックってか。「おがあちゃ~~~ん!!」。

日本のファンにとっての見せ場は、素晴らしいポジショニングから7位に食い込んだ別府史之の走り!……なんだけど、気になったのはランスも別府とほぼ同じ位置取りをしていたこと。思わず「ランスもスプリント!?」とドキドキしたのだが、さすがにそれはなかった(笑)。でも、その後ろでうまいこと集団が割れてランスはライバルたちに対して4秒差をゲット。第3ステージの集団中切れ事件の時、やはりランスと別府が前にいたのを思い出した。偶然だろうか?
 
 
第20ステージ、決戦のモンヴァントゥー山頂ゴール。サクソバンクとアスタナがガンガンと競うようにペースを上げて上りへ突入、後はひたすら総合有力勢のせめぎ合いになった。仕掛けるシュレク兄弟、守るコンタドール&ランスという構図は平均7%もの勾配で20km以上続き、ついにコンタ&ランスがマイヨ・ジョーヌと3位表彰台を守りきった。ステージの方は、メイン集団の猛追にもひるまずマイペースで逃げたガラーテがマルティンを振り切って優勝。

この日の見所はもちろん、ダブル表彰台を狙うシュレク兄弟が他の有力勢を振り切れるかどうか。アンディの度重なる攻撃にクレーデンが遅れ、ウィギンスが遅れ、ランスも遅れかけ、コンタまでが苦しげな表情を見せる。だが、そこでフランク兄ちゃんが付いていけなかった。アンディは優勝を狙うならば構わずガンガン行くべきだったのだろうが……そこで後ろを振り返っちゃうんだよなあ、この優しい子は。結局黄色い影を振り切れず、総合順位は変動なし。

もちろん昨年のジロで見せたようなコンタの守りに入った時の粘り強さを考えれば、踏み切っても結局は振り切れなかったのかもしれない。ただ、なんかな~、「アンディ、そこは無線を引きちぎっても行かなきゃアカンちゃうん?」と言いたくなってしまうもどかしさだった。ランスがコンタの事を「彼はとても強い。そして大変な野心がある」と評していたけど、コンタとアンディの現在の差はそのコメントの後半部分にあるのではとちょっと思ってしまった。

あ、あと、コンタドールがランスを見捨てず連れて行ったのはよかった。「俺の方が大人」宣言(笑)。
 
 
オーラスの第21ステージは、恒例の前半「まったりパレード」に後半「シャンゼリゼ高速スプリント」。祝福ムードと解放感とお遊びに溢れた、それでいてあれこれ人間関係を深読みしたくなるような数十kmの流し走行から、大観衆に囲まれたキツい石畳周回コースへ。別府史之のアタックが呼び起こしたタフな逃げ集団を、そしてうるさいメイン集団をコロンビア・トレインが完璧に封じ込め、超特急カヴェンディッシュがダントツのスプリントで有終の美を飾った。

前半のパーティー・ムードの集団の中で目立っていたのは、やはりランスだった。ほとんど常に集団の前方に位置し、アンディ、フースホフト、そしてカヴェンディッシュとスター選手に話しかけまくり。当然にそれを追うテレビカメラ。来季の新チームのスカウト活動も兼ねているのかどうかは知らないが、やっぱり政治家やのう、みたいな。あそこでもうちょっとコンタドールを持ち上げるような振る舞いをしてくれたら、僕の中でだいぶ株が上がったんだけどな。

そんなランスに比べると、コンタ君の大人しいこと。喜びを深く深く噛み締めているような感じであった。色々と辛かったんだね……。アンディは盛んに自分からコンタに話しかけていたような。何を話していたのかすんごく気になるわ。カヴちゃんとフースホフトのツーショットは美しかったですな。どうせまた来年あたりけんかすると思うけど(笑)。別府と新城のスマイルはまぶしかったね。フランスのカメラマン、「バンザイ!ハラキリ!」とか言うな(笑)。

そしていよいよシャンゼリゼへ突入。別府が前に上がっているのには気づいたけど、1週目でいきなり仕掛けたのには驚いた。しかも、そのアタックが決まって追随の6人とともに逃げ始めたのにはもっと驚いた。コンコルド広場~ゴールのエリアではガンガン前を引きまくって……なんかメチャクチャ格好いいんですけど!!最後の周回でコロンビアにつかまっちゃったけど、はっきり言ってカヴよりも目立ってたぞ!敢闘賞獲得(マジで)!ブラボー!!

てな感じで、大興奮のうちに3週間のレースもついに終了。片手を挙げ胸を張るコンタドール。
 
 
以下、極東のいちファンの身勝手なまとめ。

実に見所の多く、エキサイティングなツール・ド・フランスだった。僕が見始めてからでは(つってもまだ4回目だけど)間違いなく一番面白かったと思う。アームストロングの復活と13年ぶりの日本人出場(しかも2人も!)、カヴェンディッシュ&コロンビアの無敵スプリントと自爆ぶり(笑)、コンタドール×ランスのドロドロとした新旧王者対決、そして世代交代を予感させる総合争いの帰趨とコンタのスーパーアタック。他にも意外な逃げ成功なんかもあったし。

特に日本人2人には、どんなに感謝してもしすぎることはないだろう。正直、新城はそこそこやるだろうと予想していたのだけれど(それでもステージ5位とは!)、別府の方は今季の成績からも難しいのではないかと思っていた。それが、抜群の判断力と回復力を見せてベスト10入りが2回、さらになんとパリ周回コースで逃げまくっての敢闘賞獲得である。なんだ、全然通用するじゃん(笑)!お見それしました。つーか、来年はステージ優勝だ(マジで)!

あと、コンタドールとランスについては……結果的には良かったのかな、と。ランスの振る舞いや発言、そしてアスタナのコンタに対する扱いについては釈然としないものがあった。でも、その困難を乗り越えたことでコンタがまた強くなったのも確かだろう。元々大人びた青年だけど、優勝を確定させた後の記者会見とか、もう貫禄が漂ってるもんね。乗り越えた者がその座を継承する「王の歴史」というか、ある意味“Live Strong”の最高の体現者というか。

そんで、えーと、確か来年はランスとブリュイネールが「レディオシャック」とかいう新チームを作って、コンタドールは移籍することになるのかな?よく考えたら、コンタドールとアームストロングが一緒に走り終えたレースって、ツールが最初(でおそらくは最後)だったんだね……。これも考えてみれば劇的な物語ではある。今度はかつてのF1でのセナとプロストみたいにドロドロとした争いになることなく、スカッと力勝負になってほしいっすな。ではまた来年!!
 

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