« ホントに抽選になったら…(笑) | メイン | 昨日の »

2008年06月09日

●平山の生きる道は「遅さを生かすこと」 ('08ナビスコ杯第6節vsヴェルディ)


昨日の午後は、国立霞ヶ丘競技場でナビスコカップグループB第6節。東京ヴェルディ 2-4 FC東京。決勝ラウンド進出をかけたグループリーグ最終節は、今シーズン3度目の「東京ダービー」。試合はやや粗さが目立つ乱戦となり、ヴェルディが2度にわたってリードを奪う展開となったが、北京五輪代表から漏れたかに見える「大物FW」(笑)があっと驚く大爆発。平山のハットトリックで一気に試合をひっくり返し、見事準々決勝進出を決定した。


立ち上がりからともにチャンスを作る攻め合いとなった。東京は梶山とエメルソンを中心としたパス回しで、ヴェルディは外国人アタッカーの突進力でチャンスを作る。2分、フッキとのワンツーでレアンドロがボックス内に突入するが、シュートは弱くGK荻がセーブ。直後には攻撃参加した右SB椋原のクロスが流れたところを羽生が拾って中へ、ブルーノがヒールで流してDFの間にすべり込むエメがシュート、GK土肥がかろうじて足ではじき出した。

この日の東京は中盤で梶山・ブルーノがコンビを組み、佐原を欠くCBは茂庭と藤山、そして前線はカボレと平山。何通り目かはわからないが、とにかくまたしても今季初の形である。梶山・ブルーノは前への推進力は良いのだがDFラインとの間にややユルさがあって、そこでボールを拾われていい形を作られるシーンが何度か。10分、平山のタメからエメがオーバーラップ、折り返しににDFと競りながらカボレが飛び込むが惜しくも合わず。

先制点は11分。右サイドからDF(茂庭?)をかわしたフッキがボックスへ突入、荻が飛び出して一対一を防ぐものの、こぼれ球を廣山に蹴り込まれてヴェルディ先制。15分にも右サイドを突破したレアンドロのシュートが際どく外れる場面があり、どうも茂庭・徳永のサイドは不安であった。しかし、幸いなことに同点ゴールは早かった。16分、梶山のフィードにタイミングよく飛び出したカボレが土肥の頭越しのループシュート、きれいに決まって1-1。

ところが19分、ヴェルディはボックス正面でFKを獲得。フッキの左側から巻き込む弾道のシュートは、横っ跳びの荻も届かず見事ゴール隅に突き刺さった。1-2。なんとも落ち着きのない展開である。ヴェルディのブラジリアン、気分良くやっているうちは決して侮れない。26分、レアンドロとのワンツーでフッキがCBの裏へ出た場面は椋原がナイスカバー。30分、カボレが怒濤のドリブルから切り返してシュートするも、威力なく土肥キャッチ。

守備のバランスを欠く東京と前線-後方が分断気味のヴェルディ。前半も終わりに近づくと双方中盤を作れず、ロングボールが多くなった。36分、フッキが椋原をかわして深くえぐるが、ラストパスは茂庭がカット。39分にはエメのラストパスでDFと競りながらカボレがシュート、土肥が押さえる。そして43分、右CKから羽生のクロス、平山がヘディングシュートをゴール右に決めた。マークは外したのか外れたのか……ともあれ、気分良く後半へ突入。


後半早々、東京が今度は勝ち越しゴール。カボレが突如加速するドリブルで富澤を振り切りながらボックス右へ突入、グラウンダーの折り返しをDFと競りながら走り込んだ平山が押し込んでゲット。3-2。これで東京にはかさにかかる勢いが出て、逆にヴェルディはやや意気消沈の感があった。51分、ショートカウンターからエメルソンがDFの裏へ走るカボレへラストパス、トラップが少しだけ長くなって飛び出した土肥がなんとかクリア。

このままリードして終われば勝ち抜ける(大分・神戸が苦戦中)東京は梶山・ブルーノが攻め上がりを控え、ヴェルディの速攻に備えつつボールホルダーにプレッシャーをかけていく。攻めあぐむヴェルディはフッキ・レアンドロの無理仕掛けと雑なアーリークロス、遠目からのシュートが増えていく。ここで光ったのは初出場・荻の落ち着いたフィールディング。61分、急加速したフッキが左サイドを突破した場面も鋭いグラウンダーをしっかりキャッチ。

ヴェルディは河野・吉武を投入するが、後半半ばには早くも息切れ気味。67分、梶山から左サイドへ素晴らしいフィード、羽生が追いついて狙いすました折り返しを入れ、カボレの左足シュートを土肥がセーブ。ここで東京は羽生OUT石川IN。カウンター狙いはより鮮明になった。70分、ボックス前でパスを受けたフッキが切り返しからシュートするがゴール右を抜ける。その直後には椋原がDF裏へ浮き球、石川が走り込むもシュートは外れ。

その後もヴェルディが攻めながら決定機を作れず、東京が逆襲を狙う展開が続く。73分、DFとGKの間に浮き球が入って大野が走り込み、ヒヤリとするタイミングだったが荻がキャッチ。そして76分、右CKで石川のクロス、マークを外した平山が躍り上がって頭で叩き、ボールは土肥を抜いてゴールイン。なんとハットトリック達成である。それ自体もさることながら、彼に抱きついて祝福するチームメイトのたちの姿が何とも喜ばしかった。4-2。

終盤は東京がカボレ→祐介、エメ→大竹とやりくりしながら時間を潰していく。余力十分の徳永のオーバーラップからやっぱり前に出たいブルーノさんがシュートしたり、これまた点の欲しそうな大竹がキュンキュン仕掛けたり、平山が妙に巧みな足技を見せたり、レアンドロのクロスに福西が飛び込むも椋原が負けずに体をぶつけたり……ロスタイム、フッキのFKを荻がキャッチしたところで試合終了の笛が鳴った。また完勝、そして決勝ラウンド進出である。



ややルーズで落ち着かない印象の試合ではあったが、とにかく勝てて何よりだった。

前半苦戦した原因はやはり慣れない布陣にあったのだと思う。梶山・ブルーノの組合せだと局所での強さはあっても面のカバー力は足りなくて……「攻撃的布陣」のはずがかえって前がかりになりきれなかった。もっとも、羽生先生が梶山の後ろに回ってカバーしたり(お疲れ様です)、藤山がいつも以上に前へ出たり、あと後半になるとブルーノが上がりを控えたり、途中からそれなりにバランスはとるように。そこら辺はチームの成長、なのかな。

平山のハットトリックには驚かされた。清水戦の観戦記で「平山と茂庭、君たちの出番だ」などと書きながら、実は内心「でも結局駄目なんだろうな」と思っていたんである(笑)。これで少しは「男になった」のかな?僕はソリマチンが嫌いではないし、平山が現在五輪代表から選ばれていないのは全然不当とも思わないが……つーか、活躍するタイミングが(プレーと同様)二拍ほど遅れているのが平山らしくてまた笑えるというか。まあ、3点は確かに凄い。

最近思うのは、平山が今の東京で生きていくとすれば、その「遅さ」を逆に生かすしかないのではないか、ということ。この試合でも何度か足下でタメて味方のオーバーラップを引き出す場面があったけど、クイックネスの向上が望めない以上、むしろ流れの中で遅れ(ながら効果的なプレーをす)ることでアクセントになる、と。それこそオシム千葉にいたマリオ・ハースみたいな。おそらくその方が味方の早さ・速さも生きるし、平山自身も(セットプレーも含め)点がとれると思うのだ。野球で言えばチェンジアップ。もちろんそれでも判断のスピードはもっと上げなくちゃいけないし、カボレとかぶる危険もあるけれども。

他の選手では、まず初出場の荻は前半危なっかしい場面もあったものの、落ち着いてからはなかなかいいプレーぶりだったと思う。東京はJ1に上がってからはGKに不自由した試しがないんだよね。DFでは椋原が良かった。フッキに一対一でやられた場面はあったが、危険察知能力は非常に高い印象。それに比べると徳永はどうなんじゃい、と思う。茂庭は、読みは悪くないのでやはり体のキレが問題か。藤山はいつもの藤山だった。

中盤では、梶山は相変わらずの覚醒ぶりで頼もしい。欲を言えばもう少し守備でクレバーさがほしいかな。ブルーノの守備範囲がやや狭いだけになおさら。羽生先生はあれで良く過労死しないな、と感心する。エメはもう少しSBあたりと絡めると凄くなりそうだが。石川、大竹、祐介は欲求不満が解消しきれずにちょっと残念だったねえ。カボさんはもしかしたら「シュートを強く撃てない(撃たない)人」なのだろうか、という気がしてきた(笑)。

まあ、とにかく、これで佐原のアレも致命傷にならずに済んだし、良かった良かった……つーか、個人的にはヴェルディに対して恨みもないし「多摩川クラシコ>東京ダービー」だし、ましてやヴェルディに勝つことがシーズンの目標でもないので、サクッと次に行きたいものだと思う。試合後にヴェルディサポの一部が暴発したようだが、こっちは勝ったんだから(実害がない限り)流せばいいんだよ。余計な挑発や嘲弄はいらない。勝っておごらず、が一番である。
 
 
そういや、この日は長沼健さんが亡くなってから初めてのJ開催ということで、競技場には半旗が掲げられ、試合前には黙祷が行われた。長沼さんについての思いは先日書いたとおりだけど、あらためて故人のご冥福をお祈りします。
 

トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://umanen.org/mt/mt-tb.cgi/2394

コメント

こんばんは。

マリオハースは遅らすプレーと同時に、突如スピードアップするギアチェンジの見事さが印象に残っています。両方持っていて初めて武器になるのかなあ、と。

平山は高校時代、自分で決められる状態までプレーを遅らせることができるので評価されていた気がします。しかしプロになるとそれではシュートを打つまでに確実につぶされてしまう。はたして遅さだけで勝負できるのか、ということを頭においていままでずっと平山を見守ってきました。いまでも成功できるかどうかは半信半疑ですが、なんとか殻を破ってほしいと願っています。遅さで勝負するタイプとしては、マリノスにいたフリオサリナスみたいになればいいなと思っています。

それはともかく平山のあのランニングフォームはなんとかなんないですかね。猫背ですり足で走る姿はとても運動選手に見えない。きちんとしたランニングフォームを身につければ、結構ダッシュ力はあるんじゃないかと考えるのは素人考えですかね。

どうもです。

まあ、いきなり平山がハースになれるとは私も思いませんが、ただ今後の方向性として目指していくべきなのはハース的な「機能するFW」なのかな、と思うのです。

つまり、平山自身が速く動くことはできなくても、チーム全体の早さ速さをそこなわない(むしろ際だたせる)形で生き残っていくのは可能だろう、と。フリオサリナス……うーん、そこまで個人能力が突出した選手なのかどうか……。

ともかく、周りも変に超人的な速さや強さを求めるのではなく、等身大の平山から出発するのが大事かな、とは思います。いつまでたっても「元怪物FW」扱いもどうなのかな、みたいな。

>平山のあのランニングフォーム
茂庭とちょっと似てますよね。モニの場合はそれでも全盛期には忍者走りで快速FWともやり合えたのですが、少し調子が落ちるとただのドタバタ走りになってしまいました。フォームを一度作り直さないといけないんじゃないかな、と素人的には思うんですよね。平山も全く同様で、ちゃんと走れば本当は足遅くないんじゃないかと。

どうも、再び緑のサポで申し訳ございません。

ダービー試合の詳細すごいですね、TVが無かったので助かります。
しかも開いて視点なので非常に参考になります。
私なんかだとまだ、こ~んな感じだった、くらいしかないもので・・・。

もしよろしければお答え頂きたいのですが、後半からのFC東京のポジション修正って、どんな感じに修正されたのか分かるでしょうか?
後半開始早々からFC東京が全く別のチームになった印象があったので、なんでこうなったのかと。
個人的には平山が下がってカボレと被るのを避けて、羽生(?)なんかがオーバーラップできるようにしてきたのかな?くらいしか分からなかったもので・・・。
あと全体がすごいコンパクトになった印象が。


それにしても城福さん凄いですね。
こんなに的確に修正してくるとは・・・。
当日連れて行った横浜FCサポも同じように驚いてましたよ。

ヴェルディとは控えの選手層の差が段違いっていうのもありますが、後半の采配の差があまりにも大きすぎました。
正直なところ、現地で見ていたとき、石川が投入された時点で負けを確信しました。

>だいぶつさん
どうもありがとうございます。観戦記、わたしゃけっこう単純なので、たまに褒められるとすごく嬉しいです(笑)。私も1969シートで観てましたよ。

後半のFC東京の修正ですが、まずボランチの守備ですね。私は観戦記では「上がりを控え」と表現したのですが、前半は梶山とブルーノが2人とも上がり気味になってDFラインとの間のスペースを使われる場面がいくつもあったので、後半はそこを潰しに行った、と。試合後のコメントを見ると特に梶山には後ろを見るように意識付けをしたようですね。

もう一つは、前からの守備意識を高めたことです。後半になってからのFWや攻撃的MFのボールホルダーへのアタックは、前半に比べると見違えるようでした。そのおかげで、DFもラインを上げる余裕ができて全体がコンパクトになった、ということでしょう。

結果として、ヴェルディのフィードボールの精度が落ち、たまにセカンドボールを拾っても(バイタルエリアが空いていないので)フッキやレアンドロの攻撃開始点が下がったせいでヴェルディは攻めあぐむことになりました。

城福監督としては、初めての布陣(特にボランチの2人)だったこともあり、やはり前半は手探りの部分が大きかったのだと思います。で、見ていて「ああ、やはりこのメンツだと難しいのか」と思っていたのですが、ハーフタイムできっちり修正してきましたね。お褒めいただいたように、とても賢い監督だとあらためて嬉しくなりました。

ちなみに、東京が「逃げ切ればいい」というシチュエーションなのに前の選手を3人替えたのは、出場機会に飢えている若手にチャンスを与えることと、あとやはり後半前からのチェイス守備を徹底したのでその疲労を考えたんでしょうね。

コメントする

(初めてのコメントの時は、コメントが表示されるためにこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまでコメントは表示されませんのでしばらくお待ちください)