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2010年08月16日

●FC東京の「ボランチ問題」について

新潟戦、そして昨日の鹿島戦と、勝利には届かないながら後半今野をMFに上げる攻撃シフトで相手を追い詰め、その今野が得点をとっていることで、twitterやブログに「今野はボランチで使うべきだ」みたいな書き込みをするファンが増えているようだ。

この手の選手起用や采配に関する議論については、「素人だから」などと引っ込み思案にならず、大いにやった方が良いと僕は思っている。それがある種のガス抜きになるかもしれないし、ファンのサッカー観を深めることもあるだろう。また、そもそも「俺ならこうする」などと考えをあれこれ巡らしたり言い合ったりすること自体、サッカーを楽しむ重要な手立ての一つであるから。もっとも、あまり熱くなりすぎて罵倒に発展したりするのは良くないとも思うけど。
 
 
というわけでそれに乗っかり、以下は最近の東京のボランチに関する考察。

いきなり結論めいたことを書くが、僕はW杯中断が明けた際、つまり「米本不在、徳永負傷」の状況において城福監督が森重をボランチに上げたのはヒットだったと思っているし、新潟戦・鹿島戦で使った森重と今野の入れ替え策についても支持したい。

森重は足下の技術が高くキープ力があり、視野を広く保ちながら正確なパスを出すことができる。また縦方向についてはDFラインから前線までカバーすることができ、ボックス付近ではトリッキーなアイデアもある。つまりボランチについて高い適性を持っており、ピッチ幅一杯の展開力を持つ梶山との相性も良いように見える。ただ、長くCBでプレーしていたゆえにまだ相手のプレス守備への対応にぎこちなさがあるのと、スタミナにはやや不安を抱えているようだ。

一方、今野は抜群の機動力とスタミナで広くピッチを駆け回り、ボール奪取力とスペースへの飛び出し、ゴール前での得点力については余人の追随を許さない。原監督時代や五輪代表においては不動の正ボランチとして活躍していた実績もある。ただし、相手に注意深くマークをつけられるとテクニックでそれをかわすことができず、パスの技術や味方を動かすためのアイデアにも難点がある。2007年あたりは今野から前に全くボールが進まない場面も多かった。

2人とも、フィジカルも強く、今のJリーグにおいてはボランチとしてもCBとしても水準以上のプレーができる選手だと思う。しかし、それぞれ違った強みと弱みを持っているのも確かだ。彼らの特性とボールをよく動かして攻めたい今のチームスタイルを考慮するならば、梶山の相方としては森重をファーストチョイスにし、後半相手のマークが弛んだところで今野を前に出してスペースを突く、という今の起用法は理にかなっており、実績も一応上がってはいる。

まして、梶山が故障がちとなればなおさらである。城福監督の好みからして徳永の故障が癒えた今、彼をボランチとして起用する可能性は高い。とするならば、その相方となるのが今野だと「強さ」は文句なしだがパスの展開力に多くを望めなくなってしまう。暑い今の季節ならば後半彼我の陣形が間延びすることはわかっているのだから、今野はそこでのインパクト・プレーヤーとしてとっておいて、まずは森重を中盤に置いてそれなりにゲームを作るべきではないか。

もちろん、新潟戦・鹿島戦がそうであったように、森重が奮闘しても中盤で劣勢に陥ってしまう可能性は大きい。だけど、じゃあ今野ならば大丈夫かというと……07年の悪夢が(笑)。まして組むのが徳永だし。今後、少なくとも米本が戻ってくるまでは梶山と組ませることも考えて、森重には中盤で経験を積ませたい。後半の撃ち合いの中で持ち味を発揮したからといって「やっぱり今ちゃんは先発からボランチで!」というのはいささか早計ではないかと僕は思う。

まあ、いっそ梶山が使えない時は森重と今野でボランチ組んだらいいんじゃないかとも思うのだけれど、それだとDFがムチャクチャ不安なんだろうね。平松の穴は意外と大きいのかな。
 
 
と、城福監督を一応弁護したところで(笑)、じゃあ僕も不満がないかと言えば、大いにある。 

まず第1の不満。シーズン初めの話に遡るかもしれないが、徳永のボランチ起用について。身も蓋もない言い方をすると、向かないと思うのだ。徳永は縦の突進力と局面における強さが特長の選手。パスの技術や創造力に多くは望めず、横に梶山がいるとはいえパス回しを停滞させてしまうことが多い。守備でも中央でキャッチアップするのはあまり上手でないように見える。いくら開幕当初に比べれば上達したとはいえ、やはりサイドで使った方が良いように見える。

今野はもともとポリバレントな規格外の選手。だから、チームのコンセプトや状況、相手によってはCBでもボランチでも、あるいは代表のようにSBで使ってもいい。でも徳永はボランチのポジションははっきりと苦手なんだと思う。今の起用法はチームにとっても彼にとっても重荷になってるのではないか。少なくとも、梶山が使える時にはその相方は森重や今野にした方が良いと思う(前のエントリーで書いた「徳永ではなく今野を上げた方が」はそういう意味ね)。

第2の不満。そもそもここ数年ボランチのポジションは駒不足気味だったわけで、羽生がこなしたりしてごまかしてはいたが、補強ポイントだったのは間違いない。しかし、金沢浄を放出する一方で、新しく獲得する(特に外国人選手)のはFWやDFが多く、今年獲得した松下もボランチではほとんど使われていない。米本の負傷は確かに不運だったと思う。でも、それでいきなり緊急事態になって徳永を「使わざるを得ない」という状況はチームのミスではないのかな。

第3の不満。「梶山頼みのサッカー」はいつまで続くのだろう。梶山は能力的に堂々たる中心選手で、ある程度彼に依存するのは当然だし、もちろん彼がいなければ戦力ダウンにはなる。でも、梶山がいないと全然ボールが動かせないとか自分たちのサッカーができないとか、そんな事ではいつまでたってもリーグ戦優勝なんて無理だろう。これは他の選手の問題なのか(原監督時代からの選手はあまり残っていないのだが)、それともコーチングの問題なのか……。

城福監督はこの2年半、しばしばスタイルの修正を行ってきた。08年当初は文字通り「人もボールも動く」サッカーを目指していたのが秋には平山・梶山の展開力とカボレの突破力を軸にした3トップになって、昨年は当初ポゼッションに傾斜していたのが秋にはソリッドなブロック守備戦法になっていた。思うに、そうした中で一貫して中心であり続けたのが梶山(と羽生)なわけで、その裏返しでいつの間にか「いないと回らない」状況になってしまったのかな、と。

そういや、スタイルといえば08年春のムービングフットボール(ダイナミズム溢れるサッカー、ね)の中では今野もボランチとして機能していた(多摩川クラシコの4点目!)わけで、上に書いた「森重と今野どっちがいいか」みたいな話も、チームがどういうスタイル・戦術でやろうとしているかによって当然結論は変わるはず。そこが問題っつーか、実は正直なところ今の東京がどういうサッカーを目指そうとしているのか、僕にもよくわからなかったりするのだよ。

……長々と書いているうちに話が変な方向へ飛んでしまった(笑)。終わろう。
 
 
[付記1]
上の記事を書いた後、後藤健生さんが同じ「ボランチ問題」について書いているのを見つけた。中盤守備については今野が最も手慣れているのは間違いなく、僕は徳永よりは森重の方がずっとマシだと思うけど、でも繰り返しになるがCBの層を考えれば森重・今野がボランチで組むのは難しいのも事実。ならばその試合で結果を出すという観点からすれば、なるほど後藤さんの見立は正しかろう。それはわかる。わかるのだが……「振り出しかよ!」とも思ってしまう。

[付記2]
もちろん、米本が戻ってきたら米本・梶山・今野・森重と、一気に「真ん中」の陣容は厚くなる。そうなるまでの我慢と思えば……って米本はいつ戻ってくるんだろう!?
 

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コメント

こんにちは。
ボランチ/サイドバックフェチで、試合になるとどうしてもそのポジションをじっと見てしまう私としては黙っていられないタイトルでした。(笑)

murataさんのご意見にほぼ同意です。ただ私はまだ森重のボランチを実際に見ていないのでそこだけは何とも言えませんが、徳永のボランチは以前から絶対反対派です。
早稲田の頃からそれなりに知っている私としては最初ボランチをやると聞いた時は愕然としたことは言うまでもありません。彼は右サイドバック専門で良いと思います(私の中では左も無しです)。
ずっとそのまま右で使ってあげていればW杯代表にも入っていたのでは?と思ってしまう位、残念なことでした。

私は迷った時はシンプルに本職を使うというのが監督のやることだと思っています。やりくりだけでは本当に混乱すると思います。

長文コメント失礼致しました。

どうもコメントありがとうございます。

森重は、上にも書きましたけど、周りがよく見えて上下動の運動量もあるんですが、久々のボランチで勘が戻ってないのもあるのか、攻守とも中盤のスペースを埋めきれてない感もあります。

今野は元々ボランチとして水準以上なのはわかっていますが、一方で彼をCBにしてから守備が安定しているのも確かですので、よって本文のような考えとなりました。「DFは信頼性で選べ」と。

徳永については……全くおっしゃるとおりですね。本職の右SBだったら代表レギュラーでも全然おかしくないですもの。今の彼の起用法については「ボランチ森重」「CB今野」なんかとは全く違うレベルの問題かと思います。

前に私も「上がれない麻雀」と書いたことがありましたが、城福さんは、どうもやりくりに気をとられすぎて深みにはまる癖があるような気がします。

ごぶさたしてます。
最近飲んでませんねぇ。

大枠ごもっともだと思います。
しかし結果が出ない時に「今野をボランチ起用せよ」という話が出るのはCBにコンバートした時からの話で、それは城福さんの中ではもう結論が出ているので仕方ない気がします。
自分は「森重なら森重でいいじゃん」という感じです。

しかも今の今野ボランチは東京のサッカーどうこうよりも単にスーパーサブ(?)的な役割なので、ポジション適性の話とは少し論点が違うと思います。

今のサッカーは梶山さえいれば、相方が今野だろうが森重だろうが徳永だろうが羽生だろうがぶっちゃけ大差ないですよね(笑)。
逆に梶山がいない時は、どの組み合わせでもあまり機能しない。これも相手や状況によりますがぶっちゃけ大差ないと思います。

その「相手や状況」に城福さんが神経を使い過ぎてハマってるのが現状なんでしょうね。
で、ファンも同じような神経の使い方で議論をしていると(笑)。

でもそろそろ「梶山」をやれる選手にメドが立たないのはもう分かったと思うので、それこそスタイルの修正というか「梶山がいない時用サッカー」の定義が必要な時期だと思います。
もしくは「梶山」を本当にやれる選手を獲得するしかないです。

いずれにしても「今野ボランチの是非」という議論にはあまり必要性を感じないですね。

おー、どうもご無沙汰です。

>自分は「森重なら森重でいいじゃん」という感じです。

まず、これまでの記事でも森重を高く評価してきたように、僕はMFとしての好みとしては森重>今野なので、「森重でいいじゃん」というより「森重がいいな!」という感じです。今野は「いざという時の秘密兵器」という感じかな。うん、そこは「スーパーサブ」で一緒かも。

ただ、本文のような書き方をしたのは、僕は城福さんほどではないにしろ欲張り=オプション主義なので(笑)「できれば併用できればいいいな」と。どっちも魅力的なんだもの。ただ、まあ、まず固定して連携を深めてからだろう、とも思いますが。今回の「今野ボランチ」は城福さん、相当追い詰められてやった印象だし。

あと、オリベイラ監督のコメントも呼び水になったのか、今になってドッと「やっぱり今ちゃんはボランチだね!」とか言い出す人が増えたので、とりあえず「そんな簡単なもんじゃねえだろ」と言いたくなった。で、あえて上のように森重との適性の違い云々からクドクドと書いてみた、と。天の邪鬼なので(笑)。そこら辺、メトカラさんは勘づいているかもしれないけど。

本当に僕が書きたかったのは、「不満がないかと言えば、大いにある。 」以降の部分です。それこそ、メトカラさんが書いているとおり「「相手や状況」に城福さんが神経を使い過ぎてハマってる」「「梶山がいない時用サッカー」の定義が必要」というところですね。変に小器用に立ち回ろうとしすぎて芯が固まりきらないのでは、という。

その辺りを汲んでいただいて、今回はお見逃しくださいませ(笑)。味スタのキックオフ時間がもう少し早くなったあたりで、また飲みましょう。

こんちは。

面白いエントリでした。
今野も森重もそれぞれ特徴があって、相手にもよるんでしょうが、やっぱり徳永のボランチはないよね、というところは賛成です(笑)。というより、大方の見方は「右SBに戻って欲しい」、だとおもうんですけどね。

個人的には米本が戻ってくるまで今野ボランチでいいじゃん、シンプルで、って思うんですが、この手の話は我々ファンが勝手にいろんなこと言ってるのがいいんですよね。それで楽しめれば。(笑)

>シュート入らないさん

こんにちは。

おっしゃるとおりでありまして、良いまとめをしてもらいました(笑)。

いずれにせよ、今年はもうリーグ戦で上位は難しいし、少し腰を落ち着けてというか、腹を括ってというか、やってほしいとは思います。

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