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2012年01月03日

●日本一だあ!! (第91回天皇杯決勝)


FC東京 4−2 京都サンガF.C. (天皇杯決勝 国立競技場)


創設13シーズン目で迎えた元日決戦。今まで一度も手の届かなかった日本一の大舞台。待ちに待った全日本サッカー選手権大会決勝は、快晴の霞ヶ丘競技場で観戦した。


キックオフ直後は東京が気合の入った動きで攻勢に出た。1分にルーカスのロングシュートが、3分には梶山のパスで抜け出した石川の鋭いシュートがゴールを襲い、いずれもGK水谷がセーブ。だが、その後も東京は右サイドの石川・徳永を中心に攻めたてるものの、京都も負けじと逆襲速攻を見せる。先制点は13分。突進するドゥトラに両側から寄せた今野と徳永が交錯してしまい、こぼれ球を拾った中山が権田の脇を抜いた。DFにとっては残念な失点。0-1。

しかし、思わぬビハインドにも東京は怯まず、すぐに反撃する。15分、DFをはね飛ばしながら右サイドを猛突進する徳永のプレーから波状攻撃となり、その流れで左CKを獲得。ショートコーナーを受けた石川がインスイングのクロスを入れ、猛然とファーに飛び込む今野がボールを頭で叩きつけると、DFのブロックも届かず左隅にゴールインした。ミスを取り返そうとする徳永と今野の気迫が乗り移ったようなシュート。観ていて胸が熱くなる得点であった。1-1。

そこからは一進一退の攻防となった。東京はいつものパス回しに石川・徳永の突破力を交えて打開を図るものの、京都の早くて速いチェックになかなか大きな展開を作れない。一方京都は東京のボランチの背後で基点を作って細かいパスワークから宮吉・ドゥトラを走らせようとするが、今野・森重を中心とする東京DFも落ち着いて対処。双方に決定的なチャンスが生まれないまま時間が過ぎていく。

と、そんな中、ふと足下がグラグラと揺れている事に気がついた。最初は気のせいかと思ったのだが、揺れは止まるどころか大きくなっていく。周りからも「地震だ」という声が聞こえてきた。表情を硬くして席を外す人の姿も。鳥島付近を震源とするM7程度の地震だったらしいが、結局1分以上は続いたろうか。その大きさと長さに昨年3月を思い起こさざるを得ず、どうにも試合に集中しきれない。バックスタンドでもスマホや携帯電話を見る人が多かった。

そんな妙な雰囲気を吹き飛ばしたのは、東京の2点目だった。36分、ボールキープする谷澤がボックス前で倒されて30m程のFK。直接狙うには遠いとも思える距離だが、石川が軽く触ったボールに対して森重が右足を一閃!ボールはもの凄いスピードで揺れながら壁を越し、水谷の横っ跳びも届かずゴール右上に突き刺さった。ゴォーラッソォー!!思わず叫ばないではいられないスーパーシュート。お前はジュニーニョ・ペルナンブカーノか!2-1。

試合を支配し始めた東京に対し、京都は高いDFラインを一層上げて勝負にかかる。だが、次の得点も東京。42分、水谷のパントを高橋が頭ではね返してDFの背後へ落とすと、猛然とダッシュしたルーカスが一気にDFを振り切ってゲットした。大きな大きな追加点。すげーよルーコン、助っ人外国人みたいだ(笑)。3-1。その後もルーカスのオーバーヘッドがバーを越し、キレキレの石川がバー直撃のミドルシュートを放つなど、東京ペースのまま前半終了となった。


後半になると京都がさらに前がかりとなり、ドゥトラに替えて成長株の久保を投入する。が、押し込まれる形が増えながらも東京DFは崩れず、ルーカスを走らせる速攻で対抗する。57分、ボール奪取から一気に今野が持ち上がり、その今野とのワンツーで切り込んだ石川のシュートがポスト左を抜ける。59分には左サイドの細かいパス交換から工藤がシュートするも、権田がガッチリとキャッチ。ここで京都が1点とればまだわからない展開にも思えたのだが……。

決定的な追加点がは66分、東京が自陣から逆襲をかけた場面。谷澤からのパスで椋原が左タッチ際を抜け、一気に持ち上がってからDFライン裏へ弧を描くパス。巧みな持ち出しでDFを振り切ったルーカスが水谷もかわしてゴールへ流し込んだ。00年の東京を思い起こさせる鮮やかなカウンター。4-1。直後にはボックス左手前で京都のFK、チョン・ウヨンが強烈なシュートを枠に飛ばすも、権田が鋭い反応から横っ跳びで弾き出す。「よし勝った!」と確信した。

ところがまだ終わらない。71分、次のクロスに思い切りよく走り込んだ久保のヘッダーが、東京DFの間を抜けてゴールネットを揺らしてしまう。さすが持ってるなあ若いの、と。4-2。

2点差に詰め寄られ、すかさず東京ベンチが動く。失点直後に羽生→鈴木達也、75分に谷澤→ロベルト・セザーの交代。これは効果があった。強まる京都の攻勢をDF陣と高橋が支え、ボールを奪うや梶山を起点に生きのいい少数のアタッカーでカウンターを狙う。セザーが1人でどこまでも行ってしまうので(笑)得点にこそ至らなかったが、良い形は東京の方が作れていた。88分に東京は石川に替えて北斗を投入。そして残り時間が10分、5分と少なくなって……。

西村主審が試合終了のホイッスルを鳴らした瞬間、ベンチから東京の控えの選手が飛び出していく。ピッチの各所で叫びながら抱き合う選手たち。傾いた橙色の日が差す国立競技場。表彰式で幾つも幾つも渡されるカップの類、メインスタンドで堂々と天皇杯を掲げる今野キャプテン。それはナビスコカップ決勝とはちょっと違う、僕たちが初めて目にする光景だった。FC東京、天皇杯初制覇!!!



いや、しかしホントに「やった!」ですよ。「We did it!」ですよ。

天皇杯は日本最古にして最大の全国的サッカー選手権である。その権威ある大会を制覇したことの価値は言うまでもないし、賞金1億円やアジアチャンピオンズリーグへの出場権獲得という実利もある。東京にとっても1997年・2008年・2010年と3度に渡って準決勝へ進出しながら、決勝進出を果たせなかった悔しい記憶の残る大会でもあった。だが、今回の初優勝。この快挙がクラブの、あるいは日本サッカーの歴史にずっと残るかと思うと実に感慨深い。

加えて、決勝戦の内容も素晴らしかった。序盤の攻勢と裏腹に失点を喫しながらすぐに前へ出て取りかえし、その後は京都のスモールサッカーに苦しむ場面もありつつも、個々の選手が持ち味を発揮して次々に得点を重ねた。自陣でのパスミスなど細かい失敗は多かったかもしれない。京都が真っ向勝負を挑んできてくれたのは正直助かった。でも、地味な展開になることの多い決勝でチームの良い部分を大いに出せたことについては胸を張って良いと思う。

なんというか、まさしく今季の集大成だった。波状攻撃からセットプレーで押し切った1点目。高い個人能力が炸裂した2点目。相手の小さな隙を逃さなかった3点目。そして鋭い逆襲速攻が決まった4点目。2失点は喫したものの勝負所では守備陣が頑張ったし、局面局面のボール争奪戦からも気迫が感じられた。特に、失点直後の徳永や今野らの奮闘ぶりには「これこそが大熊監督の言う「サッカーの本質」の現れではあるまいか」と感動さえ覚えたのだった。

つくづくいいサッカーだった、と思う。スタンドで観ていてそれが何より嬉しかった。

この試合のMVPにはルーカスを挙げたい。正直、復帰してからの彼には貢献度の高さとともに省エネの雰囲気も感じていたのだけれど、この日は全盛期に戻ったかのようなプレーぶり。2得点はいずれもブラジル人FWらしい怪物級のものだったし、ボールを奪われた際の守備もとにかく精力的で素晴らしかった。元々「シュートをきちんと枠に飛ばすルーカスは最強」とよく冗談半分で言っていたものだけど、この大一番でそれが現実のものになるとは。いやはや。

もちろん今野も素晴らしかった。今回は凄味の感じられる守備に加えて炎の同点ゴール。キャプテンマークがよく似合っていた。森重のFKは「魔球」と呼びたい凄まじさ。徳永は気合がみなぎっていて、権田は抜群の安定感で頼もしかった。石川はキレキレでこれまた全盛期に戻ったような。羽生と高橋、谷澤はいつも通りの仕事ぶり。梶山と椋原は調子がイマイチだったかな。セザーは少しは周りを見ろって(笑)。いや、でもみんなよく頑張ったよ。ありがとう!

ということで、FC東京の今シーズンは最高の形で終了。悔しさばかりが残った1年前とは正反対のハッピーな気分でオフへ突入、である。ただ、恐らく東京は今後様々な変化に晒されるはずだ。大熊監督からポポヴィッチ監督への交代は既に発表され、今後は選手の移籍が明らかになるのだろう。来季はACLも戦わなければならない。否が応でもチームとしてステップアップを迫られる訳だが、天皇杯優勝という経験をその中で生かさないといけないよね。きっと。

まあ、いずれにせよこれで良い意味で一区切りというか。大熊東京がこんな「幸せな結末」を迎えることができるなんて、本当に嬉しいことだ。最後にひと言だけ本音を書いておこうか。やった〜!日本一だ〜〜!!!
 

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コメント

元日を思い出して、ウルっとしながらレポートを読んでました。僕もスタンドにいたけど、いやー、いいゲームでしたね。本当に、集大成って感じだった。
ゲームのレポート、いつも楽しみに読んでいます。いろいろ大変でしょうが、これからもよろしくお願いします。

>berlina1994さん

どうもありがとうございます。

仰るとおり、今のチームの良いところをちゃんと出せて、それが「日本一」という結果につながったのだからホント最高ですよね。大熊さんの涙にはジーンとさせられたし。

Jのほとんどのチームがそうであるように、東京も毎シーズン最後に悔しい思い(天皇杯敗退)をして終わっていたのですけど、優勝すればこんなにいい気持ちでオフに入れるんですね(笑)。

こちらこそ今後とも、よろしくお願いします。

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