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2010年05月25日

●感無量の一夜 ('09-'10欧州CL決勝)

バイエルン・ミュンヘン 0−2 インテル (UEFAチャンピオンズリーグ決勝)
 
 
土曜日の欧州CL決勝@サンチャゴ・ベルナベウは友人宅にてスカパー!の中継で観戦……したのだが、ワインで酔っぱらって途中寝落ちした部分があるので、あらためてJSPORTSの録画中継で見直し(笑)。

今大会、チェルシー戦とバルサ戦の戦いぶりを見れば、インテルの強みが組織守備とカウンターアタックにあることは明らかだった。そしてこの試合も、立ち上がりこそやや落ち着かない攻め合いになったものの、次第にバイエルンがボールを支配して押し込み、インテルががっちりと受け止める展開になっていく。バイエルンはロッベンを中心に個人技でサイドをこじ開けにかかり、一方インテルは統制のとれたブロック守備ではね返しつつ、最短距離の逆襲速攻を狙う。

切れ味鋭いドリブルを見せるロッベンは右サイドでマーカーのキヴを圧倒するものの、カンビアッソらのカバーリングに防がれてなかなか決定機には至らない。逆にインテルはミリートの精力的な引き出しからスネイデル・パンデフ・エトーのフォローで効率的にチャンスを作っていく。17分、スネイデルの鋭いミドルシュートをGKブットが横っ跳びで弾き出した。

先制点は35分。バイエルンの幾度めかのサイド攻撃を防いだ直後、GKセザルのパントキックをミリートがDFに競り勝ってきれいに落とし、足下に収めたスネイデルが一瞬ためてから絶妙のスルーパス。猛ダッシュでDFの背後をとったミリートがフェイントでブットを外してからゴール上方へ叩き込んだ。シンプルだが正確なプレーの連続による見事な得点。1−0。その後もカウンターからスネイデルが惜しいシュートを撃つなど、インテル優勢で前半が終了した。
 
 
後半、立ち上がりからバイエルンが猛ラッシュ。前半とは明らかに異なる速いペースでボールを前に運び、開始直後にはアルトゥントップのパスでDFラインのギャップに飛び出したミュラーがセザルと一対一に。大チャンスだったが、ミュラーが撃ったシュートはコースが甘く、セザルが足に当てて弾き出した。その後はインテルが落ち着きを取り戻し、バイエルンの攻勢を粘り強くはね返す。ロッベンのゴール左ギリギリに巻く好シュートも、セザルが片手一本でセーブ。

バイエルンはクローゼを投入。それに対してインテルは足をつらせたキヴを下げ、ロッベンのマーカーにはサネッティを充てる。サネッティの力強い守備により消えていくロッベン。そして70分、インテルのカウンター。エトーのパスで左サイドに飛び出したミリートはDFと一対一と見るや迷わず勝負。鋭いフェイントで転倒させるとそのままゴール方向へ突進し、ブットの脇を抜くシュートを突き刺した。ここぞという場面で飛び出した個人技。エースの一撃だ!2−0。

後は守るだけのインテル。解説の羽中田さん曰く「選手たちが見えない鎖でつながっているような」ブロック守備で隙を見せないまま時計を進めていく。やや気落ちした感もあるバイエルンはボールを回すものの、一枚目を突破しても二枚、三枚と現れるDFの壁を破ることができない。ロスタイムにはミリートOUTでマテラッツィINの粋な交代。直後、かつての恩師ファン・ハールへ挨拶に駆け寄るジョゼ・モウリーニョの姿。インテルが45年ぶりの優勝を決めた。
 
 
完成されたチームの、完璧に近い形での勝利だった。

インテルにしてみれば全くプラン通りの試合内容だったろう。バルサ戦2ndレグほどベタ引きではなかったにせよ芸術的なブロック守備は健在で、後半早々のピンチを除けばほとんどバイエルンに決定機を作らせなかった。そして少数のアタッカーたちが織り成す、組織だった高速カウンターアタック。それらをこの大舞台でやってのける選手たちも凄いし、徹底してやらせきった監督も凄い。陳腐な言い方だが、最高の選手たちと最高の監督のコラボレーションだった。

それにしてもモウリーニョはでかい仕事をやってのけたもんである。ほんの数年前まで、インテルは「いくら豪華なメンバーを集めても勝てない」チームだった。その後カルチョポリの騒動に乗じて3連覇は果たしたものの、やはり欧州ではどちらかといえば勝負弱さが目立っていたように思う。そこに請われての「スペシャル・ワン」の監督就任。まさか2年目でこれほどまでの結果を出そうとは。なにしろ英・西・独のチャンピオンを破っての優勝である。しかも3冠。

もしかしたら、「堅守速攻」を極めるインテルの戦法については異論を唱える人も多いのかもしれない。このチームは強いかもしれないが、バルサのような理想の香りや華やかさに欠けているのも確か。でも、45年ぶりに王者を目指すインテルにとって大事だったのはとにかく「勝つ」ことだったのだ。試合後の歓喜にむせぶインテルサポーターの姿を見れば、(まあ僕のジョゼさん贔屓のせいかもしれないが)こういう現実主義も大いにアリなんじゃないかな、と思う。

そう、多くの決勝戦後がそうであるように、この日の表彰式もまた感動的だった。普段の仏頂面はどこへやら、相好を崩して選手たちと抱き合うモウリーニョ。ビッグイヤーを掲げてハジけた雄叫びを上げるサネッティ。スタンドで喜びをかみしめ、涙を流すインテルファン。そこへ駆け寄る選手たちの背後にインテルの応援歌が流れて……その模様を伝える倉敷アナ(試合後実況では間違いなく日本最高)のメロウな語り口もあいまって、本当に素晴らしい光景だった。

いや、ホント、こういうのを見ていると「優勝っていいよなあ」としみじみ思う。東京もそろそろ(ナビスコ杯以外で)優勝してくれんかのう、みたいな(笑)。

モウリーニョを失うインテルが今後どうなっていくのかはわからない。ただ、今回勝った経験が、栄光の歴史としてクラブを支えていくのは間違いないことだ。そしてモウリーニョは……おそらくバルサに代表されるある種の理想に対峙する存在として、これからもヨーロッパのサッカー界で独特の存在感を発揮していくのだろう。「憎まれっ子世にはばかる」という。つか、次はレアル・マドリーの監督?勇気あるなあ。いつかは、東京に来てほしいんだけどな(マジで)。


敗れたバイエルンについて。インテルに比べると、やはり監督就任1年目ということもあって発展途上のチームに見えた。攻撃と守備、個人と組織という観点ではインテルよりバランスがとれているようにも思え、まだまだ伸びしろはありそうな感じである。守備組織が機能しづらい後半頭にラッシュをかけてあと一歩まで迫ったファン・ハールの采配は見事だったし、ロッベンも本当に良い選手だと思う。もしかしたら、新しい帝国の黄金時代が近づいてきてるのかな。
 

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