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2010年05月17日

●梶山と小野の再戦が楽しみだ (FC東京×清水エスパルス)


一昨日の午後は、味の素スタジアムでJ1第12節。FC東京 2−2 清水エスパルス。前節今季初の3得点で山形に快勝し、ようやくトンネルを抜け出した感のある東京。良い流れを今後につなげたいW杯中断前最後の試合は、首位エスパルスが相手であった。東京が主導権を握るも、セットプレーのチャンスを生かした清水が先に2得点する苦しい展開。しかし終盤怒濤の攻撃を見せた東京が松下らのゴールで追いつき、結果は今後に期待をつなぐ引き分けに。
 
 
序盤から押し気味に試合を進めたのは東京だった。梶山のキープ・配球と平山のポストプレーを軸にテンポよくボールを動かす攻撃。右サイドでは石川がSB児玉を圧倒するなど、選手の動きにもキレが感じられた。9分、石川が平山とのワンツーでボックスへ突入、清水DFがかろうじてカット。12分、左サイドからDFをかわしながら切れ込んだ平山が強烈なシュート、ポスト右をきわどく抜けた。13分にもボックス正面で羽生の落としを梶山がシュートする(枠外)。

一方の清水はセカンドボールへの動き出しが鈍く、東京の攻勢をなかなか押し戻せない。攻めてはフォローの遅さからアタッカーの動きがなかなか連動せず、守っては小野の運動量の少なさもあって平山・梶山をつかまえきれずに本田・兵働が後追いの守備をする場面が多い。23分、自陣深くで不用意なキープをした藤本を東京アタッカーが囲い込んで奪い、梶山が速いクロスを入れたがGK西部がカット。藤本はこれ以外にもとにかく判断の悪さが目立っていた。

ところが、25分。右サイドで清水のFK。小野のキックは素晴らしい速さと弾道で東京DFの裏へ曲がり落ち、飛び出した平岡がヘッダーを突き刺した。それまでチャンスらしいチャンスは作らせていなかったのに……0−1。その後も清水は相変わらず省エネモードながら、攻撃のリズムがやや改善。27分、逆襲からヨンセンのパスをボックス外で小野がピタリと足下に収めてシュート。これはDFがブロックしたが、小野のボール扱いは思わずため息が出るほど上手い。

29分、平山の突進から羽生が切れ込んで撃ったシュートはDFがブロック。31分、清水は兵働が左サイドを突破、クロスをヨンセンが2度に渡ってシュートするも森重のブロックなどで防ぐ。36分、右サイドからのクロスをファーで受けた平山が切り返しから強烈なシュートしたが、西部がファインセーブ。ロスタイムにはボックス左からヨンセン→藤本→兵働とつながるも、シュートは東京DFが絡んで枠に飛ばせない。25分まで東京ペース、その後互角の前半だった。
 
 
後半、ネジを巻き直した東京が再び攻勢に出る。50分、羽生のカーブをかけたパスで石川がDFの間を一気に抜けボックスへ突入。ここでボスナーが後ろからチャージしたように見えたが笛は鳴らず、西部が押さえた。52分、重松OUTリカルジーニョIN。リカは相変わらずコンビネーションは悪いが突進力はあり、清水のミスの多さもあって東京が一方的に押し込む展開に。54分には平山が左からゴールライン際を突進、クロスはボスナーがはね返した。

清水は小野→山本の交代で守備力強化を図る。57分、右サイドからDF2人をかわした長友が強烈なシュートを撃つも、惜しくもサイドネット。東京は羽生に替えて赤嶺を投入、リカを二列目に下げて完全攻撃シフト。清水は次々飛び出してくる東京アタッカーをつかまえるのに四苦八苦の状態に。が、なかなか点は入らない。65分、ボックス左に飛び出したリカが右足インスイングのクロス、赤嶺が頭で叩くもポスト左に外れ。これは枠には飛ばしてほしかった。

68分、東京陣ボックス手前で清水がFK獲得。藤本のキックはこれまた完璧なスピードと弾道で曲がりながらゴール右隅に飛び、横っ跳びの権田も届かず。藤本、それまでは駄目プレー連発だったんだが……0−2。少し気落ちしたか東京はペースが落ち、清水が回してチャンスをうかがうように。まずい雰囲気である。しかし、ここで城福監督が動いて石川→松下の交代。松下は左SBに入り、今野が前に出て徳永は右SBへ。このシフトで東京の攻撃が加速する。

76分、オーバーラップした松下のクロスを赤嶺が折り返すが、児玉がクリア。81分、左サイドからリカらのパスワークでボックスへ突入、コースが空いたところで平山がシュートするも西部が横っ跳びで好セーブ。83分、攻撃参加したキムが意表を突くブレ球ロングシュート、西部が何とかCKへ逃れる。そしてそのCK、西部のパンチしたボールをボックス右角で拾った長友が右足を一閃!ボールはあっという間にゴール右隅に吸い込まれた。うおおおおお!1−2。

こうなると東京は押せ押せである。87分、カウンターの場面でクロスを清水DFが小さくクリア。こぼれ球を叩いた松下のシュートは当たり損ねに見えたが、うまいことイレギュラーバウンドし、西部の逆を突いてゴール左に決まった。機を見た攻撃参加、好判断の賜物、か。2−2。残り時間は清水も永井を投入して前がかりとなり、双方それなりにチャンスはあったものの、いずれも決定機は至らず。赤嶺が撃ったヘッダーが枠をそれたところで試合終了となった。
 
 

負けなくて良かった。山形戦でせっかく引き寄せたかに思える良い流れを断ち切らないためにも、そして遠くへ旅立つ選手たちを良いムードで送り出すためにも。

この試合においても、東京は多くの時間において主導権を握ることができた。選手の動きに迷いがなく、梶山や平山の調子も上向いている様子。平山へのクサビからアタッカー陣がワッと動き出す感覚はとても快かった。おまけに一時ほどの勢いがないとはいえ相手は首位の清水である。チーム全体が上昇傾向にあるのは間違いない。もっともその割に前半チャンスが少なかったのは、(山形戦と違って)サイドからのシンプルな仕掛けに偏りすぎていたからかな、と。

2点を奪った後半の攻撃。人数をかけて、コンビプレーを交えながら、様々なバリエーションで仕掛けていく。結局はそういうことなんだよね。長友はサイドをえぐるだけでなく積極的に中へ入り、石川は右へ張るばかりでなく中央での飛び出しも繰り出した。そしてキムの意表を突くロングシュートと、松下の思い切った前線への攻め上がり。前半は羽生と梶山に任せていた「流動性」をチーム全体で意識できたというか。欲を言えばもう少し中央突破がほしいけども。

サッカーは「一対一」の積み重ねが大事。でも、当たり前だけど、「多対多」でいかにズレを生んでいくのかも大切だから。凝り固まっていたひと頃に比べれば、やはりちょっとほぐれてきたのかな。城福監督のコメントもずっとマトモになってきたし。まあ、追い込まれて開き直ったからこそできたような気もするけど(笑)、すぐに元に戻っちゃわないといいな、と思う。

個々の選手では、MVPは長友。あの1点目のスーパーシュートがどれだけチームに勇気をもたらしたか。あれが決まってなければ普通に負けていたと思う。また、その直前にやはり積極的な弾丸シュートで流れを作ったキムの貢献も大きい。それ以外の場面でも、彼は攻守のバランスがかなり良くなってきた。SBとCBの両方をこなせる選手がいるのは色々と便利でもあるし。今野・森重も高いレベルで安定。考えてみれば、失点はセットプレーだけだもんね。

梶山がフル出場できたのは大きい。攻撃で「時間を作れる」のは彼と平山だけだから。平山は前半は攻撃の軸として活躍したけど、後半チームが「ワーワーサッカー」化していく中で埋没した印象がある。松下は前節に続いて目に見える形で結果が出せて良かった。個人的な好みもあるかもしれないが、やはりパサーは梶山以外にもいてくれないと。もっと使ってほしい選手である。リカは……交代は成功だったのだろうけど……うーん(笑)。赤嶺はスランプやね。

ということで、これでリーグ戦はしばらく中断。12試合で勝点14の12位は「タイトル争いをする」と見得を切ってたチームとしては大いに物足りないし、この試合だってホームで引き分けなんだから大喜びはできない。ただ、仙台と引き分けた頃に比べれば前向きな気持ちで中断に入れるのはまあ良かったとは思う。今は悲観も楽観もなく、というくらいか。
 
清水エスパルスはコンディションが良くなかったのか、全般的にミスも多かったし、東京の攻勢に対して受けに回ってしまった印象。それでも小野の技巧、ヨンセンやボスナーの勘所を押さえた献身ぶりなど見るべきものはあり、セットプレーでの見事な2得点もさすが首位だけのことはあった。まあ、この試合については1点差に追いすがられた時点で試合を殺すか、もしくはとっとと永井を投入すべきだったのかもしれないけども。ちょっと対応が中途半端だったかね。
 
 
試合後、メインスタンド前でワールドカップに出場する今野・長友・岡崎の壮行セレモニーが行われた。ミス府中3人からの花束贈呈。いや、ホント、怪我もなく無事に全力を出してきてほしいな、というのがいちファンとしての切なる願いである。長友と岡崎(なんか頭を叩き合ってじゃれてたな。キミたちゃ子供か(笑))はスタメン出場が予想されるだけに特に。つーか、もしかしたら青赤のユニフォームを着た長友を目にするのは、これが最後かもしれないんだよな……。
 
 
[付記1]
小野くんは前日から胃腸系のトラブルに見舞われていて体調が悪かったようだ。あまりにも運動量が少ないのを見て「さすがにこれじゃあ岡ちゃんでなくても呼ばないよな〜」とか思っていたのだが、どうもそういうことだったみたい。1点差の段階で守備固めするのも不思議だったしね。それでも、要所では魔法のような柔らかいタッチのトラップやパスを決めてくれて、サッカーファンとしては十分に眼福ではあった。小野伸二のプレーを生で観ることができる幸せ。

そういや、試合開始直後、小野と梶山がほとんどマンマークみたいに近くでプレーしてたんだけど、流れの中でスッと小野が梶山に手を差し出して、梶山もそれに応えて握手しているのが見えたんだよね。すごく良いシーンだった。新旧ファンタジスタの邂逅、みたいな。
 
 
[付記2]
松下の同点ゴール、本人のコメントによれば「当たり損ないではない」とのこと。確かに、リアルタイムで観た時は当たり損ねがDFに当たってイレギュラーバウンドしたように見えたんだけど、スタジアムのリプレイで観たらDFに当たってないし、もの凄い前向きの回転がかかって加速しながらゴールへ跳び込んでるんだよね。なるほど、あれはわざとか。位置どりと判断だけじゃなくて、アイデアと技術(キックの種類)の賜物でもあったわけだ。いい選手である。
 

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