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2007年05月07日

●大人と子どもってか (川崎フロンターレ×FC東京)


夕方、等々力競技場でJ1第10節。川崎フロンターレ 5-2 FC東京。今回から「多摩川クラシコ」と銘打たれた、Jにおける11度目の対戦。雨の中、優勝を争う川崎がACLとのかけもち過密日程にもめげず見事な攻撃サッカーを披露し、不振に悩む東京から5つのゴールを奪って大勝。今季の成績と戦いぶりからして順当な結果ではあるが、東京からすればライバル(と思いたい相手)に大いなる実力差を見せつけられた格好となった。


前半。東京は馬場→石川のホットラインを軸に、川崎は中村を起点として長短のパスを織り交ぜ、それぞれボールを速く動かして攻撃しようとする。2分、川崎陣から中村の縦パス一本でカウンター、飛び込む栗澤をかわした大橋がピッチ中央を持ち上がり、下がるDFラインを見ながら撃ったミドルシュートがゴール左隅に決まった。0-1。出鼻をくじかれた東京は反撃するも、石川とルーカスのシュートはいずれも決まらず、逆にパスカットから次々シュートを浴びる。

10分、攻撃に移る東京が押し上げにもたつくところで川崎の逆襲。黒津がCBの間で放った強烈なシュートがゴール右上に突き刺さった。0-2。その後もボール支配は川崎。DFラインから中村を経由してビルドアップ、ジュニーニョ・黒津・大橋、さらに右サイド森も加わり、パスで東京の守備網をぬって良い形を作る。東京はルーや石川のスピードを生かしたいが、その前のつなぎでボールを失うことが多い。感覚的には、成功パスの回数が川崎の1/3くらいか。

30分、石川がDFライン裏に弧を描くグラウンダーを入れ、ファーから栗澤が飛び込むも間一髪箕輪がカット。他にも徳永の攻撃参加など「今の東京」なりの良い所は見せたのだが……。43分、川崎は流れるようなパス回しからボックス外でFKを獲得、大橋の蹴った弾丸ライナーが右上に決まって0-3。さらにロスタイム、波状攻撃から中村がボックス内に抜けてシュート、塩田が一旦はじいたものの、こぼれ球を黒津村上が蹴りこんでゲット。0-4。


後半、東京は負傷の憂太に代えてワンチョペ、浅利に代えて梶山を投入し前がかりにシフト。前半以上に激しい攻め合いとなった。開始早々に森が右サイドを突破、マイナスのクロスにジュニーニョが合わせるも塩田セーブ。その他何度か決定的なピンチがあったものの、自分で決めたいジュニーニョの判断ミスに救われた。51分、DFのクリアミスから得た決定機はルーカスが宇宙開発。58分、石川が強烈なミドルシュート、川島がかろうじてパンチング。

やはり過密日程の疲れが大きいのか、川崎は時間がたつにつれ動きが重くなっていく。逆に東京は前に出てボールを奪う場面が多くなり、前半あまりなかった福西や今野のオーバーラップも出て攻撃に厚みが増していく。60分、ボックス内へのパスを梶山がスルーしてワンチョペがシュート、川島が弾いたボールにルーカスが詰めるが決められず。さらにその直後、栗澤に代わった規郎のシュートが枠をかすめる。得点の香りは確かに漂っていた。

ところが、68分。梶山がボールを奪われてカウンターとなり、ジュニーニョのラストパスを受けた黒津がシュート、塩田の脇を抜けたボールをゴールライン手前で藤山がブロックするも、こぼれ球をジュニーニョが押し込んだ。0-5。ジュニーニョ、あれほど自分で点を欲しがってたのに、ここは黒津にパスしやがって……それで自分でゲットかよ。なんか、「他人に良いことをすれば必ず自分に返ってきます」という道徳の授業みたいな得点だった(笑)。

その後は、川崎が着々と選手を入れ替える一方、東京が意地の反撃を見せる。75分、左サイドから切れ込んだルーカスが箕輪に倒されてPK。これを自分で決めて1-5。川崎も幾度か好機を迎えるも、塩田の安定したセーブと徳永の好カバーで防ぐ。86分、左CKから福西が落としたボールを石川が左足で叩き、豪快にニアを抜いてゴール。2-5。しかし反撃もここまで。ロスタイムにルーカスが放ったヘッダーは川島にキャッチされ、結局3点差で試合終了。



フロンターレは強かった。我那覇・マギヌンの不在やACLの疲労、そして滑るピッチもなんのその、速いパス回しで東京を圧倒。ゴールはどれもゴラッソだったが、特筆すべきはシュート局面に至るまでのスムーズさ。細かいポジショニングと動き出しの連動、フォローの積み重ね。きちんとパスコースを作れているから、DFに寄せられてもボールホルダーが慌てないんだよね。代役大橋の活躍もお見事。まさに関塚監督の言うとおり、チーム力の勝利だった。

一方、東京は……木っ端みじん(笑)。繰り返すが「今の東京」なりのサッカーはできていたと思う。ただ、残念なことに、チームとしてのレベルが全然違っていた。最も彼我の差を見せつけられたのは中盤のパス回しだろう。川崎の滑らかさに比べて、東京のぎこちなくパターンの少ないことよ。で、出し先に迷って狙われたり、無理したり、一か八かの変則パスを狙ったり。あれは個々の選手のパスミスじゃない。チームやグループとしての動きの問題なんだ。

この試合、石川の奮闘が目立った。前半は憂太のパスを受けて何度も伊藤をちぎっていたし、あわやのラストパスやシュートも。終了間際の「意地の一発」は水しぶきたてながらゴールネットに突き刺さったもの。彼の悔しさや怒りが込められているようにも思えて、何だか胸が締めつけられた。彼に限らず、選手たちは頑張っていたと思う。特にルーカスや、栗澤や、藤山、徳永、塩田……でも、結局局面局面で孤軍奮闘になってるんだよな。

試合後の監督コメントは、今日も「解説者調」だったようだ。


つーか、「多摩川クラシコ」だったんだよな、これ(笑)。試合前に流された、荘厳な音楽に載せて過去の対戦のダイジェストを見せるCMは非常にカッチョ良かった。ああやって川崎側が意気込んで演出してくれたのに、応えるような試合ができなくて申し訳ないような気さえする。そういや、映像の中には昨年の大逆転劇もきっちり入っていた。川崎にとっちゃ悔しい歴史だろうに。やはり今回はあの時の復讐戦、という意気込みだったのだろうか。うーむ。


[おまけ]
この試合は急に行けなくなった友人からチケットを譲ってもらい、バックスタンドSS席の前から4列目で観戦した。等々力競技場というとあまり観戦に適さないスタジアム、という思いこみがあったのだが、この席は非常に観やすかった!!グラウンドがとても近く見えて、味スタのU席よりずっといい感じ。おまけに下の写真のような、毛布とクッションの無料レンタルまで付いてくるのだから素晴らしい。ファンサービスの方もやるな川崎、という感じである。

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コメント

けちょんけちょんにされましたね…。おっしゃる通り「個」ではまぁ戦えていたけど「組織」だとまるでお話になりませんでした。ナオの吹っ切れぶりは面白かったけど。

次のリーグ戦は千葉ですか。厳しいなぁ…。

川崎戦、13時過ぎから並んでアウェー席の二階・ほぼゴール真裏に着席できました。

一点目の失点の時は、敵陣で福西がかわされた瞬間、最終ラインの前にポッカリとスペースが空いたのが分かりました。福西は、なんであそこまで高い位置までプレスに行ったのか、良く分かりませんでした。福西の動きに合わせて、茂庭?がラインを上げたり、浅利が大橋に付けば、あんなに簡単にシュートを打たせる事はなかったですかねぇ〜。守備の連携が感じられないですね。

結局、ボロ負けはするは、雨で風邪をひくはで、最低の1日になってしまいました。

昨日のような天気では、良い大人は、家でNHKを観るんでしょうが、我ながら物好きな奴だと思います。

J1に再昇格してからやっと、やっと、勝てました。素直に喜んでいる川崎人です。
でも味スタで勝てる自信はまだないかもしれません。それだけ去年の試合はトラウマになっております。

さて、わざわざしゃしゃり出てきて、非常に重箱の隅で恐縮なんですが、
前半ロスタイムの4点目は黒津ではなく、左WBの村上です。スパイクが同じ赤だから
間違える人多いんですけどね。。。

>宇宙の海は俺の海様
ねえ(笑)。ただ、石川のキレっぷりは個人的にとても嬉しかったですよ。「もう、悩んでないでやるしかない!」みたいな。

>福西は、なんであそこまで高い位置までプレスに行ったのか
多分2トップの時の「FWの後ろを埋めなきゃいけない」という意識が残ってるのと、あと昨日は全体としてこれまでほど守備色が強くなかった、というのもあります。ただ、おっしゃるとおり、それなのにDFラインの押し上げがないあたりが「バラバラ」なんですけどね。

>良い大人は、家でNHKを観るんでしょうが
いや、まだまだ「悪い大人」でいましょうや(笑)。

>川崎人様
どうも、ご指摘ありがとうございました。村上の得点のところ、さっそく直しておきました。イヤミでもなんでもなくて、遠目には区別がつきませんでした(笑)。ホントすみません。

>それだけ去年の試合はトラウマになっております。
おそらく、そこは川崎のチーム自体がずいぶん気にしているのではないでしょうか。0-4でスタートした後半、川崎がまだ攻めてきたのにはちょっと驚きました。「やはり、これは去年の11月の復讐戦なんだ」と。

まあ、ニュートラルに眺めれば、優勝争いチームと残留争いチームの「順当な結果」なのですが(笑)。おめでとうございます。

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