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2010年05月23日

●帰ってきた(小さくて)凄いヤツ ('10ナビスコ杯 vsアルビレックス新潟)


昨日の午後は、駒沢陸上競技場でナビスコカップ第3節。FC東京 1−0 アルビレックス新潟。一時期の停滞ムードから次第に上げ潮の雰囲気が出てきた我らが東京。日本代表組数人を欠く今回は、ピンチであると同時にこれまで出番のなかった若手らを新たな戦力とするチャンスでもあった。試合は、両チームとも悪ピッチに苦しみなかなかスコアできない展開となったが、終盤「遅れてきたファンタジスタ」の投入でモメンタムを引き寄せた東京が勝利を収めた。
 
 
キックオフ。年に1度の駒沢開催でまず目についたのはピッチ状態の悪さ。ボールが思うように走らず、不規則バウンドが頻発。両チームともパス回しに苦労し、足をとられて転倒する姿が各所で見られた。その芝の上で序盤は局面ごとのボール争奪戦が続く。8分、高橋のフィードを平山が落として鈴木がミドルシュートを撃つが枠外。その直後、新潟はバイタルエリアでのパス回しからマルシオ・リシャルデスが強烈なミドルシュート、権田が両手パンチで弾き出した。

代表組を欠く東京は新人の高橋がCBに、中村北斗が左CBに入る今季初の布陣。2人ともぎこちない部分がありつつも森重らの助けにより持ち堪え、高橋は精度の高いフィードで、北斗は前線への飛び出しで攻撃に貢献する。14分、梶山が敵陣左サイド深くで収め、折り返しを叩いた北斗のシュートは枠外。18分、カウンターから大島がミドルシュート、権田が横っ跳びでセーブ。20分にはロングボールを高橋がそらしてミシェウが抜けかけるも、北斗がカバーする。

時間が進むにつれ両チームとも悪芝に慣れ、特に東京は梶山を中心にパス攻撃が機能するように。28分、ボックス前に上がった梶山のラストパスで重松がボックスへ突入したが、トラップミス。その直後、小林の足の長いスルーパスが大島に通るもオフサイド。30分、右スローインからつないでゴール前へこぼれたボールを角度のないところから羽生がシュート、GK東口が弾き出す。40分には羽生のパスで鈴木が右サイドを抜けたが、シュートはポスト右に外れた。
 
 
後半になっても双方組織だったDFに綻びはなく、落ち着いた攻防が続く。46分、平山のフォアチェックからカウンター、羽生のパスで椋原がボックスへ入るがキックは東口の正面。50分、高橋の縦パスで鈴木がDFの間を抜けるも、シュートはバーの上。59分、重松OUTでリカルジーニョIN、内田OUTで中野IN。そしてここら辺から5月下旬の暑さが効いてきたか、新潟は味方へのフォローが遅くなってパスをつなげず、東京の一方的な攻勢となっていく。

61分、東京はショートカウンターから椋原のクロスをボックス内で平山が落とし、走り込む梶山がシュートするが東口の正面。65分、右サイドから椋原→梶山とつないで最後は羽生がシュートするも、これもバーの上。ブレイクスルーしたい東京は負傷した北斗に替えて大竹を投入、松下が左SBに入る攻撃シフトに。久しぶりに出場の大竹は初めこそうまくパスワークに絡めない姿が目立ったものの、機転の利いたパス出しで徐々に攻撃の中心となっていった。

71分、大竹のパスで平山が左タッチ際を突破、クロスは逆サイドへ流れたものの、中へ折り返したボールを大竹がスルーして羽生がフリーに。残念ながらシュートは当たりが弱く決まらかったが、大竹が絡むと明らかに得点の香りが強まる印象。ところが、東京はハーフコートマッチ状態でたたみ掛けながら、79分鈴木→赤嶺の交代後は前線での動き出しが減ってアタッカーが前に張りついてしまい、攻撃がやや停滞。「また引き分けか」との思いがよぎる。

気がつけば西村主審に「まだ吹くな!」と叫ぶロスタイム。左サイド深くでスローインを受けた大竹が鋭い反転でDFを抜き去ってゴールライン際を突進。「角度がない」と思った瞬間に大竹が左足のつま先(?)で浮かしたボールは、東口の脇を抜いてシュート回転で曲がり落ち、逆サイドネットに突き刺さった。あんなコースがあるとは……素晴らしいアイデア、素晴らしい技術。スーパーゴール!!そして試合終了。歓喜の中心にはもちろん大竹洋平がいた。



いやー、気持ちの良い勝利だった。心地よいグルーヴを感じさせるというか。

結果だけ見れば、スコアレスドローと紙一重の1点差勝ち。「快勝」とは言い難いのかもしれない。しかし、代表組4人に加えてキムを出場停止で欠いたにも関わらず多くの時間帯で試合を支配し、勝点3を獲得したこと。高橋の初出場や大竹の久しぶりの出場、北斗の左SB起用などのテストができたこと。そしてここ数試合の良い流れを切らさなかったことなどを考えれば、ナビスコ杯の勝点勘定にとどまらず、今後に向けて意義の大きい勝利と言えるのではなかろうか。

前半は互角に近かったが、これは東京DFが慣れないメンツだったことと、新潟がいち早く荒ピッチに対応して浮き球を増やしたせいもあったろう。落ち着いて梶山を中心にコントロールするようになり、新潟が息切れしてからは安心して見ることができた。問題は攻撃の方だったが、SBが内側からオーバーラップしてボックスへ入る形など工夫は見えたし、最後はとっておきの創造力でケリをつけることができた。あとはFWがもう少しスムーズにシュートできれば……。

まあ、何にしてもこの雰囲気を大切に続けてほしいものである。中断明けの反攻に向けて。

MVPは大竹。決勝ゴールについては「見ていて何がどうなったのかわからなかった」人が多かったらしいけど……まさかあそこでチップキックを決めるとは。一昨年の多摩川クラシコを思い出したのは言うまでもなく、まさにファンタジスタの本領発揮である。つーか、最後の場面に限らず大竹がボール持つ度に「次は何やってくれるんだろう」とワクワクしたし、梶山以外にも「選択肢を増やすことができる」選手がいるのは本当に大きい。もっと使ってよ、城福さん(笑)。

梶山は全体的には「だいぶ試合勘が戻ってきたかな」という感じなんだけど、妙なミスパスも散見される。まだ7割くらいかな。鈴木と重松はよくかき回してくれるけど、後はフィニッシュの(これこそ)精度が問題か。羽生は何気に調子が良い。平山は収めてからの判断が少し鈍い感じ。椋原・松下は高いレベルで安定。高橋は無難なデビュー。意外と良かったのは北斗で、徳永もそうだが、局面で強さを見せるタイプの選手はやはりSBで使うのが良いのでは。
 
 
しかし、やっぱり駒沢はいいね。味スタの大観衆の雰囲気もいいけど、小ぶりなスタジアムの身近な雰囲気で選手たちのプレーを観ることができるのはまたひと味違った喜びである。試合の前後に広いオリンピック記念公園をのんびり散歩できるのも嬉しいし。まあ、飲食売店の不足や老朽化した電光掲示板、この日のピッチ状態なんかを考えれば年1回くらいでいいんだろうが。できれば西が丘でも試合やってほしいんだけど、それはいくら何でも無理だろうな(笑)。
 

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