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2007年11月03日

●落合監督バンザイ、の気分

山井交代「言わせておけ」 落合監督、気持ちは次戦へ (スポーツナビ=共同通信)  
 
 
例の山井の交代について、落合監督のコメント。さすがである(笑)。

相手はパリーグの優勝チーム、得点差はわずか1点、前のイニング山井の変化球が抜け気味であったこと、そして何より絶対的守護神(しかも好調)の存在。勝利の確率を高めるためには、山井→岩瀬の継投は選択としてもタイミング的にも極めて正しい判断だったように思える(もちろん、好調の選手を替える事自体のリスクがあるのも確かであって、野村監督の「私なら替えない」はそういう意味ではないのかな)。

そもそも、今回中日ドラゴンズと落合監督に課された使命は「53年ぶりの日本一達成」であったのだ。負けた場合は残り2試合を札幌ドームで戦わなければいけない事を考えても、あの場面で「より確実な手」を打つのはむしろ当然。プロ野球ファンとして「完全試合を見たかった」という気持ち(僕も見たかった)を表明するのはいいとして、使命に忠実に行動した人を、その事をもって批判するのはいかがなものか、と思う。

ただ、理屈としてはそうだとしても、実行するのは至難の業でもある。あの立場に立たされたら「ヒット1本打たれてからにしようかな」とか思うよな、普通は(笑)。そこの心理的障壁を(少なくとも表面的には)平然と超えてしまうあたりが落合監督らしさであり、名監督としての凄みでもある。やくみつるの「空気読め」という批判は的外れだと思う。あれは空気をちゃんと読んだ上でやったことだ。そういう人なんだよ、あの人は。


落合博満ファンの僕としては、今回の日本シリーズ制覇は実に感慨深い。

単なる天才ではなく、「野球」という競技について考え抜いている人だということは選手時代から知っていた。巨人へのFA移籍を熱望し、実現させた長嶋監督も、落合さんの打棒よりも野球に関する知識や経験を評価したと聞いている。でも、その頭の中に蓄積されたものを、監督としてこれほど見事に表現できるとは思っていなかった。「鶴の一声」で彼の監督就任を決めた白井オーナーの慧眼には驚くばかりである。

加えて、中日の監督になってからも、チーム作りや采配については優れていても「ここ一番」での勝ち運のなさ、勝負弱さも目に付いていた。04年日本シリーズ2戦目の試合後における失言。必勝を期して臨んだ06年日本シリーズでの4連敗。「この人は星野さんと同様、日本一にはなれないで終わってしまうのかな」という予感さえ覚えたものだ。それが、今回の三度目の正直。いや、素晴らしい。お見事でした。

選手としてとても好きだった人が、素晴らしい監督となって帰ってくる。ファンとしてこんなに嬉しいことはないよ、ホント。中日の監督やめたらFC東京の監督やってほしいくらい(笑)。


ついでに言うと、今回の中日の日本一がチーム力、つまり数字に表れない部分での強さによってもたらされたように思えるのも、個人的には大変嬉しいところ。野球の団体スポーツとしての奥の深さを見せつけてくれたというか。

東京ドームでの巨人とのCS第2戦は現地で観戦したのだが、投手の球の速さや打者の打球の強さはやはり巨人の方が上。でも、守備の連携(荒木と井端のコンビは本当に凄かった)やいわゆるチームバッティング、そして状況に応じた采配の細やかさなどでは圧倒的に中日が上だった。同じ当たりが巨人の守備だと2塁打、3塁打になるのに、中日だとほとんどアウトか、せいぜい単打止まり。そりゃ勝つよな。

まあ、プロスポーツであるからには一方で「個の華やかさ」が必要であるのも確かなんだけど、それって無理矢理に作るものでもないだろうから。特に今年は福留がいなかったわけだし。逆に、来年以降、ドラゴンズというチームがどうなっていくのかも興味深いところではある。


とにかく。中日ドラゴンズとそのファン、そして落合監督、本当におめでとうございました!!

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コメント

個人個人の力は巨人のほうが上だったが、守備力と采配を含めた組織力は中日のほうが圧倒的に上だったわな。

交代については、やはりこの人、腹の中に何かまだ隠し持ってるよ、たぶん。
マメがつぶれたのは4回くらいだっていうし、だったら5回とか6回で交代でも良いじゃん?って。
たぶんマメがつぶれてなくても8回で代える気だったんじゃないかな?

>交代については、やはりこの人、腹の中に何かまだ隠し持ってるよ、たぶん。
>たぶんマメがつぶれてなくても8回で代える気だったんじゃないかな?
俺もそう思う。

わざわざ8回に「続投するか?」なんて聞いたところからして、結局「最後は岩瀬」が落合監督の判断であり、チームとしてのコンセンサスでもあったのではないかと。

たぶん、山井が「ぜひ投げさせて下さい」とは言わないとわかっていたのだろう(笑)。

>>山井が「ぜひ投げさせて下さい」とは言わないとわかっていたのだろう(笑)。

チームとしてはいいかもしれないけど、確かに。
でも、ピッチャーってお山の大将というか唯我独尊というかそういうところって必要だと思うんだが、そういう意味では山井には「投げます」と言って欲しかったりもする。

あと、もう一つ思ったのが、今年FAの権利を取得した岩瀬の価値を少しでも上げるためじゃなかろうか?ということ。
パーフェクトピッチを交代させてまで9回投げさせるほどのクローザーなんだぞ、ととりわけ海外に知らしめるためのね。
そういう箔がつけば、仮にメジャー行くことになった場合に、岩瀬本人の評価も
上がるし、中日の懐も暖まる。

考えすぎかな?

ありがとうございます。
アジアシリーズが開幕するまで浮かれさせていただきます(笑)。

5戦で終わってしまいましたが、野球ファンなら内容を噛めば噛むほど中日の野球の奥深さを感じるかと思います。
それはそれで素晴しい日本シリーズかと感じるでしょう。

山井の非の無い好投振りをテレビでみていてどうするのか思いをめぐらせていましたが、落合監督の信念にブレは生じなかったということですね!

コメント書いている間でも嬉しくて嬉しくて(笑)。
ボストンの人達の気持ちがよくわかる(笑)。

17日の日本一… 否や、アジア一記念パレードは、監督選手関係者を祝福しに行くだけでなく、日本一を待ちわびた数多くのファンが喜ぶ姿をこの目に焼き付けるため、見に行きますよ!

>そういう意味では山井には「投げます」と言って欲しかったりもする。
確かにそれはある。好投手だけに。まあ、本人も言ってるように、「とにかくまずはシーズンで結果を出して信頼を得ておかないと」ということなんだろうけど。

>今年FAの権利を取得した岩瀬の価値を少しでも上げるためじゃなかろうか?
なるほど。ただ、今回はそこまでは考えていないような気もするけどね。落合氏は海外相手の商売指向は低い人のはずだから。星野さんとかの方が意外とやりそうな(笑)。

>野球ファンなら内容を噛めば噛むほど中日の野球の奥深さを感じるかと思います。
そうですね。なんつーか、変な言い方ですが、ある意味で「野球の復権」の瞬間を見たような気がします。もちろん、魅力的なスターを揃えて、という野球もアリだと思うんですけど、パッと見えにくい部分の威力を感じられてこそ日本野球かな、と。

仮に山井投手を九回も続投させた結果 逆転負けを喫したとしても、誰も落合監督を責めはしなかったと思います。継投策が裏目に出ていたら逆に何と言われていたことか。彼個人が背負い込んだリスクを想像すると、ただただ すごい肝っ玉の人だなという感想しか出てきません。

>> 中日の監督やめたらFC東京の監督やってほしいくらい(笑)。

前に故仰木監督に来ていただけたらと思ったことあります(笑)。

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