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2009年11月29日

●10年一区切り (FC東京×ヴィッセル神戸)


昨日の夕方は、味の素スタジアムでJ1第33節。FC東京 1-0 ヴィッセル神戸。今月初めのナビスコ杯制覇後、激戦の反動と相次ぐ怪我人・出場停止に悩まされて3連敗中の我らが東京。ホーム最終戦は、退団するベテラン2人を良い雰囲気で送り出すため、そして良い流れで来季へつなぐためにぜひとも勝ちたいところであった。試合は、内容的にはかなり低調ではあったが、終了間際に飛び出した「宴会部長」のヘッド一発で東京がからくも勝利。
 
 
試合前、今季限りでの退団・引退が決まっている藤山と浅利を送り出すため、ゴール裏とバックスタンドには青赤の中に「8」と「7」が浮かび上がる人文字が。非常に規模の大きな仕掛けであり、ビジュアル的にも、その行為で示された気持ちも、実に素晴らしく思えた。
 
 
キックオフ。やはり梶山・平山の不在は痛く、立ち上がりの東京は攻撃の組み立てに苦労。2分、クロスのはね返りを拾った金のミドルシュートがゴール左上をきわどく抜け、その直後には大久保の鋭いミドルシュートを権田がキャッチ。ただし神戸も中盤のパス回しが拙く、東京の守備ブロックをパスワークで崩すような場面はほとんどなかった。どちらも裏を狙うFWへの縦のボールが多い。6分、ボックス手前での奪い合いから鈴木がシュートするもバーの上。

時間の経過とともに、徐々に東京がいい形を作り始める。12分、ハーフウェー付近でパスを受けた赤嶺が反転パス、鈴木がDFを振り切って飛び出すが、シュートはGK榎本がセーブ。その直後、ボックス左手前のFKを北斗が直接狙うも、これも榎本が弾き出す。東京の攻撃陣では、田邉が鈴木や長友と絡みながら効果的なパスを出す場面が幾度かあり、梶山不在の中で良いアクセントに。17分、金が正面から撃ったミドルシュートは権田が正面でキャッチ。

19分、パスワークから右サイドへ展開して米本がクロス、赤嶺のヘッダーを榎本がキャッチ。21分、田邉が左サイドでため、内側を猛然と追い越す長友へ浮き球のパスを通すが、シュートはバーを越えた。だが、30分を過ぎる頃から東京の攻めあぐみが目立ち始める。FWに高さがないこともあり、相手の守備ブロックが安定するとツラいところ。42分にはサイドから切れ込んだボッティのシュートが左ポストをかすめてヒヤリとする場面も。0-0でハーフタイムへ。
 
 
後半はネジを巻き直した東京が序盤からペースを握る。いきなりパスをつないで攻め込み、米本のミドルシュート。47分、大久保→茂木と縦につながれた場面は権田がシュートをキャッチ。51分には右からのクロスが逆に抜けたところ、ボックス内で拾った田邉がフェイントでDFを外してから中央の赤嶺へ折り返す。決定的にも見えたが、神戸DFが懸命のシュートブロック。神戸側は宮本→吉田の交代も功を奏せず、ほとんどつなげないまま縦に蹴るばかり。

56分、赤嶺→北斗→DF裏へ抜ける鈴木へとパスが通りかけるが、間一髪DFがクリア。62分には逆襲速攻の場面で赤嶺が鈴木へスルーパスを通すもオフサイド。そのうち東京の攻勢も息が切れ、全体的につなぎの精度が落ち、田邉もボールに絡めなくなってしまう。逆に64分、神戸が右サイドのFKから石櫃が好クロス、ニアに入った金のヘッダーがバーをかすめて冷や汗をかく。70分、神戸が負傷の金に替えて田中を入れた直後、田邉OUTで近藤IN。

この交代で東京の攻撃はやや勢いを取り戻したものの、丁寧にスペースを消す神戸の守備網を崩すまでには至らない。71分、鈴木のミドルシュートは榎本がキャッチ。74分、長友のポストプレー(なぜお前がそこに(笑))から羽生がシュートを撃つも枠外。75分を過ぎる頃になると東京の選手たちの足が止まり、神戸も逆襲から良い形を作るように。危険なクロスを平松がはね返す。そして80分、東京は北斗OUTで椋原IN、長友を前に出す定番の攻撃シフト。

82分、左タッチライン際に流れたボールを羽生が懸命に拾い、徳永がゴール前に入れた浮き球に近藤が飛び込むも、わずかに届かず。さらに羽生や鈴木が次々とゴール前へ突入しようとするが、神戸DFも高い集中力ではね返し、スコアレスドローの雰囲気が漂いかける。しかし87分、米本のスルーパスで抜けた長友のシュートはDFにブロックされたものの、直後の右CK、ニアできれいに合わせた平松のヘッダーが榎本の頭上を抜く。伏兵の一撃!1-0。

一気に追い込まれた神戸は前がかりになるが、既に交代枠を使い切っていたこともあって有効な攻撃を繰り出せない。89分、東京のカウンター攻撃でDFのギャップへ走り込む近藤にパスが通るが、トラップをミスってシュートも枠外。終了間際には「お約束」の交代というべきか、鈴木に替えて藤山を投入。そのまま危なげなく東京が逃げ切って連敗をストップした。
 
 
試合後には城福監督の挨拶、藤山・浅利の退団挨拶、そして全選手による場内一周。城福さんのスピーチは熱い感情がストレートに込められた、いかにもなものだった。「チームの事情」という言葉が重い……。藤山・浅利の2人の方は大勢のファンや仲間に囲まれ、涙を流しながら切々と感謝の言葉を紡いでいく感動的なセレモニー。いささか冗長で大げさではあったかもしれないが、「FC東京第一世代の終わり」という意義を考えれば納得が行くというものだ。
 
 

勝てて良かったな、としみじみ思った。「悪い終わり」にはしたくなかったもんね。

正直、内容はあまり良くなかったように思う。軸になる選手のうち、石川・梶山に加えて平山まで欠いてしまうとさすがにキツかった。前半は田邉が効いていた時間帯を除くとパス回しに余裕がなかったし、後半もなかなか決定的な崩しパターンを繰り出すことができなかった。ただ、神戸のサッカーが振るわなかったのもあるにせよ、それでも勝ちきったことには価値があるし、ACL圏内へ入る希望も残った。とにかく今は、そこにいるメンツで頑張るしかないのだ。

MVPには平松を挙げたい。冷静沈着なプレーぶりでブルーノの代役を無難に果たすのみならず、ヘッダー一発で見事な決勝ゴール。これだけでももう素晴らしいが、加えてヒーローインタビューでのあの活躍ぶり(笑)。「それでは乾杯します。ジョッキを用意してください!」「カンパーイ!!」って、どこの大学生だお前は。個人的には、あのパフォーマンスだけでも飛田給に足を運んだ価値があったような(笑)。今度から「宴会部長」と呼んであげよう。

つーか、あの惨憺たる開幕戦を考えれば、笑顔でシーズンを終えられたのは何より、かな。

攻撃陣で目立っていたのは鈴木達也。前後左右に動きまくってかき回して、なんか過労死が心配になるくらい。田邉は、前半はDFの圧力に負けずよくやっていたが後半失速。やはり初期の馬場憂太と同じで、長い目で見てあげるべき選手だろう。長友は、本人もおそらく考えてやっているのだろう、終盤「ここぞ」というところで攻撃力を出してくれた。メリハリをつけるのは良いことである。他の選手は……特に誰の出来が悪かったってわけでもないんだよな。うーむ。

まあ、改めて試合全体を振り返ると、印象的には「いつものホーム最終戦」だったな、と。去年もそうだったけど、どうも最後のホームゲームはイマイチな試合になってしまうことが多いんだよね。負けたり引き分けたり、勝っても辛勝とか。まあ、年によって多少の違いはあれど、1シーズンを戦った消耗の結果としてそうなってしまうのかもしれない。天皇杯早期敗退の多さとも根は同じなのかな?ある程度仕方ないにせよ、チームとして克服すべき課題の一つかも。

ともあれ、泣いても笑っても今シーズンは残り1試合。何とかいい試合をして上位に食い込んでほしいものである。頑張ってやー!!


藤山と浅利については……それぞれの思い出については、別に記事を立てて書きたい。とりあえず試合後のセレモニーを見ながらボンヤリ思ったのは、「ああ、これで一つの時代が終わるんだな」と。彼らの退団・引退によって、東京ガス時代、あるいはJクラブとしての発足時から在籍していた選手はいなくなってしまうことになる。ちょうど10年余り前、1999年シーズンから本格的に東京を追っかけ始めた僕にとっても、これは実に感慨深いことなのだ。

なんというか、今年は5年ぶりにナビスコカップのタイトルもとったし、先週には(別のリーグではあるが)アマラオと由紀彦の邂逅もあったし、あの新潟での劇的な昇格からちょうど10年になるし、しかも最終戦が新潟で行われるし、その年に藤山と浅利がチームを離れるし……非常に個人的な思いだが、何やら微妙に因縁めいたものを感じてしまうのである。

別にそれをネガティブにとらえているわけではない。ただ、なんだかんだで10年以上もFC東京とつきあっている身としては、その歴史において一つの終わり、ないしは区切りというものは明確に意識しておきたいものだと思う。終わりがあってこそ始まりがあり、一つの時代が終わってこそ次の時代が始まるのだから。来週は新潟の地でまさに「その瞬間」を見とどけてこようと思っている。これからの東京ファンにとって、次の藤山、次の浅利は誰になるのだろうか。

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コメント

>ともあれ、泣いても笑っても
こっちまでジンと来ちゃった平松は美味し過ぎでしたね(笑
サリ&フジの件はまだ実感が無いんですよね、居るのが普通過ぎたので。

この時期なので他の去就がハッキリして無い選手が気に成ります。
何にせよ、あと一試合宜しくです。
川崎相手に新潟が良かったんで頑張って貰わないと(4位の可能性も賞金も)

で関係無いですが新潟市内でお奨めのラーメン屋さんは三吉屋さん(けやき通り店が駅から近いですね)か「ののや」(塩)さんです、あっさり系が好きならですが。
http://noodles.bbshin.net/niigatashi.html
燕三条系の潤や長岡の生姜醤油の青島食堂は都内にも有りますので…。

どうもです。

新潟は懸命になってくるでしょうね。ホーム最終戦でもあるし(しかも今年はホームであまり勝ってないみたいだし)、ここのところ勝ち星に恵まれてないし、鈴木監督最後の試合だし。

ラーメン情報ありがとうございます。土曜日は現地に泊まるので(夜は宴会予定)、日曜日の昼ご飯とかに良さそう……。新潟はラーメンのイメージが全然なかったんですけど、こうしてみるとたくさんあるんですね。つーか、リンク先のHPの情報量がやるな、と。

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