●「また来年」の人も、そうでない人も (アルビレックス新潟×FC東京)
昨日の夕方は、東北電力ビッグスワンスタジアムでJ1第34節。アルビレックス新潟 1-1 FC東京。長かった2009年のリーグ戦もいよいよ最終節。広島の結果如何では4位の可能性もある東京としては、ACL出場のためにも、シーズンを良い形で締め括るためにも、藤山・浅利のラストゲームを飾るためにも、勝利したいところであった。が、雨と風と相手の気迫に苦しみながら東京が先制するも、終了間際にセットプレーで追いつかれて残念な引き分け。
試合直前に振り出した雨の中でキックオフ。濡れたピッチと吹きつける風によりボールコントロールは難しく、足を滑らす選手も多い。序盤は「蹴り合い」気味の展開となった。まずペースをつかんだのは新潟。3分、オーバーラップの内田が上げたクロスを松下が頭で叩くが枠外。10分、三門の出足良いカットから新潟のショートカウンターとなり、曺のシュートはポスト左。さらに11分にも新潟の速攻、ジウトンのクロスをゴール前フリーの松下が狙うもミートできず。
ところが、先制したのは東京。12分、今野のロングフィードを右サイドに流れた平山が競り勝って落とし、交差してボックス正面に走り込んだ中村北斗がDFの間で倒れ込みながらボレーシュート!横っ跳びのGK北野も届かず、左ポストに当たったボールはゴールラインのギリギリ内側へ転がり込んだ。相手の勢いに押される中でワンチャンスをものにできたのは僥倖であった。つーか、北斗のシュートはいつも何だか格好良い。さすがイケメン、てか。1-0。
得点後しばらくは東京のパス回しのリズムが良くなり、ゴール裏から「オレ!」のかけ声も。しかし、3試合ぶりに出場した梶山が三門らの厳しいマークもあってやや精彩を欠き、ポゼッションを維持できない。そのうち最終戦での勝利に燃える新潟が精力的なプレスから再び攻勢に。29分、前目でボールを奪った三門のミドルシュートは枠外。28分には右CKから混戦の中で千代反田がヘッダー、権田も反応できずヒヤリとしたが、ボールは右ポストを叩いて命拾い。
東京にとって幸いだったのは、マルシオ・リシャルデスの負傷欠場である。アクセントをつける「10番」を欠いた新潟の攻撃は矢野の強さに頼ったやや一本調子なもので、東京はブロックを築いてはね返す。36分、タッチ際から松下がアーリークロス、矢野がDFに競り勝って頭で叩くがわずかバーの上。ロスタイムには平山が左サイドからDFをはねとばしてゴール前へ進入するも、角度のないところからのシュートは枠をとらえられず。東京リードでハーフタイムへ。
後半の立ち上がりは一転、東京が攻勢に。平山のキープを軸に、前半は少なかったSBの攻撃参加や2列目からの飛び出しも交えてたたみ掛ける。いきなり46分、平山がミドルシュート。50分、鋭い切り返しでDFをかわした長友がボックス左からクロス、飛び込んだ平山が北野の寸前でさわるも、ボールはポスト右。さらに54分、右サイドに飛び出した平山からの低いクロスを米本が右足で合わせたが、北野が横っ跳びで好セーブ。ここで1点ほしかった……。
55分、中盤で東京の寄せが甘くなったところを持ち上がった千葉がミドルシュート、権田の指先を抜けるもポスト左に外れてくれた。57分、サントスがボックス正面でドリブルシュート、権田が倒れ込んでキャッチ。勢いを取り戻した新潟はその後も攻めるが、相変わらず縦に急ぎすぎる攻撃が多く、今野や長友の好カバーに防がれ続ける。一方の東京は北斗OUT赤嶺IN。自陣で守りを固めてカウンターを狙うも、中盤のフォローが追いつかず2トップは孤立気味。
61分、右サイドのFKから松下が蹴り込んだ低く速いクロスを平山がダイビングヘッドでクリア。76分、梶山が右サイド深い位置からDFをかわして切れ込み、折り返しを平山がヒールで狙うも北野がキャッチ。77分、ロングボール一発でDF裏を狙われた場面、平松がサントスを抑えこみつつ権田が前に出て押さえたが、雨でボックス外まで滑り出しそうになってビックリ(とっさにボールを放した判断力はナイスだった)。新潟は千葉に替えて純マーカスを投入。
終盤は両チームとも体力的にキツくなり、空いた中盤で雑な攻防が続く。80分、赤嶺からパスを受けた平山の強烈なシュートを北野が弾き出す。東京は羽生→藤山の交代で逃げ切りを図る。藤山はいよいよ東京最後のプレーである。83分、左サイドを突破した木暮が際どいクロスを入れるが、権田がきっちりはね返す。ここで新潟は三門OUTで松尾(元東京)IN。純マーカスにしろ松尾にしろ戦力外通告を受けており、双方何だか「お別れモード」になってきた。
そして89分、これまた「お別れ」の浅利が交代を準備したその時、松下が蹴ったCKに飛び出した権田が触れず、ファーにいた松尾が前のめりのヘッダーをゴールに突き刺す。まさかの同点劇。1-1。浅利は一拍遅れての投入となってしまった。ロスタイムには勝点3を目指す攻め合いとなり、東京は梶山がボックスへ突入するがきわどくカットされ、新潟もロングボールをつないで松下がゴール前へ走り込むも長友がクリア。結局、痛み分けのドローとなった。
最後すっきり、とは行かなかったが。よく頑張ってくれたと思うのでファンとして不満はない。
東京はこの試合もナビスコ決勝後の苦しい状況を引きずっているように見えた。良いパスワークはあまりなく、中盤では気迫十分の新潟相手に押されっぱなし。ただ、それでも前半数少ないチャンスをきっちりものにして後は落ち着いて我慢し、後半頭に力を集中させて勝利をつかみかけたのは今季の成長の証と言って良いのかもしれない。勝てなかった要因は後半の良い時間帯に2点目を取れなかったことと、終盤の試合の「たたみ方」をしくじったこと、だろうか。
見方によっては、終盤藤山・浅利を投入した采配には疑問符が付くのかもしれない。相手に長身の選手が何人もいるのを考えれば、佐原やブルーノを入れる選択肢もあったろう。また、そもそもDF3人の他に藤山・浅利を入れて攻撃は赤嶺1人という控えの構成はバランスを欠いていた。ただ、まあ、何しろクラブの草創期を支えた2人のラストゲームだから。そういう配慮というのはあって良いと僕は思うし、実際プレーする浅利を目にできたのは嬉しいことだった。
個々の選手では、まず攻撃では平山の健闘が目立った。やはり前線で足下にボールを収めてくれる彼のような存在は、間違いなく貴重である。終盤のコーナー付近でのキープもさすがだった。他では、先制ゴールを挙げた中村北斗か。春の横浜戦もそうだったけど、一発の力はあるんだよね。90分間での働きとなると微妙だけど。梶山はおそらくコンディションも良くないのだろう、やや物足りない出来だった。米本が一手に負担を引き受けてしまったような。
DF陣では、今野のカバーリングはいつも通りの素晴らしさ。下がりながらの仕事ぶりに味が出てきたのはCBへのコンバートの成果だろう。長友も動きにキレがあって攻守への貢献度が大きかった。残念だったのは、最後かぶって失点してしまった権田と、開幕戦のリベンジならなかった平松か。特に権田はこの試合完封していればJのシーズン記録だったそうだからなおさらに。まあ、来季へ向けて良い動機付けが出来たと考えればよいのではないかと。
ということで、東京の2009年シーズンもこれで終了。天皇杯がないとホントに早い(笑)。最終順位は広島に次ぐ5位。浦和を上回ったのは気持ちが良いが、勝点が昨年を下回ってしまったのはちょっと残念かも。まあ、色々あった1年だったが、振り返るのはまた別の機会にしたいと思う(これからすぐにポストシーズンの動きが出てきそうで気が気でないけど)。
とにかく、選手・スタッフの皆さん、お疲れ様でした!!
[付記]
新潟を訪れたのは、1999年J2最終戦(東京が昇格を決めた試合)、2003年(新潟が昇格を決めた年)の11月横浜FC戦、そして今回で3度目である。過去2回と違って今回は街中を散策する時間もあったんだけど、米どころに囲まれているだけあって、なんか真っ平らな街なんだね。駅ビルで食べたへぎそばと天丼を初め、食べ物はどれも美味しかった。
あと、6年ぶりに訪れたビッグスワン。国体のために駅前やスタジアム周辺がやたらキレイに整備されてるのも印象的だったけど、前回は(J2なのに)満員だったスタンドに空席が目立っていたのがちょっと寂しかった。まあ、それでも3万入っているのは立派に違いなく、一頃の熱気は冷めているとしてもこの水準で安定していければいいんだろうけど。
帰りの新幹線に乗る前、駅ビルの中にあるアルビレックスのオフィシャルショップに寄って、矢野貴章のでかいパネルと一緒に記念撮影してみた。年賀状にでも使おうかな(笑)。